2021/02/13 のログ
■影時 > 「どうも聞き及ぶ限りじゃァ、そのようだ。
その例えは、ピンとこねぇが……、あー、鳥か卵か先かか。
特定の誰かが決めていったというよりは、伝わるたびに変わっていったと考えるなら、合点もいくし想像も出来る。
川とくりゃ、海も湖もあるンだが、此れはまた別の文字で表される。
……それも幾つかの絵文字の変形の複合でな。
とどのつまりが、あれだ。
他に表すものもなく使い慣らされてったから、その字が「川」として定着しちまったという具合で考えりゃいい」
別の地方の文字などを紐解けば、どうしてこう表すのか?と首を捻るものが多い。
故、彼女のその反応は尤もだ。細々と考えだしてしまうと、合点がいかなくなるのは是非もない。
直ぐに直感できないたとえのニュアンスを数瞬を経て噛み砕き、子供じみていても解する処もある様に苦笑を滲ませる。
故国の文字やら何やらの成り立ちは、己が名前を呼ぶのと同じ位面倒だろう。そんな気がする。
「やれなくはねぇコトは意外と多い、ってだけな。
儘ならねぇことは同じ位多い。この身を分けてたって、限度はある。
……ま、牛馬の革とかじゃなくて魔物の革となれば、やっぱりそう思うよなぁ。
名工の域にゃ届く気はしねぇな。だいたい、自分が使うものを作って修繕する位が精々よ」
女の一人旅、活動の類は男のそれより有形無形の苦労を背負うだろう。殊にこの辺りであれば猶更か。
どうだか、とはぐらかすような風情に肩を竦め、思考を巡らせる。
名工と崇められるような粋には流石に至らない。其れができるなら、とうに廃業して身を立てる術もあるだろう。
その場繋ぎ、小遣い稼ぎ程度でなければ、基本的には自給自足を成す程度。
武器など品質を突き詰めても困らないものは突き詰めたいが、そうでないものは金銭を出して依頼する方が一番間違いはない。
自分でどうにかならないものを、手っ取り早くどうにかしたい時の最短の解決方法だ。
妥協一つが身を亡ぼすと思うからこそ、使う側としても生半にはし難い。
「――なら、良いんだが。だが、来てくれてよかったとも思ってるぞ。
行かなきゃ、どうにもならん類だからなあ……。
そう、当世なら測量だな。
だがモノにもよると、街道の配置や入り組み、ンでもって説明書きを主にした関係で実際の地形と合わん奴とか色々でな……。
旅をするだけならそれでもイイとしても、場所を見定めたい時には向かん。
例えば魔術で空を飛んで、鳥が見下ろしたように書き出して測ったものが最良なんだが、其れが出来る術者は限られるだろう? 確か」
古すぎる地図であれば、今の住処を基準にして太陽が沈む方に何があるといった大まか過ぎる具合だ。
使う側としては別段、それでも良かった。不都合はない。
だが、後世の後追いするものとしては困る。地形変動で削れた、埋まった箇所があれば、時を経て照合する作業が必要だ。
「しかもこれ、ハデクの丘やらの……かなり奥の方だなァ。意外と起伏がある。
昔は妖しの類も良く棲んでいたやら聞いた覚えがあるが、それに纏わるものかね。此れ」
傍らに置かれる書があれば、此れは?と問いつつ、当たりの確度を高めようと幾つかの地図を照合し、現行の地図と見比べる。
時をさかのぼるにつれて、山野というほどはなくとも原野めいた風情を増すのは人が入らなかった頃も思わせる。
■フォンティーン > 「うん、こんなのもあるぞ。とある野花に少年が何の由来も無い言葉を付けて恋人に贈った。
そうしたら何時しかその花の名前は花言葉と同じ意味になり、その地方では愛を囁く時には必ず添えるのだそうだ。
勿論その花はもともと在ったけれども…知名度から名まで変わって仕舞ったら、
其れはもう生まれ直したも同然という気になる。
…う、――ん?うん、其れなら理解できるか。」
通じるか如何かといった慣用句が大まかに伝わった様子を見れば面白そうに眼の端で笑い。
披露するのは又其れも発端自体が怪しい地方の昔話といった所。
名付けとは言え只の愛称である可能性もあるし、例と言うには偏りが過ぎるけれども。
何とか別地方の文字の成り立ちを伝えようとしてくれる様子に、
恐らく――フラットに、学問的に追い掛けて仕舞う程、納得できない所も出て来てしまう堂々巡り。
結局の所人にどう認知されるかが肝なのだろうかと、漸う頷ける答えを見付ければ丁寧に理由を説明してくれた相手に礼を告げ。
「そこまでは納得したけれど、もう少し――想像力を補った資料があると判り良い。
流石にトキの頭の中を読み取る自信はないもの。
君は凝り性に見えるし伝えるよりも自分で思うように形作る方が好き、そう。
身を分けるは一寸判らないが、儘ならない事が多い方が有難いと思うぞ。」
知る彼と知らぬ自分との間に乖離があり過ぎると、吐息混じり。
絵本とまでは言わない物の字形の解説があれば大分理解は楽だろう。
本は偉大――とこの場所に相応しい結論に行きつく。
つらと述べる自身から見た青年の印象。
端的に言えば人に頼る前提で動かない節が見える――のは付き合いが浅くて断定できないものの。
此処に同行する事になった経緯は結構珍しいケースだったのかもしれない。
既に言う事が多芸を身に着けた人間の言う事ではないと、頷いて聞きながらも笑み含み。
悪気は無いが語る事の基準が一般人のラインを数段飛び越している。
旅の中、命を預けるに足る程に信用のおける武具を自らが作り出せる、というのが既に非凡なのだと、
「気付かないのだろうなぁ――ん?其れは其れは、何度か言ってくれても良いよ。
