2022/05/08 のログ
クレイ >  
「ふーん、なんか難しい事考えてるんだな。ダチなんて話してて悪い気しないならダチ程度で良いと思ってたが。俺の中じゃもうアンタもそんな感覚だしな。ダチって呼ぶには少し色々と離れすぎてっけど」

 とケラケラ笑う。
 傭兵間の場合そのダチと後日斬り合いをする可能性も十二分にあるので厳密にそんな感覚でダチというと大変な事になるが、少なくとも普通に友人と呼べる関係なんてそんな関係で十分だろうという感覚であった。
 食べっぷりを言われればニヤリと笑って。

「体がそのまま商売道具だからな、よく食ってよく鍛えてよく動くってな。だから俺含め戦闘職の奴らはたぶん食う量エグいぞ」

 と軽くシャツを捲り上げ、二の腕に力を入れる。大体倍くらいには筋肉が盛り上がる。
 しかし、別に冗談感覚でやっただけで、すぐに飯に戻る。

「ま、後、昨日少し実入りの良い仕事やったからな。いつもできない贅沢を少しやっておこうって奴だ」

ウェンシア > 「話してて悪い気…そもそもあんまり会話、続かないし…え?あ。私?あ、そっか、こういう感覚なんだ。…ありがと。」

少女の思い描くダチとは少々違うものの、気軽に話せて気軽に笑える人が出来れば良いなと考えていた少女は、ダチと言われて悪い気はしなかった。そして彼の方から知り合いからダチになる為の一歩を作ってもらった事に気付いた少女は彼にお礼の言葉を。
そんな時、唐突に彼が腕捲りをして鍛え上げられた二の腕を見せてくれる。細い体から想像もつかない肉の盛り上がりは、ほんの一瞬だけ、件の黒塗りの大食漢を彼に繋げてしまい、小さく首を横に振った。

「確かに…エグいね…」

その言葉は食べっぷりに向けられた言葉では無く、彼の隆々たる筋肉に向けられたもの。級友が子供に見える程のそれは正しく生死を賭けた人物に相応しいもの…なんだか凄く、かっこいい。

クレイ >  
「筋肉の量じゃねぇよバカ」

 見ていた目線とエグいのタイミングなどで何となくどこを見て言っていたのかを理解してそんなツッコミ。
 よく考えれば学生さんだとこういう物を見る機会はあまりないだろうし、たしかにそっちに目線が行くのも仕方がないといえば仕方がないか。
 そして少し食べる手を止め、エールチビチビに切り替える。

「まぁ、会話なんて無理してするものじゃないし、したいときにすりゃいい。今は普通に……まぁ仕事で逃げれないのを良い事に俺が話しかけちまったってのが少し悪い気がしないでもないが」

 状況を考えればこっちがとっ捕まえた形になっているわけで、あれこれいいのか? なんて少し考えていた。
 だけど少し考えてからまぁ良いかと結局そのままいいかと納得させた。

ウェンシア > 「え?ええ…と、うん、筋肉じゃないよね…あはは…」

図星を突かれて苦笑いをするも、バカと言われて嫌な気がしなかった。いつもの少女ならここから罵倒のオンパレード、バカがアホを背負って突撃を食らわすのだが…少女は言い返す事も無く、笑顔を向けたままだった。きっとこういう関係がダチなのだろう、と年上の男性を相手に噛み締めていた。

「ん、お兄さんありがと。なんか気が楽になった――…仕事…?あ…仕事中だった…え、嘘!こんな時間!…お兄さんごめん、私帰らなきゃ!」

ふと、窓の外を見ると…通りの人がまばらになる時間帯になっていた。少女は慌てて彼に対して90度にもなろうかという礼を一回。そのまま厨房へと足を進めていく。厨房への扉を潜る直前、新たに出来た年上のダチに向かって手を振り、微笑んで見せた。

クレイ > 「そうだ、てか筋肉の量だけで見たら傭兵間じゃ少ない方だしな。魔法で誤魔化すから通常の時は動きやすい量に絞ってるし」

 決して鍛えていないわけではないが、文字通り丸太のような筋肉をした奴だってゴロゴロいる。自分の場合魔法で強さは補う為に通常時は移動や素早さに特化させるためにその辺の連中と比べると流石に絞っている。
 少女が仕事といえば。

