2021/02/23 のログ
イグナス > 食事の時間はまだまだ、続くよう。
さて、店の食糧がなくなるのが早いか、男が満足するのが早いか。今はまだわからん様子で――

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/図書館」に影時さんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/図書館」にフォンティーンさんが現れました。
フォンティーン > 「そうだな、…然し『の、如く』だと未だ意味は花を示していないのか。
 この髪が『恋』である。位の事だろうな。『我が恋は』と言うたら此れになる。
 ふふ、相手の心を叩くには其れでも足りないかもしれないぞ。

 ――意味を知らずに振り回したくはないし、迂闊に手を出すには少々気が引ける。」

此れ――の所で摘み上げるのは緩く結んで解れているお下げ髪。
改めてその偉業と言うべきか、普通なら有り得ぬ様な事実に笑いつつ、
こそばゆいと評した相手を面白がった。

東方の文字については改めて眉間を寄せ、少々の尻込みをみせて諦めた様子。
少なくとも今の所、彼是と気儘に話をする彼と自分の間では
系統立てて学ぶ訳にもいかない。

「…人に頼る余地を残すというのは、人に頼られる余地を残すと同義――だと考える。
 君が隠者を目指しているのでなければ、
 敢えて自分に封じる領域を用意する位でも良いと個人的には思うぞ。」

身の程を作る。際限を設けるとでも言うべきか。
長さのある睫毛を伏せ、大した重みも付けずに訥々と述べる言葉は
人と違う寿命を生きる種族らしい軽さで書架の杜に小さい波紋を立てる。

出来れば出来る程、他人に伸ばす手を失くし、代わりを出来る者が不在くなる。
――求道、の歩みとは少々異なる向きを擁しているだろうが。

其処まで話した所で視線を上げ、音が立ちそうな程屈託無く頬笑んだ。

「悪く無いな。折に触れて宜しく頼む。
 …月と星、なあ。…うん、確かに本来秘匿されるべき事柄であるもの。
 特に今時期など、誰でも触れる所に残されているとは思えない。」

船乗りの知恵に森人は一寸困惑顔をするも、本筋では無いから口は開かず呟きのみ。
この時勢、市民が触れられる場所に地図が在るという事すら危うい。
幾分でも危険が見られる物は既に引き上げられた後だろう。
見つかるのは精度の低い物か、ブラフを意図的に含んだ物か。
或いは時代が遡っており軍事利用には心許無いかの何れか。

冒険者独自の情報を照らし合わせるから見える、
生きた知識が、目の前で情報を補足していくのを見つつ。
気にするのは見た事のない筆記具の形状と見覚えのない文字。

此れが彼の言う彼の国の文字だろうかと首を捻りつつも、此れも又脇道。
目的に近づこうとしている今、無暗な口出しは確定を遠ざけると己独自に図を追って暫く。
書き物が一段落した所で青年の衣服の端を引く。

「差し障りのない所だけで問題無いから其れ、」

つ――、と指が書き物を差す。

「後で翻訳した物をくれるか口頭で説明を。情報が入違った状態だと困るからな。
 ……なあ、月、という文字が入っていると言っただろう。
 月光に当ててみるか、月を透かして見るのも、ありかな?」

覗き込む地図上、洞は読み取れる物の。
寧ろ気に掛かるのは地図に記載する情報として違和があった空に浮かぶ光の単語。
提示するのは可也、なんでも遣ってみる感のある案だが。

影時 > 「……成る程。確かにそうして使う塩梅にはなる、か。
 恋やら何とやらも語ンなら、足りるかどうかも含めて分からんな。普段使いもしねぇ分難しい。

 呪句ひとつしくじると、死ぬような魔術の類じゃねぇんだ。
 わざわざ海を渡って、外の国に往くでもないなら、気が向いた時に位でイイだろうさ」

例えの具体例として、挙げる仕草としてはそのお下げ髪は斟酌するに足りる。
よくよく理解して使えれば粋で、風流なのだろうが、己の心得ている粋や風流とは趣が違う気がする。
恋歌、愛語りに使うばかり――ではないだろう。
だが、よくよく生かして使うとなれば、おおよそシチュエーションは絞られる。

