2020/08/11 のログ
■ヴィルア > やはり、情報通り襲撃はあった。
『何か』の理由で襲ってきた一般人は偶然だが…
「ふむ」
たった一言。
何か理解を得たように男は頷く。
重なった悪い偶然にも対応できるらしい。
女の『声』を受け、刃物をゆったりと構えた…刺客らしき者の内一人が唐突に燃える。
詠唱もなく、陣を書かない魔法は予想外だったのか。
刺客…燃やされていない方が、驚いてそちらをつい見てしまい。
その隙を逃す護衛ではなく。
剣を抜いたかと思えば、躊躇いなく刺客を切る。
剣筋は重く早く、一撃で致命傷を与え。
更に、幻の炎に焼かれたローブが燃え盛り。
女の声が無くなっても、刺客を焼き続ける。
混乱に声をあげる刺客など、ベテラン護衛にとっては切ることは造作もない。
あっという間に2人が制圧され。
残ったのは一般人一人。
更に、まだ進んではいるものの…唐突な発火に怯え、その勢いは弱っている。
徒手であっても、抑えることは可能だろう。
しかし…
『く、くそう…。娘、娘を……娘ぉぉぉぉ』
取り押さえられれば、その一般人…中年の男はぼろぼろと涙を流し始める。
それに女が疑問を覚える前に。
「適当に刃物を取り上げて転がしておいてくれ。…約束の時間までそう余裕はない」
指示が飛ぶ。
ベテラン護衛は切った刺客を蹴って道の端に転がし。
剣を一度収めて戻ってくる。
辺りに警戒しても一応これで刺客は終わりの様だ。
…女が疑問を抱いたとしても、何事もなかったかのように…男と護衛は、また歩き出していく。
■シンディ・オーネ > 「――ふん…」
やはり陽動に雇われた一般人か。
刃物を手に迫る平服の男は、勢いを削がれているくせに前進を止めない。
殺意に対する恐怖心が無くは無いけれど、
養父である魔術師との戦闘訓練が目の前の相手を明確に格下であると認識させて、鼻で笑った。
――刃物に怯まず平服の襲撃者に体当たり、もとい抱き着く。
肩で押し姿勢を崩せば次の瞬間には腰を抱いたまま背後へ回り込んでいる、
分類するならレスリングか何かの挙動で拘束して刃物を落とさせ、
パズルのように組み付いた姿勢で関節を捩り上げる雰囲気はもはや遊んでいる。
「――刺してもいいのは刺されてもいいやつだけだ。
半端だな、命かけるにはさあ――」
ギリギリと締めあげて勝利を確信しながら、なぶるように声をかければ男が『娘』と。
「…あ? 娘って――
…って、えええっちょ! あ、あの何か縛る物とか!?
これっ… これどうするんですかちょっと!!」
私何も持ってない。
こんな風に人様を襲撃するような輩は、
治安維持組織か何かに突き出さなきゃいけないんじゃないのかと。
誰が命令したとかそういうの聞き出さなくて良いのかと。
うろたえるが、指示はもらっている。
先に歩き出してしまっている。
マジか!? と焦って、凄く雑に締め落としてしまった。
男のシャツを使って両腕を、ベルトを使って足をこれでもかと拘束し、放置。
がんばってみたが焦っていたし、意識を取り戻せば逃げられてしまうかもしれない。
「――あの、あれじゃ起きたら逃げられますが!
