2016/07/03 のログ
ユノ > 「昨日はまだ蕾でしたのに、綺麗に咲いてますわね。…痛っ」

花びらがレースのようになった、少し変わった紅い薔薇の花。
特徴的な花は覚えやすく、昨日見たときはつぼみが開くかどうかといったところだった。
その薔薇が咲いているのを見つけて、ゆったりとした歩みとハミングをやめて屈むとそっとその花に指を伸ばした。
茎の部分に触れた瞬間、プツリと白い指先の皮膚を薔薇の刺が貫いた。
反射的にひっこめた指をみれば、ぷっくりと紅い血が球状に膨れ上がってゆく。
その様を少女は首をかしげながら見つめて。
ツキンと微かな痛みとともに、少しずつ溢れてくる赤。
怪我をするから、と父のもとにいるときは植えられている薔薇はすべて刺が除去されていた。
小さな小さな怪我も、病気もしないようにと大切に大切に閉じた世界の中で育てられた少女にとって、指から溢れるそれを見るのは初めてだった。

「…んー…美味しくはありませんのね…?」

きょろっと周りに使用人も誰もいないのを少し確認すると、溢れた血をペロリと舐めてみた。
舌の上に広がるのは鉄の味。
少女の愛する人は、この赤を糧とする者。
だから少し興味があったから舐めてはみたものの、さすがに自分の血は美味しいとは思わなかったようで、反対に首をかしげながらつぶやきが溢れた。
血を舐めとったとこには、すでに小さな傷はなくただ、白い指先があるだけで。

ユノ > 他人の赤であれば、もしかしたら美味しいと感じたかもしれないがそこまで興味はそそられない。
ドレスの裾を優雅に捌いて、くるりと踵を返すと少女は屋敷へと戻るためにまたゆったりとした足取りで歩みを進めて

ご案内:「富裕地区にあるとある屋敷」からユノさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にベアトリスさんが現れました。
ベアトリス > 衆人環視の下、純潔を奪われた悪夢の夜から数日。
見世物としての役目を果たした後に待っていたのは、汚れた修道衣姿の娘に興を煽られ、
哀れな娘をより酷く穢してやろうと襲い来る、貴人たち相手の接待、だった。
朝を迎えるごとに身体は清められ、悪趣味にも新たな墨色の衣を与えられたけれど、其れも夜には、或いは昼日中でさえ、
上等な衣を纏った下劣な男たちの手で引き裂かれ、白く穢されてしまう。
幾度味わっても慣れることの無い苦痛と恥辱、そして、望まぬ子を宿してしまうのでは、もしかしたらもう既に、という恐怖。
今宵、現れた男が見るからに愚鈍そうであったから、というだけで無く、限界を迎えた結果の所業だった。

「逃げ、…逃げ、なくては…、―――」

息が荒い、靴を履いていない足の裏が、邸内を駆け抜けただけで酷く痛む。
背後に佇む屋敷の彼方此方から、客人を蹴り倒して逃げ出した娘を狩り立てようとする男たちの声が、足音が聞こえる。
胸元を大きく引き裂かれた墨色の上から、包まるように白いシーツを羽織り、
―――恐らくは使用人たちが使うのだろう、細い裏通りを一心に辿る。
左右に立ち並ぶのは同じような規模の邸宅ばかり、娘が仕えていた修道院はおろか、
普通の人々が暮らす街でさえ、何処から如何行けば辿り着けるのか知れなかった、けれども。
足を止めることも、振り返ることも、恐ろしくて出来ないままに。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にナイジェルさんが現れました。
ナイジェル > 普段は静かな富裕地区にしては珍しく騒がしい気配、探せ、こっちにはいないぞと言う声からおそらくは何かが逃げ出した様子。
依頼が合ったわけでもなければ、己には何も関係が無いと騒ぎに加わらず、静かに歩いていると目の前に表れる裸足で走る女。
まともな服ではなく、シーツを纏っている事から、明らかにこの女かと気が付き、さてどうしたものかと少し悩む。
息を荒く切らしている様子、地面にも薄っすらと血が滲んでおり、引き渡すも忍びないかと結論に達して。

「向こうだ、走って逃げる女の姿を向こうに見かけたぞ」

近づいてくる気配に対して、大声で叫ぶ。
女の行こうとしている方向ではなく、あらぬ方向へと導くように。
そうして己はのうのうと女の先に回り込んでこっちだと手招く、信用されるかされないかはどうでも良いと。
実際に男達と変わらぬ輩であり、大して変わらない事を考えているのだが、大勢を相手するかしないか、それだけでも違う事だろうと。
女が手招きに応じてやってきたなら、抱き上げて女も、追う男達も知らない場所へと転移しようと。

