2019/09/10 のログ
レーナ > 「使えれば良いというものではない。使いこなせなければ無意味だ」

確かに色々と使う冒険者はいるが使うと扱うでは違うのだと説き。
多数を扱うよりも一つに絞る方が何かといいと。

「言われるまでもない事だ。完成するまでの時間が困るという事だ」

武器がなくては仕事ができない、なので待てないと告げ。
その辺りは貴族には分からないかという様子を見せて。

「困りはせんが休めば鈍ってくるからな。稼ぎだけなら手段はあるが……娼婦の真似などせんぞ!」

休めない理由は体と腕が鈍るのを防ぐためと告げ。
稼ぐ手段ならばいくつか頭に浮かべるのだが……続いた言葉にはさすがにむっとしてしまう。
流れで何度かそういう事はないとは言えないが娼婦まがいはするつもりはなく。
その言葉にはつい怒りを覚えてしまっては声を荒げて睨みつけ、これ以上は話すことはないと脇を通り去っていく…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/武具店」からレーナさんが去りました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…怒らせてしまったか。冒険者というものは稼げれば良いのだと思っていたが、考えを改めるべきか」

ぱちくりと視線を瞬かせた後、彼女が去っていった方向を眺めながら苦笑いを一つ。
とはいえ、特段反省している様子は無い。一つ勉強になったな、程度のもの。

「冒険者と接する時は気を付けるべきかな。寝首をかかれてはたまらんしな」

そうして、愉快そうに笑いながら武具店を去るのだろう。
その様を見届けていた店主が吐き出した溜息は、今年一番のものだったとか。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/武具店」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 雑貨屋」にフィルさんが現れました。
フィル > 涼しくなったと思えば、まだまだ夜まで暑さが続くような日も訪れる。
吹き抜ける夜風がだんだんと涼しい日々の訪れを感じさせることもあるが、過ごしやすい気温が安定するのはまだ遠いかもしれない。
大通りから人気が減っていく時間となっても、暑さが続けば涼しさを求めてか。酒場などが並ぶ地区の賑わいは増し。
少し離れた場所でも喧騒が風に乗って届く時もある。
そんな賑やかな響きもほとんど届かないほどに、平民地区の外れにある雑貨屋は今日も静かであり。
開店を示す掛け看板と、店内から零れる明かりがなければここに雑貨屋があると、気づく人は少ないかもしれず。
お店に人気が無いのは仕方のない事かもしれないものである。

「何時もの雑貨に…受け取りは…大丈夫、ですね。
あとは…お酒?」

店内で一人作業している少年は、配達を頼まれることがなければ、深夜まで店に残っている事が多く。
今日もまた店主の雑多に入荷をした荷物のチェックをしていたら、すっかり深夜になってしまったのだろう。
カウンターの後ろの椅子に腰を掛け、手元に持った紙へと視線を通し。
それに合わせるように品物が置かれている場所へと視線を向け、指さし確認をしていけば、やがて少年は一つ首を傾げていく。
持ち込みや倉庫でなければ、表は普通の商品を扱う雑貨屋である。
けれども、珍しくお酒なども入荷していれば、店主の品の節操なしさに少し苦笑も零れてしまったようであり。

「入荷したとしても…此処で売れるのかな」

売上自体は店主の管轄なのだから、少年が気にし過ぎても仕方がないかもしれない。
確認を終えた少年は、そのまま手に持っていた紙を畳み込んで、丁寧にカウンターの棚へと手を伸ばしてしまい込み。
一つ天井へと向けて両手を伸ばして、体をほぐしていくが。思わず欠伸がこぼれてしまいそうになれば、誰が見ているでもないのに口元を手で覆ってしまうのは、少年の性格のためか。
変化の一環や、店主からの言い渡しで女性の姿で店頭に立っていた時もあれば、人の姿とはいえ、素に近い姿は久々だったようであり。
静まり返った店外の道へと視線を揺らしながらも、フードも被ることなく下ろしていれば、多少気が抜けてしまっているようであるが.....