「そういえばそうだったな、悪い引き留めてた。しっかり働いてこい。機会があえばまた話そうぜ。後困った事あったらいつでも依頼してきな。掲示板かなんかで呼び出せば行ってやるから。クレイだ、忘れるなよ」

 なんて言いながら少女に手を振って自身は食事の続き。ひととおり食べ終わればそのままお金を支払って酒場を後にするだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からウェンシアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からクレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 近所の人たちが食事を取りにきたり、王都にやってきたばかりの旅人が情報を集めたり、いろんな人が出入りする酒場。お酒はもちろん、食べ物のメニューも豊富とあって人気のお店ではあるけれど、その分、昼食や夕食の時間帯には相当な賑わいとなる。
幸いすこし早めに入店と注文を済ませる事ができて、混みあうころには食事を終えられた。あとは支払いを済ませて帰るだけだと、空いた席を探す人たちとぶつからないように、壁際をそろそろと歩きながらカウンターへと向かい。

「…え……」

酒場の主から言い渡された料金を支払おうと財布の中を見て、ぴたっと固まる。十分な手持ちがあるつもりだったけれど、すこしだけ足りない。何度も数えてみたけれど、見間違いではなく。
思い起こすのはお昼の事、そういえば鉢に植えるための新しい植物を買ったのだった。あの買い物がなければ問題なく支払えたのだけれど。どうしよう……と、おろおろ。
うろたえている間にも、自分の後ろには支払い待ちの人たちが並びはじめていて。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にユーリィさんが現れました。
ユーリィ > 休日の夜、なんとなく自炊をするのも面倒だからと、夕食は外で済ませることにして。
適当に入った酒場で一人、カウンター席に陣取って、肉やらミルクやらを楽しんでいたのが先のこと。
一頻り貪って、お腹もくちくなった頃、最後にスイーツでもと店主に声をかけようとしたのだが――。

「……ありゃ、並んでるねぇ」

酒場の店主は、丁度他の客の支払いを受け取るために接客中。
それなら少々待ってみるかとは様子を見ていたのだが、なにやら動く気配がない。
どうしたのかしら、と列の先端に視線を向けると、なにやらオロオロする女性が一人。
成る程ねぇ――なんとなく事情を察した少年は、ひょいと立ち上がり、その側へ。

「あ、そこのおねーさん、さっきこれ、落としましたよ?」

等と、少しばかり声を張りつつ、何枚かの貨幣を差し出してみせる。
それから、口の動きだけで『足りる?』と問いつつ、後は流れを窺ってみよう。

ミンティ > そう遠くないところに住んでいるから、この酒場で食事を取るのも初めてではない。商人組合の会合でも利用する事があるから、もしかしたら顔くらいは憶えてもらっているかもしれない。
事情を伝えて謝れば、次に訪れるまで支払いを待ってもらえる可能性もあったけれど。
気弱な性格から、自分が認知されている可能性なんて微塵も浮かばず。一時でもツケを頼めるような勇気もない。
パニックになりかけて、どうしよう、どうしよう、と考えて。後ろに並んでいる人たちに、ぺこぺこと頭を下げる。

「……っ…? え、あ……あ、ありがとう、ございます…」

いい考えも浮かばず、完全にフリースしかけていた。けれど思考停止の寸前でかけられた声に反応し、ぴくっと肩を跳ねさせ、あわてて振り返る。
自分よりも年下の女の子、そう見える人物から差し出されていた貨幣を反射的に受け取り、落としただろうかと小首をかしげ。
口の動きだけで足りるかどうかを問われると、思いがけない善意に、また狼狽して。
それでもずっと列の先頭で止まっているわけにもいかない。渡された貨幣を足して、どうにか支払いを済ませ。

「…あ、あの、すみませ、……いえ、ありがとう…ございます。
 本当に、助かりました。…か、借りたお金、お返ししたいのですが…」

列から外れたあと、相手へぺこぺこ頭を下げながら、癖で口をつきかけた謝罪を飲みこみ、感謝を告げる。
それから、どうやってお金を返すのがスムーズか考えて。

ユーリィ > 傍から見るに、彼女は気弱な性格なのだろう。頭を下げる様子は恐縮しきりといった具合。
対する少年は先の金など特に気にしている訳でもなく、寧ろ彼女が可愛いなぁと眺めるのみで。
そもそも、道楽で冒険者を嗜む程度の有閑貴族。一食分の支払い等、ご馳走しても瑣末事だ。
ともあれ、支払いの邪魔になるだろうからと、先に陣取っていた席の隣に彼女を促しつつ。

