2020/08/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」に黒須さんが現れました。
■黒須 > (強く日差しが差してくる王都の中心地区。
人々は暑さにやられてここに集まり、涼んでいることだろう。
そんな中、その雰囲気の名kでは異様な姿をした男が目の前を通っていた。)
「…多いな…。」
(黒い服装に身を宿した男、黒須・狼。
頭の先から足の先まで全て黒く、目にはサングラスをかけている姿をしていた。
片手にはよく冷えた酒瓶を持っており、一緒につまみも入っていた。
貧民地区時代、涼む場所なんてなく、その日の気温を何もせずに過ごさなければいけなかったため、すでに体が慣れていた。)
「さて…俺も適当に休憩…あ?」
(少し歩いていると目の端で気になる者が入った。
うつらうつらと舟を漕ぐ少女。
少女と言うより、見た目からして人形にも見える者が見えた。
何故少女が一人ここで…っと思うと、まぁ良いかで終わらせれず、考えるとめんどくさく思い、近寄った。)
「…おい、嬢ちゃん…。」
(反応するのだろうかと思い、とりあえず声をかけてみることにした。)
■ネム > 噴水のおかげで陽射しはあれど、漂う風には涼気が含まれている。
そんな中でこっくりこっくりと舟を漕ぐ少女に影が落ちると、膝の上に抱かれていた黒猫がくいっと少女の服を引っ張る。
「んぅ……お客さま…?」
こしこしと寝ぼけ眼を擦りつつ、纏わりつく睡魔を払うかのように軽く頭を振る。
小さな欠伸をひとつ漏らしてから、問いかけるのは鈴が鳴ったような澄んだ声で。
「………まっくろ。暑くない、の?」
眩しそうに陽射しの中に佇む相手を見上げてから、ぽつりと一言。
だって、服も黒なら、もふり甲斐のありそうな髪も黒。靴も黒だし、挙句、サングラスも黒だったから。
何かこだわりでもなければ、さすがに夏のこの熱い最中に革ジャンで黒はないだろう。
未だに眠たげな瞳をパチパチと瞬かせ。こてん、と首をかしげて思わずそんな一言を向けてしまう。
「子守り歌なら、1曲30ゴルド、だよ…?」
ぴょんと膝から降りた黒猫が、足元に置かれていた立て看板を器用に持ち上げる。
ちょっとばかりよろめくのはご愛敬。
それでもちゃんとバランスとを取って見せて、フンスとドヤ顔を見せるまでがパフォーマンス。
■黒須 > 「ん…動いた…。」
(膝の上に置かれている黒猫が起こす様子を見て、更には声を発すると少しびっくりした。
生きている人間だとは思っていたが、少し急であったため。)
「あ?…別に、あつかねぇけどよ…」
(やはり気にしているのだろう。
黒は熱を吸収しやすいため、余計に暑くなる。
服もそうであり、長い髪はもっと熱を集めそうであった。)
「…なんだ?子守歌って…。」
(少女が商売をしているように、歌を売ると言った。
しかし、片眉を上げて聞き返す黒須。
子守り歌と言うものを知らず、それが一体何なのかを知らなかった。
看板を見ても、何を売っているのか、疑問しかなかったのだ。)
■ネム > 「ふぇ……すっごーい………暑くないんだ?」
同じまっくろなのにねー?と看板を掲げた黒猫に声をかけると、
看板を団扇代わりにぶんぶんと振ってくる。
ちなみに風を送る相手は、同じく黒い同士に向けて。
持ち運びやすそうな薄っぺらい看板ではあるけれど、それでも若干の風は巻き起こる。
そのもふり度の高そうな髪が揺れる程度にまでは、どうにか。
「あれ? 知らない…の? 子守り歌……この国だと違うのかな……?
