2015/12/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区-裏路地-」にアブソリュートさんが現れました。
アブソリュート > 夜の富裕地区、その表通りから離れて死角になっている路地を歩く茶色い布を頭から羽織った女性らしい細さの人影が走っている。
息を切らせながら走っているその影は布で体を隠しているので顔も口元までしか正面からでもはっきりと見る事は出来ない。
――魔族の少女は、一度戦いに敗れ、捕えられ、凌辱を受けていた。
だが隠し、溜め込んでいた魔力を用いて牢屋から脱出に成功、しかしその魔力を使用したために疲労感が降り掛かり、魔力の回復を遅延させていた。
魔力の失われた魔族の少女は魔力で形成されていた衣服を回復させる事が出来ず、今出せる全力と言えば。

(氷剣一本のみ。……無理ね、戦えるわけがない。)

既に日は落ち、表通りに比べれば暗い路地裏。
富裕層という事自体アブソリュートは知らないが、人通りの少なくあまり利用されていないように見える路地にしては手入れがされていると思った。
衛兵に見つかる前にこの街から脱出しなければ――魔力が無く、息を切らしながら走る速度は徐々に遅くなり、建物の壁に手を付いて歩みを進めて行く。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区-裏路地-」にハスタさんが現れました。
ハスタ > 富裕地区、割と結構王都でも上品なところではあるのだが、
しかして表通りを跨いで裏に出てしまえば、残念ながらあんまり上品と言える場所ではなかろう。
人通りも少なく、狭い。
…否、この一角だけみたのであれば、人通りはほぼゼロなのかもしれない。
金持ちに見せるためにと表だけ取り繕っているのかもしれぬ。
して、息絶え絶えに身を隠して走る少女を見つけたのは、衛兵でも、貴族でもなく、おっさんであった。
おっさんはいつも通り頭の中で貴族娘を凌辱とか調教とかロクでもない事を考えながらニヤけて、
注意力散漫な状態で小走り気味で挙動不審に彷徨していた。
崇高な魔王の智慧を悉く無駄遣いしているのだが、それはさておく。
別段おっさんが無駄遣いしているものはこればかりではない。上げ出せば枚挙にいとまがない。

一つ訂正、見つけた、と言うよりは―――。

「…おお、っと。」

―――ぶつかった、若しくは、ぶつかりかけた。そんな所が正しいかもしれない。
狭い街路だった。それが最も大きな理由だろうか。それとも、単におっさんの注意力がなかっただけか。
片や疲労感の伴った少女と、筋骨隆々でいっつもアホみたいに元気な大男。もしもこの二人がまともにぶつかったとしたらば、
おっさんの方は平然として居よう。しかして、少女の方は、或いは軽く後方に吹っ飛んでしまうかもしれない。

アブソリュート > 「――うぁっ……!」

ぶつかった。
鎧のような硬さではなかったが、疲弊した少女は魔族とはいえ力が殆ど残っていない。
故に容易く、後方へと尻餅を着く形で転ぶ事になる。
――筋肉質な男に対して、それはぶつかったというよりは何かが当たったという程度の衝撃しかなかっただろう。
勢いよく後方へと崩れれば被っていた茶色い布など容易く乱れてしまい、透き通るような水色の頭髪が晒された。
羽織っただけの布であったがために、元々はちゃんとした衣服だったもののあちこちが裂け、魔力のような粒子が散りながら肌の露出が高い状態である事が見えるだろうか。

(しまった……注意力まで落ちていたの、私は。)

く、と歯を食い縛っては視線を上げた。
薄暗い路地の中で碧き瞳が目の前の筋肉質の男を捉える。衛兵、のようには見えないが一般人というには戦闘向きな体付きにように見える。
慌てて立ち上がろうとするがその動きは鈍く、完全に立ち上がるまで時間が掛かる様子だ。

「す、すまない、急いで、いて。」

人間に頭を下げるなど屈辱――そんな風に思考しながらも、下手に揉め事になるのは避けなければならないアブソリュートは、他に選択肢がなかった。