2015/12/12 のログ
■ハスタ > おっさんは、これでも魔王である。
茶色のボロ衣から、女と分かる見た目と、ボロボロの衣服が見えたこと、
それから、彼女が上げた如何にも女らしい声を聞いて、筋骨隆々なおっさんは、笑った。
それはもう、一目見て変質者って分かるあのエロオヤジ独特の笑顔である。
ボロボロになった衣服に身を纏った、水色の髪の少女。それが後ろにと崩れた様を、無遠慮に舐め回すように視線を遣った。
…成程、魔力で作った衣なのか。おっさんは、魔法使いタイプである。筋肉もまた、無駄であった。
そういうわけで、割と博識かつ智慧の高いおっさんは、彼女が魔の者である事も、理解した。
「アッハッハッハ…そうかいそうかい。」
彼女が機転を利かせて、もめ事を避けようとしたらしいが、しかしおっさんは、
煽る様な笑みを浮かべて、後方へと飛んだ少女に二歩ほど寄る。
狭い街路、それを防ぐかのように、大柄なおっさんは彼女の走って来た進路を妨げる様に位置を取って。
「んんー…女の子、かあ…?」
立ち上がる前に、しゃがみ気味になりその顎元を大きな掌で掬おうとする。
掬えたならば、彼女の顔を品定めするようにニヤついて眺め回そうか。
■アブソリュート > この街には僅かながらとある神の加護が残っているらしい。
これは魔族を完全に遮断するものではないにしろ、その力を充分に発揮できないものであり、弱ったアブソリュートは大々的にその影響を受けていた。
魔力による探知も機能しない、つまり目の前の男が魔族かどうか、それどころか魔力があるかどうかの識別さえ出来ない。
それ故に見た目の情報で判断する他なく、立ち上がったらすぐさまその場から逃れる心算でいた。
――しかしながら、その行動は出来ずに終わる。
何故なら目前の大男が二歩程近寄って己の通路を塞ぎ、さらにはその手で己の顎を掬うように触れたのだ。
「な……。」
とっさの事で反応をする事も出来ない侭。
人形のように整った顔立ちが彼の前に晒される。
動きに合わせて頭から衣は完全に落ちてしまい、人ならざる肌色よりも白い肌を見据えられる事になり――碧い瞳で強く睨み付けた。
「……何を、しているの、離して。」
咄嗟に手で振り払おうとする。
しかし、払おうとする力は本来の魔族のものではなく一般女性の其れ程度しかない為にその腕を引き離すに事足りるかは怪しい。
■ハスタ > 反抗的な視線。整った顔立ち。それから、申し訳程度に纏っていた衣が剥がれて、
ところどころ破けて肌蹴た、彼女の薄い色の肌を晒す身体。
それらを目で伺って、やはりおっさんはニヤけた。
「何って、…なんだと思う?」
ともあれ、おっさんは何処へ行っても脳味噌が下半身。
このおっさんとて神の加護の悪影響は受けると言えど、不尽の魔王であり、常に十全である。
おっさんは、魔法使いタイプである。が、故に強化魔法でも使わない限り腕力は見た目程度しかない。
しかし、彼女の女らしい腕力では、見た目通りの筋力を持つ大男の手を振り払う事は敵わない。
「んー…、そうねえ。随分可愛い見た目しているじゃあ、ないですか。」
顎元を掴めば、進路を塞いだ後は退路も防ごうと、完全にしゃがんで彼女の後ろ側にも手を回そうと。
おっさんはニヤニヤしながら、彼女の反抗的な目線を楽しみ。
「御嬢ちゃん、御名前なんて言うの?急いで…何処へ行こうっていうんだい?」
目から、或いは手から。ちょっとした呪縛の様なものを流そうと試みる。