東方の言葉はそれこそ、舶来品でも吟味するような機会があれば役には立つだろう。
識るならば己の名の綴り、音の意味も知れる。

「……――あー。だいぶ手管や何やらは封じているというか、開陳は避けてンだがな」

 そうかそうか、と云わん風情で顎先を摩りつつ、思案気に一瞬虚空を仰ぐ。
 面倒を見ている弟子に教導を始めた際、「弁えろ」という言葉を使った記憶がある。
 それは人間より隔絶した、抜きんでた力等を配慮するためであったが、己の「弁え」は口に知る以上に足りていないかもしれない。
 あまり口にすべきではなかったかもしれないかと思えば、苦笑めいた息継ぎと共に肩を竦めよう。
 山間の里に住まい、自給自足と行う中で必要に迫られて覚えた、というものも多い。

 だが、本領とすべき技は示す機会は限られる。
 心技を費やして、心震わす闘争の機会もとんと欠けるという点も共に。

「それでイイなら頭の片隅に置いておく。
 
 興味があンなら、そのうち教えるが兎も角として、だ。お前さんが言うの尤もなんだよなあ。
 何処の為政者も往々にして、そう考えるさな。重要な情報は周知されるような場所には置きたくない」

古地図の各種を取り揃えている時点で、おおよそこう言えるだろう。
陳列しても問題ないと判断したものしか、この図書館の書架はないと。
軍事的な機密から判断した、というよりは年代を経るにしたがって重要度が下がったという上でのものだろう。
置かれている地図は何度か確かめたが、不審過ぎる空白や欠けの類はない。

「翻訳というか、地勢として合致しそうな処やら気になった処を書き出したのさ。

 まずは実際に出向いて当たりをつけりゃいいだろう。この塩梅だと、地下に這入る洞か何かの在りかを示してンだろうな。
 あとは、文字か。……アリじゃねぇかな。この場所の明かりは少々強いが、影をうまく使えば何か見えるか?」

地図におけるどこそこあたりだろう、と。
近代の地図を引っ張り出し、この辺りと丸く指を動かして示しつつ、覗き込む相手の顔を見て考え込む。
そう。問題はその文字の類が何なのかという点についてだ。
件の薄紙のような地図を彼女に差し出し、何か見えそうかね?とも問うてみよう。
 

フォンティーン > 「――…ほう。
 其れなら其れで良い事だ。…母語じゃない言葉には感情が乗り難い。
 言葉の話だが、風習もそういう事なんだろうなあ。」

さて、改めて目の前の人物が花を片手に女人に向き合うとする。
そうして件の花を捧げて愛を、と視線を中空において想像してみるも、
遣ってみれば確かに何と言うか違う土壌に植えた花の様に居心地悪げな彼が見える。
或いは食い違う花瓶に戸惑う一輪の花だ。
成程と笑うのは非常に失礼だろうが、腹が少々震えた事だけは許して欲しい所。

彼の言葉には軽い首肯で応じつつ、その時には教師の紹介を頼むとも軽い調子。
教師の為にももう少々目的と興味が明確になった時が学び時だろうから。

――と、一つ区切りがあった所で虚空に視線を投げる傍らを見遣る。
思う所を理解する迄には到底行かない迄も、己の言葉が行き違ったと云うか
彼の配慮が見えずに発した物であったと云う予測はついた。

