2017/12/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアムリージュさんが現れました。
アムリージュ > 日が落ちるのが早くなった。
露天で買った異国の衣装を抱え込んで帰路につく。
毎月決まった期間になると開催される露天市には、異国の商人が大勢訪れる。
マグメール王国内では手に入れることが困難な品々も売られているから、足を運んでいたのだった。

ナイトクラブで着ることの多い踊り子の衣装も装飾品も、以前、露天で買ったもの。
富裕層向けの高級店、衣装の貸与も購入も店に頼めば済むのだが、手間賃などと称して給与から天引きされるから、自前で買ったほうがいい。
それに陽光を浴びて艶やかにきらめく異国の生地を眺めるのは、気分が和むし嫌いじゃない。

(…でも、当面は店に顔を出すことも踊り子の衣装を着ることもなさそう。
 いつまでそうなるのかは、まだよくわからないけれど…)

まるで枕を抱くように大ぶりの荷物を両手で抱え、かじかむ指を少しでも暖めようと試みる。
ことさら寒さを感じるのは冷え込んだ外気のせいか、それとも心細さのせいか。

アムリージュ > ナイトクラブ『ミニュイ』の顧客から、新たな仕事が舞い込んだ。
娼婦を募集している組織に、密偵として潜入する。
表向きは娼婦として振舞いながら、機密情報を収集し、次の指令を待てという。

(娼婦のフリ、うまくできるかな…わたしに…。
 ううん、できるできないじゃなくて、やらなくちゃいけないのだけど…)

王家の一門に生まれ、一度は奴隷となったものの、今はナイトクラブに勤務。
しかしそんな経歴の割りに、性に関する経験はすこぶる浅かった。
奴隷時代の所有者が熟女にしか劣情をもよおさないマゾヒストだったこと、そしてその側近が男色家だったことが大きいのだが。
熟女でもなければ男でもなく、まして乳房が豊かでもない自分に性的魅力があるのか、まずそこに疑問を抱く。

(でも、機密情報の収集なら…)

目尻の上がった大きな目がすっと鋭く細くなる。
冷たい風が吹き抜けて、耳の上で二つに束ねた金色の巻き髪を乱す。
顔にかかる髪は振り払わず、しかし首を動かして視界を確保しながら日の落ちた街路を歩く。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアムリージュさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にレナルドさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアリステラさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアリステラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアリステラさんが現れました。
レナルド > ――全く、世知辛いものである。

様々な物を失って、知己の伝手を辿って得た生活を初めて、暫くは経ったが慣れないものはある。
かつての武勲なぞ生きぬく以外の役には立たない。
座して得られるものがないというのは師を初め、様々な達人たちが言っていたが全くそのとおりである。
受けた依頼(クエスト)を果たして、得られた程々の収入を手に向かうは王都の一角にある酒場。

「……嗚呼、この時間はそれなりに居るか」

扉を開けば、キィと蝶番が軋む。その詞色を聞きつけた客の数人が振り返り、直ぐに視線を卓の上に戻す。
腰に佩いた剣を揺らしながら、奥のカウンンタ―席に向かおう。
其処の隅にある空き席に座す。品書きをちらと眺めて、零す言葉は。

「エールと、喰えるものを。あとはこの銭の範囲で喰えるものをついでに頼む」

卓上に硬貨を放り出し、注文を通そう。まずは食べなければ、何も始まらない。

アリステラ > 男が席についてから、ほんの数分の差で。
娘も同じ酒場の扉を開けた。

冒険者がわりと集まるときくその酒場にはいり、見回せば、空席は…カウンターのほうしかなさそうで。
まずは席に着こうかと、奥へと進む。
黒衣と帯剣の、体格のいい男性の隣によさそうな席を見つけ、手を椅子に掛けて。

「こんばんは。この椅子、空いてますか?あ、待ち合わせとかなら、ほかに行きますから」

まずはそう、挨拶がてら声をかけてみようか。

レナルド > 色々失ったが、生命以外に残ったものはいくつもある。
何よりも剣と馬が残ったのは大きい。これは騎士としての宝である。
今や、元騎士である身分としても、何よりも捨てがたいものである。
自分から捨てる以外に損なうことはない剣であれば、あとは最低限生きるため、愛馬の維持のために稼ぐのだ。

何処かの徒党に与すればいいのだろうが、そうする気になれないのは容易く誰かを信じがたい心の表れかもしれない。
程なくすれば運ばれてくる安酒と肉類、温野菜の類が己の前に並ぶ。
さて、食べようと思って、木のジョッキを手に掴めば横手から声がする。ちら、と見える姿を認めて。