「いやぁ、気にしなくていいよ。大した金額でもないしさ。
 あそこで嫌などきどきを抱えながら、立ってる方が大変だったでしょ?
 そんなことより、うん、折角だし一杯付き合ってよ。暇だったんだよね」

店主――はまだ列がはけなさそうだから、給仕を一人呼び止めて。
食べようと画策していたスイーツと飲み物を適当に二人分宜しくとだけ。
甘酸っぱい果実を使ったチョコレートケーキ――酒場にしては洒落てる気がする。

「あぁ、勿論、ボクが支払うから、お代とかは気にしなくていいよ。
 おねーさんとの出会いに乾杯ってやつ――うぅん、実際に使うと、あんまり良い口説き文句じゃないね」

等とマイペースに言葉を作りつつ、彼女の姿を改めてしげしげと。
こういう時に構えないで貰えるのがこの格好の良いところだよねぇ、等と邪な考えを潜ませつつ。

ミンティ > お待たせしてすみません、と列に並んでいた人たちにも頭を下げて。促されるまま、相手が取っていたらしい席の隣に。助けてもらった以上、お礼ができるのなら話を聞いてみようと考えて。
カウンター席のスツールにちょこんと腰を下ろしながら、気にしなくていいとの返答に、申し訳なさそうに垂れた眉の形は変わらず。

「で、でも、…助けていただいたのに、なにもお返ししないのは…
 …え?……あ、あの…ええと……
 …それは、構いませんけど。…あの、わたし、話をするのも、あまり…上手ではなくて…」

気が弱いくせに、受けた恩に対する礼はしなければいけないと、そういうところにばかり意固地になっていた。
そんな性格を読まれたのか、ただの偶然かはわからないけれど、話の矛先を逸らすような会話の運び方にはまんまと乗せられた。
見た目から考えてお酒というわけではないだろうけれど、付き合いを頼まれて、小さく頷いた。慣れない相手にはしどろもどろな話し方をしがちだから、退屈させてしまわないかと、なおも不安そうな顔。

「……そんな、…あの、わたし、やっぱり…、…今からでも、お金――
 あ、あ、あっ…か、乾杯…?……っ、いえ、あの、そうやって自然とお話できるの…すごいと、思います」

乾杯に誘われると、あわててグラスを手に取った。
相手を女の子だと思ってばかりいるから、口説き文句というのは言葉のあやだろうと決めこんで。とりあえず、すこしでも気持ちを落ち着けようと、頼んでもらった飲み物に口をつけて。
警戒心こそないものの、女の子に誘われる経験はあまりなく。こういう時、どうふるまったらいいのかと、そわそわしつつ、野暮ったい自分とは違う彼女の服装を、ちらちら観察したりして。

ユーリィ > 気が弱そうなのに、中々頑固。その塩梅が、これまでの女性にはない雰囲気で好ましい。
気まぐれのなんとなくで彼女を助けたものの、存外興味が湧いてきたのを感じつつ。

「んー、でもなぁ。こう言っては何だけど、別にお金に困ってるという訳でもないし。
 それなら、ボクとしてはキミみたいに可愛い子とお茶したり、色々したい訳でさ。
 ――そうなんだ。良いじゃない、話し下手でも。そこも含めて、価値があるかって話だし」

お酒を飲むのも悪くはないが、今日はなんとなく甘いものとお茶の気分。
慣れてないなら今から慣れれば、という前向き気質な少年は、彼女の言葉をのんびり待ちつつ。

「だーかーらー、お金よりも、おねーさんの方が欲しいんだってば、お分かり?
 ほら、そんなに不安な顔してないでさ、甘いものとお茶で元気出して欲しいんだけど!」

先にやってきたお茶で乾杯。それから、少しだけ待てば、お洒落なチョコレートケーキがやってくる。
大きめのプレートの上にちょこんと小さく鎮座しているそれ。自分の分にフォークを伸ばして。
ひょいと切れば、中からじゅわりと溢れ出してくる赤いソース。いかにも甘酸っぱそうである。