フィル > 「もう少し…お知らせしたり、安売りしてもいいと思うけど…」

店主への持ち込みや、お店の魔道具扱いの側面を聞いてやってくる人は当然いるのである。
けれども、たまには偶々道に迷った人や、散策をしたら見つけたという、普通のお客さんもくるのだ。
大通りなどにそれとなくお知らせを貼ったり、普通の雑貨などを安売りする火を決めて、お客に知ってもらったり足を運んでもらう。
そう言った行動をしてもいいのでは、と少年は考えを巡らせていくが。
最終的に判断を下すのはその辺りは店主なのである。
たまにお客さんから持ち込まれた品を、特殊な魔道具でもなければ、店内で扱うといったこともしているわけであり。
そういった点からも、少年は人気のない雑貨屋過ぎるのはもったいないとも思ってしまっているのだろう。

「僕も…直に探索行けたりすれば、商品も増やせそう…かな」

元々魔道具などに興味があっての、此処での店員活動の少年である。
自分ではまだまだ遺跡などに探索に行くのは、危険すぎるどころではないのだから、仕方がない部分もあり。
そんな事を続けてポツリと零して、探索している自分を想像したようであるが。
想像の中で直ぐにトラップに引っかかって酷い目に合っている。
そんな姿しか想像できないのだから、実際に踏み出してみたらどうなるか。
何てことは想像より酷いことになる可能性は高いかもしれない。
人の足音すら聞こえそうなほどに静まり返った店外へと向けていた視線を、一度店内へと戻し。
何をするでもなくゆったりとしていれば、やがて少年は少しずつ船を漕ぎ始めてしまうことになってしまうが。

フィル > 「ふぁ…っと…ちゃんとお店閉めないと…」

舟をこぎ続けていくこと暫く、ガクンっと人気は大きく船を漕いでしまい。
その衝撃で机に突っ伏してしまいそうになれば、少年は流石に目を覚ましたようである。
少し寝ぼけかけた思考から眠気を振り払うように頭を揺らし。店外へと視線を動かしていくが、まだ真っ暗な様子に一安心したのだろう。
少しだけ表情を緩め、安著の吐息を零せば、少しだけよろめきながらも少年は直ぐに立ち上がり。
裏口のドアの鍵を確かめては、店内の窓の鍵もしっかりと確かめ。
帰るために施錠のミスがないかを改めて確かめに歩き回っていく。
もともと一度お店に戻ってきたときに、ある程度来客も少ない深夜のために戸締りはしておいたようであり。

「今度大通りで…少し雑貨屋の宣伝でもしてみようかな…」

そんな事を思うままにぽつりと零せば、施錠を終えたところで出入り口へとその足を向けていく。
扉を開ければ吹き込む、少し涼しさと湿度を纏った夜風に眠気を覚まされていくが。
平民地区とはいえ、人気のない場所は安全ではとは言い切れないわけであれば、丁度用眠気覚ましである。
掛け看板を裏返し、そのまま扉を閉めたところで鍵を閉め。
何度か扉を引っ張る様にして、しっかりとその場で何度か確認を終えれば少年はゆったりとした足取りで帰路へとついて行ったか―

ご案内:「王都マグメール 平民地区 雑貨屋」からフィルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 街外れの教会」にアグネーゼさんが現れました。
アグネーゼ > 【待ち合わせ待機中】
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 街外れの教会」にヴィルアさんが現れました。
ヴィルア > 王都マグメールの平民地区。
その外れの教会に、不釣り合いに豪奢な馬車が止まる。
御者が恭しくドアを開け、中から降り立ったのは、爽やかな、けれど気取っていない身なりのいい男。
ふ、と口元を歪ませれば、ある約束を果たすため、教会へと向かう。
本来であれば、約束相手の方に出向いてもらうのが立場上自然ではあるのだが。
その使者が以前に街で会った少女に任された場合、たどり着かない可能性も考慮して、自分が出向いたのであった。