ベアトリス > 夜道に白いシーツを纏った女の姿、其れは思う存分人目を引いたであろうし、
背後から罵声や怒号の類が追い駆けてきていれば、逃亡奴隷と疑われるのも致し方の無いところか。
否、追っ手の側からすれば、娘は間違い無く、逃亡奴隷、であるのだが―――

「――――っ、……!」

男の声。
如何やら、追っ手を攪乱する役を買って出てくれたらしい、呼応するように足音が、怒声が方向転換してゆく。
声の主と思しき男の姿が目に留まれば、―――怪しんだり、警戒したり、という真面な発想が浮かぶのは、
きっと此れほどには切羽詰まっていない場合のこと。
碌に考えもせず、反射的に伸ばした白い手で、男へ縋りつこうとした。

――――直後、此の身を襲う浮遊感、ぐにゃりと歪む視界。
男に抱きかかえられたのだ、と娘が気づくより早く、二人の姿は何処かへと消えて―――残るのは只、うら寂しい路地の虚ろばかり、と。

ナイジェル > 上げた声に導かれる様に足音が、気配が、あらぬ方向へと散らされていく。
必死で逃げている女でもそれは気が付いたのか、先回りしての手招きに怪しむ様子も警戒する様子もなく、というよりも碌に考える事無くやってくる姿。
差し出した手を疑う様子もなく、掴み返して縋り付かれ、そこまで切羽詰っていたのかと微かに苦い笑みを浮かべる。
囚われの身となるのは変わらぬにと、心の中で思いはすれど言葉には出さず、姫抱きで抱えて空間を転移する。

「我が汝をどうするか、それを考えなかったか?」

転移した先は薄暗い部屋、少なくともそれまでいた外ではなく、何処かの屋敷の一室といった所だろうか。
灯りは自分達の周り僅かしか照らさず、部屋の全貌は殆ど分らず、とりあえずと椅子の上に下ろし訊ねて。
何処かも分らないのに逃げ出せる筈が無いと薄暗い部屋の隅に移り、かちゃかちゃと音がした後に紅茶を淹れて戻ってくる。
落ち着いたら飲むが良いと遅効性の利尿剤が入った紅茶を机に置き、机を挟んで向かい合って。

ベアトリス > 家族ですら信用ならなかったのだから、他人など、そもそも信じる方が間違っている。
そう、諦めにも似た気持ちを抱き続けてきたというのに、何故、男の手に縋りついてしまったのだろう。

手を差し伸べてくれた男の腕の中、抱きかかえられて移動した先は、当然の如く何処とも知れぬ薄暗い部屋。
無意識のうち、唯一頼れる肉体の持ち主たる男へと更にしがみつきながら、
―――耳朶を嬲るように響く声音に、ぞく、と背筋が戦慄いた。

「ぁ、…―――― ぁ…、……」

自身の愚かしさに今更気づいても、既に此の身は男の領域に囚われた虜囚も同然。
蒼褪めた面を恐怖に引き攣らせ、導かれて座した椅子の上から男を仰ぎ見る、も。
薄闇の中へ一旦消えた男の背中、茶の支度を整える、場違いなほどに日常的な物音。
目の前の卓上へ置かれたカップから立ち上る、心安らぐ豊かな香りに絆されるよう、緩く瞬いた瞳を俯かせて。

「……でも、貴方、は…私を、…助けて、下さいました、わ」

掠れた声音を絞り出して、漸く其れだけを。先刻、もしも追っ手に捕らえられていたなら、
少なくとも温かい紅茶を供されることなど無かった筈。
其のカップの中身を知る由も無い娘は、外見上の温かさだけを信じて手を伸ばす。
頂きます、とひと言添えて、そっと、ひと口。
―――含まれた薬物はどれほどの効能を持つものか、口当たりはとても滑らかで、普通の紅茶、に思えたけれど。

ナイジェル > 薄暗い部屋に転移するとぎゅっと握られる服の胸元、何処か分らなければそうもなるかとくすっと笑って。
耳元に低く囁くと震え、恐怖が浮かんだ瞳と青褪めた顔で見上げられ、現状を理解したかと椅子に下ろす。
向けられる視線を背に感じたまま用意する紅茶、女の元に戻ると向けられる意外そうな表情、卓上に置いたカップからの紅茶の匂いに少し絆されたのか、掠れた声で絞り出された言葉に、ああ成程と頷いて。

