2018/10/19 のログ
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にエウレリアさんが現れました。
エウレリア > 湯水に波紋を広げる静かな水音だけが響く穏やかな静寂。
それを切り裂いたのは、裸足の足音。
素足であることを鑑みれば、耳障りな所のない柔らかな足音であるのも当然の事。
にもかかわらず、切り裂いたという表現がしっくりくるのは、乱れる事のない歩調のリズムから滲む唯我独尊の気配故か。

薄暗がりの中、湯けむりを割って表れたのは白皙の長躯。
括りもしていない金の長髪が歩みと共に雅に翻る。
ゆるりと周囲を睥睨するのは、長い睫毛に縁取られた切れ長の双眸。
揺らめく焔を思わせるルビーの双眸が湯水に浸かる先客の姿を捉え

「――――まぁ。」

すっと上機嫌に眇められた。
紅色の唇が浮かべるのは薄っすらとした笑み。
なれど、その美しい微笑みは、見る者の背筋をゾクリと震わせる類の物。

ユール > (からり。湯気の向こうで、扉の開く音がする。
脱衣所から、此方の方に、誰かが出て来たらしい。)

「 ……? 別の おきゃく さま …? 」

(だとしたら。此処に居っぱなしだと、邪魔になるだろうか。
後から来る、その誰かに場を譲って、交代するべきなのかもしれない。
そう考えている内に。石の上を歩いて来る、裸足の足音はどんどん、湯船に近付いて来る。
結論を出すまでには、あまりに足りない、急速な制限時間に動転してしまい、結局、どちらとも考えを決め倦ねて。
中途半端に腰を浮かせた辺りの所で。湯気の向こうに浮かび上がる、人の影。
目を向ければ、女性の姿。…それも。思わず、息を飲まされるような。同性ながら…というより、同性だからこそ、羨望を抱かされるような。
一つ、二つ、思わず瞬いてしまってから。)

「 こん ばんは…? ぁの。お入りに なりま  っ 」

(小さな目礼と共に、遠慮がちに向けようとした声が。途中で、途切れてしまった。
距離が近付けば、更に細かく、相手の姿を目に出来て。身一つにも関わらずというより、だからこそ際立つ、際立つ肌身や仕草へと。
ますます視線を吸い寄せられてしまっていたのだが。…見えた。見えて、しまった。
同じ女性であるならば、在り得ない、元来なら異性を象徴する筈の存在が。)

エウレリア > こちらが近づく前に立ち上がる様は、上位者への礼を刷り込まれた者の所作。
跪きこそせぬものの、即座に目礼を向ける様子にも小さな満足感を覚える。
少なくとも、礼儀を知らぬ野ネズミの類では無さそうだ。
そんな、相手の価値を見定めるかの怜悧な視線を向けたまま

「―――てっきり貸切かと思ったのだけれど……。」

上品に傾げた小首が淡く波打つ金糸で華奢な鎖骨を撫でながら、ゆるく握った白手を口元に添える。
手拭いや湯衣で隠されてもいない真白な長身は、括れた腰や細身の脚線のスレンダーなシルエット。
にもかかわらず、ピンクの先端を淡く尖らせる双乳は胸郭の上で重たげに拉げるたわわな肉果実。
シミひとつ無い白肌は、新雪の如く穢れなく、木目細か。

そんな女らしい体躯にあって唯一異様なまでの違和感を醸し出すのは、縦に切れ込むヘソ上にまで反り返る、硬質なまでの逞しさを見せる白皙の肉塔。
浮き上がる血管も生々しい両性具有の男性器。
生まれてこの方一度たりとも萎えた事など無さそうなそれを隠すでもなく、むしろ誇らしげに見せつけるかの堂々たる立ち姿は、初対面の令嬢に対しても、なんら遠慮するところのない不躾な視線で純白の裸身を視姦する。