「……ノックは必要だったかな」

教会の扉を前に、少し悩む。
彼の傍らにいる…女性の護衛は、他の護衛と同じく何も言わない。
そんな様子にはぁ、と息を吐き。
そのまま、教会のドアを開ける。

「ごきげんよう。以前手紙を出したリルアールだが…」

中に入れば、少し視線を巡らせながら声をあげて。
誰かが居るの見つけるか、あるいは、対応してくれるのを待つ。

アグネーゼ > 今日は、この小さな教会に不釣合いな高貴な方がいらっしゃる日だ。
改めてよくあんな人とお知り合いになれたものだと、我ながら感心を憶えつつ。
彼が教会の扉を開いたなら、修道服姿の少女が深々と頭を下げてのお出迎えだ。

「ごきげんよう、ヴィルア様。
 我が教会へ、ようこそお越しくださいました」

護衛の方も、同じように頭を下げる。
どうやら先日の――ゴッズと言う名の男性ではないようだ。

「さぁ、どうぞ奥へ。
 本当にささやかですが、お茶菓子も用意しているんです」

そう言って躰を横向きにし、彼らを奥の部屋へと誘う。
客を迎える為の部屋だ。小さな教会の中にあるので内装は質素だが、
普段から手入れが行き届いているのだろうと思わせる清潔感がある。

空は快晴。窓辺から風や空気が送られて、多少は居心地もよくしてくれるだろう。

ヴィルア > ドアを開ければ、見知った姿。
以前に道を教えた…あまりにも無防備な少女だ。
誰が出てもよかったが、知っている相手ならやり易い。

「ああ、アグネーゼ。少し時間が空いて済まなかった。
お茶菓子か。気を使わなくてもいいのだが…用意してあるのであれば、いただかないとね」

こちらも、胸に片手を当てて軽く頭を下げ、丁寧に礼を。
それに合わせて護衛もまた頭を緩く下げる。
身分の違いはあれど、今日ここにいるのは商談のためだ。
少しでもいい印象を与えるに越したことはない。

「綺麗にしているね。とてもいい居心地だ」

案内されるままに通路を進み。
部屋へと案内されれば適当な場所に腰を降ろしつつ…
少女の家同然の教会、その一室を褒める。
確かに質素ではあるが、日々の努力が見える清潔さだ。

「さて…神父さまがお暇であれば、話をしたいのだが…」

時間は十分取ってあるため、あまり急ぐ必要はないが。
その話のあと、少女とも話しておきたいという思いもあり。
神父の姿が無ければ、少女に呼んできてもらうように頼もうか。

アグネーゼ > 夜に、知らない場所で出会うのと。
昼に、見知った場所で出会うのとは。
何だか、相手の見る印象が違うように見える。

さて。彼とはお知り合いにはなったが、今回友人として此処に訪れたわけではない。
あくまで仕事の話だ、なので少女も、先日出逢った時とは多少態度が恭しくなっているだろう。

「いいえ、来ていただいて光栄です。
 生憎と、既製品ではなくて私の手作りになるんですけれど…
 お口に合えば良いのですが」

普段彼らがどんな食事を摂っているのか、少女には肖り知らぬことだが。
自分の手作りなぞ安上がりも良いところなので、彼に差し出して良いものか未だに迷う。
とりあえずは彼らを部屋に通し、寛いでもらい、少女は神父を呼ぶのと、
お茶菓子の用意の為に一人扉へと戻る。

「ありがとうございます。ただいまお呼びしますね。
 お茶も直ぐにお持ちいたしますから」

にこりと人の良い笑みを浮かべ、失礼しますと一礼して少女は廊下の奥へと消えて往く。
数分後には、人の良さそうな初老の神父が、ティーカップ等を載せたトレイを持つ
少女を携えて姿を現すだろう。