「助けた?違うな、勿体無いと思った。ただ、それだけ、それ相応の対価は頂くつもりだ。」

既にそれは始まっているがと一声添えて紅茶を飲む姿を見つめる。
一応紅茶は上級に部類するもの、その口当たりなどを損なわないために、利尿剤は無味無臭の物。
カップ一杯分を飲んだところで、しばらくは我慢出来る程度にしか感じさせないが、それまでの館で与えられていた物と比べ手一杯ですむのだろうか。
対価、それを女はどう捕らえているのだろうか、一先ずは表面上の優しさを与え、囲い込もうと考えていて。

ベアトリス > 恐らくは、理不尽な暴力に晒され続けてきたのが原因のひとつ。
相手にすれば気紛れに過ぎない、かも知れない救いの手、其れでも、
此の部屋に此の男と娘、其れ以外の人物が踏み込んでくる気配は無い。
―――ならば。供された茶の一杯ほどは、大人しく頂こう、と。
真紅の瞳には勿論、恐怖の残滓が拭い切れずに揺れているが。

「―――勿体、無い…?

 ……可笑しなことを、仰いますのね。
 私、もう、―――……」

其の先を自らの口で告げることは、流石に躊躇われる。
もう、穢されてしまった。もう、乙女とは呼べない、―――口を噤む為の口実めいて、カップを傾ける間は長くなる。
―――温かい紅茶は心地良く喉を潤し、胃の腑を優しく温め、ささくれ立った心を僅かなりとも落ち着かせてくれた。
空になったカップを卓上へ戻す刹那、ほんの少し、物言いたげに其れを見つめてから、
男に戻した視線の意味するところは―――足りない、という、些かはしたない感情。
其れを口には出さず、肩から羽織ったシーツを両手で引き寄せ、そっと口許を覆いながら。

「……対価、だなんて。
 こんな小娘から、一体、どんな対価を期待していらっしゃるの?」

ナイジェル > 「ああ、勿体無い。
 おかしな事を言う、汝が考えた事は、瑣末な事でしかあらぬ、違うか?
 汝という本質は変わらぬ、違うか?
 それに価値とは人によっても違うもの、違うか?」

真紅の瞳に恐怖の残滓を残しながら、人が踏み込んでくる事が無い幸せにほっと一息吐いて告げられた言葉、鼻で笑う。
今の格好、追われていた、自ら口にするのを躊躇っている様子から、容易に予想が付いて静かに訊ね返す、我は別に問題にせぬと。
たった一杯の紅茶、それでも今の自分には十分に温まったと落ち着き、卓上に戻したカップに微かに残った視線、そのまま向けられた後、肩から羽織ったシーツを両手で引き寄せはしたないと自分を恥じる様子、そっとカップに紅茶を注ぐと前に差し出して。

「何を対価とされたい?」

自分には何も無いとばかりに告げられた言葉、元々は追っていた男達と同じような事を考えていたわけで、今もその途中過程である。
今はまだ自覚症状が無くとも、時間を置くほどに段々と強くなる作用を待つため、質問に質問を返す。
ただ、それだけでないのは、女に自分の価値を見出させるためもあり、最終的に言う事は決めてあるが、表に出さぬままじっと見つめる、思った事を素直に言ってみるが良いと。

ベアトリス > たかだか、十数年しか生きていない小娘の頭を支配する拘りなど、所詮は些末事の集合体だ。
其れでも、恐らくは此の身に起こった出来事を粗方察した上で、些末だと断ずる言葉には、
僅かばかりの反発が眦を紅く染めさせる。
きつく、一度、目を伏せて怒りを遣り過ごす間を空けた、後。

「―――些末な事、かも知れませんけれど…
 いざ、女を娶るとなれば、其の些末事に拘るのは、殿方の方ではありませんか…?」

他人の手垢のついた女など欲しくない、手に入れるのなら誰の色にも染まっていない女を、と、願うのは男の方ではないか。
相対する男がそう、だと言ってはいないが、一般的な感覚として。
―――飽くまでも其れは、娘の生まれ育った環境と、施された教育に根差したもの、
いつ、何れの折にも通じる心理では無かろうけれども。
声音に自嘲の色が、微かに滲んでしまったのさえ、或いは気づかれてしまうのだろうか。

何れにしても、目顔の訴えを汲み取って注がれた新たな茶を、口を閉ざす切欠として口に運ぶのは、先刻と変わらず。
瞬く間に乾された空のカップを卓上へ戻した、其のタイミングで僅かに――――

「―――、っ……」

下腹に、違和感。
カップを離した両手を、そっと腹の辺りへ宛がいながら、御馳走様でした、と一度、頭を垂れて。
伏せた瞼を小さく震わせ、思案気に俯いて暫し、唇を無為に開いては閉じ、閉じては開きを二度ほど。
其れから、身体に灯り始めた不穏な感覚を振り切るよう、緩やかに頭を振って。