最近よく使う「おっさんの質問に嫌でも答えさせられる」咒術。
おっさんは呼吸するのと同じ感覚でアッサリ事も無げに彼女にその呪縛を行使する。
お互い神の加護で力を遮断されているにしろ、元々彼女の側は魔力が衰弱している状態にある。
(もっとも、おっさんはこの事は今は知らないが。)
平常時であるなら、或いは弾かれたやも知れないが、今であるならどうだろうか。
■アブソリュート > 引き千切られ、修復の追い付いていない衣服の破損個所から粉のように宙を舞って消えていく青白い粒子。
それがアブソリュートの状態を示す事となるかどうかは兎も角、にやける男の表情に、少女は表情を強張らせる。
「ろくでもない事だけは、わかるわ。」
氷剣を使えば切り裂くくらいは出来るかもしれない。
しかし、その一回で限界、次はないとすればここで使うのが得策とも思えない。
どうしたものか、そう悩むものの、振り払えない腕はやはり見た目通りの筋肉質だった。
魔族の力が万全であればこうはならないのに、悔しそうに大きな掌を睨み付けた。
「んぐ…っ! 煩い、離しなさい…ッ!」
少なくとも褒めるような言葉でない事ははっきりとわかる。
こうなれば氷剣を使って――そう思ったが、背後に回された腕と掴まれた顎のせいで、前後左右逃げ場を失う事となる。
離せ、と殺意を込める視線を男に向けるが、全く動じない彼の様子に表情は尚も強張る。
――そこで、不意に魔力が走ったのを視た。
だがそれが何かと認識する間もなく、反射など出来る筈もなく、あっさりと女にその効力は刻まれた。
「――アブソリュート、この街から脱出しようとしていた。……!?」
意図せず答えを発する己の口に驚いたように瞼を見開く。
普段であれば、あっさりと遮断できる程度の威力しかない魔法が容易く己に効力を与えた。
すぐに術に掛けられた事は理解したが、解除する術すらない事に、いよいよ焦りを覚えて体を捩り、顔を逸らそうとする。
下手に暴れようとすれば、着痩せしやすい体質であるからか、布がさらに捲れ、布を纏っていた時から見ては明らかに発育の良い胸が、ボロボロの衣服が僅かに被っている状態で見え隠れするようになるか。
■ハスタ > 「…ん。なんだあ、分かってるじゃあないか。怖くないのぉ?」
その通りだとでも言いたげに下衆同然の笑みを浮かべるおっさん。口調はからかうもの同然。
なんか抵抗してきそうだが、然し魔力衰弱状態にある彼女の魔力量は、魔族としてもたかが知れている。
ちょっと魔法が使える人間の女の子、レベルくらいなもので。
最も、おっさんは不死身なので警戒という概念すら持たないのだが。
「おいおい、折角手に入れた上玉なんだ。棚から牡丹餅ってヤツ?離すわけにはいかんよね。ウン。」
反抗の色は益々強まり、なんと殺気めいた物まで感じさせ始めた。
しかして、彼女が脅かすような睨む目をいくら強くしたとて、おっさんはずっと笑いを絶やさない。
おっさんのスマイルは無料である。
間近にて、抵抗しながら睨み、怯えすら見せない彼女を面白がるように見遣って、頷く。
「ほうほう、アブソリュートたん。…何か名前長いな。長いからソルトたんと呼ばせてもらおうかねえ?アッ、仇名の御希望はあります?
成程、おじさん事の経緯は大体分かったぞ。お前さんあれだろ…ついさっきまで捕まってたってクチじゃね?」
息切れ、良い見た目の女、ボロボロの衣服。それと、魔族。それが町から出て行こうと急ぎ足で歩くなら?