「ヴィルア様、神父様。ご入用の際は私をお呼びください」

お茶菓子は手作りの焼き菓子だ。
商談の話に少女は同席しない。どうせ聞いても分からぬ事と、少女は彼らに頭を下げて
扉をそっと閉めるのだ。

ヴィルア > 「いいや…逆に言えば私などは既製品は食べ過ぎているからね。
アグネーゼが作ってくれたものなら、喜んでいただくよ」

寛ぎつつも、迷っている少女に笑いかけ。
護衛は彼の後ろに静かに立ち…ゴッズと同じように、仕事中はあまり表情を変えないようだ。
少女が一度出ていけば、しばしゆっくりと…頭で纏めていた、神父に話す内容を思い返し。
やがて、神父と少女が帰ってくれば立ち上がり。

「ああ、これはこれは。突然申し訳ない。
改めて、私はヴィルア・リルアール。どうぞよろしく」

人のよさそうな神父に向けて少女にしたのと同じ礼を。
神父の自己紹介を聞いた後、少女に向けて。

「ありがとう、アグネーゼ。また後で少し話をしよう」

笑いつつ少女を見送り…扉は閉じられる。
扉の中では…彼女の手作り菓子とティーカップに入った茶に舌鼓を打ち

教会への支援について。その額や内容。
支援をする代わりに、ある程度成長し意欲がある者を自分の管轄下で働かせること。
もちろん拘束はしすぎず、教会への礼拝の時間は必ず取ること…

などを大枠として話し。
次いで、詳しく…教材についてや、資金の受け渡し方法などを詰めていく。
素朴なお茶菓子と、茶によって話は和やかに進んでいき…
内容としては…教会で日常的に出される食事が、少しいいものになる程度の資金援助。
一つの教会に贈るには、非常に大きな額だ。

そんな内容を話していれば、それなりに時間はかかるだろうが…やがて、少女が再び呼ばれるだろう。
商談が終わったので、教会内を案内してほしいということらしい。

アグネーゼ > 「(――――さて)」

扉を閉めれば後は己の自由時間、と言う訳にはいかない。
居候は居候なりにやる事がたくさんあるのだ。

彼らが和やかに商談を進めている間、
洗濯だの掃除だの買い物だので四方八方を駆け巡り、修道服姿で忙しなく動き回り。
一日の雑事を一通り済んだ頃、呼ばれた少女は彼らの部屋へと向かって往く。

失礼しますと扉を開ければ、いやにご機嫌な神父が、彼に教会内を案内するよう仰せつかったので、
どうやら商談は無事成功したようだと、内心ほっと胸を撫で下ろしながら、
「勿論です」と嬉しそうに神父に微笑んだ。彼が嬉しいと自分も嬉しい。

「ではご案内致しましょう、ヴィルア様。
 と言っても小さな教会です、直ぐに終わってしまうでしょうけれど…」

そうして彼と、彼の護衛とで、住み慣れた少女の教会を案内する。
ほんとうに本当に、ささやかで小さな教会なので、歩き回るにも然程時間は掛からない。

「あ……そういえば先ほど、少し話をしようと私に仰っていましたよね?」

案内の途中、ふと思い出した少女は振り返って彼を見上げた。
何か粗相でもしただろうか、と若干緊張気味だ。

ヴィルア > 雑事が済んで少しした後まで、商談は続き。
部屋から出てきた神父は、とても安心した、いい笑顔だろう。
貴族の青年も、いい話ができたのか雰囲気が柔らかく。

「いいや。アグネーゼと出会えたのも、この教会があったからだからね。
小さくとも…もしかすると何かの参考になるかもしれない」

なんにでも商売につなげてしまうのは悪い癖だが
こういった場所に何が必要なのか、考えることは重要だと思い。
2人で和やかに、さほど時間がかからない散策に出向く。

「ああ。そうだね。…ふふ、アグネーゼ。別に怒っているわけではないから楽な口調で構わないよ」

話をする前に緊張していることを察して
にこやかに…敬語も必要ない、と。

「話の内容だが…君たちの生活が少し豊かになるように資金…お金を教会に援助する代わりに…
ある程度育った子供たちで、意欲がある子に、私の商売を手伝ってもらおうと思っているんだ。
神父さんは、子供たちに危ないことがないなら、と言ってくれたんだが…アグネーゼはどう思うかな
ああ、もちろん自分の意見でね」