「……わ、かり、ません。貴女が私に、どんな価値を見出しておられるのか、

 ――――只、…其れが、今の私にも有る、もので…、
 私に、差し出せる、ものであれば…良い、とは、思います、けれど…」

思惑は如何あれ、救われたのは事実。ならば、―――見知らぬ男に、借りは作りたくなかった。俯く真紅が、思い詰めたように色を深める。

ナイジェル > 粗方を察した上で瑣末だと訊ねると見せる反発、僅かばかり眦を赤く染めた後、きつく目を伏せて怒りを落ち着かせているのを見やる。
少し落ち着いたのか、ゆっくりと開かれる口と告げられた言葉、女の言う事が些か間違ってもいないとも思えば、確かにと頷いて静かに口を開く。

「我は一言でもそうだと言ったか?
 違うであろう、価値など人によって変わると言ったはずだ。
 我は汝を勿体無いと思った、それが全てではないのか?
 下らぬ事を言う、情けない男など気にせずとも良いではないのか?」

目の前の女が、見た目通りの年齢であるなら、言われる事も最もであり、否定はしない。
告げたのはあくまでも己の価値観、その上で判断するのは汝だと自嘲の色が滲んだ声色に少しだけ優しく告げる。
ただ、女が言うの言葉が何時如何なる時も正しいのであれば、伴侶を得ながらも他の女に手を出す者はいったい何なのであろうかと思いはするも、余計な事かと新たに注いだ紅茶に手を伸ばし、口を閉ざす切欠にしたのに合わせ、そこまでとして。

すぐに空になるカップ、やはり良い物は与えられていなかったのだと思えば、飲むかは別として紅茶を注いでおく。
その傍らで、両手をそっと腹の辺りへと宛がい、ゆっくりと押さえるのを見逃さず、まぶたを小さく震わせて俯き、何か言いたげに唇が動きながら言い出さない様子で効き始めたのだと確信して。

「汝」

事実を事実として認め、借りは作りたくないと俯き、真紅を深めながら、途切れがちにでも正直に告げられる言葉はある程度予想していたまま。
同じように予想はしているのだろうと短く一言静かに告げる。
ただ、女がどこまでを考えているかは知らず、己が求める物はそのまま全て、呼べば現われ、求めれば否定は許さずと。

ベアトリス > 所詮は見た侭の、愚かしくも稚い小娘ではあるけれども。
直截に、誰彼無く八つ当たりをして恥じないほどの子供では、もう、無かった。
咄嗟に顔色が変わることまでは制御し切れなかったものの、感情の侭に言葉の礫を投げつけたりはしない。
―――返ってくる言葉に耳を傾け、静かに受け止めることが叶ったのは、供された紅茶の御蔭、であろうが。

「……私の知る殿方と、貴方と、を、…同一視、してしまったことは、謝ります、わ。
 不作法を、致しました、…どうぞ、御容赦下さい、ませ。」

一先ずは、何を措いても其の点を詫びよう。
修道女に身を窶すと決めた時、短く切り揃えた髪をさらと揺らして、深く頭を下げる。
はっきりと謝罪の意を示した、と己が納得するだけの間を挟み、そっと姿勢を戻した刹那―――また、違和感。
今度はより強く、下腹を圧迫する感覚。背筋を駆け抜けた悪寒をも、奥歯を噛み締めることで堪えて。
三度、なみなみと上品な紅で満たされたカップへ、此度は手を伸ばそうとせず。
男の唇が静かに動き、短く、只ひと言の答えを告げるのを、視線を逸らさずに受け止める。
―――再び、背筋を走った震えは、悪寒、というには少しばかり、媚毒めいた甘さを孕んでいた。

「――――私…、」

男の言う、汝、とは、勿論此の、愚かしい小娘のことだ。
其の小娘の、何を、何処まで、どのような形で―――
忙しなく巡る思考は、然し片端から甘やかな違和感に突き崩されて、何処ぞへ掻き消えてしまう。
―――結果、頭の中に残ったのは、ひどくシンプルな解釈。
シーツの上から腹へ宛がった両手に、意識せぬ侭、ぐっと力を籠めてしまいながら。
物問いたげに、というよりも、答え合わせを求める眼差しで。

「……貴方、は。

 ………ひと、では、……ない、のですね……?」

此の問いの答えが是、であるならば、此の身も、或いは魂も、何もかもが生涯、此の男の掌のうち、ということも有り得るが、果たして。

ナイジェル > 顔色が変わった、そこは無意識だったのか。
ただ、感情には流されず、それ以上何も言わずに静かに受け止める姿を静かに見つめる。
そうして開かれた口、零した言葉、深く頭を下げてはっきりと謝罪の意を示されると静かに褒める。

