2020/11/07 のログ
■タピオカ > 「やった!……じゃあ、お邪魔するよ。
弾正のお部屋に!……大丈夫!手垢をわざとくっつけたり、ペロペロ舐めたりしないから!」
この世からもあの世からもかき集めるコレクションとは何だろう。
その一端たる宝刀でも様々な意味で年季の入ったものだった。
長い時間の中で彼はその得物以上のものを手にしているかもしれない。
声音が明るく、ぱぁっと表情輝かせ。
わざと不穏さを残す事を告げるのは、冗句からだと容易に知れるだろう。
目が笑ってる。
相応の報いがどういう意味なのかは、既に知っている通りだ。
「その明かりは……地下室にかかってるたいまつの火を持ってきたの?
かつんかつん、湿った階段を降りる時に見える明かりみたい。
それとも……。誕生日ケーキのろうそくの火?
吹き消されるのを待ってるみたい」
灯された指先の明かり。
小さな着火なら、おそらく初級魔法使いであれば使える魔法だろう。
相応の報いという言葉の流れから、火は報復を示しているのかとも思ったけれど。
喧騒に細く踊る様子は燃えるよりも漂う風情が見て取れる。
どこか、彼のコレクションの物品の面影思わせる、そんな火への感想を浮かべ。――消えていくのを見守り。
「良いも悪いも勝手な生き物だもんね。
コインの表が裏にひっくりかえったり。
知恵も暴力とひっくりかえったり。
賢いと思って跳ねるカエルが、お腹を見せてひっくりかえってたり」
モラルなんてその時々で、気まぐれにうつろう。
そのわがままさは人間を凌駕していて、知恵で解決するよりも暴力での解決が思慮深い事もある。
冒険者ギルドで依頼をしていればそれを感じることもある。
ふるまい次第よりも運次第で誰しも、ひっくり帰ったカエルが渇いたお腹を晒すように平べったくされてしまう。
手段、と最初から一刀両断していれば非常に整理が効いている。
どちらも悪いと言わない。その言葉にこくんと頷いて。
「そっか、ごめんなさい。
……犠牲厭わぬ天下の蒐集家と、天災雷神の戦いかあ。
激しかったんだろうな。いくつの山が塵になったのかな。
勝った天災は……どんな顔をしてたかな」
心外そうな響きを持った。
頭を下げ。
単に勧善懲悪が働いたわけではなさそうだ。多く詳しく聞くわけではないから全貌はわからないが、
物憂いの泉のそばでじっと腰を下ろしているよな目つきになる相手へぽつりぽつりと漏らして。
「ふふ。これよりもっとすごいことをしてきたって顔、してるね。
どっちにしても信頼してるよ。……僕たちの宴のなかで、弾正が集めたいって思うものが見つからない事を祈ろうかな!
――ぜひぜひ!青草と高原の世界へようこそ!」
上げた処刑方法が懐かしい面持ちを呼んだようだ。
その意外な反応に逆に何か親しげなものを感じて瞳は細められて。
どうあれ。彼を客人として迎えたい、歓迎したいという気持ちには変わらず。
そして、コレクターの琴線に触れる事が無い事を、やはり冗句めいて告げ。
案内前から、すでに案内している気分。
故郷の入り口に立って案内する公式大使みたいに両手を広げてみせ。間もなく元へ戻され。
「ん……っ……。
えへ。……ありがと、弾正!」
火の生まれ故郷のような、小さな熱を帯びた。
鍛冶屋が打ち始める直前の、元々鉱物が持っていたほのかなあたたかさ。
まるでそんな指先が頬に触れ。小さく息声を鳴らして。
唇三日月に、褒められて目元にそっと赤き花が花開き。
■弾正 >
「犬では在るまいに……何、形在る物は何れ崩れる。
必定だ。万一が在っても、其れが運命(さだめ)。
……尤も、"代わり"は用意してもらうがね。」
確かに如何なる物も蒐集し、歩き、収めた。
然れど、物の必定は弁えている。此れは、理だ。