夜、寝るときに唄うの。よく寝られるんだよー」
まぁ、夜じゃなくても良いんだけど。と付け加えての解説。
国によって呼び方や文化は色々だろうから、と疑問を向けてきた相手にも丁寧な接客対応
当の本人の眠気はまだ飛んではいないらしく、小さく欠伸を漏らしながらではあったけれど。
「ついでに一緒に泊めてくれるなら、ちょこっとサービスしちゃうし。
それか子守り歌以外のリクエストも、だいじょーぶだよ。」
看板で扇いでいた黒猫がどこから取り出したのか、玩具のようなリュートをかき鳴らし。
■黒須 > 「…まぁ、慣れているからな…。」
(ボリボリと後ろ髪を掻く。
そんなに珍しい事なのだろうかと思いながらも、黒猫が団扇として看板を振って風を送ってくる。
特に涼しくなったとかはないが、気は利いているなと思い、軽く髪が揺れながら受ける。)
「んなもんあるんだな…?俺は貧民地区出身だし、親父は夜も起きて、女を抱いている所を見せてたし…そう言うのは知らねぇな。」
(寝ようと思えば寝れて、時間を決めればきっちりと起きれる体質のためそう言ったものが必要なかった。
そんな文化?もあるんだなと新た得て知識を得た気分であった。)
「サービス…?
…まぁ、貰えるもんが貰えるなら貰うし…それに、ちびっこ一人を街に居させるも、めんどくせぇからなぁ…。」
(商売をしているとは言え、こんな小さな子供一人街に居させればトラブルが起きるだろうと思い、そのサービスの条件として一泊止める様にしようとした。)
「んで、泊めるって、どっか適当な宿屋に連れていけばいいのか?」
■ネム > 「あるんだよー?
ほら、えっと、酒場とかで唄ってたりしない…?
あれのおやすみバージョン、だよ。」
慣れてはいても、暑いのには変わりないだろう。
それでも頑なに己のスタイルを貫き通す姿はいっそ清々しいのかもしれない。
―――真似はしたくはないけれど。
この街には来たばかりで貧民地区がどんなところなのかは知らないけれど。
名前の響きからして、そういうところなんだろうと当たりを付けて、
当の少女が出入りしようものなら、すぐさま摘まみ出されてしまいそうな場所を例に出し。
「お兄さん、いかついサングラスしてるけど、実はいい人なんだ…?
宿でも良いし、お兄さんの泊ってるところでも。なんだったら、納屋とかでもおっけーだよ。
サービスはその日の気分だけど……お兄さんになら、膝枕とか、かなぁ…?」
夜露さえ凌げれば、どこでも寝られるからねー、とにっこり。
けれど寝るからには、ふかふかなベッドがあるに越したことはなく。
■黒須 > 「あぁ、あれか…。
あれの寝る前の歌、か…。」
(言われてみれば、酒場では唄を歌う人は多く居る。
しかし、大抵は酔っ払って騒がしくなっているだけの物だ。
それを寝る前にすると言うのはどういうことなのだろうとまた疑問が増えたが、あらかたわかって来た。)
「別に、俺は良い人なんかじゃねぇ…。
ただただ、面倒なことが起きそうだからやっているだけだ。
あー…そうだな…。こっからだったら宿が近いし、そこにするか…そら…いくぞ…。」
(自分の家よりかは近いためそこら辺で良いだろうと思い決めた。
少女の前に手を差し出せば、そのままエスコートする様に移動しようかと思っていた。)
■ネム > 「こっちだと酒場に唄いに来る人とかいないのかな…?
騒がしいのも出来なくはないんだけど、やっぱり子守り歌が一番かなぁーって。」
何となくでも伝わったみたいで、ご満悦。
百聞は一見に如かず。この場合は、どっちも聞くなのだけれど、細かいことは気にしない。
「はぁーい、お買い上げありがとうございます。」
行くぞと言われれば、素直に立ち上がる。
先ほどまでリュートを鳴らしていた黒猫のぬいぐるみがぴょんとジャンプすると、
少女が肩から掛けている鞄へと飛び込んでくる。
ちなみに先ほどまであった看板は、いつの間にやら消え失せている。
「これでいい人じゃなかったら、世の中の人、みんな極悪人になっちゃうよ?」
差し出された手にちょこんと自らの小さな手を添えて。
空いた手で、スカートを摘まむと軽く膝を折る。
エスコートをして頂けるというのなら、こちらもそれに見合った仕草で返し。
■黒須 > 「居ても酔っ払って歌い出す奴ぐらいだな?