「別に気にする事は無い、許すも許さぬも怒ってなどおらぬ。
 それよりも、すぐにその様に詫びれる、それは汝の利点だ」

静かに姿勢を戻すが、時間を置いたせいだろうか、さらに違和感を強め、奥歯を噛み締めて必死に耐えている姿を見つめる。
三度目の紅茶を注ぎ、もう十分ですといった様子で手を伸ばさない姿、そこに仕掛けがあるとは気が付いているのだろうかと様子を見て。
静かに短く告げた一言、視線を逸らさずに受け止める姿、やはり予想はしていたようだと薄く笑みを浮かべる。
僅かに口を開き、ポツリ呟かれた一言、その後また口を閉じ、僅かに目を摘むり、思考している姿を眺めて。
腹を押さえている手に無意識にかかった力、静かに目を開き、強い意志を秘めて向けられる眼差し、そうして告げられた言葉。

「魔」

問いに返すはまた一言、ただそれが全てで答えになり、分ったのなら、来いと手招く。
薄く見つめる瞳は、どのような姿でどうするのか、それによってその後の扱いも変わるとも教えているようで。
さらにはくつりと笑い、目の前のカップを掴んでなみなみと満たされた紅茶の机の上に零し、殻にしてことりと置く、意味する事は分るだろうと試す様に。

ベアトリス > 短絡的な思考回路、知識や経験の絶対的な不足、其れらの短所を認識しつつ、払拭するには未だ修練の足りぬ身。
其れでも、過ちだと気づけば、頭を下げるに躊躇うほど愚昧でも無い。
―――だからといって其の点を褒められれば、気恥ずかしさに頬が染まるけれど。

「本当は、…してしまったことを、謝る、より…、
 初めから、せずにおく慎みを、身につけたいと思います、けれど…」

――――ぞく、ん。

声を発すれば其の拍子に、そっと微笑めば吐息の揺らぎに、もはや誤魔化し切れない衝動が此の身を襲う。
はしたなく2杯も紅茶を飲んでしまったからか、其れとも、―――其れとも。
薄く笑んだように見える男のかんばせから、あるひとつの疑念が不意に浮かんで、消えた。
――――真相が何処に在ろうと、もはや無関係であろう。
目の前の男は、ひと、ではない。
ひとでは、ない、――――其の男が、手招く。
カップがくるりと返り、紅が卓上に広がり、流れ、――――もう、カップには戻らないように。
其の手をとれば、きっともう二度と、戻れない闇に囚われると悟りながら。

「―――、ベアトリス、と。
 そう、御呼び下さい、ませ…。」

先ずは、名を。
ふらつく四肢を叱咤しつつ立ち上がり、羽織っていたシーツを足許へ落として、
修道衣と呼ぶには余りにも淫靡な、大きく胸元を引き裂かれた墨色と、
僅かに上気した白い肌を晒して―――

一歩、そしてもう一歩。
重く蟠る疼きに、頽れてしまいそうな身体を、彼の正面へ。
そうして、此の手が誰に、何者に縋りつこうとしているのか、はっきり認識していながら、
―――伸ばした手指で、男に触れようと。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からベアトリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からナイジェルさんが去りました。
ご案内:「シュヴァンシュタイン家の屋敷」にイニフィさんが現れました。
イニフィ > 「はぁ~………。」

退屈だった。
割り当てられた部屋に置かれている少し質素なベッドの上で、イニフィは身を投げ出していた。

不満なども一切あるわけがない。
こんな広い館を使わせてもらえるようになったのだから、不満を言えば罰が当たる。
信じている神様もいないので、バチも何もあったものではないのだけれど。

だが、今まで各地を転々としてきたイニフィにとって、一つの場所にい続けるというのは案外退屈なものだった。
なので、結局暇をもてあましてしまっている、という結果に陥ってしまっている。

「………退屈ねぇ…。」

家の主は、まだ帰ってこなかった。

イニフィ > まあ、さすがに仕事をしているのに帰ってくるのが早いか遅いかなどどうしようもない。
都合というものもあるし、なにより居座っておいて早く帰ってこいは虫が良すぎる。