「――――ふふ、構わなくてよ。貴女でしたら、わたくしの戯れの相手としても問題ありませんわ。」

もしもその外見に気に入らぬ所でもあれば、先客だろうと関係なく追い出していた。
そんな傲慢な思考が、涼やかな声音の奏でる台詞の中に滲んでいる。

ユール > 「 お邪魔 でしたら。 わたし 上がらせて いただき  ます…ので … 」

(ただ。呆気に取られた、驚かされた、といっても。怯えた、という事はなかった。
異性のそれに関しては、どうしても、見慣れてしまっている、という事も有る。が、それだけでなく。
彼女?彼?そんな人物の、強烈極まる一点の異物ですら。それを違和感だと思わせない程、造形に溶け込んでいる。
…より正確に言えば。女としての肉体の艶美さと。男としての象徴の苛烈さと。
双方共に、際立っている為に。どちらかが劣る、という事がない為に。その両極が、並立して見えてしまう…とでも言うべきだった。
何度も瞬いて。思考の中に生まれてしまった間隙は、だから違和感故というよりは。…気圧されたという一言が最適解。
それでもどうにか。考える力を取り戻して、真っ先に。二人だと少しばかり、手狭かもしれない、湯船の中を。
既に満喫していた、先客の側が譲るべきかと。湯の中から、すっかり立ちきろうとするものの。)

「 …ぁ。 …勿体 ない、お言葉 です。 ぇぇと。あなた さまは … 」

(留まる事を許されたと。そういう風に感じてしまう。…彼女が、許す側。此方が許される側。そう理解するのは、本能と言って良いレベル。
おずおず。改めて湯船の中に、腰を沈めて。…最初よりも深く。すっかり肩の上まで。湯の中に浸かってしまう。
正直、見られるのも、評されるのも、憚られる程。体付きという代物だけですら、差が有りすぎると思うから。)

「 あなた さまは。 その、確か… 」

エウレリア > 「ふふっ、貴女、ずいぶん真っ直ぐ見つめてくるのね。そんなに熱心に見つめられると、わたくし、何やら妙な気分になってしまいそうなのだけれど?」

感情の色に乏しい鈍らな刀身を思わせる瞳が己の下肢を見つめる様子に、エウレリアはさも愉しげに忍び笑いを漏らして諧謔を弄する。
こちらの一方的な物言いをも、憤慨の欠片すら滲ませる事なく受け入れるその態度にさらなる満足を覚える。
市井の湯屋にて出会った相手にしては、随分と礼儀をわきまえている。

そんな少女がためらいがちに漏らす、名乗りを請う様な声音。
傲慢な女貴族はそれをさらりと聞き流し、しなやかな脚線で歩を進めた。
たわわな双乳といきり立った肉槍が、挙動に合わせて緩く揺れる。

掛け湯など行わず、白脚をそのまま湯船に滑らせた女貴族は、さも当然といった風情で少女の傍らに身を沈めた。
気を抜けば、互いの肩が触れ合いそうな至近距離。

その距離から確認すれば、華奢に見えた肩が以外に鍛え上げられた物であると知れるだろう。
少女の、どこまでも柔和そうな雌肌とは異なる、余計な肉を削ぎ落とした剣士の裸身。

「――――ふぅ……。」

長い睫毛をそっと閉ざし、血色の良い唇で淡く吐息を零す。
再び持ち上げられた目蓋が魔物めいた鮮紅の瞳を少女に向けつつ、浴槽の縁岩に頬杖を付く。
細めた瞳、緩めた口元。

「―――エウレリア。わたくしの名でその耳朶を撫でられる栄誉、ありがたく受け取りなさい。」

あまりに長い間を開けた後の、不意打ちめいた名乗りが、今度は貴女の番でしてよ? といった視線を向ける。

ユール > 「 ぁ。 その つい …申し訳 ございません … 」

(気に触ってしまっただろうかと。少し慌てて、目線を逸らすものの。
直ぐに、実際の所そうではないのだろうと、気が付かされる。
何せ彼女の声は。見られる事どころか、それに対して、如何なる思いを抱かれるかをすら。きっと、意に介していないもの。
言い方を変えるなら、自分は自分だと、芯を定めきっていて。それが、決してぶれる事の無いような。
これでは寧ろ。まじまじと見つめてしまった、此方の方が。悪びれてしまうという物で。
更に更に、湯船に沈む。顎の下まで湯の中に。男根の存在や、壮麗な女体に、ではなく。あくまでも自らへの羞恥に、頬を染めて。