…今の、知り合いですか?」
後ろを振り返り振り返り後に続こう。
■ヴィルア > 何の訓練も受けていない。
言ってしまえば『雇われて』すらいないような一般人。
炎を、争いを見慣れていない反応そのもののまま、組み敷かれる。
ならば、その一般人が襲ってきたのはどういった事なのか。
『ぐえ…』
女に締め落とされた男が、カエルのような声を上げて意識を落とす。
そして歩き出せば…後ろから慌てたような声。
けれど、あれが刺客ではないことは、ヴィルアにはわかっている。
その話を聞いたところで、どうしようもないことを
「ああ、すまない。わざわざ縛ってくれたのか。生け捕りに、と言ったのを覚えていてくれたのか。
…しかし、刺客と違って…ああいうのは日常以下だ。
いちいち、目覚めた後に事情を聞くのも面倒なのでね」
追いついてきた女に労いを。
よくよく思い返してみれば、男は最初から涙を流しそうなほど激昂していた。
刺客が雇ったのであれば…どちらかと言えば個人的な恨み+金、と言ったところだろうが。
あの平民は、純然たる恨みを前面に出していた。
それだけで、男には予想が付く。
あれは、奴隷とした娘の一人の…父親だと。
「知り合いか。まあ、縁があるという部分ではそうとも言える。
が、しかし…今はそれを教えるには、君の口の堅さを確かめられていないね」
いつも通り…というか、女が知っている通り優しく微笑んで。
何事もなかったかのように。
とある…屋敷と言うには小さく、家と言うには大きい邸宅にたどり着く。
「扉の前で待っていてくれ。ここまで来れば、後は帰りだけだ」
その邸宅の召使いに名前を伝えれば。
邸宅の主人の部屋らしき場所の前まで案内され。
二人の護衛には、扉の前に待機するように告げる。
『…………。先程は、いい手際と判断だった。師がいいのだろうな。冒険者と言うのは勿体ないぐらいだ』
特に私語は制限されていないため。
先輩冒険者がぽつりと話しかけてくる。
これもまた、休憩時間と言えるだろうか。質問を返すも、ただ相手からの言葉に応えるのも、自由だ。
■シンディ・オーネ > 威勢をつけるために、ときの声を上げたのだろうと考えた。
食い詰めて、慣れない襲撃にはした金で参加した捨て駒なのだろうと。
しかし間近で締め上げた男の態度となると、もう少ししっかりと見えて来る、
――追いかけて、捕まえる必要も無かったと言われると「じゃあ解いて来ないと」とオロオロするが、
最前言ったようにろくな拘束じゃない。
帰り道でまだ転がっていたらその時助けてやろうと割り切った。
「日常以下… ああ、はい…」
口の堅さと言われると、まあそうでしょうねと納得。
そして、良くない事を… 少なくともあの父親にとってはそういう事をして恨まれたのだなとは察しがついたから、あとは黙る。
そこでやっと、切り捨てられた本命二人の事を思った。
人を本格的に焼いたのは初めてだ。
ろくに相手の方も見ずに当てずっぽうで発生させた火炎だが、予想を外さず役に立てたようで何より。
斬ったのが自分でないからか、何だか実感が無い。
少し上の空になる道中で、追加の襲撃が無かったのは幸いだ。
また結構なお屋敷に到着すれば、中ではやはりおのぼりさんになってしまう。
最低限その場に佇んではいるものの、そわそわきょろきょろしていたら先輩から声が。
「…先生は、養父は本当にこればっかりの人だった。
何に使うとかそういうのは無くて、魔術と戦い方… 生き残り方、かしらね。
たぶん私一人だったら、仕事を選ばない冒険者になっていたかもしれない。
…冒険者は、相棒の夢なんです。今は一緒にできないけど。
そいつが勇者サマになりたいって言うようなやつだから、
私も少しはマシな人になれるのかもしれない。」
最後の方はのろけか?いやいや、認めるような事を言ってくれた先輩に、自己紹介のつもりである。
魔術を褒められるのが、とても嬉しいのだ。
故郷では、養父のそれが村の運営にとって当てにされるものでありながら、
やはり魔術を恐ろしいもの、気味の悪いものとして捉えるのが当然という風潮があって。
「…ヴィルア様は、仕掛けた事もある?