それらから考えて導きだされるのはと言えば、こんな所だった。
太く長い逞しい腕の中、彼女の身体が動く。顔を逸らそうとするなら、顎元を掴んだ手に力を入れて、クイ、と自身の目に向かわせようか。
この衣服は纏っている必要があるのかどうか、既にボロキレ同然の状態の衣に囲まれた良い胸が、おっさんの目の前で晒された。
おっさんは、ォゥッ?!という常人には理解しがたい奇声を発して、その胸を眺める。
「あー…と・こ・ろ・で。…スリーサイズと、それから何カップかを教えたまえ。
良いよいいよ。おじさんはね、揉めて挟めるくらいが…丁度好きなんですよ。んん~。」
誰が聞いたかそんな事。実に神妙な顔つきにて、まるで諭す様な口調でしっかりと頷く。
彼女の目と胸、それぞれへ行ったり来たりしながら、また同じく彼女に質問をする。
■アブソリュート > 「怖い要素なんてない。……これ以上喋らせないで、手、切り落とすわよ。」
呪縛の影響か、問いを掛けられれば口が勝手に動く。
どうにか解除できれば良いのだが、その為に消費する魔力が今は手元に残っていない。
本調子であれば魔王に匹敵すると言われた実力がこの様では、と内心で自嘲する。
「勝手に決めないで。誰がいつお前の物になった。」
怒りを覚えたのだろう、自らの体温が魔力によって低下する。
凍り付くような力はないが、肌に直に触れている手には確かに人の体温から冷え切った体温へと変化するのが伝わるだろう。
しかしそんな事をしても僅かな魔力が放出されるだけで、決して攻撃には成り得ない。
つまり、未だに引き離そうとしている手には少女の力以外何も加わってはいない。
「何、その侮辱的な呼び方…!いらない、名前なんて呼ばなくていい。――ああ、そうよ。……く、喋らせないでって言ってるでしょう…!」
しまった、そう思った頃には既に遅い。
元々抵抗する術のない暗示に掛かっている以上しようもないのだが、知られると確実に不利になる発言を自ら発する事になるとは。
アブソリュートからすれば、これ以上の屈辱はそうはない――そう思って顔を向けさせられれば尚も強く睨み付けるが、不意に発せられた奇声に目を見開いた。
そしてその視線の先が何なのか理解して、続く言葉にやはり抵抗の余地はなく。
「上から88、64、80のDカップ――……うるさい黙れッ!」
更なる屈辱である。
もうこれ以上恥を晒させられてたまるか、そう考えれば不意に男の手から、退けようと押し付けていた手を少し外側へ向けて振り翳すと、淡い青白い粒子が集まり始める。
それが放置しておけば剣のような形へと変化を始めて、魔力の収束が終われば氷の件が左腕に現れる事だろう。
――尤も、普段であれば即座に出現させられる氷剣だが、今の状態では魔力の集中に時間が掛かっているし、ちょっとした妨害でその集中は容易く崩壊、魔力は消え失せる事になるだろうが。
■ハスタ > 「切り落としても大丈夫だ。生えてくるから。ん、怖い要素ないっすか。じゃあずっと抵抗しててね。御願いよ。」
凄く力強く言ってのけた。事実、おっさんは不死身なので切っても切っても…という常人には理解しがたい絵図が出来上がる。
因みに普通の場合切られたら痛いし、血も出る。ダメージを受ける時は苦痛の感覚をオフにしとかないと痛いし苦しい。
滅びない肉体を持つと言うのも一苦労である。
「ほう、ほう。分かりました分かりました。じゃあおじさんのモノである事を示すために首輪でも付けてあげましょうかね。
これで、ソルトたんが今、おじさんのものになったって分かりやすくなると思いま……んん、何してんのよ。」
人間の人肌を触れる感覚ではなくなった。ひんやり、から冷え切ったなにか、大理石程度だろうか。それくらい。
しかして、おっさんは訝しがって一旦とまって彼女の様を見たものの、魔法であると知ったら何だそんな事かと、
知らん顔で彼女を両手で拘束を続けた。
「んー、分かりました。じゃあソルトたん改め奴隷ちゃんマイナス2号と呼ぼうかねぇ?どっすか?
