2020/08/09 のログ
■シンディ・オーネ > 暖かく見守られて、必要以上に構える事無くおのぼりさんが出来たに違いない。
空間の異質さにさえ慣れれば… そこが難しいのだが、面接だからという緊張感はさほどなかった。
不採用でもお屋敷見学できたのでお釣りがくる感覚。
ちょっと期待しているが、外れるのも想定の範囲内。
「ここでの仕事に、彼が喜ぶ…?」
その状況が想定し難くて思わず考え込んでしまうが、
有事に基本給の倍出るという危険手当の事かなと考えて、もちろんと頷いた。
「彼が喜ぶかどうかはさておき、護衛なら戦闘は前提でしょう。
戦わない冒険者ではないので、そこは。
…ボーナス次第で護衛とは別に汚れ仕事を出来るかという意味なら、それを彼は喜ばない。
恥ずかしいくらい正義の人なので。」
答えになっていますか?と、後半は少し挑むような目になりながら。
魔術についても、隠す事ではないと淀みなく。
「音声魔術といいます。素質は先天、習得は技術的で努力と運次第。
反魔法団体からは、世界崩壊を招くとか何とか言われている事がありますが、諸説あります。
主に火を点けるとか風を起こすとか、雷で打ったり、岩を転がす、鉄砲水、吹雪…
イメージし易ければ何でも。有効範囲は声の届く限り、水中では使えません。豪雨の中では狭くなる。
戦闘能力としては――」
語られる程度としては、特殊な防御能力を持たない相手であればこちらが大砲を持っているようなもの。
ちょっとした壁であれば容易く破るが、連発は出来ないし、威力に応じて消耗する。
また水を凍結させるなどのライフハックにも使用できるけれど、
魔術の作用によって手を加えられた飲食物は、健康志向な人からは避けられる場合があると注釈をつけた。
弱点を含めて、ざっくばらんである。
お茶が給仕されると、いただきますと早速手をつける。
「…うっす。あ、お茶じゃなくて。」
まだ飲んでいないし味は分からない。
ただ、カップの厚み薄いなあ、うっかり噛み破らないかなあ、って感覚でちびり。
…素人にだって良い物は分かる。
香りにほうとため息をついた。
■ヴィルア > 何度も気楽に話しかけていた効果は多少はあった様子だ。
リラックスとまでは流石に及んでいないが十分、正しい情報を話す雰囲気ではある。
一番避けなければいけないのは、見栄を張られることなのだから
「その彼とやらの、人柄はわかった。
いや、なに。駆け落ちしたというのなら道中は厳しいものだっただろう。
賃金で富裕地区か平民地区の良い店でも共に行けば喜ぶのではないか、とな
しかし、戦闘に躊躇が無いのはいいポイントだ」
金そのもの、仕事そのものではなく。
その金を使って何かをすればいいのではないか、と。
挑むような視線を受け…更に意気込み…というより護衛をやる気があると判断できる言葉には一つ頷く。
そして、興味を続けてそそられるのはその魔法だ。
「音声か。……はは、やつらは堅物だからな。
確かに声で魔法を発動させるなら…強大な力と想像力を持つ者が世界よ滅べ、と言えば滅ぶかもしれないが…
ただ、都合がいい。いちいち術式だなんだと言われるよりは使いやすい」
魔術師ではないが、その利便性は魅力的だ。
特別な魔法具も必要なく、声で発動。
消耗は激しいらしいが…基本、逃げ戦となる護衛任務では一発すぐに放てることの方が重要だ。
簡単にではあるが、要点も抑えた説明だ。
頭でっかちではなく、修得に必要な…努力と運次第な部分を乗り越えてきたのだろう。
それらを加味し、相手がお茶を飲んでいる間。熟考する。
そして、少し時間が経った後。
「…中々、素直なところも好感が持てる。私も完璧な人間などではない。だから、意見があれば聞きたいとも思っている
是非、その調子で何かあれば意見を言ってくれ。…一先ず、採用だ。シンディオーネ。いつから出られる?」
敢えて短縮せずに名前を呼び…採用を告げる。
一先ず、と付けたところから…まずは何度か出勤し、信用テストと言ったところか。
それに、中々…面白いことができそうだと、笑顔の内に歪んだ思いを隠す。
「給金は伝えた通りだ。後は…護衛とは言っても、私が外を出歩く時だけだ。
私が屋敷に居る間は、休憩時間以外でも、私が出る時間までは…屋敷の中である程度自由にしてくれて構わない
厨房や浴室を使っても、屋敷には大抵、他の平民や冒険者も居る。不自由や差別はないかと思うが」