その侭、ちらり。水音に少しだけ、再度視線を向けてみたのなら。相手はもう、湯船に身を沈める所だった。
俯いて、湯に沈んでしまう此方とは。態度も、仕草も、そもそもの体付きも。あまりにも違い過ぎる。
小作りとはいえ、決して、幼すぎるという訳ではない、そう主張したい少女自身の肢体とは、まるで規格の違う女体は。
女としての柔さと豊かさだけでなく。肉の重みとしなやかさの存在を、白い肌の奥に兼ね備えていると。
それを理解出来るのは、他人の裸身を見慣れている為か。
取り分け男性のそれを、見覚えているからこそ。例えば、騎士や軍人のような。質と実とを併せ持つ肉付きであるという事も、
湯の向こうに見出す事が出来て。
…これでは。男根の存在に目を瞑ってしまっても。異性に抱くような感情を、完全に払拭するのは、無理という物。
湯の下で。とくとく。と早まる胸に、そっと掌を宛がって。)

「 …? ぇ、 ぁ はい。 エウレリア さま … 」

(おかげで。タイミングのズレ以上に、応えるのが遅れてしまった。
湯の熱さと、其処に長時間浸かっている事と。…決して、それ等のせいだけではないのだろう、熱っぽさでぼんやりとした頭を振って。
教わった名前を反芻し…ぁ、と。納得めいた声。直接会った事は無くとも、その名だけは…勇名だけは、きっと知っていた。
噂に聞き及んだ、様々な活躍を思い出してみれば。なるほど、と納得いく部分も有る訳で。
…それから。改めて両手を、胸の前で重ね合わせて、幾度かの深呼吸。
どうにかこうにか、自分自身を落ち着かせる事が出来た所で、姿勢を正し、真っ直ぐに向き直り。)

「 ユーレイア。 …ユーレイア マリアス と。 申します。 エウレリア さま。 」

エウレリア > 小さな粗相をからかわれ、頬を染めつつ湯船に沈むその姿。
あまりに可愛らしい挙措に、じくりと嗜虐を刺激される。

名乗り請いを一度はあからさまに無視したのも、そうした嗜虐が悪戯心に表れた結果と言えるだろう。
たっぷりと時間をおいた後の唐突な名乗りに、一瞬きょとんとした表情を見せる彼女にククッと漏れる忍び笑い。

じっと見つめる少女の赤面に、じわりと広がる理解の色。
貴族であれば、剣士であれば、耳にした事もあるだろう。
勇名というよりも凶名とでも言うべき己の所業。
無論、周囲が何を囀ろうとも、エウレリアにとってはどうでも良いことなのだけれど。

「ユーレイア……ふふ、わたくし達の名、響きが似ているわ。そうは思わない、ユール?」

ふわりと浮かんだ微笑みは、春の訪れと共に残雪から顔を覗かせる花の様に綻んだ。
一体何が気に入ったのか、先程までの心の芯に怜悧を沈めた表面上の薄笑みとは異なる、確かな親愛を感じさせる柔らかな表情。

そんな気まぐれに誘われるまま、縁岩に付いていた頬杖を解いて少女の裸身に身を寄せる。
湯船に浮かぶ純白の豊乳が、少女の控えめな乳房に触れても止まらぬ急接近。
ついには少女の下肢を跨ぐ形で細腕を付き、口付けすら交わせる至近距離に白皙の美貌を寄せた。
熾火の如き紅が、じぃっと少女の蒼瞳を覗き込む。

ユール > (勿論、聞いた事がある、という程度でしかない。
所詮少女は少女でしかなくて。争い事に加わるような機会など、全く以て皆無だから。
とはいえ。寧ろそのせいで。噂は噂、逸話は逸話。現実の血腥さにまでは、理解が及びきっていないのかもしれず。
…特に、戦場等ではなく、貴族達の間で。決闘という行為に関し、彼女の助力によって、勝ち得た者達の言葉を多く聞いていれば。
無論、勝者と同じ数だけ、敗者もまた存在している筈、だが。其方の意見を聞いた事が無いのは仕方ない。…死人に口なし、なのだから。