…まぁ前聞いた所だと、同じ背丈の測量人を集めて歩かせるという話だったし。
嗚呼、成程。目印は大体あっているのに入り組むとすぐに役に立たなくなる奴だな。
ハデグ…。起伏があると俯瞰図だけじゃ足りないんじゃないか。」
飛行の術の所持者で測量好き。二つの要素が掛け合わされる人材等数十年に一人も現れない予感がある。
況してや見ている地図は戦場の真上。魔法で狙い打たれても文句は言えない。
起伏――と、呟けば先ほど見ていた、傍らに置いた地図を思い出す。
そういえば横からの断面図があったと、広げられている地図から手を放して、
改めて横長の書を捲った。一枚、二枚――
「かなり簡略化されているし、古い図のようだけど高さの表記が…嗚呼、これだ。ハデク。
…割と入口の方か。余り参考にはならないかもしれないね。」
■影時 > 「……良いな、それ。――の花の如くとか使うんだろうが、そう云うのは考えてみると面白い。
手前ぇで使うとなると、こそばゆい限りだが、其処まで至っちまうと再誕したのと同義だろう。
――あー、あとな。それらの文字から更に常用しやすいように増えたモノまであるぞ。
それまで遣っちまうと、日が暮れてもキリがねぇ勢いだ。
……やっぱ、そうよなァ。俺も言ってるだけじゃぁ伝えきれるか難しい。言語学なんて学問が成り立つわけだ」
聞けば気になるものだ。どんな花か。どのような色と形で、どのような季節に咲いたのか。
それが分かれば、どういう風に語らいながら使っていたのか、想像の翼が開く。
ただ問題は、それを自分が使うというある種の実用の場面だ。
洒脱に遣ろうと思えばできるが、愛を?囁く?ふと、顎を摩りつつ考えると、むむむと唸る処がある。
そして、資料があれば、という訴えだ。此ればかりは誠に尤もだ。返す言葉もなくなる。
手持ちのものを全部晒す場合はいよいよ、どれだけの紙面と資料を示すが最適か。
脱線する愉しみはあっても、この図書館にあれば一番いいが、時間が足りなくなる。
「……――そういうモン、か。承知した。気に留めておく」
発端となるきっかけとケースは、自分としてはかなり珍しいケースだ。
何処其処に行ってみようというのは弟子を巻き込んで、引っ張っていくということあっても、遭遇と偶然というのは稀だ。
文字通りに「身を分ける」ことが出来る時点で、非凡が過ぎる。
出来ると認識していれば、胸襟を開いて話しているとついつい忘れがちになるのは善くないことだろう。
嗚呼、と。肩を上下させて思う。
使い捨てにせざるを得ない点を差し引いても、己の武器を自作できる剣士、戦士の類が巷にどれほどいるか。
「んじゃァ、何度でも。来てくれたお陰で捗ってンのは間違いない。助かってんぞ。
偶々当たりがすぐに出たが、本当なら数人がかりの作業だぞ。
船乗りから聞いた話でもあるが、最近だと月と星の位置を測って現在地を定めて、其処から測る――もうこの時点で、並ならねぇなあ。
俯瞰図と地形をうまく、ブレもなく落とし込んだ図面があれば一番しっくりくるが」
飛行術と測量術を持っている逸材はもう、直ぐに否応なしに徴用されること疑いない。
正確な地図はそれこそ、国の宝として秘される位だ。このような市井に卸されているものは、どうしても劣化は否めない。
其れでも見るものが見れば、読み解けるものだ。
鞄から取り出す紙に、黒鉛を木板で挟んで削り出したペンで幾つか事項を書き出す。
つらつらと書き出すのは、この国の文字ではない字体のもの。
「いや、ありがてぇ。おおよそ確度が増したぞ。
あとは文字か何かか……、地勢的に神聖都市、とやらに近ぇんだ。残る手がかりとしてぇ処だが」
断面図を覗き込み、照合すると地に向かう洞穴や窪みと読み取れる場所が幾つかある。
その中のひとつに問題の地図は合致するように見える。手持ちの問題の地図の天地、左右を確かめれば重なるところは多い。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/図書館」からフォンティーンさんが去りました。
■影時 > 【次回継続】
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/図書館」から影時さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にテアンさんが現れました。
■テアン > 帰り道。すでに日の落ちた時間帯に通りを歩いて行く。
近くには公園があり、明りの少ないその場所は暗がりに包まれている。
道すがらランタンをかざしても、それほど奥までは見えはしない。
うーん、と少年は考えた。
仕事の手伝いでいくつかの商店や酒場を回ったが、
遅くなるようならどこかで泊まりなさい、とも言づけられていた。
帰れるだろう、と思っていたが泊まってもよかったかもしれないなぁ、と。
ともあれ、日の落ちた時間に長く歩くのもな、と考える。少し急ぎ足になりかけるが…。
ふと足が鈍る。特に理由はなく、少年の無意識の内に。
少し思考がもやもやするような感覚。それを不思議に思いながら―――。
かすかに精気の香りを放ちながら少年は歩いていくだろう。
それは襲ってくださいと誘っているようでもあり…。
■テアン > 少年はゆっくりとその場を立ち去っていく。
その夜のうちに何かがあったかもしれない…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からテアンさんが去りました。