「ん~………せめて帰ってくる時間が分かればねぇ…。」

その間だけ、少しだけ旅行のようなものをするのも悪くはない。
まあ、大体行きつくしてしまったので、目新しいものがない限りはそれも結局退屈でしかなかった。

「………。さすがに、あの子の邪魔をするわけにはいかないものね…。」

ご案内:「シュヴァンシュタイン家の屋敷」にノエルさんが現れました。
ノエル > 「ただいま戻りました」

仕事先の様子や、富裕地区の偵察……
数日後に迫ったこの屋敷の受け渡しに関する者達の偵察から戻ってくれば
屋敷の中にいるであろう姉に声をかける。

久しぶりに言うただいまの言葉、それは彼、いや彼女にとって嬉しいものであった。

今日のノエルは完全に少女の姿をしていた。

メイド服を着て髪を伸ばしたその姿から、元々のノエルを知る人物であっても
彼にたどり着けるものはほぼいないだろう。

イニフィ > 「ん?……あら、帰ってきたのね。」

壁にかかっている時計を見ると、もう随分と夜もふけ始めていた。
やはり騎士と言う職業柄、結構夜遅くまで仕事熱心な用で。

―――もしかしたら、別の用事で出かけていたのかもしれないけど。

「おかえりー、どう?
そろそろ女の子の体も慣れてきた?」

きっと、彼女を『ノエル・シュヴァンシュタイン』だと思う人間は皆無だろう。
髪の長さ、そして全てがあまりにも違いすぎる。
おそらく街中で、あんな格好をしていたら、知り合いですら気づかないだろう。

そして、彼女も―――。

「こっちは退屈だったわよ。
取立てが来るかなーと思って待ち構えてたのに…もう。
こういうとき、人間って律儀って言うか……。」

まあ、欲望に忠実な分、そのときのお楽しみとしてとっておく。
そういうことなのかもしれない。人間はどこまでも強欲だとおもっているから。
そんな人間は、イニフィは大好きなわけだけど。

ノエル > 「ええ、本当はお姉さまとデートでもしたかったんですけどね」

そのまま大きく紙を広げ、ペンを放り投げればペンが勝手に動き出し何か見取り図を描き始める。
描かれていくのは、王城とある一角の詳細な地図、事細かに兵士の配置場所なども書かれている

「ええ、もう元から女の子だったんじゃないかなと思えるくらいには
 少し歩いただけで何人かにナンパされちゃいましたよ」

そのナンパしてきた中には自身の知り合いもいたのだが、それが滑稽で笑みがこぼれてしまう。

「一応約束の日まで日にちはありますからね、このまま屋敷を明け渡して
予定では王城に向かい、そこで手続きを済ませる予定です」

そう言って、紙に欠かれた地図の場所を指で示し、いくつかの☓印も指差していく

「この辺りには、魔物封じの結界等の痕跡はありましたが、ことごとく破壊されていました。
 恐らくおねえさまの言うタユナが活動をし易いために破壊させたのでしょう。
 あと、恐らく構造上、この部屋には隠し扉があり、下の階にある隠し部屋まで通じているようです。
 恐らく、敵はそこに……」

しばらくの間、騎士団の方には休職届けを出しているので今日はそちらには行っていない。

数日後の会談にっむけ、その会場となる場所の下調べを念入りに行なっていたのだ。

イニフィ > 「あら、いやん。ノエルちゃんってばほんとに大胆になったわね?」

初めて、男の子のノエルと会ったときはもっと初心で真面目な印象だった。
だけど、デートがしたかったなどという少女に、笑みを浮かべながらベッドから起き上がった。
広げた紙に目を向けながら。

「あー、わかる。ノエルちゃん可愛いものねぇ…。
んふ、でも残念……ノエルちゃんは私のものだもんね?」

説明を待たずに、軽いハグで返した。
ふっくらと丸みのある体は、男にはないやわらかさを持っていた。
それが、イニフィはとっても大好きなのだ。

描かれているのは、王城の細かな見取り図。
そしていくつものバツ印。何をさしているのかの詳細な説明を、イニフィはすこし真剣な面持ちで聴いていた。
勿論、後ろからノエルの抱きつき、胸に手を添えたまま。

「……ふーん、この前見えたビジョンはそれか…。
王都だって言うのに、魔族が随分と快適に過ごせるように工夫されてんのね…。
んふ、真実を知っちゃった感想はどうかしら?」

彼女には力を与えた。
自分の魔力を供給し、そして彼女が吸い取った精を自分が魔力として受け取る。
持ちつ持たれつ、ケースバイケース。
全て美味く回っている、そんな関係だった。

入念な下調べは―――人間のときの名残だろうか。
細かな見取り図と作戦に、イニフィは笑みを浮かべながら―――耳たぶに舌を這わせていた。

「…其れで、私にはどうしてほしいのかしら……?
タユナをおびき寄せればいいの?それとも…貴族様を釘付けにすればいいの?」

ノエル > 「だって、遠慮していたらもったいないじゃないですか」

今は禁欲的な自分の反動か、非常に欲望に忠実である。
ちょっとした買い物でも、可愛い少女の姿であればちやほやされてしまう
ノエルはすでにその心地よさを堪能してしまっているのである。