悪いなんて思わない。こういう世界なんでしょう。
やられてるんだから、やってなきゃ不自然って思ってもいい。」
悪感情から聞くのではないと注釈をつけて。
ヴィルアも誰かに刺客を送る事があるかと、護衛の先輩に聞くのも違うかもしれないが。
■ヴィルア > 実力と性根は認めたものの…深いところまで見せるかは働き等次第。
焼かれ、切られた二人は…当然、生きてはいないか、生きていても放置されれば同じ結果に行きつくだろう。
邸宅にたどり着いた後、しばらくは…扉の前に待機とはなるものの。
客人だと伝わっているのか、この邸宅の召使たちもまた軽く会釈をして去っていく。
彼らにも、仕事があるためその程度しかしないが少なくとも歓迎されていることはわかるか。
『ほう。勇者ね。…現実を知ったと同時に、死なないといいがな』
敢えて、と言うよりは…切った張ったを乗り越えてきたからこそ厳しい事を言う。
勇者などと呼ばれるのは一握りとも言えない数で。
ほとんどは、その夢の中で死んでいく。
諫めるように、そう言った後。
『ああ。仕掛けることもある。ただその際は…汚れ仕事に適した者だな
より高額な給金が支払われるが…それを望まないものには、ヴィルア様は決してその仕事は振らない
個々の適性を見極める目には、信頼がおける。それは、感じただろう?』
声を抑えながら、女には聞こえる声量で話をする。
質問の答えは、肯定だ。
もちろん、やり返すこともある、と。
しかしそれには条件があることも。
『信頼できないというのなら、それでもいいだろう。
ヴィルア様は、手元に居る間は非常に寛容に接される。
じっくりと、見極めてもいいだろう。給金も十分支払われる。…生活には困らんしな』
そう軽く言って。
またぴし、とベテランは背筋を伸ばす。
そして…話自体はほとんど終わっているようなものなのだったのか、あっさりと…扉の奥から足音が聞こえてくる。
間違いなく、ヴィルアが戻ってきた音だ。
「ふぅ。いや、この程度で護衛を依頼してすまないね。親睦は深められたかな?」
『…はい。彼女の相棒が勇者を目指している、という興味深い話が聞けましたよ』
「ほう…それはそれは。確かに、正義感が強いと言っていたものな」
扉を開けた直後に、ヴィルアがそう聞けば。
ベテラン護衛は…聞かれて女の立場が悪くなりそうなことは言わない。
逆にヴィルアも…その話に興味を示していて。
「さて、帰ろうか。…ああ、言うのを忘れていた。
先程の判断は見事だった。シンディ。少なくとも護衛の部分に関しては全く問題は無さそうだ。
勿論、危険給も即日払おう。良ければ、しばらく続けてくれると助かるね」
大した指示も出していないのによく動いた、と歩き出しながらではあるが労い
護衛もまたこく、と頷き…認められたことを示そうか。
仮採用ではなく、実力を示したからこそ、本採用だと。
邸宅を出れば…同じ道を通り。
やはり、息絶えている刺客がいるが。
ただ、平民の男は逃げたのか、その場には居ない。
それで女がどう思うかはわからないが…またのんびりと。
話しかければ答えてくれそうな自然さで、邸宅へと戻っていこうか。
■シンディ・オーネ > 「ええ、それはちょっと無理目と分かってくれるといいけど。」
死なないといい、ホントにねと、呆れるような調子で返す声は楽し気だ。
ベテランが語ってくれるヴィルアの話には、すんなりと頷く。
成功させるべく仕事を任せるのならもちろん、望まない者を報酬で釣ったりするより、
それを本業にする者に任せるのが良いだろう。そういう伝手はありそうだし。
やらされると心配しているわけではないし、それを悪いとも思わない。
やられたらやり返すのは当然で、あまり積極的に手を出すのはどうかと思うがヴィルアはそういう手合いに見えなかった。
「信頼とは関係ない。
ヴィルア様の事を良く知らないっていう意味ではまだ信頼も何も無いけど、
それとは別にヴィルア様の仕事がどういう世界でも、そこで当たり前の事をしてるだけって話なら、
個人の信頼とどういう世界で生きてるかは、ね。」
別でしょうと、割り切ったようにさらりと言うけれど…
例えば奴隷の事などよく知らず、その一端を担っているとなるとどういう判断になるかは、それを知るまで分からない。
実に薄っぺらく、しかしこの時は本当に、あの温和そうに見えるヴィルアがそう酷い事なんてしないだろうと安易に決めてかかっていた。
――おっと?