「ん、別に、キミだって自然にお話出来てるじゃん。見当違いなこと言ってる訳でもないし。
 それぞれのペースってのが在るんだろうし、合わせてくれる人を相手にすりゃ良いんじゃないの?
 なぁんて、ボクより年上そうなキミに説教染みたこと垂れても格好つかないよねぇ」

ひょい、ぱくり。予想通り、ほろ苦いチョコレートと甘酸っぱいベリーが合わさって至極よろしい。
鼻に抜ける香ばしさ。アクセントはナッツだろうか。急に洋酒が欲しくなるが、今日は我慢だ。
自分の分を一口食べたその後は、彼女がケーキをどうするのかをじぃとのんびり眺めつつ。

「そう言えば、自己紹介もまだだったよねぇ。ボクはユーリィ。一応、冒険者。よろしく」

それでも彼女が止まっているなら、ほらほら、食べなよー、と催促すらしながら。
自分のペースに巻き込みながら、少しずつ彼女に踏み込んでいくつもりである。

ミンティ > 急に可愛いなんて言葉が飛んでくると、ただでさえ無に等しいようなものだった余裕がますますなくなってしまう。あたふたしたり、目を泳がせたりしながら、小さい会釈で感謝を示すのがやっと。
相手の言葉を聞いて、ちゃんと理解してから返答をしようとする。面識が浅い人には特にそんなペースで会話をしてしがちだったから、口を開こうとした時には、畳みかけるように追加の言葉が投げかけられる。
どれも自分の不安を薄れさせようとしているものだとは認識できていたから、追いつかない返事の分、口をぱくぱくさせたり、細かく首肯を繰り返したり。
動きだけ見ると、ますます落ち着きがなくなったようなリアクション。

「…げ、元気が、ないわけでは……ないです。これが、普通…っ……
 ……ん、……く、…は…、あの、じゃあ……ご馳走に、なります……
 ほんとうに、なにからなにまで、すみませ……、いえ、ありがとうございます…」

慣れた相手や、状況によっては、もうすこしくらい流暢に話せる事もあるけれど。初対面の相手に足りない支払いを出してもらったという負い目は、気が弱いくせに変なところで真面目な性格には、なかなかの重圧だった。
せっかくのお誘いに、そんな態度ばかり見せているのは申し訳ないと思うくらいの常識は持っている。
だから、まるでお酒で勇気を得るみたいに、勢いよくお茶を飲んでから、息を弾ませ。
それから口を開いたら、また半端な謝罪と言い直しの感謝からになってしまったけれど。すこしだけ、肩の力が抜けて。

「…いえ、おっしゃられてる事は…正しい、と思いますし……
 そう、ですよね。年上、なんだから、もっとしっかりしないと……」

自分より幼く見える相手の方が、よほどしっかりしている。
どうしたらこんな風にふるまえるのだろうと、服装も含めて、羨望の眼差しを送りながら、すすめられるまま、フォークを手に取った。
さほど大きなものではないケーキを、やたらと小さく切り分ける。かろうじて自分の指先より、ちょっとは大きいじゃないかという一欠片を口に運ぶと、念入りに噛み締め、味わって。

「…ふぁ、…ぁ、…みんふぃ…っ、…っ、ん、ん、すみませ…ん、…わたしは、ミンティ…と、いいます」

口の中に広がる甘酸っぱさに頬を綻ばせていると、唐突にはじまる自己紹介。とっくに飲みこんでいてよさそうなケーキを口の中に残したまま、あわてて名乗り返そうとし。
まともに発音できなかったから、一度飲みこんでから、あらためて自分の名前を伝える。

ユーリィ > ちょっとペースを握りすぎたかしら、と彼女の様子を確認。
それとも褒められ慣れてないのかしら、とか色々頭の中に浮かべつつ。
とは言え、このわたわたとした雰囲気は、中々面白いからこのままでいこう。

「あら、落ち込んでた訳じゃないのか。それならまぁ、安心だけどさ。
 本当に気にしなくて良いってば。一人で食べるより美味しいんだから」

ひょいとフォークを滑らせては、ちまちまとケーキを切って、もぐもぐ。
彼女も食べ始めてくれたなら、彼女が頬を緩ませる様子を眼福と眺めて。
チョコレートで程よくこってりした口をお茶でさっぱり流しつつ。