おっとっと。喋りたくなければ黙って、どうぞ?成程成程、分かってきたぞー。つまり、お前さんはあれだな。
人間共に捕まって今の今まで慰み者にされてたと。はい分かりました、可哀想にー。」
此方を向けさせて、おっさんはニヤけた顔をずっと晒し続ける。顎元を持っていた手を離せば、晒された水色の髪を宥めるように撫でやろうとする。
おっさんは、意外と撫でるのも上手である。
「おっといけない。暴力はいけない。まぁまぁ落ち着きたまえよ。しかし88でDか…成程中々の胸をお持ちだ。」
魔力の収束を感じる。目に見える粒子、属性魔法、少女の身体の具合から考えると、氷だろうか。
その辺割とアバウトだが、取り敢えず逃げた手を撫でやっていた手で追い回し掴もうとするくらいで、掴めようが掴めまいが、
その後は放っておいただろう。…或いは抵抗させてボコボコにするのも好きである。
おっさんは不死身であるが故、脅威になり得ない。感覚をオフにしておけばゴーストか幻影状態みたいなものにもなれる。
「しかしー、男どもの慰み者になってたってことは、前も後ろも口も処女ないのねえ。ちょっとそこは残念。
んー、因みに、えっちな事は好き?好きな体位は?あとあと、最高何人に輪姦(まわ)されました?」
ニタニタと彼女にあれこれ質問をするわけだが、結構な具合に浸透してくれているらしく、どうよと聞くだけで答えてくれる。
次々と楽しそうにセクハラを超越した質問を続けて。
■アブソリュート > 「生え……なんですって?」
想定外の回答に動きが止まる。
生えてくる、とはどういう事なのだろうか、人間がトカゲの尻尾のように腕が生えてくるというのか。
理解出来なければ当然動きは止まる。何を言っているのか、と。
「そんなもの素直に受け入れるとおもうの?……離しなさいって言ってる、の。」
構う様子のない男の対応に、わかってはいたが内心落胆する。
普通の人間であったのなら、これで驚いて離れてくれたかもしれないが、脅しにもなっていないと見えた。
ともすれば魔力はやがて収束し、疲労で思わず大きな溜息を零す事となり、状況は何も変わらなかった。
「何よそれ、結局呼び名が長くなっているだけじゃない。……術を掛けておいて何を、私が気付かないわけないでしょう。――うるさい、まだ侮辱する気か。」
慰めるかのように顎から離れた手が頭を撫ではじめれば大人しく――なる筈も無く。
それを慰めなどと取らずただの侮辱としか認識しない。
頭を振り払うように首を竦め、頭を逸らそうとする。
「あ…っ、く、この……!煩い、喋るなっ。」
動きは鈍い、鈍すぎた。
離れて氷剣を引き出そうとした手首の動きはあまりに遅く、容易く男の大きな手で掴まれ、細い腕などそのままびくともしなくなる。
魔力は容易く霧散し、いかに戦える状態にないか、自ら思い知る事となった。
「だから、喋るなって――……!ッ、嫌いに決まっているでしょう。う、後ろから抱すくめられて……数なんて、おぼえて、な……あぁっ!」
一度に一気に問いを掛けられたからか、魔法を使おうとした影響か。
掛かっていた術式を一時的に歪ませたらしく、頭痛と共に顔をゆがめ、俯いた。
尤も、答えたくもない事を強引に発せさせられている状況故に耐え兼ねた、という事もあったのかもしれず。
■ハスタ > 「あー、ごめんごめん。言ってなかったっけ?おじさんアレだから。フェニックスの化身だから。」
ニヤけた真顔で大法螺吹くおっさん。…何やらこちらの事を知らないうえ、此方がどういう者か全く分かっていないのだと初めて理解した。
魔の眷属である者同士、御互い言わずとも分かっていたのだと思ったが。
信じるかどうかは置いておいて、事も無げにそんな事を言ってのけた。
「イヤでも受け入れさせることが出来ますよ。んふふ、分かってんでしょ?ちょちょいのちょいっと魔法をかけて、
今マイナス2号たんを無理矢理質問に答えさせられる呪いをかけてるのね。これを楽しく応用すると、
無理矢理首輪を付けさせたり、無理矢理まんぐり返しさせたりも出来ます。魔法の力ってすげー。
