2018/11/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」にエリーゼさんが現れました。
■エリーゼ > 今日はなんだかお腹が空いたから、ちょっと寄り道。
くぅくぅと腹を鳴らした少女は、学院からほど近い酒場に滑り込む。
目当ては名物の煮込み料理。風がきんと冷える冬の初めには、あれとワインが美味いのだ。
カウンターの席に陣取れば、店主がちらりとこちらを見る。子供か、と訝しむ様な視線だが。
「ん、煮込みと赤のワインをグラスで。銘柄はおまかせするですよー」
大人だぞ、お金もあるぞ、と言わんばかりに金貨を数枚、机の上に転がして。
店主も金さえもらえるならば何も文句は言うまいと、注文の仕度を始める。
後は料理がやってくるまでの手持無沙汰を、のんびりと足をぶらつかせながら過ごすばかりで。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」にザイヴァーさんが現れました。
■ザイヴァー > 煮込み料理が有名な一軒の酒場、そこに、一人の冒険者風の男がやってくる。
腰には聖剣バスカードを装備している以外は、若々しい冒険者といった風貌。
店内に入れば、幼げなエルフの隣、カウンターの席へと向かう。
「ふぅ、寒いな……」
『人間ってのは不便だねぇ、寒さ暑さを感じるなんて。俺にゃ想像もできねぇよ』
そう、バスカードがしゃべれば、慌ててサーベルを叩く。
「しゃべるな愚剣。剣は普通しゃべらないのだよ」
『へいへい』
もしかしたら、隣に座る幼そうなエルフに聞かれたか?と思いつつも……
とりあえず、注文しようか
「とりあえず、この牛すじの赤ワイン煮込みと、良い赤ワインがあれば、もらおうか」
『それってこの店で一番高いやつじゃねぇか?』
再び剣を叩き、黙らせよう。
■エリーゼ > やがてやってくるのは、濃い紫で満たされたグラス。
なみなみとグラスに注がれた液体は、仄かな甘さを立ち上らせている。
口元に運び、軽く含めば馥郁たる薫香がとろりと喉奥に滑り落ちていく。
上質なワインなのだろう。これには機嫌も自然に良くなる。
「んふー、これに煮込みで、完璧ですねー?」
さてさて、後はメインディッシュを待つだけ。
そんな中、一人の男が少女の方へとやってくる。
彼はそのまま自分の隣に腰かけると、何やらぶつぶつとしゃべっている様で。
「んにゃ……?」
ふと、耳を傾けていると、しゃべり声が二つ聞こえる気がする。
彼と、彼以外の何か――とは言え彼に友連れはいない様に見える。
だとすれば、二つ聞こえる声の正体は何だろうか?
少しばかり興味をそそられた少女は、ワインをちびちび舐めながら、隣の席のに耳をそばだてていた。
■ザイヴァー > 隣の幼いエルフに遅れて、最初にやってきたのは赤ワイン。
まあ、王宮でもない酒場にしては上質な赤ワインのようだ。
「ふむ、ここは当たりだな。中々いい酒の趣味をした店主だ」
そう言いながらワイングラスを傾ける。なお、隣で未成年も未成年エルフが酒を飲んでいるのは、
エルフは長命だから、きっと見た目通りの年齢じゃないのだろうと思い、見とがめない。
「これなら、煮込みも期待できるな」
『あーあ。人間はいいよなー。酒は飲めるし、飯は食えるし……俺様、暇で暇で仕方がないぜ』
「黙れと言っているだろうが、愚剣」
黙れと言って黙るバスカードではないことは知っているが、
言わなければもっとしゃべることも知っている。
なので言い咎めるのだが……
『いいや、黙んねぇぜ。今日なんて薄汚れたオークを3体も切らされたんだ。
たまにはご褒美に、隣にいるようなロリロリエルフの穴に、
柄を突っ込んでくれてもいいんじゃねぇか?』
そこまで言えば、慌て柄を握り、剣を鞘に押さえつけ、強制的に黙らせる。
さすがに隣のエルフに聞かれれば、冷たい眼差し待ったなし案件だ。
ちらり、と隣の幼きエルフを見やって……
■エリーゼ > くい、くい、とワインを傾けながら、聞き耳を立てる。