「…君が加減した上で為している事なら見当違いの戯言だったな。気分を害して居たら済まなかった。」

端的に己の非を認めると、此方も苦笑交じりに首を傾ぐ様にして首と瞼とを共に伏せ、
簡素ながら謝罪の意を込めつつも、幾分か間を取ると長引かせる事をせずに顔を上げた。

「至極満足した。ん、んー……否、船乗りの術は一寸遠慮をしておこう。
 知識は知識だが、前提条件が少々ずれると云うか。

 逆に置いてあったら鷹揚というか、――彼方此方戦線が長引いておるのは
 失策故ではないかと疑ってみる所だが、そういう訳では無さそうだ。」

市民に晒す物だからこそ、一見公平に隔たり無い様に見えて、確りと検閲を受けた品々である筈だ。
其の上でこの蔵書量と云うのだから何処に感嘆を向ければ良いのか見当が付かないが。
幾度か見栄えを整える為に削られた形跡のある古い地図の本の縁を撫で、

「成程な、其れなら君に任す。私の領分となった時に教えて貰おう。

 ……ん、光の屈折や魔力を使用しているなら月である事が重要で、
 代替えの灯では無理だろうが。…――」

回答に得心すればあっさりと前言を撤回し、地図の上で場所を示す大きな手の動きを目で追った。
重ねて考えても――少なくとも、本来の地図以外で『月』の要素を表す術が無い。
ならば何故強調された文字列の中に存在しているのか、だ。
その要素である意味を幾つか上げてみるも、薄紙を受け取ると図書館の灯へと掲げて透かし見た。
補助として口の中で呟くのは光の精霊の力を借りた遠見の魔術。
集中する余り、視界以外を取り払ったかの様になれば数歩鈩を踏み。

「…――と、正直見えた…という程では無いけれど光に反応は感じた。
 其れから、多分――この地図で起こる反応は現地で起きる反応のレプリカだと思う。
 これ自体が厳密な位置を示すのではなくて、…現地での見え方を教えるもの、というか。」

影時 > 「……フォンティーン? お前さん、何かしようもねェこと考えてたろ。ン?」

無頼の徒に花が似合わぬとは限らないものではあるが、己がそうやって語らう様とは中々考え難い。
筋違いというか、それともうまくかみ合わないというか。
想像しての違和感振りを脳裏に巡らせていれば、似たような想像を浮かばせているのだろうか。
同行者の顔を見遣り、胡乱げな眼差しで問おう。

ったく、と息を継ぎ、続く教師云々については顎を引いて請け負おうか。

「いンや、いいさ。もう少し俺も弁えるべきと知った。
 此れでも手持ちの何もかもをひけらかすのは好まんが、留意させてもらう」

自分の苦労、留意の事項を他者に語るのは好きではない。
心得ている、弁えていることなぞ、他者にとっては心底どうでもいい事項である。
やれ、気配なく動ける。一人が百人の如く見せかけて動ける。闇夜を跳梁し影を喰らう云々、己が持つ技を秘しても、なお余る。
忍びとは、そういうものだ。単一の技能ではなく、複数の技能、術等を体得したうえで闇に生きるものである。

「ああ、そうしてくれると有難ぇ。俺も又聞きな上に道具が足りん。

 ……戦線っつぅと思い当たる場所は聞いたことがあるが、ありゃ地図程度で引っかかってるコトじゃないようだ」

検閲を受けてもなお、十分に観るに足る地図が陳列されているのは、正確な地図以上の軍備がこの国にあるからかもしれない。
数ある何たら師団やら、様々な軍、傭兵団など、耳に挟む機会は多いが、悪名も武名もいずれも高い。
それこそ、正確な地図が示す道筋を行かれたとしても、直ぐに対処できるほどのものがあるだろう。

「心得た。んじゃァ、文字やら何やらとかは……そっちに任す。

 見え方、ねぇ。特定の刻限、星辰の位置、月の照りとかにならねぇと、侵入口も含めて姿を現さん――という塩梅か?」

では、餅は餅屋だ。魔術仕掛けには魔術の徒に任せる方が一番早い。危なげない。
図書館の光源には油の灯火ではなく、恒久的に作用するように固定化した魔術の光もあるとも聞く。
だが、それは月明かりの代替にはなるまい。
何かの術も使って試した相手の言葉を聞き、胸の前で腕組しながら思考を回す。