2019/04/03 のログ
■フラニエータ > こんな状況を作ってしまえば、抱かせてくれと懇願してくる男は掃いて捨てる程いる。
そんな男は、女にとって唯の財布でしかない。そして彼は、唯の財布では無かった。
彼の続けられる言葉に、女は心底喜んでいた。
こうも挑発し、色香を届けても、自分の優位性を保ち続ける彼。
きっと彼が見た目よりも年齢を重ねているからであろう、言葉から伝わる重さが、女の心を揺さ振っていた。
「…その強引さも、計算の内かしら…憎い男ね、貴方って…」
彼の厚い胸板へ手を運ばれれば、熱と共に鼓動が伝わる。
己によってここまで高ぶってくれるのは、正直嬉しい。が、やはり今、心を許すわけにはいかない。
彼は間違いなく、将軍なのである。扱いを間違えば、彼の言葉通り燃やされるだけの女に成り下がる。
続けられる彼の言葉は至極色めいていて、すこぶる魅力的だ。
しかも己に「抱いてくれ」と言わせようとしている。
もし己が普通の町娘ならば、間違いなくそう口にしているだろう、そう思うほどの、甘く、男らしい言葉。
耳元に注ぎ込まれる、彼の低く、優しくも強い言葉に大きく心臓を跳ねさせながらも、女は気丈に振る舞い、言葉を返す。
「…私、そんな言葉を簡単に吐くような女に見えるのかしら…
――ううん、言いそうに無い女に言わせるのが愉悦…そんな顔、してるわ…違う?
だから私は言わないの…言うのは貴方、よ…」
彼の胸元に触れる手。それを胸板を確かめるように緩く動かしながら、
女は甘くゆっくり、彼に囁き返した。
■ザイヴァー > 自分の言葉が、相手に届いているのは確かなのだろう。
だが、決して男になびかないその気丈さ、気高さは、敬意を払わなければならない……
だからこそ、自分も言葉を紡ごう。相手の心をとろけさすような、真摯な言葉を。
「はは、計算なんて。俺は君が魅力的な宝石だから、何とかなびかせようとしているただの男だよ」
そう言いながらも、続く相手の甘い言葉には……
「ふ、簡単に言うとは俺も思ってないさ。君は気丈で、そして心の強い女だ……
だからこそ、その気丈な心から、俺に抱いてほしいと思われれば、
それ以上に嬉しいことはないさ。君はどう思ってるんだい?
その、強く気高い女としての心の鎧の奥では……」
そんな、甘く力強い言葉を紡いでいる時だった。外が、にわかに騒がしく……
『あのくそ女はどこだ!』
どうやら、女に金をスられた男が、目を血走らせて、ナイフを持ち女とやら探しているようだ。
そして、その男は店内にも入ってきて……
騎士として、だろうか。反射的に、相手の頭を、包み守るように自身の胸と背で隠そうか…
相手の耳に、じかにザイヴァーの熱い鼓音が響く。
そして、その男がザイヴァーの方へと寄ってきた時…
通報を受けた衛兵たちが店内に入ってきて、男を取り押さえる。
「ふぅ、せっかくの休みが台無しだな……」
『あ、あああ、あなたは……ザイヴァー将軍閣下!』
衛兵たちが驚き、店内がざわつく中、ザイヴァーは相手に…
「さて……どうやら。お開きのようだな。せっかくの酔わせ合いだが……
次回に、持ち越すとしよう。」
そう言って、騎士よろしく相手の手の甲にキスを落とし……
「では、さようなら。レディ……
次合う時は、あなたを燃えるほどに酔わせてみせましょう…」
そう言って、衛兵たちと共に去って行こうか……
■フラニエータ > 「…私は宝石の様に高価で珍しいものじゃないわ…どこにでも居る普通の女よ…」
そう返答をしようとした時、周囲が突然騒がしくなる。
店内へとなだれ込んで来る男は、何やらくそ女等と叫んでいた。
…そのくそ女は、彼によってその身を守られ、その男の視界から隠されるのである。
彼の体に寄り添い、怖がる淑女を演じながら、くそ女はその幸運に胸を撫で下ろす。
間も無くして訪れる静穏。己の甲へ口付け、去っていく彼。
――正直、助かった。
あのままの空気が続いていたら…そう考えると大きなため息が漏れる。
静かになった店内、取り残された女。
女は酒場の店主に何かを伝えると、程なくして目の前に一杯の酒が置かれる
黒ビールとシャンパンが混ぜられたそれは、細かい泡が弾け、シャンパンの甘い香りを押し出している。
それをカウンターの上に残したまま、女は酒代をカウンターの上に置き、ゆっくりと席を立ち、店を去る――。
将軍に己の存在を誇示した女。これから先、再び邂逅する事はあるのだろうか…多分、きっと、ある。
何故なら彼は将軍なのだから。価値として最上級、そんな男なのだから。
