2021/02/12 のログ
ご案内:「平民地区/宿」にブレアさんが現れました。
ブレア > 金銭に余裕があると、平気で無駄遣いをしてしまう。
たまには違う寝床で一夜を明かそうと、棲家への帰宅をやめ、
目についた宿のドアベルを鳴らす女。

――受付が、言うには。

「相部屋……ねぇ。一人用の部屋に二人――ってんでないなら?
 俺は呑むけどさあ。肝心のもう一人って、誰よ?」

話していたら、背後から気配。

ブレア > 振り返る。

「おたくが、俺と一緒の部屋になるの?
 ……一晩だけだけど、よろしく~」

愛想良く、相手に笑顔で言って見せるが、いかんせん、口調が軽薄だ。
相手にどんな印象を与えているやら……。

ブレア > 受付から部屋の鍵を受け取ると、

「――行こうぜ?」

受け取ったのは自分なのに、それを相手に押し付けて。
部屋までエスコートさせようとする。
強引でマイペースな態度は、相手の出方を見るため。女の悪癖でもある。

……さて。相手の様子はどうだろうか。

ブレア > ――夜が更けていく。
ご案内:「平民地区/宿」からブレアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/図書館」に影時さんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/図書館」にフォンティーンさんが現れました。
影時 > 「……いやァ、フォンティーンよ。花言葉は、どう考えなくともあったから勝手に意味付けた、だろう。
 俺の知っている限りで云うなら、碑石やら何やらに刻まれてたのが使われる間に崩れて、文字として通用された、だったか」

そんな具合だった、らしいぞと。聞きかじりの知識を思い起こそう。
知識はあって損はない。変装して識者に混じる意味でも、だ。
花言葉については時折どうしてこう考えた、と思うものがある以上、起こりとしては多分そう古くはない。
何分センスが出てくる。花は他者の思う処に関係なく、あるがままに咲き開くというのに。

「洒落者って程じゃねェのさ。
 馬子にも衣装――なんて言ったりするが、余所者でも清潔で外面が良けりゃ見向きされるのよ」

此れには経験則が混じる。潜入工作を生業とする者としての感覚だ。
浮浪者になりきるとなれば、発する覇気も何も抑えて汚れに塗れ、石以て追われる痛みに耐える必要がある。
知らぬ地の者と交渉して生計を立てるにあたり、浮浪者然としたままではそうもいかない。
その意味でもやはり、最低限でも身なりには気を払う。それだけではなく――、

「少し、な。鍛冶に金工、革細工も納品仕事がありゃ遣れる位には遣るが、宿暮らしにゃ儘ならンなぁ」

少しと云うのは謙遜が混じる。一流に及ばないとはいえ、最低限それで食っていける程度には遣れる。
その才を活かして職人として築城中の城に潜入し、数か月に渡る偵察と攻略の仕込みを成したこともある。
鍛冶については、今の生活ではままならない。
鍛冶場があれば何かと都合がいいが、其れこそ一軒家でも購入しなければ難しい。
悩み処だ。定住しない放浪者を弁えている身として思いつつ、肩越しに本に気を取られる同行者を見遣る。

「なぁに。幸か不幸か、持ち合わせがあっただけだ。大したことはしてねぇよ……ん、んんンン?」

出先で使えそうな素材をと、採取していたのが運が良かったか。
採取したのは良いが、使途を考えあぐねていたものが偶々あっただけに過ぎないと。
そう答えつつ、己も引っ張り出した古地図を卓上で開き、照合にかかろう。
件の地図の地形から想定される天地、方角は想像を膨らませるに重要だが、最終確認として照合作業は欠かせない。
当たりをつけるなければ、いざ行って空ぶる徒労が生じるのみだ。何としてもそれは避けたい。

のだが……、何となしに開いた古地図の地形が、予想に反して正解に近かったらしい。
最初に開いたのは、今でいうハデクの主戦場の付近だ。古地図に曰くハデクの丘、とされる地域の一角。
国境に近い奥まった箇所と、地形の線が近似している――ように思われる。