俺の家の近くの酒場じゃ…そう言うのは見た事ねぇな。」
(ともかく、この少女が歌うのだろうと思いそれを聞けばわかるだろうと質問は切り上げることにした。)
「コノ程度、普通だろう…。」
(自分では普通だと思っていることが良い人扱いになるとは世も末だなと思い、髪を軽く掻く。
そんなこんなで礼儀正しい少女と歩幅を合わせ、慣れた様子で連れていく。
到着した宿屋に付くと、そのまま部屋を一つ借りて移動する。)
「ここだな…。
んで、膝枕のサービス付きで、子守り歌を披露するのか…?」
(部屋に入り、ベットに腰を掛ける。
掛けているサングラスを取ると、そこには鋭い目つきの素顔が。
ポーカーフェイスな顔をして、少女を様子見する)
■ネム > 「そう思ってるのは、お兄さんだけじゃないかなぁ……?」
何となく苦々しそうな表情の相手に、屈託のない笑みを向けながら。
初めての街で右も左も分かりはしないので、先導されるがままについていく。
やがて着いた宿は、大通りに面したそれなりに流行っていそうなお店。
愛想のいい女将から鍵を受け取って、部屋へと入ると清潔そうな真っ白のシーツがまず目について。
「うんうん、ここ良い宿だね。
真っ白なシーツは、ポイント高めだよー」
ぽふんと、ベッドに腰かける。ちょうど男のすぐ隣。
多少硬くはあるものの、旅人向けの宿ならばこのくらいが普通だろう。
今夜はぐっすり寝られそうだと笑顔になる少女に対して、黒猫が何か言いたげな視線を向けており。
そんな視線を知ってから知らずか、黒猫の首根っこを掴んで持ち上げて。
「うん? そのつもりで連れてきてくれたんじゃないの?
私は、今からでも良いよー?」
ぽむっと己の膝をひとつ叩いて見せ。
喉の調子を確かめるように、声を整える。
軽やかなハープが奏でるような、そんな音色が古びた宿の一室に染みわたり。
■黒須 > 「知らね。他人がどう思おうが勝手だからよ…。」
(少なくとも自分はそう言う風に考えていると言う事は確か。
他の人間の良い人間の基準はどうでもよかった。
一先ず、隣に座る少女の様子を見た後、被っていた帽子も脱ぐ。
頭の上からは二つの尖った犬耳を出し、軽く首を動かして、首元をマッサージ。)
「ただの確認だ。
…んじゃ、乗せるぞ…。」
(自分の膝を叩き、準備が出来たと言う少女。
高さを調整すれば頭を乗せる。
長くふわっとした柔らかい黒髪の挑発が膝に重なり、ゆっくりと目を閉じてリラックスする。)
■ネム > 脱いだ帽子の下から、これまた黒い耳が露わになると、少女の目が輝いた。
「もふもふ……もふっちゃう…」
うふふーと、何やらご機嫌なテンションを見せつつも、準備は完了
いくらこちらが非力そうな少女とは言え、見ず知らずの相手の膝に預けられた頭を優しく撫でる。
このまま黒髪をもふっていたくなるけれど、きちんとお仕事をしないと人形たちに怒られてしまう。
「~~~♪」
囁く様な、小さな声。
けれど聞き取りにくいということはなく、緩やかなに奏でられる音階は耳朶を擽るかのよう。
紡ぐ歌は、少女の故郷のものなのか、それとも旅先で聞き及んだものなのか。
森の木陰で、そよぐ風に誘われる、そんな情景を描いたもの。
部屋に籠っていた蒸し暑さが、歌われる情景そのままに吹き散らされる。
実際には風など吹いているはずもないのに、涼しげな風に包まれているような、そんな気さえして。
■黒須 > 「…したいなら、勝手にやっても構わねぇよ…。」
(動物の耳を見て目を輝かせる少女を見ると、頭を軽く掻いて許可を出す。
別に減る物でもないため、やりたいならしてもいいと思った。
そのまま、頭を優しく撫でられる、子守り歌が始める。)
「・・・。」
(静かで優しく、小さな声が聞こえて来る。
心地が良いなと思いながら聞いており、部屋に風が吹いてきた気分に合うと、とても気持ちが良かった。
瞬きをしていると徐々に瞼が重くなり、ゆっくりと目を瞑っていく。
次第には静かな寝顔をすると、一滴、目の端から涙が零れ、静かな寝息を立てる。)
■ネム > 許可が出たならば、存分にもふもふを堪能した……かと言えば、そうでもなく。
ちゃんとお仕事中はお仕事に集中するのが少女のポリシー。
緩やかな、僅かに掠れたような声音が鼓膜を擽る。
それがそよ風のそのままに、緩急をつけ、強弱をつけ、次第に緩やかに眠気を誘うものに変わっていき。