雇ったからには、最大限使い、最大限利益を与える。
それを目標としているから、追加の待遇を告げる。
「他に質問はあるかな?」
何か気になることがあれば、と女に聞いてみる。
■シンディ・オーネ > 「ああ… それは、もちろん。
彼は、私のためにこれまでの生活とこれからあるはずだった生活を、全て投げうとうとしています。
…私は別に、いずれは村を出てこうするはずだったから、たいして違いは無い。
だからあの人には、せめて少しでも良い事があるといい。」
美味しい物を食べるとか、そういうのは当然喜んでくれるだろう。
『ここで働いている最中の嫌な事』が具体的にどんな事なのかは分からなかったが、
単純に彼を喜ばせるためにどこまで出来る?という問いなら、かなりの幅でがんばれるはずだと思う。
がんばらなければならないし、がんばりたいと。
後半は独白のようになってしまいながら、訥々と語って。
魔術の風評部分に拒否感が無いようであれば、ひとまず脈ありかと期待する顔をした。
そうでしょう、良いものでしょう、とあまり他人から諸手を上げて評価された事が無い魔女は嬉しそうに。
やはり進歩的、都会はいいなと頷く。
「音声魔術の声は、魔力を届ける媒体です。儀式魔術などの呪文とは違う。
…正確にそらんじればいい呪文より、暴発の危険が高いという点では不利ですが。
そこで試される運は、もう乗り越えてきているので。」
習得に際して必要とされる運とは、安定して発動できるようになるまでの、暴発を乗り越える運である。
もう、そう簡単に失敗するような段階にはいないのだと語る顔は自信に満ちて。
ヴィルアが肯定的と知れば、見ますか?と外を指さして積極的だ。
考えるような間は、少し落ち着かない気持ちで、せっかくだからお茶に集中して待った。
いいもん飲んでんなあ、としみじみしていたら… 一先ず採用。
ひとまずでもいい、聞き逃してやしないが、安定収入の道に表情を明るくする。
「明日からでも!ヴィルアさん… サマ? …ハクシャク? キョウ…?」
旦那様とかだろうか。使用人になるという事であれば、呼び名だって気を付けよう。
笑顔の内の思いなど露知らず、貴族なんていけ好かない連中なのだろうと決めてかかっていたけれど、
実際にはそう、ある程度ちゃんとしてなきゃそんなに偉くなんていられないんだよねと、無邪気に評価を改めていた。
この辺りの評価は、もうちょっと世間を知るだけでヴィルアの人格によらず即修正されるのだろうが。
「…ん? え、庭掃除でもしとけ、とかではなくてデスカ。」
待遇に、そんなにヌルくていいんですかと、逆に高級な庭仕事をナメた発言を。
良いと言うのなら遠慮はしないが、当分は居心地の悪い自由時間になりそうだった。
■ヴィルア > 「…はは。それなら、頑張ると良い。
提示した金額は基本の金額だ。
長く働いたり…そうだな、私にとって有益なことをもたらしてくれれば、別途支給もする」
貴族、商売人に近いそれを生業にしていると。
絆というのは中々感じづらい。女から感じるその相手との絆に眼を細めて。
世間ではどうあれ、彼にとって女の能力は有益だ。
もちろん、それが本当かどうかは確かめていく必要はあるが。
海千山千の相手との商売によって鍛えられた彼の観察眼には、嘘をついているようには見えなかった。
音声魔術については、一度小さな火を起こすように言って。
女が今まで積み上げたものがあれば、その程度は問題ないだろう。
「よし。なら明日、朝日が昇る頃またここに来てくれ。護衛について詳しい説明をしよう。
…呼び方は…様、で構わない。あるいは御主人様でいい。
無理に場面に応じて変えさせると、シンディの場合混乱しそうだ」
場合によって、相手によって。
呼称は変えられる場合もあるが。
相手の様子と経歴を聞く限り、多数覚えさせるよりは絞った方がいいだろうと。
「はは。屋敷に居た方が色々と都合がいい。
庭とはいえ、外に出られるとどこに行かれるかわからない
それに、屋敷の中で何もせずにただ立っているだけ、などというのは酷く不合理だ。
それなら、身体を休ませておいた方がいざという時パフォーマンスも良くなる」
体のいい軟禁、とも取れる言葉だが。
貴族の家であることを考えれば自然と取られるだろうか。
「…この方針は最近始めたのだが、やはり好評でね。