フォンティーン > 「…――存外詰まらん事を言うな。
 数多ある内の九分九厘人の勝手な意味づけだとして、全てがそうとは誰にも言えないだろうに。

 ふ――む?刻んでいたのは絵だったのだろうな、この流れ的に。
 花を描いたら花という文字の認識がひとの中に生まれた。」

前半、肩に下げおろした髪の束を背へと追い落としつつ、
片目を細めて当然事とばかりに語る知人の姿を眺めみた。
描いて生まれる。何か暗示的な物を感じて手の中の頁を遊びつつ呟き。
小さく小さく呟いている心算なのに天井の高い此処は少し残響が大きいようだった。

うん、とその視線が振り向くのは外面の部分。
其処は正直良く判ると苦笑交じりに同意するも、
清潔である事だけを重視するのでなければ其処に個性も性質も出る。

「清潔で外面が良く、見向きされる――事が邪魔であるときも多分にあるが。
 ……鍛冶迄齧っているとは思っていないぞ、いや、洒落じゃなく。」

丁度彼の言葉を端から順繰りになぞって思い描くのは性差のある感想か。
余り面白い事を語る風ではなく、あっさりとした印象の音吐は、
次いだ呆れの音に簡単に余韻を消された。先ほどから、強いてもいないのに洒落の単語が口をつく。

マントの隠しへと滑り落ちていく細長い荷物を指先で摩り、
暫し首を傾いで考え、今一度引き出そうとした指を中途で止めて奥迄。
中身は一度自然に地に落ちた物であったのだろう、指先に返る反動がやさしい。

「無理のない、良い物だ。此処で呼んで仕舞うのが楽だが、一寸場との相性が悪いな。
 流石に――……」

そうして向けた視線。素っ頓狂な声は、まだ短い間柄の知己には珍しい。
まあ大方予測は付いて居るのだが――随分運も勘も良く小器用であると、其れくらいは察しているのだが。

「     …――なぁ、トキ。
 あの迷い路が徒労であった、などとは言うてくれるなよ?」

男の視線が上がる前に、回答が口をつく前に、
図が大きく描かれた本の影で口許を隠すと、つう、と双眸を細める様にして頬笑んで、

妙な圧を掛けた。戯れ八割、本音ひとつまみ。
声は謂わば猫を撫でたあれだ。

影時 > 「花を愛でて酒を呑む機微ならば分かるが、俺の故郷には無ェもんでな。
 だが、例えとしては――か。花のように可憐で、やら云う形容から起こり深めてったとするなら、合点はいくな。

 そうさな。
 花の文字はまた別の成り立ちが混じンだが、例えば……こんな風に三本の線を描いて、古人は流れ、川の流れと表した。
 それがいつしか文字として定まり、常用されるるように至った。「川」を意味する文字として、だ」

花とは愛でながら酒を呑めれば良い、という機微は忍びになってというより、仕えた将等に影響されてからが大きい。
忍びとは知識も何もかも含め、悉くを手段として見ることがある。
風雅、風流の類とは思いっきり縁遠いものだ。その有り方を極め尽くすなら、絡繰りの如くとも例えるのものも無ではない。

こういう場所だと、白墨を片手に黒板を背にしながら物語る方がいっそよりよく響くのだろうか。
こんな風に、と中空に長短長の三本線を描き、どう云えば伝わるかと思案しながら講釈しよう。

「……あー、そいつは多分男じゃなくて女を見ようとする目のほうじゃねェかな。
 出来ることが多けりゃ多い程、重宝されン時は多いのよ。何かとな。
 
 それでも無理なことは幾つもあるがな。魔物の革の下処理や加工等、俺個人じゃ無理が過ぎる」

面白げという風にはあっさりとした音吐の連なりに、ははぁという風情で云わんとするところを察しよう。
ありがち、ではあるが、解せない事柄ではない。見目良く。器量よく。外面よく――となれば、嫌でも目を引こう。
内心に浮かぶ三拍子を鑑みるように、蜜色の編み髪を揺らす様を見る。
色気を出す位に整えてしまえば、十分目を引けると思うのは、贔屓目かどうか。