やがて膝の上から静かな寝息が聞こえてくれば、お仕事は完遂。
「なんだか、大きな子どもみたい……だねー」
敏感そうな耳は避けつつ、そっと頭を撫で。
その寝息に誘われるように、少女もまた小さく欠伸を漏らすけれど。
「せっかくのお客様だし、もう少しだけ……ね。」
どこか眠そうにしながら、口ずさむのは先ほどの子守り歌とは違い、歌詞のないリズムだけのもの。
少女の眠気がそのまま紡がれたような、それはどこまでも優しく二人を包み込み。
男が目を覚ますころには、日も落ちているかどうか。
たっぷり熟睡できたならば、男を膝に乗せたままでうつらうつらと舟を漕ぐ少女の寝顔を垣間見ることができたことで。
■黒須 > (少女の優しい子守り歌を聞くと、自分の意識もどこか遠くへ行ってしまいそうな気持ち。
いや、精神だけが別の場所へ行ったと言う感じであった。
雲の上のような、水の中のような心地よい空間に居座っているような気持ちになり、快適な気持ちになっていった。)
「…ん?」
(しばらくすれば目が覚める。
これから眠るのだろうとわかっていたために目覚めも気持ちよく迎えることが出来た。
目を開けば、目の前に子守り歌を奏でた少女の寝顔が見える。
膝の上で寝ていたんだなと思うと、そのままゆっくりと起き上がり、少女の体を支えてベットに寝かせる。
毛布を掛ければ近くの椅子に座り、窓を開けては煙が中に帰らないように煙草を蒸かす。)
■ネム > ベッドに横になれば、それはもう幸せそうに身体を伸ばして、白いシーツに頬を擦りつける。
すっかり意識は夢の中のようで、ちょっとやそっとでは起きなさそう。
お昼に食べたきりだから、もしかするとお腹が空けば起き出してくるかもしれない。
そんな淡い希望がどうにかあるくらい。
どちらにしても、起こそうとしないのであれば、幸せそうな少女の寝顔を今しばらくは堪能できようか。
無防備に眠る少女をどうするも、自称良い人ではない男次第―――
少女の鞄で丸まっている黒猫も我関せずといった感じで、その後のことはふたりだけが知ることで。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からネムさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」から黒須さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエレイさんが現れました。
■エレイ > 「~♪」
ピーヒョロロとヘタクソな口笛を奏でながら、悠然と冒険者ギルドに足を踏み入れる金髪の男が一人。
賑やかな様子のロビーを軽く見渡せば、あちこちでパーティらしき数人の集団が話し合っている姿が見える。
そんな活気のある光景にフ、と目を細めて小さく笑みを浮かべながら、そのままのんびりと掲示板の方へと
向かってゆく。その掲示板には依頼書や、パーティ募集の要項などが雑多に貼り出されていて。
「──今日もいっぱい来てますなぁ……さてなんかおもろそうなのはあるかにゃ?」
親指と人差指で摘むように自らの顎をさすりながら、掲示板の前に突っ立って興味を引くものがないかと眺め回し。
■エレイ > 特にこれと言ったものも見つけられなければフンス、と小さく嘆息。
掲示板の前を離れ、ふらりとギルドを後にした。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にヴィルアさんが現れました。
■ヴィルア > 『お約束待機』
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシンディ・オーネさんが現れました。
■ヴィルア > 平民地区の朝。
自分の別邸の前に、男は居た。
今日はこれから、とある場所に商談に行くのだが…
その商談相手がまた変わり者で、馬車が通りにくい場所に居を構えているのだ。
だから、徒歩で行くしかないのだが…
これもまた厄介なことに、もしその商談が成立すれば損をする者から刺客が差し向けられている可能性がある、と報告があった。
ただし悪い事ばかりではない。
平和なら、護衛など必要ないが…こういった報告があれば必然、護衛の能力を確かめることができる。
そんなことを、傍らに居るであろう新人の護衛に説明し。