で、離せって?離すわけないでしょうが。あ、それとも離す代わりにキッツく縛っちゃう魔法かけましょうかね。」
次から次へと自身の魔法について語る。おっさんは、これでも魔法使いタイプである。
相手を意のままに操る魔法の系列も、ほぼ全て習得している。そして、彼女は魔族であるにもかかわらず、
アンチスペルだとかそういったものもなしに、直に術が通る状態。
こんな事が出来るぞー、と、手札を晒しながら楽しそうに脅す。反抗しようと、恐怖しようと、おっさんは笑うだろう。
基本的にかまってちゃんなので、無視される以外の反応は大体楽しむ。そういうヤツである。
何か疲れてるみたいなのでお疲れちゃん、と背中に回した手を、破けたところから衣服の中に入れて、背中を擽るように撫でよう。
「…ナイスツッコミ。んじゃあ、ほら、希望の仇名を言いなさい。アブソリュートなんて長いですからね。あーちゃんでいい?いや、りゅーたんも良いかも。
…アッハッハッハ、まだ?何言ってんだ、これからずーっと侮辱しますよそりゃもう。…おいおい、んな釣れない事しないでよぉ?」
おっさんは飴と鞭の使い方も割と上手い。撫でやった手を反抗し、頭が逃れていくならば、撫でていた手を反転、
手の甲でほっぺたを叩こうとする。傷付けない様に、それでいて的確に痛いと思わせる力、そして、ちょっとした痛覚系の魔術を手に込めて。
サディストが好んで使いそうななんとも厭らしい魔法拳…みたいなもの。
「あっれぇええ?!アッハッハッハ!なんだぁ、笑えないなあ。…正直、もうちょっと抵抗してくれるかと思ったんだけど。」
あっさりと彼女の手を取れたこと、それがさぞ意外だったらしい。適当におっかけまわすか、くらいで、彼女を辱める言葉を考える方に集中していたのに。
あろうことか収束させていた魔力まで散らす始末。
「魔法の勉強が、足りませんね。魔法を使う時は、もう少し落ち着いて。集中力がありませんと、ああなるんですって。」
掴んだ手を握り、掴んだまま離さず下ろしていく。
「…ほお、嫌いなのかあ。それは残念。はいはい、後ろからね、余裕があったら覚えておく。…覚えられないくらいヤったのねえ…
…おや、どうしたんだね。…ふぅむ。」
掛けた術式が、歪んだのは分かるが。大分弱っていることだけは分かった。
しかして俯いたままにしておく訳もなく。再び腕を掴んでいた方の手で、彼女の顎元を掬い、
顔を上げさせ、自身と目を合わせさせる。
「じゃあまあ。取り敢えず首輪から行きましょうか?手錠とかギロチンとかもあるけど。どういう風に縛ろうかね。」
さも最初からそこにあったかのように、黒い輪っかに鎖が付いた首輪が街路の上に現れる。
「ついでにー、…もうちょっと剥いてみましょうか。」
正三角形を2つ重ねた図形―――六芒星を円で囲う、独特の白く光る魔法陣が浮き出る。そのまま放っておいたら、
所謂「切り裂く風」の様なものを作りだし、彼女が身に纏っている魔力で構成された服だけを斬りつけて、全裸にはいかずとも更に破け方を過激にしようとする。
特に腹部と胸部。下半身はまあ…お楽しみにとっておこうか。もとからボロボロかもしれないが、それでも下着を剥く時の反応を見るのも一興だと、
相変わらず下衆さは変わらない。
■アブソリュート > 「不死の……魔族?いえ、不死に近い存在…あなた、魔族、だったの…?」
ここにきて漸く、自らの探知能力が著しく低下している事を自覚させられる。
大嘘には耳を傾けず、つまりそういった類の魔族なのだろうと認識した。
男からすれば随分と遅い認識には違いないのだろう。
「ぐっ……こんな魔法、本来だったら…。……んっ!」
全て無効化した上で反撃に出る事だって可能なのに。
一言一言が屈辱的なもので、力を失った事の大きさを身に染みて自覚して行く。
見せびらかすように自らの出来る行為を晒していく男に恐怖は感じないが、強い殺意と屈辱を浮かべさせるには充分過ぎる効果があった。
そんな中不意に、背に回された手が背中を擽り始めれば表情が歪み、僅かに背を仰け反らせる。
「リュートでいいでしょう…意味の分からない語尾をつけるのをやめて、非常に屈辱的だわ。……っ!?」