理に逆らう事など出来やしない。
其の理に収まる身として、文字通り"身を以て体験した"。
故に、手垢が付こうが欠けようとも、致し方無き事。
然るに、してしまった以上は勿論代わりを用意してもらうのみ。
口角を吊り上げたまま、少女を覗き込むような翡翠の双眸。
果たして、一体何を"代わり"とされるかは……崩れた時に、分かる事だ。
「かくも、私を死に誘ったのは雷神だ。文字通り、雷を従える。
其れと同じくして、私も自在に火を操る事が出来てね……。
……嗚呼、良く燃えるとも。此方の世界では、魔術と言えば良いのかな?」
其れに近しい術だと弾正は語る。
燎原の如く、瞬く間に燃え広がるものだと。
かくも、其れは欲望の火と言うように他成らず。
此の世界で、如何にして燃え広がるのか……其れは誰にも分かるまい。
「成る程。君は思ったよりも、物の捉え方を心得ているようだ。
結構な事だ……。……嗚呼、謝る事は何一つ無い。
私の世界は、乱世でね。戦等、日常茶飯事……有体に言えば、"よくある事"だ。」
何処をかしこも死が漂う。
骸ばかりの上で、平民も武士も貴族も生き続ける戦の世。
誰もが納めるべくして、己が欲望の為に戦う群雄割拠。
故に、"心得"が在るとも言った。草原の民の拷問。
戦場に身を置いた弾正には、"心得た"ものだ。
くつくつと喉を鳴らし、笑った。少女の褐色の頬を軽く撫で、ゆったりと枯れた指先は離れていく。
「礼を言われる筋合いも無いよ。君の故郷に案内された時に、とっておき給え。……おや……。」
さて、と樽を見やれば其れを満たす物は無い。
如何やら、気づけば飲み干してしまったようだ。
では、頃合いだ。袖からからん、と乾いた音を立ててカウンターに並ぶ、"二人分"の硬貨。
「是で足りるかな?……嗚呼、足りぬので在れば"色"を付けるとも。
さて、タピオカ。私はそろそろ出立するとしよう。如何するかね?
望むので在れば、今暫し君に付き合うのも吝かでは無いがね……。」
其の程度には、少女の事を買っていた。
翡翠が横目で問いかける。
■タピオカ > 炎に例えられるのは何だろう。
燃えるような、欲望と彼は例えた。
相手の物言いに首肯する。確かに火みたいだ。
酸素を吸い付くし食らい付くし、延々と燃えることを欲する。
空気が無くなるその時まで、まるごと灰にするまで。
物を集め求めるのとどこか似ている。
指先にともったものは、単なる魔術のひと披露だとは思えなかった。
相手の生き様、そのもののひとつの顔を見せてもらった。そんな気になる。
雷と火が向き合った時、鳴った剣戟の後の灰積りに心残り。
人の心は人にはわからないが、複雑に折り重なった末に生まれた遺恨が、
彼が壁と表現したものが、なにか尊くすら感じたから。
ふうと息して消えた灯火をつけていた指先を、そっと指で撫でたがり。
「この王都も……。今は中も外も戦争だらけ。
弾正からしたら、まだ平和なのかも」
自分ばかりは酷い、悪い場所や体験を知っている。
そう思いがちな人間ではあるけれど、相手はきっともっと酷い修羅を知っているだろうから。
一種の、戦士、死と隣り合わせになった、それすら通り抜けた、彼の存在が世代を超えた先人に見える。
どこか尊敬滲ませた視線。……頬から離れゆく指に少しさみしげになる。
自分のグラスもいつの間にか空白になっていた。
指先で小さく下唇を拭って。
「わ、……ありがと!ごちそうさま!
行っちゃうんだ。……じゃあ、僕は引き止めない。
ここで、弾正をお見送りするよ。
今日は、弾正と知り合えてお話できて良かった。またね!」
自分の分の支払いをもってもらって、両手を合わせて頬の横へ。
そのまま笑顔を浮かべながら、相手の出立を送る事にする。
「弾正にまた新しいコレクションが見つかるように!