事前に、今日は動きやすい服装…支給したパンツスーツで来るようにと伝えている。
「そういうことだ。平民地区のほぼ端にその商人の家があるのだが、そこまで護衛を命ずる。
もし戦闘があった場合は危険給はもちろん払うよ」
今回、彼を護衛する役目のもう一人。
ベテラン…既に5年以上ヴィルアの護衛を務めている男だ。
細身ながらも、しっかりと実戦用に鍛えられた傭兵上がり。
腰には長剣を差しており、剣士であることがわかるか。
余り大勢で進むと逆に身動きが取り辛いため、今回は二人だ。
特に何か嘲りなどを言うでもなく、女に軽く会釈をするだろう。
「何か質問はあるかな」
そう言って主人が言うが、男の方は特に質問はないようだ。
女から質問があれば、応えようという、打ち合わせの時間だ。
■シンディ・オーネ > 黒のパンツスーツに長髪を束ねて、状況の説明を受ける。
靴は自前の安全靴めいたブーツだとミスマッチになるので、これもローファーとかになるのだろうか。
安心して蹴っ飛ばせる・踏んづけられるのは大事なことなので、
ここは何とか自前でと相談するところだが、ダメならダメで無理とは言わない。
「住人の交通も徒歩ですか、お金あるんでしょうに。」
エージェントと言うよりどこかリクルートな雰囲気で、そんな変人でも商人としてそれなりに大成するのかと眉をひそめる。
ヴィルアの相手、という事で自動的にかなりの大物がイメージされているようだ。
護衛の能力確認に丁度良いと言及してくれるなら、狙われるってのに呑気な事で肩をすくめる。
やらせの線もあるのかしらと薄く笑って余裕ぶってみせるが、護衛が2人と聞くと、一抹の不安を覚えた。
少なくとも倍の数は用意されると思っていて、思わず いいのか? と先輩の護衛に目で問うてしまうが、是非も無いのだろう。
ベテランに頷くようなお辞儀を返して、
能力等簡単な自己紹介が済んでいれば特に話す事も無い。
「ありません。」
質問は無いと、そう言うのだが。
「あ、襲撃された場合は、ヴィルア様の安全第一。
刺客の方は… 悪ければ死んでも大丈夫ですね?」
ぜんぜんだいじょばない。
これでも人を殺した事は無いが、それは殺し合いをろくにしていないからだ。
嫌がらせ以上の本物の殺意を持って刺客が送り込まれるのならば、可能性はある。
撤退の時間稼ぎで済まさず、別に殺してしまっても構わんのだろう的な強がりにも聞こえるかもしれないが、
そう口にする顔には、余裕よりも緊張が出てしまった。
■ヴィルア > 靴もまた、それに合った平たく歩きやすいものが支給される。
これも彼の領地で生産されたもの。
だからこそ、急な護衛の追加があっても対応できる。
大物で手腕もあるが、同時に変人でもある。
味方にできればいいが、敵に回すと予想外の方向から妨害されるため面倒だと。
行く先の情報を簡単に伝える。
先輩は、無口ではあるもののやはり嫌悪などはなく。
不安を滲ませた後輩の視線にどっしりと応えるだろう。
心配するな、と言いたげだ。
そして確認を問われればヴィルアが口を開き
「ああ。それでいい。
刺客への対処は…強いて言えば生け捕りが理想だが。
しかし、殺しても咎めることはない。…商売敵だからね」
彼は、敵には容赦しない。
もし生き残ったとしても刺客は拷問され、寝がえりか死を迫られるだろう。
一瞬、冷たい目になり、質問を終えれば。
「そう緊張することはない。何、どうせ直接暗殺などを狙うのは小物だ。
一番厄介なのは味方の振りをして近づいてくる輩。少しリラックスしないと、すぐに動けないぞ?」
表情を隠すのが上手い商人たちを相手にしてきた彼からすれば。
女が緊張しているのを見抜き、ふ、と笑い。
「さ、行こうか。それほど遠くは無い」
軽く、女の肩に触れようとしてから、歩き出そう。
並びもまた事前に指示されており。
ヴィルアの前面をベテラン護衛、背面を新人、と言った具合だ。
有事の際には各々の判断に任せるか、あるいは判断できなければベテランに指示を仰ぐようにと伝え。
ゆったりと、散歩の様な気軽さで歩いていこう。
彼にとって、こんな移動は日常茶飯事なのだから。
警戒はすれども、過度に恐れている様子はない。
■シンディ・オーネ > 支給された品々には戦闘用でないという不安が拭えないが、それとは別に…