理屈ではなく、気持ちでどう思うかを聞いてみる。
神父も、貴族の青年も関係なく、そういうことをどう思うか、と
忌避感を確認することももちろんだが、その反応で、今後同じようなことをする際により良い手法が学べるかもしれないと。

アグネーゼ > 「……ま、ぁ―――ですが、ヴィルア様はこの教会に目を向けてくださった方。
 高貴な方に、楽な口調でなんて……」

本来なら、こうして言葉を交わすこと自体不敬なのだろうとは思う。
或いはこの敬語は少女の癖のようなものだ。少なくともこの男に対して気さくに、
なんて自分でも想像も出来ないと言うか、似合わないと言うか。

「…………………ヴィルア様の……商売を……ですか?」

領地を持つ、貴族様。
この男が何を生業にしているのか、大まかながら聞いた事がある。
生憎と少女は情報通じゃない。精々が、表向きの仕事ぶりを知れる程度。
領民の評判も良い。ならば、現時点で少女が相手に対して警戒心を抱く筈がなく。
そもそもが、少女自身の正直な気持ちを問うというならば。

「―――ええ。私も神父様の意見に賛成です。
 ヴィルア様なら、子供たちに危ないことはなさらないよう配慮してくださるでしょう」

元より、疑うことを知らぬ女。
危機意識のなさ、忌避感の欠如は相手も既に知っている筈だ。
故に疑いなく衒いなく、少女はヒトを疑わぬ笑みでそう返し。

ヴィルア > 「そうか。それなら仕方ないが…、緊張はしなくてもいいよ。
少なくとも、理不尽に怒ったりはしないことは約束しよう」

遠慮されるなら、無理強いするつもりはないが
せめて心情だけは穏やかに、と。

相手の言葉を聞けば…ある程度予想はできていたものの…
好意的な反応を返してくれる。
ふむ、と頷き

「ありがとう。もちろん配慮はしよう。
仕事の内容はしっかりと説明し、給金と相談して決めてもらうつもりだ。
体が辛い仕事などは少し給金を高く…とかね」

独り立ちできるように、と配慮を見せ。

「そこでだが…。もしよければ、その仕事を一つ、アグネーゼに体験してもらいたいと思っていてね。
まだ仮の契約だから、皆には秘密だが…受けてくれるかい?」

散策ももうすぐ終わるだろうか。
少し歩調を早め、横に並びながら聞いてみよう。

アグネーゼ > 「そ……うですか?えと……それでしたら」

ありがとうございます、とちょっと照れくさそうに少女ははにかみ笑む。
素直であるが故に、思った事が表情に出やすいようだ。
彼の前でなければ頬でも抓ってしまいたかったが、何をしていると
笑われそうなのでそこは自重しておこう。

「…であれば、私も神父様も快く子供たちを送り届けられるでしょう。
 金銭面を援助してくださるだけでなく、仕事まで与えてくださるなんて―――」

偶然にも良い人と廻り合ったことを感謝しよう。
であれば、神、と言う存在は本当にいるのかもしれない。なんて。
敬虔な信徒でなければ人間でもない少女でも、そんな風に思ってしまう。が。

「えっ……わ、私、ですか?」

思いがけず、自分に白羽の矢が立った。
全く考えてもみなかったことなので、思わず廊下で立ち止まってしまった程だ。
案内はもう終わりに近づいている。
後は、少女が寝泊りしている部屋を案内すればもう案内する場所はない、と言ったところ。
隣に並ぶ男を驚嘆の面差しで見上げ。

「……ぇ 、と―――申し訳ありません、突然の事で吃驚してしまいまして。
 ―――私は……お分かりかもしれませんが、とても世間知らずで。私が出来ることなど、とても少なくて。
 お仕事内容によりますけれど……私如きに務まるかしら…?」

はて、と口許に指を当てて少女は不安そうに頸を傾げた。
地上での生活には大分慣れてきたけれど、それでも未だに無知をひけらかす時がある。
神父にも大分迷惑を掛けた。日々の生活でいっぱいいっぱいなのに、給金が伴う仕事だなんて。