此方の抵抗を察知してか、男の手が頬を軽く叩いた。
――否、痛覚は確実にそのダメージを強く伝えている、魔力による強化にせよそれは頬に痛みを与えるには充分だった。
だが痛みには幸い慣れいるらしく、その表情はより強張り、威圧する視線を強めるだけに留まった。
「………くっそ…。」
もっと抵抗したいのは此方とて同じだ、と言いたい。
だが言ってどうなるものでもないのだから、悔しそうに歯を食い縛る事しかできない。
せめて相手がちょっとの魔法で驚いてくれたなら良かったものを、とも思いながら。
「そういう問題じゃない事くらいわかってるでしょう…。」
全部わかった上でそんな言動を発している。
男の考えは読めなかったが、そんな初歩的な部分であれば余程才能の無い魔族でさえ起こさないミスである。
「……う、ぐ。うるさい……全部、忘れろっ。」
頭痛で力の抜けた頭を項垂れていたが、再び顎元を掬われたなら抵抗の余地もなく上を向かせられることとなる。
視線が合う形になれば片方の瞼を閉じてもう片方の瞼は薄く閉じられ、歯を食い縛っている。
「っ、だから、つけないって言ってるでしょう……!」
首輪を今一度つけようと考えているらしい男の発言に反論を発する。
しかしながら、ふと視線を横へと逸らせばそこには鎖のついた黒い首輪があった。
――先程までなかったのだから、恐らく彼が魔法で生み出したのだろう。
「え……うぁ…ッ!?」
魔法陣。この距離で魔法を使う心算かと思えば――放たれるは切り裂く風。
防御魔法など貼る力はなく、襲い掛かる風に容易く巻き込まれ、崩れかけていた衣服の大半が引き裂かれて消え失せた。
消えた衣服は魔力の破片となり消失し、薄い布が辛うじて紐のように背後で繋がって胸の一部を隠しているだけとなり、無様な姿をさらす。
下半身には風が及ばなかったらしいが、此方も元々ボロボロのショートパンツを履いていて下着も何とか形状を留めているに過ぎず、同様の手口で容易く削り取れる事だろう。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区-裏路地-」からアブソリュートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区-裏路地-」からハスタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区-裏路地-」にアブソリュートさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区-裏路地-」にハスタさんが現れました。
■ハスタ > 「…うん、まあ…そうなる、かな。」
なんだろう。ノリノリで大法螺吹いて滑った時の物悲しさ。
割合悲哀に満ちた顔で、彼女がやっとたどり着いた自身の正体に首を縦に振った。
それはまあ、不死に近い存在なんだが。魔王は少し、特殊な事情を持っている。
取り敢えず魔王とか名乗って大事になるのもあれだし、濁す程度に返事。
「…アッハッハッハ、なあんだ。やっぱり弱っちゃってるんだねえ。本来なら?
じゃあそうねえ、もうちょっと過激なやつやってみますか。おじさんの素晴らしい魔法スキルを使えば、こんな事だってできるんです、はい!」
おっさんは魔法使いタイプである。全身の力を虚脱させる非常にイヤらしい複合魔法を、しれっと詠唱も陣もなしに、
背中を擽りながらじわりじわりと吹っかけ始めた。
眠りに落ちたり、気絶しない程度の絶妙な力加減にて。
ディスペルやアンチマジックの効果も十二分に。もとより魔力が衰弱している状態の彼女には、恐らく嫌がらせでしかないような魔法。
それも、直接肌に触れている様なものなのだから、おっさんの気分一つで効力の匙加減も好きな様に出来る。
本来でも逆らえんよと言外に示したいらしい。
「んー、リュートね。おじさんはねえ、たんとかちゃんとか付けないとやってらんないのよ。
じゃあ折衷案でりゅーたんと呼ばせてもらおうかね。…おー、怖い怖い。んな目で睨んだって、おじさん興奮しかしないよお?
