2021/05/24 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にリーアンさんが現れました。
リーアン > 受付カウンタの係員が、何か喚いているのを無視して飛び込んだ。
後ろ姿を見かけた、あれは確かに、己の知る顔であったと思う。
以前にも何度か、其の人物の消息を辿ろうと訪れたことがあるけれど、
此処に居る、という確証は無く、門前払いになっていたのだ。

けれど今日は、確かに顔を見たと思う。
奥に向かって歩いて行く、別人のように虚ろな表情も気になったが、
其れは追いついて、捕まえて、話を聞けば良いことだろう。

「待って、……お願い、待って!」

異国風だという建物の構造は、己にはまるで迷路のよう。
とある角を曲がってみたところで、完全に、後ろ姿を見失った。
ひとまずは歩調を緩め、慎重に、肩で息をしながら廊下を進む。

板張りの廊下を挟んで、左右に木製の、引き戸、と呼ばれる扉が並ぶ。
どうやら客室なのだろうとは思うが――――何故か不自然な程、静まり返っていた。
まるで誰かが、何かが、息をひそめて此方を窺っているような。
あるいは何者かが狙い澄まして、奇襲を仕掛けようとしているのでは。
―――――そんな馬鹿げた想像すら浮かんで、溜め息交じりに首を振り。

「駄目ね、……どんどん、疑心暗鬼になってる」

自嘲気味に呟きながらも、取り敢えずは此のフロア位、奥まで検分しようと。
今のところ、旅籠のスタッフが追ってくる気配も感じられない。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」にファロウズさんが現れました。
ファロウズ > 何か騒ぎがあった様だ。外で聞こえたのは乱れた足音と何か息を弾ませながら叫ぶような声。
個室でゆっくりくつろいでいたが、その声が女性の物であったこと。どこか聞き覚えがあったような気がしたのでつい――引き戸を引いて廊下を見遣る。
すると、そこにいたのは。

「ん?ありゃ――」

見覚えはある。気がする。ただ、遠目だから判らない。
確認する意味で背後から近づく。足音も、気配も隠そうとしていない。目の前にいるのは脅威ではなく、獲物なのだという甘く歪んだ認識を隠そうともせずに、だ。

「どうしました?誰かを探してるので?」

その声。彼女が振り向くか。反応をどう返すかにもよるが。
もし、逃げる事や反撃する事が無ければ。個室に連れ込まれてしまうのだろう。逃げるだけの距離はある。反撃するなら、彼女の身体能力を考えれば――自分の魔法の影響下でなければ十分余裕はある筈だ。

リーアン > 引き戸が開かれる音は聞いていた、戸口に現れた人影も一瞥した。
然し、今、己が探しているのは、飽くまでも同郷の女である。
明らかに上背の高い、男と思しき人影からは、直ぐに視線を転じていた。

追われるとも、狩られるとも思っていない、迂闊な背中。
其処へ迫る足音、背後から掛けられる男の声に、煩わしげに振り返って、

「お寛ぎのところ、邪魔したのは済まないが、―――――――」

関係の無い方は、引っ込んでいて貰えないだろうか。

恐らく、そう続けるつもりだった。
けれど現実には、振り返った眼差しが其の男を、真っ直ぐ映した瞬間。
酷い眩暈のような感覚が襲って、がくりと膝から力が抜ける。

己自身の反応に戸惑いながら、ぐちゃぐちゃに搔き乱された記憶を、必死に手繰ろうとしながら。
けれども結論に辿り着くより早く、黒衣の女は男の手で、部屋へ引き摺り込まれてしまうだろう。
引き戸が再び閉じてしまえば、其の先はもう――――――。

ファロウズ > 「邪魔な訳がないだろ?へへ、奇遇だよなぁ。」

欲望は隠し様がない。手を取り、決して強くない腕力で個室の奥へと招いていく。
引き戸は音もなく閉じられてしまう。その中で何が行われるのかは内密の話であり――。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」からファロウズさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からリーアンさんが去りました。