故に。ようやく教わった名前に対し、驚きの次に来るのは、納得であって。怯えではなかった。
良くも悪くも。同じ社会に生まれつつも、同じ世界には生きていると言い難い…例えるなら、遠く高く、手の届かない存在だったから。
寧ろそんな相手に対して、逐一無礼な態度を、取ってしまっているのではないかと。
ますます頬を染めてしまいつつ。)

「 それは 勿体ない お話なので  …はい。 ユールと そぅ お呼び下さる 方が わたしも…
ぇ っぁの。 エウレリア さま ………? 」

(きっと。苛烈な人物であり、鮮烈な生き様を背負っている筈だ。
だのに、向けられる笑みは時に柔らかく、温かくて。これが、彼女に思う所の有る人物なら、二面性だのと称するのかもしれないが。
雲上人に萎縮する少女からしてみれば、そんな雲間の切れ目から、光を差し向けられたような物。
ますます動転させられ、いっそう近付く距離に対し、堪らず身を退こうとして…当然。湯船の縁が、背中を押し留めてしまう。
硬い縁と相反した、柔い柔い乳房の感触に挟まれて。びくん。肩口が竦み上がり、湯を乱す。
色の乗らない瞳を、それでも、水鏡の裏で躍らされる感情を示唆するように、右に左に彷徨わせては。
そんな、常なら表に出ない所まで、切り込まれてしまいそうだと。重なる瞳に、突き刺さる視線に、直感してしまっているのだろう。
重なり合った胸と胸越し。更に跳ね、乱れ、ちぐはぐな胸の高鳴りを伝えて。)

「 エウレリア さま、 私 … 私 、 どうしたら …… 」

エウレリア > ユーレイアという名の響きは、眼前の少女によく似合っていた。
どこか神秘的で儚げで、ガラス細工の様に簡単に壊れてしまいそうなその名前。
それを略して呼んだのは、単に呼びやすかったという理由だけでなく、少女に感じた可愛らしさが愛称呼びを誘った結果。
故に、浮かぶ笑みも含む所のない自然な物となり、普段の女貴族とはまるで異なる優しげな物となったのだけれど――――それも所詮は単なる気まぐれ。

「――――可愛い顔。……わたくし、貴女の顔、嫌いではなくてよ。」

囁きの如く甘いウィスパーボイスが、至近の白頬を撫で擽る。
持ち上げた繊手が少女の頬を撫で、瑞々しく柔らかなその肌質を楽しむような指の動きは、緩やかに手首を返しながらついには可愛らしい唇へと至る。
ぷにぷにとしたその感触を堪能しながら、上唇を持ち上げ、下唇を下降させ、純白の歯列をそっと撫でる。
そのまま口腔を弄ぶかに思えた細指は薄く少女の唾液を纏って北上し、真珠色の爪先に彩られる指先は彼女の瞳の端にピタリと添えられた。

こちらを見上げる鈍色に向けられるのは、先程の親愛の消えた冷酷無情の魔物の紅。
ゆるりと傾げた小首が、流れる金糸で少女の頬を撫でる。
じぃ…と、ただじぃ…と少女の蒼瞳を覗き込む赤眼は、支配者層が時折見せる退廃の気配を滲ませる。
そして、人形の眼窩を埋めるガラス玉を思わせた蒼瞳が、高鳴る鼓動と怯えた様な声音を漏らして、人間らしい困惑に揺れるのを見た途端――――再びふわりと表情が緩んだ。

「――――まぁ、そんな色も灯せるのね。よかった。もう少しで抉ってしまう所でしたわ。」

先日食べたお菓子が美味しかった。
そんな、なんてことない話題の一つの様に、あっさりと零す狂気の一端。
じりじりと眼球に近づいていた細指が、再び彼女の頬を撫で、すっと寄せた唇が愛おしげに少女の目蓋にキスを落とした。
そうして再び離した唇が奏でるのは