ああ、そうそう。おじさんの事は…そうねえ。御主人さまと呼んでもらおうかね?」
彼女のほっぺたを引っ叩いた手。その手でほっぺたを抓りながら、また術式を書き込み、流し込む。
「おっさんを嫌でも御主人様と呼ばせさせる」という実に無駄な魔法だ。
こうした相手を支配する系統の魔法は、根幹が同じなので幾等でも応用が効く。
「おーおー。どうした?悔しくて物も言えませんか。アッハッハッハ…何しようとしてたんかは知らないけど、
何ならおじさんと一勝負、やってみるかい?ま、勝率なんて京に一つもないだろうけどねー!!」
おっさんは不死身である。が、故にそれは何があっても負けない事に直結する。
物凄く慢心的で、煽る様な口調は、彼女の悔しさや反抗の念を焚き付けようとしている。
「……んー、そうねえ。どうにも、りゅーたん相当衰弱しているみたいだねえ。
人間共に貪られて、何か酷い目に遭ったんだろうね。かわいそ。」
要は、偉そうに高説垂れて彼女を煽りたい。それだけである。
そして、如何に殺気や怒気を持っていたとして、それは所詮「気」でしかなく。
そういったものを足のつま先で事も無げに折り伏せるのが、サディストなおっさんの喜びの一つでもある。
「おやおや、まあだ立場が分かってないのか。忘れろ、だなんて命令できる立場じゃないんだよお、りゅーたんっ。」
言葉に合わせてデコピン。綺麗な髪の毛掻き分けて、おでこをパンと良い音なるくらいに叩き据えようか。
苦しみ堪えている様な、そんな顔が見える。それでもなお、良い顔をしていると思うわけでもあるが。
つくづく僥倖で上玉を手に入れることが出来たと思いニヤける。
「…ううん。りゅーたんの意思は関係ないのよね。残念ながら。おじさんが付けろと言ったら付けるんだよ。
じゃあ、そろそろ本番いっときますか?ヒャッハァ!圧倒的支配ー!」
あの首輪は、彼女の想像通り、おっさんが魔法で生み出したものだ。マジックアイテムの類である。
おっさんは咒術により、彼女にまた呪縛をかけようとする。ダサいネーミングセンスはさておく。
して、彼女なら見えるやもしれないが、やたらと手が込んだ高い効力を持つ大きな呪縛が一瞬で作られて、
彼女の身体にと作用しようとしている。そも、先立っての軽い呪縛でさえ効いた彼女である、
より高位の呪術が効かない道理はない筈ではあるが。
その効果は、「おっさんの命令に体が従ってしまう」というもの。体だけ、命令された時だけ。
しかして、限定的ながら厄介なもの。おっさんは軈て弱った彼女から手を引く。
そうすると、彼女はそのまま崩れるだろうか、或いはそこで踏ん張るだろうか。
「おじさんの視界から出ていこうとするな。」
との命令を試しに言った。もっとも、今の彼女に逃げられるだけの余力があるかも疑わしいが。
これで、完全に呪縛によって進路も退路も完全に断ったことになるだろうか。
「さて、と。あんまり良い女見つけて興奮してたんで忘れちゃってたけど。
ちゃんと記録しとかないといけませんね。ほれー。
コレね、凄いの。好きなアングルから好きなタイミングをズームも画質も自由自在!最高の魔導機械だとおもわない?」
手から真っ黒な水晶玉を出現させて、地面に転がす。記録用の魔導機械である。
…であるが、別に使わなくてもおっさん本人の魔法で記録できる。要はただのフェイクである。
保存用と観賞用、みたいな。なので壊されても問題ないし、彼女くらい反抗的な女なら壊してくる事も想像できる。
兎も角、今彼女を魔導機械で撮影していることは、きっと伝わる事だろうか。おっさん本人もたった今魔法による撮影を始めた。
「さてえ、大分剥いちゃいましたし、後は楽しむとしますかねえ。じゃあ、まずは…ああ、そうだ。首輪を付けて?」
黒い輪っかとそれにつながる鎖。これにもちょっとした呪縛がかかっていて、つけてしまえば物理的に外せない様になっている。
また、重さもさることながら、付けたら彼女の首のサイズに合わせて、非常に良い感じでフィットして、
あらゆる方向から首を軽く締められる程度の感覚を味合わせる様なオプション付き。
今自分が首輪を付けているのだと自覚させるための効能があるんだとか。
最後に鎖のリード。伸縮自在である。
■アブソリュート > (……意外と自分の言った事が滑ると精神的にダメージを受けるのかしら。)
先程まで散々自信満々な表情をしていた男の表情が悲哀染みた表情を浮かべたため、推測した。
あまりにギャップがあったので状況が状況であってもそんな思考に至る事になったらしい。