ヴィルア > 日ごろから、緊張する商談などに身を置いている彼としては
せめてプライベートに近い場では、少しでも安らげるようにしておきたく。
その中で少女が緊張したままでは…難しいという判断で。
少女がはにかめば、彼も合わせて笑う。

「もちろん、その分しっかりと働いてもらうけれどね。
報酬というのは働かないと手に入らないのだから」

当たり前のことを言いつつ。
それは、仕事をしっかりとすれば…給金は確実に与えるということ。
その面からも信用は感じられるように話してきたつもりだ。

「ああ、君だ」

立ち止まった相手に合わせ。
自分も立ち止まって話を続ける。
向かい合うようにしてから、話を続けるため、んん、と咳ばらいをして。

「それも知っている。…そうでなければ、私たちは出会わなかっただろうしね。
ただ、今できないからといって…そのまま居たいわけではないだろう?
だから…練習だよ。私が選んだ君を、如き、などとは言わないでくれ」

くすりと笑いつつ…無知であればそれでいい。
けれど、いろいろ知りたいだろうと告げて。

「教会の仕事が終わった後でいい。だから…ゆっくりと、仕事の練習をしてみないか?
君よりも幼い子が、将来教会を出る際に、君がアドバイスなどできればいいと思わないかい」

今ではなく未来。
彼女が教会にずっと居たとしても役に立つだろうと。
可能であれば彼女の手を取って、熱心に告げる。

アグネーゼ > 「え……ええ、勿論。それは…其の通りですが―――」

このまま。日々の生活を教会への献身だけで費やすつもりはない。
何より自分は、父を探しに地上へ出たのだ。
今も居所探しは続けている。家事の合間に、買い物のついでに。
知らない土地を、二本の脚で歩き回って。

「っぁ……も、申し訳ありません、ヴィルア様。
 勿論、ヴィルア様を貶している訳ではないのです…」

練習、と呟いた後で。自分を卑下する事は彼を貶める事になるのだと、
我に返った少女は申し訳無さそうに頭を下げる。
謝った後で、また深く考えるのだ。

「――――……………」

己が手を取って、少女に熱心に語りかけてくれる青年。
大きな手だ。男の手だ。女だらけの人魚に囲まれて育った混血児。
海の底でもささやかに暮らした。狭い世界なりに平和で幸福だった。

地上に出た今は、色んな柵が少女へと否応なく降ってくる。
父の事。教会の事。神父の事。孤児たちの事。男と言う生き物。
好奇心がいっぱいの、この、地上の世界。

「…………、……すみ…ません、その―――。
 色々…事情が、ありまして……、…私、直ぐにはお返事、出来ないのです…」

申し訳無さそうに、少女の手を取る彼の手を、もう片方の手でそっと触れ。

ヴィルア > 「わかっているとも。頭をあげて。
…ただ、そう取られることもある、ということを覚えておいて」

先ほど言った通り、怒っているわけではない。
申し訳なさそうに頭を下げる少女に気にしないでと。

そうして、少女が返事を保留すれば。
そうか、と頷いて。

「ああ、返事はすぐでなくても構わない。
どちらにしても、支援の手続きや打ち合わせで実際に始まるのは時間がかかるだろうしね。
ゆっくり考えて…教会の役に立ちたいという思いがあるのなら、また言ってくれればいい」

触れられる手にくすりと笑い。
彼の心中では、少し欲望が渦巻いていて。
だからこそ…言葉の最後に、少女に楔を打つようなことを付け加えて。

「焦る必要はないし、私に気遣う必要もない。
そういった知識が要らないということであればそれで構わない
それに、どちらにしても、教会とは長い付き合いをさせてもらうよ」

彼女が断ったからと言って教会との話は変わらないと安心させようと。
だから気楽に考えてほしいと告げて

「少し、理由は気になるけどね。言いたくないならいいが」

柔らかに微笑みつつ…、やんわりと理由を聞いてみる