お行儀の悪い行為の様な気もするが、ここは酒場だ。その程度なら目立ちはしない。
さてさて、と観察していると、どうやら喋っているのは彼と、彼の佩いた剣なのだと分かる。
愚剣、と言うのはそう言う事なのだろう。であればあれは、インテリジェントウェポン、と言う奴なのだろう。
「ふむ、中々良い物を持ってるみたいですねー?」
ぽつり。喧騒に紛れる程度に呟きながら、ワインをもう一口。
更に聞き耳を立てていると、どうやらあの件はオークを叩き切ってきたらしい。
脂肪に筋肉、そして骨に血液。普通の剣であれば、オークを切断すると使い物にならなくなりそうなもの。
しかしそれを三体切って、なおも佩剣するに足る切れ味を保っているという事は、やはり業物なのだろう。
ふぅむ、と小さく呟くと、ついで聞こえたのは、あからさまな猥談で。
つい、と視線を向けると、彼と確かに目が合った。折角だ、冷たい視線を向けておこう。
「――そのご褒美の対価に、私の実験に付き合ってもらうことになりそうですねぇ。
インテリジェントデバイスはどれだけの損傷を与えたら喋らなくなるか、とか!」
この少女はこんななりだが教授であり、専門は魔法学と魔法薬学である。
故に、さらりと告げた言葉は冗談などではなく――九割九分、本気だった。
■ザイヴァー > 幼い娘に、孫と言っても差し支えないであろう程年の離れた娘に向けられた冷たい視線はとても痛い。
見た目は若々しくても、もう50代なのだ。
「いや、すまないな。幼きエルフさん。俺の愚剣が君を侮辱したな…」
『ひえぇ、おッそろしいこと言ってるぜ、このエルフ』
「俺としてもこの愚剣を喋らなくしたいところなのだがな。
対価と言わず、むしろお詫びに君に渡したいところだが……」
『おい、ザイヴァー!テメェ、俺様を売る気かよ!』
「まあ、こんなのでも戦いの中では信頼できるのでな…こんなんでも…」
そう、いささかうんざりした様子で話すザイヴァー。
そんな中、牛すじの煮込みがやってきた。
「君を侮辱した詫びと言っては何だが…今日、オークの巣穴で面白いものを見付けたのだ」
そう言って、取り出したのは、一見、ただの掌に収まる石塊。
「これはただの石のようだが……見ていろ」
そう言うと、その石を自身のワインに入れた。
するとどうだろう、赤いワインが、どんどん減っていく……
「どうやら、この石はスライムの一種らしい…石のようだが、生きている。
偶然、オークの血潮を飲んでいる所を見つけてな、持ってきたのだ…
研究は全く素人だから、お詫びに、君にあげよう」
そう言ってみようか……
■エリーゼ > 冷たい視線を向ける――とは言え、下卑た言葉が癇に障ったわけではない。
あわよくばこの店の支払いを押し付けようとか、その程度の考えを巡らせているだけだ。
どことなく老練とした雰囲気を持っているような気がする彼は、どこかうんざりした様子。
恐らくはあの剣と彼の関係性からみるに、日常茶飯事なのだろう。少しだけ同情する。
「ん、まぁ、別に卑猥な言葉をぶつけられた程度で気にする訳でもないですけどね。
ただ、今言った事をやってみたいのは事実ですよ?喋る剣なんてレアもの中のレアものですし。
それこそ、少しずつ削り取って、欠片を様々な試薬に入れるとか、様々な環境においてみるとか――」
くれるならばそれこそ本当に、喋る剣を隅々まで解体して、ありとあらゆる実験を行いかねない。
知識欲の権化である少女からすれば、どんなに貴重なものであっても自分の知識欲を満たす為なら平気で壊せるのである。
とは言え、彼の剣が相当な業物であることも、長い経験で培った目利きから理解できる。故に、欲しはしない。
等と他愛無い事をしていれば、丁度煮込みがやってきた。早速一匙掬い上げ、頬張りながら。
「あむっ――んむんむ……ん、オークの巣穴で、です?」
早速興味を惹かれた様子で、少女はじぃ、と彼の手元を見る。
取り出されたものは、一見何の変哲もない石ころに見えるが――。
「……うや、石が液体を飲んでしまう、ですか。これは、興味深いですねぇ?