――尤も、真なる存在の解には未だ至れそうにはないのではあるが。
「……こんなところでなければ…。――!?やめ、これ以上妙な魔法を………っっ!!?」
じわり、と体から力が抜け落ちるのを感じた。
すぐに虚脱の魔法だと分かったがやはり解除も反射も見込めない。
元々抵抗する力も殆ど無いにしろ、これでは完全に無防備を晒す事に他ならない。
耐えるように瞼を細め、口許を引き攣らせて俯きながら背を這う手に逃れる事も出来ず。
直な接触で流し込まれる魔法である以上、耐性があったとしても遮断しきれるものではない――そもそも己の戦法として、接近された時点で敗北は必須なのだから。
「やってられないって、どういう事よ。そんな噛みそうな呼び方の方が面倒な事この上ないでしょう……は?なんで私がそんなこ……痛っ!?」
頬を抓られると、ほぼ同時に流し込まれたのはさらなる術式。
次から次へと己の内部の魔術回路にろくでもない魔術式を上書きしていくものだから、恨めしいような視線を送り付け。
しかしながらやはり遮断は出来ない、彼の名前が勝手に『御主人様』へと書き換わった。
「ぐ……。煩いっ、負け惜しみにしかなってないって言いたいんでしょう……!」
自覚はしている。言うだけ無駄だし、戦おうとするだけ無駄だ。
魔力のない魔術師などただの雑魚でしかない、それが魔族ともあろう者なら、身体的な状態維持を行うだけでも魔力を消費するというのに、戦闘に回せる余裕もないというならどうあがいても万全な魔族相手に勝てるわけもない。
一撃を入れる事くらいは可能かもしれないが、不死という事は精々痛みを与える事で精一杯だろう――このまま黙って好き放題されるよりはずっとマシかもしれないが。
「何度も言わなくていい……!」
煽る事が目的なのは、さすがに何度も言われれば自覚する。
それに乗せられたところで反撃する術がないのだから、悔しそうに身を震わせる事しか出来ない。
実際に事実であり、それも結局、自分の招いた敗北の結果なのだから尚の事恥辱は精神に突き刺さる。
「がっ……!?ッ……忘れろって言ってるの、立場なんて知ったことじゃないわ。」
額に走る激痛に片手で顔を抑えるが、片目だけ覗かせれば尚も強い威圧的な視線を向け始めた。
痛みに怯むのなら魔族としてどころか兵士として成り損ないである。その意志だけは歪む様子は一向に見せず。
ニヤけた表情に戻り始めた男をさらに殺気立った様子で見据えるが、それもいつまで続くかはわからない、虚脱の効果は確実に浸食を続けている。
「――高位術式…!?あなた、ただの魔族じゃ………?!」
ふざけた言動を繰り返す男に油断が続いていた事を思い知らされる。
ただの魔族程度が使える代物ではない、魔力も位も先程までの低級魔法とは段違いのもの。
上位魔族かそれ以上か――そう思いながらも目の前で形成された呪縛は一瞬にして体中に巻き付き、鎖を成した。
すぐに目の前から消失したがそれの効果は肉体を伝って脳に伝達する。
男が肉体を離せば脱力した体は崩れ落ちる事を避ける事は出来なかった、地面に無様に座り込み、初めて圧倒的な差を理解する事となった、驚愕染みた表情を浮かべていた。
「う………!」
続いて呪縛が働く。
男が視界を逸らそうとすれば、彼の視界へと、力の入らない筈の体が強引に立ち上がらせられ、動く。
これでは完全に操り人形ではないか――そう悔しそうに思考した。
「記録……?なにそれ、そんな物使ってどうするっていうのよ。」
散々人間に恥辱を受けた後では、無様な姿を映されるという事に対して何かを感じる事はない。
記録に残して愉悦に浸ろうと言うなら、そんな事為に使っているのかと、呆れた表情をしようとするが力が入らない。
彼自身が記録している事になど考えも至らないまま、内部の記録機能だけ破壊できないか、などと別途思考しながら、続いた言葉を聞くと目を見開いた。
「な、誰が――……あ、く、……くそ…っ…!」
当然、操り人形となっている己の体がそれに逆らう方法などない。
弱った体を引き摺る様にしながら地に落ちた首輪を勝手に腕が動き、拾い上げ、自らの首へと巻いた。
――肌を大きく晒しながら、鎖付きの首輪を着けられている。これでは人間に囚われていた状況に逆戻りだ。
首を僅かに締め付ける感覚があった、確実に首輪をつけているという自覚を持たせるための効力なのだろうとは、すぐに理解できた。
これでは奴隷と大差ない――俯き、自らへの落胆に溜息を零した。