だからこそ今、ここで別れ、更に彼の心に己の存在を植え付けられた幸運に喜ぶ。
女の代わりに、残された酒の名前はブラックベルベット。
その言葉は「忘れないで」である。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からザイヴァーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からフラニエータさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアルブムさんが現れました。
■アルブム > 夕暮れどきの平民地区。西空はほのかに赤く、東はほのかに闇を帯びている。
春めいた風が通り抜ける街路の端で、アルブムは巨大な杖にしがみつくように立ち尽くしていた。
杖の先には『こまりごと 手助けします』と書かれた看板が釣られている。
なぜこんな事をしているのか? 《かみさま》がそうせよと言ったからである。
いわゆる奉仕活動というものである。何かしら困った人がいたら、無償で手助けをする。それで徳を高めよという思し召しなのだ。
こうしてただ待っているだけで困り人が現れるかどうかは定かではないし、事実今日はまったくの暇であったが。
……そして、実のところ。『困った状態』になっているのはアルブムの方なのだ。
「………う、うううう……。この道、なんだか……女の人の往来が多い気がします……」
気だるげにまぶたを伏せながら、通りを行く人々に目配せするアルブム。
しかし、通行人の一人ひとりに視線を長く向けることができない。
それもそのはず、夜が近づくこの時間帯、夜の仕事に赴く人種が嫌でも目につくからだ。
そしてこの宿屋街は平民向け・旅人向けの色街としての側面も持っている。
扇情的で爛れた装いの女性があちこちの店へと出入りし、その様子はアルブムにとってかなりの目の毒だ。
そして、なおも悪いことに。アルブムくん、3ヶ月以上もオナ禁状態なのだ。
ローブの下で太腿はきゅっとしまり、膝が触れてX字を描き、かたかたと震えている。
■アルブム > デコルテを大胆に露出した衣装の、給仕と思しき女性が歩いていく。
丈の短いスカートを大胆に揺らしながら、踊り子と思しき女性がひとつの店に入る。
気の早いことに、屈強な成人男性にねばねばと絡みつきながら引きずられるように宿に入っていく娼婦もいる。
料理の匂いと香水の匂いが混ざり合ってあちこちから流れてきて、頭の中をもやもやと包んでいく。
理性が有耶無耶になりそうな一方、下半身には熱が集まってきて明瞭な疼きが増していく。
昼過ぎからずっと立ちっぱなしのせいもあって、意識が途切れ、白昼夢すら見そうになってしまうが……。
「……は、はひっ!? ご、ごめんなさい《かみさま》っ! も、もう少しがんばりますっ!」
何かに叱られたかのように急に背筋を正し、目を見開き、往来の観察を再開するアルブム。
ぼんやりしたまま立ち尽くしていてもなんにもならない。
困ってる人を見つけ、《かみさま》の力とアルブムの献身で助けるのだ。
それが《かみさま》の素晴らしさを世に知らしめ、アルブムが悟りに近づくのに必要なプロセスなのだから。
……しかし、やはり。すぐに背は丸まり、脚は切なく震えだし、視線もおぼつかなくなる。
なぜ、あえてこんな目の毒が多い場所を選んで立っているのか。
なんのことはない、ただの《かみさま》の嫌がらせである。
■アルブム > やがて、陽は完全に沈み、宵の空が星空に変わる。
宿屋街は通りも店舗もあかあかとした灯りに溢れ、闇に怯える必要はない……が。
色めき立った往来はさらに活気を増し、淫靡な容姿の女性達に混じって屈強な成人男性の影も多くなってくる。
もはや、ここは子供のいるべき場所ではない。それに……。
「………うう。お腹が減りました。そろそろ終わりにしませんか、《かみさま》…」
くぅ、とお腹が鳴る。劣情にも増して、空腹感がアルブムの細い腹部を苛み始めたのだ。
「………はい、また明日ですね。明日はきっと誰かの役に立てるといいです!」
わずかに快活さの戻った声でそう言うと、シャン、と杖についた鈴を鳴らし、身を正す。
そして、人の流れに逆らって居住区の方へ帰途につく。未だにちょっぴり内股気味な歩調で。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアルブムさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にボブさんが現れました。