「せっかく綺麗な瞳色をしているのに、汚らわしく濁ってしまっているんですもの。 そんなガラス玉を入れておくよりは、綺麗な宝石でも嵌めた方が余程にいいでしょう?」

などという危険な言葉。

ユール > 「 …エウレリア さまに …褒めて いただける のは。 勿体なくて けれど …嬉しく。思い ます、私… 」

(差程取り柄もない少女だ。見た目云々なら、より見目麗しく、人目を惹く令嬢など、王城社会にはごまんといる。
それこそ、目の前の彼女と比較されてしまったら、いっそ貧相だとすら言われてしまいそうな程。
なのに、可愛いと言って貰える。並び立てられた美辞麗句ではない、シンプルな一言だが。
寧ろそれだからこそ、余計に勘繰ってしまう事も無く、素直に喜ばしい物だった。

色付いた頬から、そっと息を零す唇に、指先が向けられて。その内側にまで、浅く入り込んでくる。
時ならぬ、場所ならぬ…そして、半分は女同士をすら思わせる侵略なのに。
これもまた当然の権利なのだと。言い切られている、そう感じてしまいそうな程。彼女の仕草は自然な物だった。
開ききらない歯列を擽った指先が、あっさりと退いてしまえば。主人を見失った従者の如く、零す吐息は心細げにもなって。
睫を震わす瞼の脇で、その指先が一旦動きを止めたなら。彼方此方と揺れる眼差しが、吸い寄せられるかのように。
指先を、手首を、腕を、肘を…順繰りに這い上がり、彼女の肌に視線が縋って。
そして、再び瞳と瞳とを重ねる所まで。時間を掛けて辿り着いた、時。)

「 っ ぅ …ふ … っ、 ……? 」

(ぎくり。背筋が強張ってしまう。
近い、近い…それこそ、触れる程に近い所で、向き合わされた眼差しは。
少女のそれとは、違う意味合いで…先程の色が失せている。
例えば王城の地下で。富裕地区の秘められた場所で。頽廃に溺れ嗜虐に酔う男達に向けられる瞳と、同じ物が。
少女自身の靄以上に、彼女の内側を覆い隠し、窺わせず…
ぱくぱく。唇が声を失いながら、虚しい開閉を繰り返す。一時は呼吸すら忘れ、息を詰まらせていたかもしれない。
……何とか、取り戻したのは。息を吹き返したのは。再び辛苦の色合いの中に、人の彩が戻って来てからだった。)

「 あなた さまだと…本当に。 …嘘は 仰っていない のでしょう…
ぇと、 …その 申し訳 ございません  …こんな瞳 ですが。 …なくなって しまうのは。 ……困り ます。 」

(やりかねない。否、例えそれが血濡れた惨事だろうと、彼女にとって正しいと感じる行為なら、躊躇いなく実行するに違いない。
それが、この短い邂逅の中で、既に理解出来ていた。
だからか、指先に代わって、唇が瞼に触れてくれた時には。目元をうっすらと濡らす涙が、瞳を上塗りし、揺らめかせて。
…流石に、平静ではいられなかったか。酷く跳ね乱れる鼓動の下で、握り締めた両手が。
湯の中で覆い被さられるような、両膝が。小刻みに震え続けている事も。
こんなにも密着した今なら、容易に知れ渡ってしまう筈で。)

「 …はい。 捨てて しまう 訳には。 …また。彩る事 が 出来ればと。 …そう、思って おりますが …… 」

エウレリア > 「――――嘘…? 今の話の流れに、その様な物が紛れ込む余地があったかしら……?」

かすかな怯えを感じさせる少女の言葉に、当の陵辱者はきょとんと愛らしく小首を傾げる。
が、続く言葉には

「そう……――――あぁ、けれども、そうね。 その濁った瞳こそが、貴女の儚さを形作っているのかもしれませんわ。」

上位貴族の戯れに眼球を抉り取られるという凶事を、半ば偶然に免れる事の出来た少女の安堵。
生物の本能的な肢体の震えを重ねた肌に感じながら、改めて持ち上げたその瞳に作られた、涙膜による擬似的な光の灯りと続く声音に