ベテランが背筋を伸ばせば、ぴしと気を付けをしてならう。
お見事。あれ、早くない?と思うが間もなく足音が聞こえて来た。
「この程度ですか?
…というより、どの程度でも契約時間内ですが、あ、な…」
襲撃もあったし今日こそは護衛がいてよかった日だ。
会談の時間について言ったのだろうけど、仕事ですから一日連れ回したって文句言いませんよと生真面目にヴィルアに返し…
おかえりなさい、とお澄まし顔をしていたら勇者の話。
いやそれは別に親睦関係ないじゃないかようと照れるが、
改めて人から話題にされると照れるだけでどちらにもそんな話はしている。
そうですよ、ちょっと子供っぽいがいいやつなんですと、ほんのり顔赤く胸をはっておく。
「ありがとうございます。」
本採用の話には、当然と受けて、四の五の言わない。
少し思うところもあったが、驚く程に環境の良い職場という評価は変わらない。
襲撃が例外的というほど稀でなく、よくあるとなると多少の怖さはあるが今日の件は自分が通用するという自信になった。
…帰り道、息絶えた刺客2名はそのまま。
致命傷は火炎でなく斬撃だったのだろうと、確認したい思いに駆られて、いや同じ事だと近付かないでおく。
遺体の処理とかしなくていいのかなと二人を見やるが、何も言われなければ口には出さなかった。
殺す気でやって来た者に、返す礼儀も無いものだ。
…もう一人、縛り上げていたはずの男はおらず、思わずほっとしまうのを自覚する。
――その夜宿で、相棒たるアーネストには、はじめての襲撃と護衛の成功について手柄を上げた体で話すのだろう。
しかしたまらなくなって、襲撃者を殺してしまった事にも言及する。
…ただ『娘』と言った男の事は、襲撃者の一味として扱いクローズアップすることができない。
■ヴィルア > 労い、勇者の話に少しからかうようにはしたが。
雰囲気は、変わらない。
緩やかに…しかししっかりと歓迎する意思を示すだけだ。
いくら裏で誰かを不幸にしていても。
―――彼は奴隷売買に対して罪悪感など抱いていない、悪党なのだから。
それは、裏であるが故に軽々には語られない。
語られた時には、どうなることか。
ただ、今は…
危険手当として倍の金額が女に支払われ。
多少は恋人と贅沢もできるだろうか。
そうしてまた、シフトが組まれ――
女と同じように新しく雇われた護衛も幾人か邸宅に現れるようになる。
だから、シフトに関してもある程度日にちの自由が利くようになっていく。
それは女にとっては更に都合がよい仕事場と判断できる要因となっていくだろうか。
裏の真実を知るか、あるいは仕事中に『何か』が起こるまでは。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシンディ・オーネさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヴィルアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミズホさんが現れました。
■ミズホ > 平民地区を歩くミズホ。
少し買い出しをして家に帰るところである。
家自体は現状平民地区に小さな一軒家を借りている。
暮らすにはそう大きな建物は要らない、と思っており、小さな家で一人きりで住んでいるのだ。
ゆっくりと街を見ながら、買い物をしながら歩き回る。
その様子は見る人間が見れば隙だらけ、といったところだろう。
裏道などの危ない道も通ったりしている。
貧民地区よりは治安がいいとはいえ、平民地区だって悪いことを考える人間もいるだろう。
そういう人間が彼女に悪事を働けば、おそらく抵抗はできないのではなかろうか。
■ミズホ > 例えば裏路地に連れ込まれる。
例えば店の奥に連れ込まれる。
例えば騙されてひどい目に合う。
そういった「ひどいこと」というのは常日頃から起きているはずであり、住み慣れた人間はそういったことに巻き込まれないように無意識で注意をしている。
しかし、彼女は「隙だらけ」であった。
そういう彼女のような甘い人間に対し、様々なものが牙をむくものである。