それが手に入りますように!」
別れ際にはそうやって、跳ねる声音が相手の背に聞こえるものと――。
■弾正 >
此処は根の国、底の国。
幽世とは言わずとも、此処はうららと灰と塵が舞い飛ぶ。
乱世よりは、些か心地は良き場所也。
剣を振るうより、策謀を巡らす方が性に合う。
唯、やはり、とも言うべきか。此処に故郷は無い。
帰るべき場所も無き第二の生。当て無き旅路。
はてさて、如何なる物が満たしてくれるのか。
此処を例えるとするので在れば……。
「然り。だが、斜陽の国。何れ全てが灰に成るだろう。
私は、嫌いでは無いよ。欲界として、是は人が招いた結果だとも。」
成り立たせたのは、他成る人。
此処は欲界だと例えていく。
成れば蒐集に心得れば、何をするものか。
ゆったりと席を立てば、振り返る事は無い。
少女の声高に、背を押され、弾正は応えるように、軽く手を上げた。
さて、次なる出会いは何を満たしてくれるのか──────。
かくも、歩みは軽い事か。
ありきたりで在る様に、酒場に一人、影は去る。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からタピオカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」から弾正さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 寝坊して朝ごはん抜いた――忙しくて昼食を摂る暇がなかった――夜ごはん、まだありつけていない――結果、丸一日何も食べてない。
「お、お腹が………」
ぐきゅるるるるるる~………
「空いた………」
繁華街の賑わう人並みから少し外れた平民地区のとある路地の片隅。午後9時前後のそこには空っぽの胃袋を盛大に鳴かせまくっている一人の女。空腹にふらふらして、思わず路傍に蹲り、膝を抱えるようにした上に顔を埋めて。
「やばい、ヤバ過ぎる……腹が減り過ぎて動けない、とか……」
乙女にあるまじき醜態。不覚、ダイエットでもないのにごはんを食べ損ねるなんてわたしとしたことが。
そう悔やみながら、脇を何の関心もなく行き過ぎる通行人に今のところ蹴られることもなく、道の脇で蹲って呻く情けない態。
ヒーラーの仕事ができなくなって大分経つ。下働きの仕事をいくつか掛け持ちして生活費を稼いで、その合間に失ってしまった魔法を取り戻す為に調べ物をしたり、と以前よりも格段に忙しくなった日々。しかし、不眠不休で、とまで今は追い詰められていないので、こうして食事を抜いてしまったのはただのうっかりであるが。
それにしても、ぐうぐう腹を鳴らしながら動けなくなって道端で行動不能とはなんと不甲斐ないことか。
夜を迎えて気温が下がり、石畳の冷たさがじかに伝わって来て、くしゅんとくしゃみを零し、その弾みで大きく、ぐう!と腹も鳴り。なんて恥ずかしい女に成り下がってしまったのだ、と苦悩するが――本性は所詮ゴリラである。別段支障はないだろうことは、本人以外が知っている。
■ティアフェル > こうして路地で蹲っていると、なんだか路傍の石になった気持ちになる。本物の石ころならばこのまま蹴られてあっちへぶつかりこっちへぶつかり、とそれはそれで忙しないのかも知れない。
けれど、やはりただの人間だし、今は虫の居所が悪くて誰かれ構わず八つ当たりでもしたい、という危険思想な人物も通りかからないままだったので、ぐうぐうお腹を鳴らしながらも石のようで石じゃなくただただ、コンパクトにまとまっていたが。
わざとじゃなくってもそんな所に人がいるとも思わずうっかり蹴っちゃうなんて事故もその内起こるもんで――、
げしっ
「い、っだ……!」
後ろから歩いて来た通行人にそれこそ路傍の石ころよろしく、障害物として蹴っ飛ばされ悲鳴が上がる。
こんな所で丸まっていたのだから、それはそんなこともあろうものだが……完全に油断していたのでモロに食らって一瞬目から涙が。
「っくうぅぅ~……」
痛い。これは綺麗に入った。クリティカルなヒットに腰を抑えて鈍い痛みに唸った。
■ティアフェル > こんな所で蹲っていたのだから止む無いが、それにしても蹴った相手に『なんだ、邪魔だぞ!』と罵声を浴びせられれば、すみませんごもっともです、と殊勝な気分になるよりもむっとくる。
「な――……」
何よ!蹴っといて!と文句のひとつでも云ってやろうかと立ち上がって口を開きかけるが。急に立ち上がるとくらっと眩暈がして立ち眩み、反論の声はあっさり途切れ――
「ぁー………」
ふらつく頼りない身体を支えるために壁に手を付き、額を抑えながらはあぁ~……と深々息づき。
「とにかくさっさと何か食べなきゃ……」
食わず食わずでいるもんじゃない。ぐーぐー文句を云う腹を抑えながら抑えながらちょっとばかり覚束ない足取りで手早く手軽く摂取できる食料求め夜の街を横切っていくのだった――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からティアフェルさんが去りました。