「――……ンにゃ。徒労、でもあるまいよ。こいつは糸口だが、決まり手でもないぞ。

 絞ることは出来たかもしれん。が、道筋を確定させるにゃ、どうする? 
 年を追っての同じあたりの地図を幾つか見繕って照らし合わせなきゃならん。

 これが存外厄介でな。お前さん、地図をどうやって作るかどうか分かるか?」

聞こえてきたのは、渡したものを吟味するような呟きだ。原木からもぎ取るという手荒はしていない。
落ちたものを見繕い、木に礼を示したうえで採取したものだ。

ともあれ問題は、こちらか。此れは小器用というより時の運、偶然の運――かもしれない。
声に宿る圧に真逆、とばかりに両手を挙げてみせながら、件の地域の地図を年代を経て書架から引きずり出し、並べてみせよう。
何処か慣れた素振りで問題の地域と思われる地図の頁を開き、列挙してゆく。
抽象的めいた線の描画と、よく分からないイラストの注釈から、時代を経て細密となったと思えば、まるで地図そのものが書き換わったかのようなものもある。

フォンティーン > 「成程。確か花言葉は西が発祥か――フウフウ鳥と卵では無いけれど、
 言葉が生み出し形付けて行った花もあると考える方が楽しいでしょう。

 …ん――?如何してこれが『川』になる?」

元々の思考や成り立ちが彼の故郷ではなく此方の地域に因る物だとすれば、
今一つ通じる所が無いのも納得がいく。親鳥が先か、卵が先か。そんな慣用句を用いつつ、
想像する余地を欲しがるのは子供じみたか。

疑問符を面に一杯浮かべようと、周囲の知識の塊達は生憎と系統違い。
宙に描かれる三本線。長い指が描く其れは実質を持たない物だから、
朧にその字形については思い浮かぶ物の、図化には到底及ばない。

三本線は判る。其れが川を意味するのも。
実物の川だけが其処に紐づかないと指先で描いて真似てみるものの、
線の長さは適当に三本とも同じくらいの長さ。

「一つを深く習熟するのも、幾つもを手広く愛でるのも同じように才能だ。
 どちらも突き抜けている事だけが難しい。君は色々と頼まれ事が多そうだしなあ。

 ……うん、其れはな、突き抜けている方だ。
 逆に、他に気を注ぐ輩は如何に巧く熟そうと任せたくはない気持ちになる。」

こと一人旅だの、単身[ソロ]だのという類になると無駄な苦労を背負い勝ちではあるので、
通じたらしい様子に、如何だろう――とは、簡単にはぐらかし。
其れも自己責任と云えばそれまでだ。

重宝されるのは目の前の人物を見れば良く判る。ある程度何でも熟せた上に、
間違って技量の足りぬ事があれど経験と機転で何とかできるだろう――と、
思わせて仕舞う人物像は恐らく、一角の職人よりも得難いの、ではと。
想像はつきつつも、事も無く専門性の高い手仕事を出してくる様子に少々捻くれも顔を出す。
其の類の素材は集めて加工に出す側とて多寡はあれど思い入れるもの。生半には任せられないと頚を振る発注側の代弁。

「……――まぁ、冗談だ。解く楽しみを感じて居られる間にある程度範囲が狭められるのは重畳。
 …地図の造り方?測量――という程度にしか。国や地域で随分とその基準が異なるのは見て来たが。」

偶然手に取っていた書物は絵柄が綺麗で判り易かった。
特に今回に役立たぬとしても、貸出が可能か聞いてみようと共連れにして
相手が地図を広げる大机へと歩みより、傍らにその書物を置いた。

彼の問い掛けは知ることの範疇外。元々地図という文化が無いものだから、
虚を突かれたように数度瞬いて傍らから次々と開かれていく地図を覗き込み、
或いは折線に従い又閉じようとするものがあれば、手を伸ばして開いた儘で押さえたりなど。