「そうですよ、ナンパされても餌にしちゃうだけですもの」

もうすでにノエルの身体は少女のそれである、子供から大人の姿を自由自在に変えられる彼女ではあるが、
元々の年齢に近い姿を好んでいた、胸はやや膨らみかけで、イニフィの手の中ですっぽりと収まっていた。

「もうさすがに驚きませんよ、逆に王城への出入りが楽なのはこれからボクやお姉さま、
それとお姉さまのお友達の皆さんが出入りする邪魔がないだけ安心してますよ」

胸への刺激、そして耳たぶを舐められれば心地よさそうに甘い声を口から漏らす。
潤んだ瞳で、イニフィを見つめて。

「ニンフェンブルク卿を誘惑している間、タユナの行動の警戒
 その後、卿をボクの下僕にした後に、ユナへの襲撃及び彼女の全てを奪います。
 今回でボクは他ユナの能力、そしてニンフェンブルク家を乗っ取ります」

そう今回の作戦を手短に伝え、そして今回の目的も同時に伝える。
取られたものを倍以上にして取り返す、それは当然のことでしょと言いたげな口ぶりで。

イニフィ > 「んふ、そうね?…遠慮はもったいないわ?」

彼女は、イニフィ以上に欲望の塊であった。
魔人へと堕ちる前の禁欲が、彼女に凶大な欲望を持たせてしまったのだろう。
だけど、その欲望は決して自分には向かない。
なぜなら、イニフィは与える側なのだから。

「……しちゃってもいいんじゃない?
ヤりたいならやらせてあげたら?…最期になるんだし、うんと気持ちよくしてあげるのもいいもんよ?」

―――ただ、最近になって再びイニフィの残虐性が膨れ始めていた。
愛情などというものに芽生えて、誰かを本気で好きになったのは間違いない。
けれど――――気に入らない相手、行きずりの相手にまで愛情を注ぐほど懐は深くない。
だからこそ、彼女にも言うのだ。『容赦はいらない』と。

「あら、面白くない反応…。感度上げてやろうかしら?
…でもまあ、王城にコネを持てるようになったのは大きいわね。」

あまりいい感情を持たない人物も多いだろう。
勿論、国そのものを変えてやろうなどとは思わないし、ノエルにもそれは伝えた。
すっぽりと収まるノエルの胸を、服の上からでも揉みしだく。
その先端へ指を当てて、押し潰すようにこね回しながら耳たぶを甘くかみ締める。
その、耳の穴の中にまで舌を突き入れながら、妖しく笑って。

「……分かったわ、私はタユナを警戒して、足止めすればいいのね?
んふふ、タユナも厄介な魔人を相手にしちゃったわねぇ…?」

おとなしくしているものほど、噛み付かれたときの傷が深くなることを、身に染みて実感することになる。

手短に話された作戦。イニフィはそれを、にこりと笑って承諾した。
場所が分かっているならば、足止めをするくらいたやすいものだった。

「…其れで、ニンフェンブルグを乗っ取った後はどうするのかしら?
んふふ…私との契約を切ってまた人間に戻る?…それとも。」

魔族という事を偽り、その家を魔族の巣窟にしてしまうつもりなのか。
イニフィは、潤んだ瞳で見つめてくるノエルの唇を奪いながら、少し意地悪な質問を投げかけた。

ノエル > 「ニンフェンブルク家乗っ取ったら、そうですね……
 それを利用して、楽しいことができればいいと思いますね。」

敵をとった後、その事も考える余裕は少しずつ出てきた。
このまま残虐性を露わにしていくのか、それとも欲望を制御していくのか

「あ、やあん、お姉さま胸揉んでるの、強いですよぉ」

そのまま体重をイニフィに預けるような体勢になりはじめる。
今日は散々その容姿から多くの人間の視線にさらされ、肉体は敏感になているのである
胸や耳への愛撫だけで、もう腰が抜けそうになっている。

「みゃう……ちゃんと上手くお芝居できるといいですね
 たぶんニンフェンブルク卿は、ボクが完全に淫魔になっていると思ってないでしょうし」

ゆっくりとイニフィの方へ振り返り、彼女の胸に手をあてればお返しとばかりに強く揉み、
その先端を衣服越しに吸いつきはじめる

イニフィ > 「んふ……、楽しいこと…ね?ノエルちゃん、その権力は貴方にあげるわ。
その代わり、ノエルちゃんの心と魂は私がもらうわよ…?」

イニフィは、権力やそういうものには一切興味がなかった。
自由を求めているのに、相手の自由を束縛するなんて、そんなものはナンセンスだ。
自由にして――そして、自分を求めるならば求められたんぶんだけ返す。
いまはタユナに捕られてているノエルの魂、それを取り返した暁には―――。
そのことも、イニフィの取っては楽しみの一つなのかもしれない。