得に、眠れたり湯に浸かれる、というのが大きいようだね。屋敷の中のことは、周りに聞いてくれ」
説明は終えた。
後はじっくりと…彼女からの信用を得ていくことになるだろう。
無理矢理に囲うのも楽しいが…時間をかけて、遊んでいくのも悪くはない。
「面接は終わりだ。帰り道はわかるかな?」
こちらからの説明も終わり。
相手からの質問も特にないのなら。
一度、この場は終わりだ。後は、明日…女と行動を共にし、様々な事を確かめていこう。
■シンディ・オーネ > 「有益…」
庭掃除とかかな?と貧弱な発想で思う。
が、それは後の説明で否定され、では邸内で警備につかなくて良いのかと首を傾げるけれど、
とりあえず今日のところは貴族サマの雇い方ってこんなものなのかなと納得しておいた。
余裕のたっぷりある人は、使用人の使い方にも余裕があるのだろうと。
…いけない。冒険に出たくなくなったりしないよねと、少し自分を危ぶむ。
――魔術の実践はさらりとしたものだった。
そこに魔力なり何なりを感知する者があれば、女の周囲に世界を書き換える魔術の構成が踊るのを感じ取り、
同種の使い手であれば何をしようとしているのかも察知できたかもしれないが。
見た目にはカップを手に腰かけているだけ。
『灯れ』の小さな一言とともに、パパッと鬼火が浮かんで消える。
「…では、ヴィルア様。
ありがとうございます。」
ご主人様ではいささか仰々しい気がして、カタコトになりそうだった。
使い分けはハードルが高い。見て学び自然に分けるかもしれないけれど、しばらくこれでいきますと、礼をする。
「そりゃあ好評でしょうけど…
まあ、大事にされている使用人なら、主のためによりよく働く… のかな?
怠けていられるっていう利点をありがたがる人でも、いざって時に…?」
どこか相容れない感覚があるような気がして唸るのは、根本的なところで生真面目なのかもしれない。
いいならいいですけど、と不思議そうにしつつ…
…お風呂、使っていいんだ。
そう考えると、もちろん使用人用でそんなに豪華でないとしても、宿のそれより更に上等なのではないかと、こっそりときめいてしまう。
「はい、大丈夫です。」
問題ないと頷いて… あ、と思う。
この仕事だけで正直十分な収入になってしまうわけだが、冒険者として様々な仕事で経験を積まなければという思いもある。
中には数日を要する仕事もあるかもしれず、そういった場合のシフト調整は可能なのか。
今聞いておこうかと考えるが、それでこの美味しい仕事を失うのも惜しい。
では当面は、こちらを優先して空き時間で受けられる仕事を探せば良いかと割り切って、まずは明日から。
帰る足取りは軽く、アーネストに良い仕事に巡り合えたと報告するのだ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヴィルアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシンディ・オーネさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にネムさんが現れました。
■ネム > 王都の中心―――目抜き通りの、更にその中程にある大きな噴水
そこは暑い夏の陽射しが降り注ぐ昼下がりにあっても、一服の清涼を齎してくれる場所で。
それ故にか、そこで一休みする顔ぶれも実に様々だった。
熱射を浴びて火傷しそうな甲冑に身を包み、せめてもと兜だけでも脱いだ兵士。
行商にやって来たのだろう、異国風のターバンを頭に巻いた浅黒い肌の商人。
継ぎ接ぎだらけの服に、生傷だらけのやんちゃそうな子どもは、遣いの途中かもしれない。
育ちの年齢も違う者たちが、思い思いに涼を取る中で、
普段着してはやや派手な衣装に身を包んだ少女もうつらうつらと舟を漕いでいた。
違和感があるとすれば、その服装だけではなく。少女の足元に置かれた小さな立て札だろう。
可愛らしい猫のイラストが添えられているのは、年端も行かない少女らしいものではあるけれど。
書かれているのは「子守り歌1曲30ゴルド」と、むしろ気持ち良さそうに寝ている少女の方が依頼者であるかのようなもの。
とはいえ、誰かが少女の前に立とうものなら、膝に抱えた猫のぬいぐるみが少女を起こそうとするだろう。