軽っ、すっべすべ、みたいな好感触もあり、そう嫌がってもいない。
荒事担当の使用人用であればもちろんそう良い物ではないのだろうけど、
だとしても着た事ある物と比べると高級なはずだ。
――ここに来て意外な事がもう一つ。
たいていこういう環境では、新米いびりというか、上下関係ハッキリさせてやる的な洗礼があるものと思っていたが、
この先輩も然り、今の所そういったトラブルは全く無かった。
環境が良ければ荒くれ者の集まりでもそういうものなのか、あるいは主人の見る目があるか。
どっしり構えてくれる先輩には、ちょっと戸惑ってから改めてさっきよりマシなお辞儀をするのだ。
「――緊張なんて。狙われているのはヴィルア様です。
そういえば命を狙われているって、具体的に知った事無かったなと思って。」
主人の見透かすような言葉には、条件反射のように否定した。
嫌われている、のと命を狙われている、のは違う。
人生でそんな経験が無いから、こういう現場に思うところがあっただけ。
狙われているのはあなただから私は平気と、それは護衛としてどうかというところだが。
…やはり見透かされていると感じれば、観念してぐるぐる肩を回す。深呼吸。
実際どんな気分なのだろうなと、主人の背中をぼんやり眺めて後に続く。
あまり自然なものだから、このお天気に、襲撃なんて本当に来るのかねと思ってしまう。
こんな仕事をする事になるとは思わなかったなあ、とか
誰も私の事を知らない環境って良いな、などと考えていると自然と視線はあさっての空に向くが、
いやいやと周囲を見回しながら進んで行こう。
「…ヴィルア様は、いつからですか、狙われるの初体験と言うか。」
…お散歩ではないと咎められてもしょうがない、
これ私語は大丈夫なやつですかと、一応多少は気にしてぽつりとつぶやくように声を出す。
■ヴィルア > あくまで仕事着。プライベートでは使えない服たちではあるものの。
商談先にがちゃがちゃと鎧を鳴らしていくのも身構えられて良くない。
そういった思いから、上等でこの季節でも多少は涼しい素材で出来ているものだ。
ベテランもまた…この場以外ではまだわからないが。
主人の前では少なくとも大人しい。
それだけ、金と信用で縛り付けているということだ。
「そうかい?…ああ…まあ、言ってしまえば私は商人の邪魔になることが多い。
出る杭は打たれる、というところか。
目立つことをしていると、それだけ疎まれる」
実際に、表の仕事としては商売を手広く行っており、他の商売人から見れば邪魔であり。
裏の仕事の面で…奴隷とした相手の親類などの恨まれることもままある。
そして、朝であり…襲撃があるかも、という天気ではないが。
それでも、油断して一人で出歩くなどできるはずもない。
その油断を突いて襲ってくることもあるのだから。
「ん?ああ、気になるかな。私が家を継ぐことが決まった辺り…大体5,6年前か。
当時は鍛えていなかったから、父が選んだ護衛が居なければ死んでいただろうね
はは、その後も…私が選んだ護衛に裏切られたりもあったね。あれは危なかった」
おしゃべりを咎めることはしない。
まだそれほど死角が多い道に入っていないのもあるが、やはり慣れか。
あっさりと死んでいたかもしれないことを告げ…
「そこから、逃げる為に身体を鍛え、人を見る目を養った。
そのおかげで、シンディを雇うことができた、というわけだ」
軽く振り返りながらそう言いつつ、歩みを進めていく。
段々と、辺鄙…道が細く。
死角が横や上に増えていく。
そうなれば、一言、ベテランから…
『…今回のルートで、一番危険性が高いのがこの辺りだ。気を抜くなよ』
注意を促す言葉がかけられるだろう。
彼もまた油断なく周りを見渡し、剣の柄に手を添え、いつでも抜けるようにしている。
■シンディ・オーネ > ヴィルアがどんな仕事をしているのか、リルアール家とはどういうものか、
雇用されれば当然気になるところであるが、まだ日が浅くろくに把握できていない。
商人の邪魔、出る杭、そしてヴィルアの5.6年前と言うと私くらいの年頃からか、
差し迫った状況を迎えた事もあると聞いて、自然と表情は浮かないものへ。
聞いておいてなんだが、かけるべき言葉が思い浮かばない。
「…私はずっとですが、まだ喧嘩だけ、たぶん。
敵国人っぽくて愛想の悪い魔女を煙たく思っても、本気で殺そうってほどのものは、きっと向けられた事が…