「――――まぁ!」

ぱっと笑顔で花開かせた美貌を寄せた。
強い恐怖に彩られていても、不安定に揺らめく蒼瞳の艶は酷く魅力的に思える物。

「そうね、その通りですわ。急いでばかりでは人生は楽しめないと、お祖父様もよく零していましたもの。わたくしも気長に、貴女の瞳に艶が戻る日を待つことにしますわ!」

短絡的な思いつきよりも、人生に膿む心を余程に愉しませる少女の申し出。
戦いの、殺しの最中に感じる愉悦とは異なる興奮に豊乳の奥を高鳴らせた女貴族は、「―――んんッ。」と小さく咳払いを漏らして気持ちを鎮める。
そして、興奮の残滓が白磁の頬をほんのりと桃色に色付ける顔を改めて少女に向けると

「わたくし、少し昂ぶってしまいましたわ。ユール、貴女、責任を取って伽の相手をなさい。」

少女の現状―――貴族相手の高級娼婦の如き状況など知らぬにも関わらず、エウレリアは拒絶を許さぬ口調で一方的に告げた。
本来であれば命を賭して守り続けているであろう貴族令嬢の純血をあっさりと散らし、避妊魔法など施さぬ生挿入と体内への吐精をも当然の物として考えたその提案。

結果、彼女が孕むのならば、ペットとして一生可愛がってやればいい。
それに対して彼女の家が文句をつけてくるのであれば、剣の力で永遠に黙らせるだけのこと。
そんな傲慢で狂った考えの元に発せられた命令を受け入れるのなら、少女は今宵も静かな眠りを奪われて、日が昇るまで延々と逞しい陽根に弄ばれる事となるだろう。
それは、湯内での戯れに中途半端に灯された淫熱を全身に広げ、少女の肢体を焼き尽くすほどに苛烈な交合となるはずだ―――。

ユール > 「 わたしに とっては。 ですが …… 」

(こくり。頷いた。彼女には、自覚や実感の無い、言葉だったのかもしれないが。少女の側は、そう受け取り、感じたから。
小さな震えは、そう簡単には収まってくれそうになく、未だ湯船に微かな波紋を散らしている。
濡れた瞳を、繰り返し瞬かせて、ぼやけてしまう視界を、何とか。再度確保し、彼女の瞳を見返して。)

「 わたし は。 …色んな方々 に。 形作って いただき ました。 その結果の 瞳 ですけれど…
 良しとしない方は。 矢張り 居られる の ですね …… 」

(本当は分かりきっていた事ではある。
抱かれて、犯されて、虐げられて、壊れた身体や、ぼやけた心には。魅力を感じない人間は、きっと多い。
それを、何の遠慮もない相手に、面と向かってはっきり、断言されたのだろう。
少しばかり物寂しい気がする。薄ら寒さを感じてしまう。
だからか、湯の中で肌と肌が触れ合う箇所に。その温もりに。強張りだけは、少しずつ和らげながら。)

「 お待たせ してしまいそう …です。 エウレリア さまの お気に召して いただける、 までには …… 」

(こまりました、と。微かな声で付け足して。濡れた目元を、言葉通り、困惑半分で緩ませる。
明かな危険と恐怖を免れた、安堵も有ったのだろうし。…それ以上に、彼女の不興を買わずに済んだ、と。
そう思えた事が、きっと大きかった筈。…だから。)

「 でも 出来るだけ。 …なるたけ エウレリア さまを。 失望は させたくない と。 思いますので…
はい、其方の方に 関しましても。 …ですけど、 その 何といいますか …… 」

(何らかの形で。命じられる、求められる、そういう事柄が有るのなら。
出来得る限りは肯定して、受諾したい。そうするべきだと、それが当然だと、考えてしまいつつあるのは。
する側、される側、の違いこそあれ。彼女の絶対性が、少女に影響している、という事だろうか。
こくん。伽という言葉に頷いて。それはそれで、生娘等なら、恐れ戦くかもしれない行為にも。
いっそ先程迄よりは、緊張せずに済む、とでも言うように。掌に詰めが食い込む程、握り締め続けていた両手から。漸く力が抜けていく。
但し、と一つ躊躇いがちに、付け足す声と。怖気とは異なる困惑に、今度は上下。彼女の瞳と、大きく反り返った男ねとの間を。視線が行き来して。)

