2022/05/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にラブルナさんが現れました。
ラブルナ >  
「…………はい。それでは、お大事にどうぞ」

民家の主に深々と一礼をして、ずり落ちそうになった帽子を手で支えながら玄関を出る。
魔法薬剤師という稀有な職業の彼女は、魔法薬の配達を終えてこれから帰ろうというところだ。
本来なら向こうから薬局に赴いてもらって薬を処方するのだが、足の悪い老人などにはこうして手ずから配達を行っている。

せっかく出てきたし、市場で何か買って帰ろうかしら──などと考えながら歩いていたところに、金髪の男性とすれ違った。
彼の持つ銀色で変わった形状の傘にどうしたって目を引かれてしまい、思わずそちらを見るだろう。

エレイ > 「──くぁぁ……ン……」

歩き続けてもこれといった何かと遭遇する気配もなく、退屈から欠伸が漏れ始めたところ。
近くの民家から出てきた人影の姿に、男はふと視線を向けた。
黒い三角帽子とローブのクラシカルな魔女スタイルの、そこそこ上背のある金髪の女性。

その女性とすれ違うところで、眼鏡越しのその視線がこちらに向いている事に気づけば、
緩やかに足を止めて。

「……やあやあどうもッ。俺に何か御用ですかな?」

にへ、とゆるい笑みを向けながら、体ごと女性の方へと向けて声をかけた。

ラブルナ >  
無遠慮に視線など投げかけていれば、反応されるのは必然。
であるにも関わらず、まさか話しかけられるとは思っていなかったラブルナはビクゥッ! と大袈裟に驚いた。
両手に提げたバスケットの中、ガラス瓶に入った色とりどりの液体がちゃぷんと揺れる。

「えっあっ、すすすみません! じろじろ見たりして……!
 あまり見ない形の傘だな、と思って……気になって…………」

みるみる赤くなる頬と反比例するように、だんだんと尻すぼみになっていく声。
思わず帽子を目深に被ろうとして、丸眼鏡が若干ずり落ちた。
そこから一瞬だけ覗いた瞳は、あなたと同じ碧眼だ。
垂れ目がちの瞼から伸びた長い睫毛が儚げな印象を与えるだろう。

「本当に、それだけで……ごめんなさい……」

慌てて眼鏡を直しながら、二言目には謝罪。
特に後ろ暗いことは無いはずなのに、目線はあちこち彷徨っている。

エレイ > 「おっとといきなり話しかけて驚かせてしまったかな──おおコレか。
たしかにここいらではあまり見ないものだろうな俺お気に入りの他所の国の傘の形をさせてるしな」

話しかければ身じろぎが目に見えるほど驚くのがわかってこちらも少し目を丸めつつ、軽く謝罪。
風変わりな傘が気になったのだと告げられると、眉下げて笑いながら傘について軽く説明しつつ、
ずれた眼鏡の下から覗いた彼女の瞳を目ざとく観察し、なかなか綺麗じゃないの、なんて
内心で思いつつ目を細めて。

「いや謝ることはないぞ変わったものを見つけたら思わず三回連続でみつめてしまうのは
誰でも当然のことだからな。俺でもそうするし。
それで君は……そのカゴの中身から見るに薬師サン? それともアレか、魔女サンだったり
するのかな。んでこの後なんかご予定はあるんですかねぇ?」

謝罪を重ねる彼女に、気にすんなとばかりに片手をひらひらと振りながらそう告げ。
それから彼女の素性を問うたり、予定を聞いたりと無遠慮に矢継ぎ早に質問を投げかけて。

ラブルナ >  
「い、いえ……すみません……大丈夫です。
 ……なるほど、異国の物なのですね。どうりで……」

こちらが勝手に驚いてしまっただけなので……と俯きつつ、やはり傘が気になるのか、帽子のつばから控えめに見上げる。
他国についてはあまり詳しくないため、こういった造形もあるのかと感心しているようだ。

「こんな陰気な姿をした人間に目を向けられても不愉快でしょうし……
 見てくれだけは魔女のようですが、私……薬剤師なんです。魔法薬専門の」

こんな格好をしているのにも理由はあるのだが───
それも含めて自分にとっては卑下すべき事であった。
魔女の真似事をしている、なんて明かせば誰もが嘲笑うだろう。

「今は、患者様に薬を届けた帰りで……
 少し買い物をしていこうと思っていたくらいしか、予定はありませんが……」

あなたの問いには律儀に答えた。
ナンパや勧誘の類を疑うほどの対人スキルは持ち合わせていない。

エレイ > 「俺は心が広大なのでその程度で不愉快になったりはしないが……ほう魔法薬専門であるか、そいつは興味深いのぅ。
──ふんふん……そしたらせっかくだから、お買い物の手伝いと、君ん家まで
送る役目を仰せつかってもエエかな?」