「へぇ、ボクの外見でこういう事言うと、結構馬鹿にする人とかいるんだけど。
 おねーさん、真面目だよねぇ。もう少しゆるぅくなっても良さそうだと思うんだけどなぁ」

とは言え、それは個人の生き方だ。大きく口出しするつもりもない。
出すとしても、少年にとってそれが好みかどうかのみ。あくまで、自分本位の意見だけだ。

「――ん、ミンティおねーさんね。あはは、今の、結構良かったかも。
 さっきまでの不安そうな感じより、ケーキ頬張って慌ててる方が可愛いじゃん。
 いやぁ、ボクとしては、しっかりしてない方も面白いから、どっちでも好きかも」

くすくすと笑いながら、もう一口ケーキをパクリ。やっぱり絶品だよねぇ、と頷いて。
元より気分次第で自分の好みの方向に物事を転がそうとする少年は、なんとも上機嫌。
こういう可愛いトークも最近できてなかったからねぇ、と内心で独りごちつつ。

「そうそう、ミンティは別れた後もお返しどうしようとか考えるだろうし、先言っとくね。
 ボクにお返ししようって考えてるなら、お金でくれるより、付き合ってくれる方が嬉しいかな。
 ――あぁ、とは言え、恋人になれとかっていう話じゃないよ。もっとこう、仲のいい友人ってやつ。
 だから、たまにお茶とかお出かけとか、後はまぁ、勿論下心はあるからベッドにも誘いたいけどさ」

隠しといてもあれだから、と明け透けに、さらっと宣いながらにっかり笑って見せる。

ミンティ > 自己評価があまり高くないせいで、褒められた時にどう反応するのが正解なのか、わからなかった。
嬉しいと思う気持ちや照れくささはあるものの、自分がそんな評価を受けていいのかと困惑する部分もあって。
困ったように眉を寄せながらも、ちびちびとケーキを切り分けて、口に運ぶ。戸惑うところがあっても、甘いものの誘惑には抗えず。

「はい。…一人で、食べるよりは……誰かと食べる方が、おいしいと…わたしも、思います。
 ……こんな時間に甘いものは、ちょっと、…悪い事をしている気に、なりますけど…」

口にものを入れておくのが、あまり得意ではない。だから切り分けて運ぶ量は毎回小さく、ケーキが減っていくペースも遅々としていた。
それでも一生懸命、もくもくと顎を動かし。なにか返答しようとしては、あわてて飲みこみ、軽く咽そうになったりするたび、お茶に手を伸ばす。
食べるか話すかを両立できていない不器用さを晒しながらも、相手が話す間は、しっかりと目を見て、声に耳を傾けて。

「……誰が言っても、正しい事は、正しいと思います…けど。
 まじめ…ですか?…ゆるく……、できたらいいなあ…と、考える事は、あります」

なにか行動しようとするたび、臆病さに負けて諦める事も多い。
もうすこし気楽な生き方ができたらと思いはするものの、思うだけで、うまくいった試しがない。わかってはいるのだけれどと肩を落とし、小さく溜息を吐いて。
うっかり暗い顔をしそうになると、あわてて頭を振り、後ろ向きな感情を追い払おうとした。

「……可愛くは、ない…と、思います……
 ん、…はい。あの、本当に、わたしなんかで、退屈しなければ、お茶くらいでしたら、いつでも…
 お出かけも、はい、だいじょうぶ、…………、っ…………?!」

二度目の褒め言葉には、とても小さな声で、ぽそりと反論した。
それでも満更ではないようで、頬をうっすら赤くして。
お金を返す代わりの付き合いに、うん、うん、と首肯。
一人で過ごす事が多いから、こんな風にお喋りの機会を持てるのなら、自分の口下手さも、すこしは改善するんじゃないかと考えて。
そこで思考停止してしまう。同性だとばかり思っている相手からの、予想だにしない発言に目を丸くしたまま固まって。

「な、な、なっ……!」

数秒して我に返ると、顔を真っ赤にしながら、あわあわと周囲を見回し。自分が恥ずかしい事を言ったわけじゃないけれど、今の発言が誰かに聞かれていたんじゃないかと周囲を見回したり。