「…そう?でも、このくらいじゃないとノエルちゃんも満足しないでしょ?」

メイド服を着たままのノエルだけれども、その胸の先端はいやおうなしに分かってしまう。
同じ女だ、体のどこにそれがあるのかくらい手に取るようにわかる。
自分に体重を預けて、話し続けるその少女。
自分に振り向き、胸を揉みそして先端に吸い付くその感触、淫魔であろうと感度はある。
だけど―――気に入った相手に、しかも契約を施した相手に簡単に快楽を感じるほど、弱い淫魔ではないつもりだ。

「それは…ノエルちゃんしだいじゃない?
んっ……、大丈夫よ、淫魔の力の使い方は教えたでしょ?」

相手の目を真っ直ぐ見て、その視線に魔力を込めればいい。
先端に吸い付くならその頭を撫でてやりながら、後ろより衣服を脱がし始める。
下着姿になるまで脱がしてしまおうか。

「……ノエルちゃん、おいたはだめよ?
んふふふ……私を気持ちよくしようとしてくれるのは嬉しいけど…ね?」

だから、その動きをまずは制してしまおう。
両手を掴み、そして舌を突き入れる深い深いキスでノエルの意識を奪ってしまおうか。

ノエル > 「ん……すでにノエルの心はお姉さまのものですよ?
魂も取り戻したら、おねえさまにささげるの……お姉さまと一緒になるの」

うっとりとした表情で語るのは、恋する乙女のような表情。
幼い子どもが、保護者に将来お嫁さんになるというような口ぶりでイニフィに甘えている。

「あん、いじわる……でも、いっぱいいじめて欲しいなぁ」

先程からの愛撫で、ノエルの子宮はきゅんきゅんと切なく疼いている。
まだまだ未熟であるからか、自分の上位種である相手からの愛撫であるからか
身体に受ける快楽は計り知れない。

「ん……そうですけど、騙すとかちゃんとできるのかは心配なの」

そのまま下着姿へとなっていく。
14歳位の容姿のノエルは、乳房はまだ小ぶりではあるがm,ちゃんとブラはしていて

「ん、お姉さまのおっぱいも、美味しそうですもの……ん、むう」

キスを受ければ、その瞬間に軽く達してしまう。
舌は無意識でもイニフィを求め動き、二人の舌を絡め合い一心不乱に口内の唾液を交換するような深いキスを繰り返していく。

イニフィ > 「んふふ……ありがと。」

淫魔に―――というよりも、イニフィとって最終的に魂を捧げるという行為は決して無理強いはしなかった。
勿論意志が強ければ抗うことだってできるし、拒絶することだってもちろん出来る。
だけど、その選択肢の可能性を限りなくゼロにしていく―――それが、イニフィの鹵獲術だった。

まるで恋する乙女のような台詞。
だけど、イニフィにとってその言葉は契約を施したノエルからの、最大級の贈り物だった。

「んふふ……そうね。じゃあ、今夜は寝かさないであげる。」

イニフィの愛をたっぷりと受け取ってほしい、そんな言葉であった。
ノエルの言葉か原、意地悪をしないでほしいというよりも、もっと意地悪をしてほしいという言葉に聞こえる。
苛めて、もっともっと落してほしいと―――。
した同士が絡み合い、互いの唾液を交換し合っていく。
だけど、イニフィはその唾液をどんどん零し―――下着姿のノエルへと唾液を落していく。
それを掌で身体中に塗りたくり、どんどんノエルの体を唾液まみれのいやらしい姿へと変えていこう。

「…んふふ、騙す必要なんてないわ?
相手はノエルちゃんが淫魔になったことを、女の子になったことを知らないでしょ?
だから……ノエル君になればいいのよ。」

もっとも、そう仕向けた相手ならば既に体の変化は知っているはず。
ならば、完全に女になったことは知らずとも、女の体であることは知っていよう。
ならば―――それを逆手にとればいいだけの話だ。

逸れに、タユナもまさか自分の契約が切れていることは気づいていない―――はずだ。

「あら、そう?……じゃあ、後でたっぷり感じさせてあげる。
でも、いまはノエルちゃんを苛めたい気分だから……いじめさせて?」

その代わり、後でたっぷりと愛してあげる、と耳もとでささやいた。
唾液網れになった手を、ショーツの隙間に潜り込ませれば、その割れ目を軽くなぞった。