彼女が素直に事情を口にすれば、少し思案した後ぴ、と人差し指を立てながら笑顔でそんな提案を。
控えめながらも帽子の鍔越しに向けられる興味深げな視線には、フフ、と小さく笑い。

「薬剤師サンなら、店かなんか構えてるんでしょう?
キミも傘(コイツ)が気になるようだし……俺もキミの作った薬とか見てみたりしたいしね。どうかな?」

などと、お互いの好奇心を満たすという名目で、彼女に同行する口実を作ってゆき。
笑みのまま首を傾げ、彼女の返答を待つ。
理由はどうあれ、自身の住まいに男を連れ込むことになるこの提案に彼女が乗るかどうか──。

ラブルナ >  
「そんな……私のためにお時間を取らせるわけには」

あなたの提案を受けて戸惑いの表情を見せた。
警戒しているというより、あくまで申し訳なさから来る遠慮のようだ。
彼女からすれば、自分の用事に付き合ってもあなたに何のメリットもないと考えている。

「でも、薬を……そういう事でしたら……」

とはいえ傘が気になるのは事実だし、魔法薬も何かの役に立てるかもしれない。
結局は口実に丸め込まれ、首を縦に振ってしまうのだった。

エレイ > 「何、問題ない。俺様ぶっちゃけ今時間が有り余ってるからな。できれば誰かのために
役立てたいのだよ」

遠慮の言葉を口にする彼女の表情に、戸惑いはあれど警戒の色がないのが見えると
眉下げて笑いながらいい子だなあ、なんて思ってほっこりしたりしながら、
端的に自分は暇だとアピールして。

「──よし早くも決定ですね。それじゃあ行こうず。ああちなみに俺は旅人で冒険者の
エレイというのだが、キミのお名前も教えてくれるかな?」

やがて色よい返事をもらえると笑みを深め、善は急げと言わんばかりにそう促し、
彼女の片手を取って傘の下、自分のそばまで引き寄せようと。
そうしながら珍妙な自己紹介を繰り出し、然る後彼女の名前も聞いてみて。

ラブルナ >  
「誰かのために自分の時間を使いたい、だなんて……
 ご立派な精神をお持ちなのですね」

そんな彼女だからこそ、この言葉も皮肉ではなく本心だった。
自分の事で精一杯な私には到底できない考え方だ、と。
あなたに対する評価が高まる一方、ほんの少し表情に陰が差す。

「ひゃっ……え、ええと……その……
 私なんか傍に置いたら、あなたまで変に思われてしまいます……」

手を引かれ、振り払うわけにもいかず、そのまま傘の下へ。
急速に縮まった距離に頬の赤みを増しながら、戸惑いがちにあなたの表情を窺う。
それから周囲を見回していたが、あなたの自己紹介を受けて再び向き直った。

「名前……自分だけ名乗らないのも失礼ですね……
 ……ラブルナ・アルカローズと言います」

やや小声で言ったラブルナが名前、さらに小声で付け加えたアルカローズが姓なのだろう。
わざわざフルネームである必要もない場面だが、そこは人馴れていないせいだ。

エレイ > 「それほどでもない。謙虚だから誉められても自慢はしない」

ご立派、などと言われれば明らかに謙虚とは程遠そうなドヤ顔を晒しながら
得意げにそうのたまう。そうしながらもやや暗くなる表情には目ざとく気づいていて、少し不思議そうにし。

「そんなことはない。仮にそうだとしても今は他に誰もいないから何も問題はないな」

首尾よく傘の下まで引き込むことに成功すれば、そのまま肩に手を回しながら耳元で囁くように
そんな言葉を告げ。彼女が見渡す周囲に、雨模様のせいか男の言う通り人気はなく。

「ラブルナちゃんだな、よろしくだぜ。それじゃあカカッと出発と行こーかッ」

嬉々として教えてもらった名を反芻するように口にすれば、そのまま彼女とともに
ゆっくりと歩き出し。まずは買い物を済ませようと、市場のある表通りのほうへ足を向け──

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からラブルナさんが去りました。