「 エウレリア さま のような。…殿方、とは違う方の お相手は。 ……初めてですので… 」

(男と女。何れでもある存在への伽に対する戸惑いを。今更、告白するものの。
それでも、知りうる限りは行うだろうし、出来る限りはこなすだろう。
但しそれでも。彼女によって行われる交わりの激しさや逞しさには。結局翻弄されてしまう筈。
過剰極まる快楽に、すっかりどうにかなってしまおうと。加減など有る筈もない吐精に腹を膨らまされようと。…それが如何なる結果に繋がろうと。
きっと、周囲はどうあれ、少女自身は、全てを受け容れた筈。そう在るべしと、最早決定付けられたから。
溺れさせられ、狂い壊れそうな程、我が身の全てを捧げきり、満たされ続けて…その狂宴が続くのは。一晩か。それ以上だったかもしれず。)

ご案内:「九頭龍の水浴び場」からエウレリアさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からユールさんが去りました。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」にチェルトトさんが現れました。
チェルトト > 重い木桶を頭の上でひっくり返すと、温かい湯が甘い花の香りのついた泡を流し落とし、赤い文字の刻まれた深褐色の肌を露わにしていく。空になった桶を目の前にあるはずの湯の流れの中に差し出してはまたかぶることを何度か繰り返してからぶんぶんと頭を振ると、いつもは二つくくりにしている銀の髪が左右に広がり、明るい魔法の明かりの下で、湯のしぶきがきらめいた。

「よっし!」

気合を入れて勢いよく立ち上がると、胸元の穏やかな丸みが、ぷるん、と、弾力たっぷりに揺れた。持っていた木桶を石造りの床に放ると、耳に心地よい音が露店の夜空に響き渡った。手拭いの一枚も持たず、引き締まった褐色の細い裸身を夜気にさらして向かう先は贅沢な岩風呂。早足に、半ば駆け足で誰もいない湯船に飛び込む。ざぶん、と、景気のいい水柱が上がり、その真ん中から顔を出すと、体を投げ出して湯船の縁に両肘どころか片方の膝までかけ、だらんと湯の中で伸びきって息を吐きだす。

「っはー……。いい文化だわー、これ……。帰ったらぜひ取り入れなきゃ……」

銀の髪を岩の床に広げ、ふにゃんと心地よさそうにとろけた顔で呟くと、片方の手をはためかせ、意味もなくぱちゃりぱちゃりと湯面に輪を描く。波打つ湯の下で、ともすれば華奢に見える腰と、丸みと細さを兼ね備えた尻から脚のラインがゆらゆらと揺らめき、氷の中にボトルが差し込まれた桶がちゃぷちゃぷと音を立てて揺れた。

ご案内:「九頭龍の水浴び場」にリトさんが現れました。
リト > 温泉に来るのはいつぶりか、すっかり記憶も薄れてきた頃。
今時期が一番丁度良いかも、と召使いに薦められ訪れた温泉旅籠。
巷ではすっかり名所らしいが、魔族の国に住んでいる自分にはあまり実感がなかった。

脱衣所で身につけていた衣服を脱ぎ落し、浴場へ足を踏み入れる。
ざっと身体を流した後、向かう先は内風呂…ではなく、露天。
カラカラ、と木製の引き戸を開け、軽い足取りで岩造りの床に一歩踏み出す。

「へぇぇ……」

すごい、とか綺麗、とか月並みの感想が頭を巡る。
さておき岩風呂に歩み寄ると、湯気の中に先客の姿が見えて瞬いた。

「っとー……お邪魔しまーす」

先客が此方を振り向くならば、その背丈に見合わず豊かな胸元を持つ色白の少女が声をかけている様が見られるだろう。
いいのかな?と首を傾いで、そっと片足を湯船に浸していく。