ふむふむ、オークの血潮を……スライムの一種であって、しかし硬い、と言うのはレアですよ!
頂けるのならば、えぇ、喜んでいただきましょう。銘は知りませんが、良く囀る剣殿は、命拾いしましたよー?」
くすくすと笑いながら、彼の手元の石に手を伸ばす。
そのまま、貰えるならば素直に受け取り、ひょいと白衣のポケットに入れてしまう事だろう。
■ザイヴァー > 「ははは、バスカード。お前もたまには退屈しのぎに、研究材料になってみるか?」
『馬鹿言うんじゃねぇよ、ザイヴァー!』
どうやら、石スライムを渡したことで、相手は機嫌を直したようだ。
どうも、この年頃の女というものは扱いが難しいなぁ…などと思いつつ、
此方も、牛すじの赤ワイン煮込みを食す。うん、美味しい。
「ほう、他の冒険者が推薦するわけだ。これは美味い……」
『ケー。俺様も味覚があればよかったのになー』
「じゃあ、このエルフさんに付けてもらうか?」
『ふ、ふざけんな!』
そう話していれば、ふとそう言えば……
「そう言えば、袖振り合うも何とやらと言うしな。俺はザイヴァーと言う冒険者だ」
本当はグランフォードと名乗るのだが、バスカードがザイヴァーと呼んでいるので、不自然が無いよう名乗る。
「まあ、もしかしたらどこかでまた会うかもしれないし、その時は、
その石スライムの研究報告でも聞かせてくれ……」
そんなような会話をしつつ、酒場での穏やかな時間は過ぎていく。
二人は、お互い煮込みを食べ終えたら、席を立つだろうか……?
■エリーゼ > 彼一人しかいないのに、何とも賑やかな酒の席だ。
こういう手合いは案外嫌いじゃないから、暢気に構える少女である。
「ま、冗談を聞いたのが私で良かったですね。私は珍しいものを渡されたら黙りますもの。
研究材料としてはいつでも歓迎ですので、砥石と閃熱魔法を用意してお待ちしておりますよ?」
にっこり。ただし十全に本気である。
煮込み料理は牛も旨いし鳥も旨い。寒さと言う調味料は何より格別だ。
「ん、そうですねー、ここの煮込みは有名らしいですし。
あー、味覚、ですか?こう、幻惑の魔法を付与してあげれば疑似体験は出来そうですが……」
視覚を、聴覚を、触覚を、味覚を、嗅覚を――それぞれ騙せる魔術であれば、疑似的な味覚の創造も可能かもしれない。
――新しい研究のテーマにするには十分だが、生憎喋る剣と言う超レア物体を手に入れなければいけないので、お蔵入りにしておこう。
「ん、私はエリーゼ。普段は学院の教授をしてるですよー?」
彼が名乗るなら、少女もまた礼儀として返す。
隠す名前でも身分でもない。素直に告げればよいだろう。
「ん、そうですね、その時は研究成果をお教えしますよ。
ついでに、味覚を再現する魔法とやらも、考えるだけ考えとくです」
あんまり需要はなさそうだけど――などと由無し事を語りながら、ゆっくりと夜は更けていく。
煮込みを食い、酒を飲み、そしてこの出会いは別れに変わる。行きずりとはそういう物なのだろう――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」からエリーゼさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」からザイヴァーさんが去りました。