どうかしら、あったのかな。」
無いと思う。ということは、あなたより穏やかな環境しか知らなくて。
護衛として不安にさせる発言かもしれないけれど、話してくれたので、自己紹介のようにぽつぽつと。
「当たりだといいですね。」
見る目を養って雇えた私だという言葉には、嬉しいはずなのにやはり可愛くない事を言ってしまう。
などと話していたら、なるほど、それらしい場所にベテランの声。
私語を慎み後方警戒。
いっその事花火でも上げてやれば警戒して寄って来ないのではないかと獣のように考えるけれど、
人間相手となると手の内を見せるのは対策されるだけのような気もする。
魔術やら魔法の気配に気を張りながら、進む。
息苦しいなと襟もとに手をやって。
■ヴィルア > これから、いやでも知っていくことになるだろう。
そこからどうするかは彼女次第であり、更にそこにどう対応するかは彼次第となる。
「はは。どうしてシンディが気にするのか。…少しわかりにくいが、シンディは優しいな。
しかし、これは私の過去だ。私以外誰も…重荷を背負うことはない話題さ。だから、気にしないでくれ」
こちらを気遣ったのか、女自身のことも話されれば。
軽く笑い声を響かせて歩き続ける。
それは、死角が多い場所に入っても変わりなく。
歩調は変わらず、軽やかだ。
傍から見れば…命を狙われているとは到底思えないだろう。
それだけ、狙われ、また生き延びてきたからこその態度。
「ふむ…服装も考えないといけないか――――――――」
少し後ろを振り向き、息苦しさを誘発する襟元に触れる女を見て、ヴィルアがそんなことを言った瞬間―――
『――――――――!!!』
声にならない声をあげて。
明らかに、刺客といった雰囲気ではない…平服を着て、激昂した一般人が、刃物を持って死角…ヴィルアの左後ろの物陰から飛び出してくる。
更に、悪いことは重なる。
本命の刺客らしきフード付きの外套を羽織った影が二人。
正面から現れる。
「守ってくれ」
これでは、逃げ場はないに等しい。
曲がり道は近くには無く、逃げるにしてもどちらかは突破しなければならない。
避ける準備をしながらも…短く言って、個々の対応を促す。
『新人!しくじるなよ!!』
同時、ベテランの怒号が飛ぶ。
同時に襲い掛かってきた二つの出来事だが。
ベテランが、前方の二人を牽制し、飛び出してきた一般人はシンディに任せた後、刺客に対処する狙い。
何も狙ってくるのはプロの刺客だけではないことが驚きを誘うが、果たして動けるか。
■シンディ・オーネ > 「…はい。」
あなたの過去と、私の過去。
興味本位で聞く事ではなかったかなと思うが、経験を知れば納得もいくし当てにもできる。
護衛役は私だが、それよりも場数を踏んでいるのがヴィルア様だと理解しておこう。
服装?あいえ、十分ですよ息苦しさは緊張で―― 呟く声にそんな事を思い、慌てていやいやと手を振ろうとしたら、奇声。
「――!?」
刺客!にしては何だか素人くさい。
こちらは助かるがわざわざ声を上げて襲撃を知らせなくても。
これなら軽く制圧できるだろうと高をくくるが、前からもか。
「陽動っ…!? こっちは!」
任せてと声を上げながら、ヴィルアと平服の襲撃者に割って入る。
ひとまず先輩に任せて良さそうだが、2対1では――
印を結んだり呪文を唱えたり、杖を振ったりとか何も無い。
ただ刃物を手に向かって来る男に身構えながら、魔術の構成を編み上げる。
――極度の集中を要して動作の固まる一瞬、まだ平服の襲撃者は到達していない。
魔術の発動を間に合わせるが、その対象は目の前の男ではなく――
「燃えろぉおおおおおおおー―――ッ!!!」
ワン!と、音が空気の振動なのだと実感させるような声量が響き、
前方から迫っていたフードの刺客2名、そのうちベテラン護衛から遠い方をつむじ風のように巻き上がる炎の渦が襲う。
炎は声の続く限りフードの1名に纏わりつくが、声が止まれば幻のように消える。
ただし、幻の炎によって何か燃え始めたものがあれば、その火はそのままだ。
――この魔術を見て平服の襲撃者が怯んでくれれば良いが、突っ込んで来るのであればもう魔術での応戦は間に合わない。
刃物に徒手で格闘する事になるが、一般人の物腰であればさばききれると踏んでの判断で――