「ああ、見ての通り空いている。生憎待ち合わせをするような連れ添いの類も居ない身だ。」

女か。そう内心で零しつつ、どうぞ、と促そう。
別段相席であろうとも困ることはない。この稼業などでは、珍しくもないことだ。

アリステラ > 「ありがとうございます。それじゃ、お隣失礼しますね。」

どうぞ、と許可が出ればにこっと笑みを添えて礼をいい、椅子に座る。
話しぶりからすると、単身の冒険者…だろうか?そんなことを思いながらテーブルを見れば、ちょうど運ばれてきた料理が目に入る。

「すみません、こちらと同じ料理でお願いします。あと、チーズがあればもらえますか?」

わかりやすいだろうと、そう注文を通す。
背中に弓を背負っているのと、装備からは弓使いなのが簡単にわかるだろう。
酒場に出入りする関係上、よけいな化粧などはしていないが、武装がないと容姿だけをみてか妙な声をかけられるのは体験済みだ。

「ここは冒険者が結構出入りするって聞いてきたんですけど…今夜はいかがです、マスター?」

料理がでてくれば、ありがとうございます、と一礼してから。
探しもののために、まずそう問いかけてみよう。

レナルド > 「どうぞ。遠慮は無しでいい。俺も其方も此処では等しく、単なる客だ」

呼び名は当然知らない。故にこのように告げつつ、酒杯に口を付けよう。
一冒険者ではある。だが、纏う装具や武具の類は時に貧する冒険者としては、どこか違うように見えることだろう。
騎士らしい仕立てに作られた上着は幾つも修繕の跡が見えるが、元々の素材と手入れ故にしっかりとかつての風格を残している。
腰の剣もまた然り。拵えは使い込まれているが、決して安物の類ではない。
落ち着きのある所作は幾つもの修羅場を潜り抜け、不動心を得たが故のものである。

「弓使い、か。……其れなりに使うみたいだな。
 嗚呼、寒い時期だ。冬の山に遠出する若者が嫌がる季節だよ」

酒と共に食事を口に運びつつ、相手の放つ言葉に店の主に代わって答えよう。
己の言葉を裏付けるように、無言で店の主も頷く。補足も要らない回答という具合らしい。
程なく出て来る向こうの品も確かめ、併せて装備も確かめる。弓か、と。抱く感想に目を細めて。

アリステラ > 「はい。…かなり見事な武具とお見受けしましたが、騎士…のかたですか?」

隣に座りよく見てみれば、見事な剣だろうというのがわかる。
服装もなんというか、ラフな格好の多い冒険者というより、きちんとした感じだ。
そして、なんというか、落ち着いた感じでもある。

「弓と、魔法を少々つかいます。まだ駆け出しのようなものですが、これでも冒険者の一人です。
冬山は…慣れていないとそのまま命を落としますからね」

こくりと頷き、感想を一言。実際遭難したものも見てきた実感が、無意識に込められて。
料理と飲み物にも、手を出しながらふっと一息。

「…あの。最近、賊の動きについて、なにか聞いていますか?」
そしてつい、気にしていることを口にしてしまう。

レナルド > 「元、騎士だ。……嗚呼、騎士崩れでもいい」

端的に自分の身分を言い表そう。最早騎士ではない。仕えるべき義務も何もない。
だが、やはり日頃培ったものというのは容易く抜けきらない。
習慣とはいわば、己を己であると定める鋳型のようなものでもある。だからこそ、脱しえない点はある。
何よりも古臭い、騎士物語に居るような騎士というのは、このご時世生きづらいのだ。
よくてこの剣腕で糊口を凌ぐか。否、其れが出来ればいい程だ。

貧すれば、窮する。その果てに人の行いの道から離れるというのは――何か、違うと思うのだ。

「成る程? 駆け出し、というのは謙遜だな。そこそこどころではなく、よく使う類と俺は見たよ。
 雪山は軽んじればそれだけで、己が死を定めかねん。――無謀を為さねばいいんだがな」

雪山での修行を思い出す。厳冬期の局地は人間が備え無しに生きられるものではない。
毛皮に身を包み、火を絶やさずにいても尚、寒さだけで死んでしまいそうな境地に容易くなれる。
続く言葉には、ふぅむと首を傾げて。

「いや、特には聞いていない。……居たら、相応の所以を得た上で斬りに行っている」

依頼として出ていれば、斬りに行くには事足りる。
そうでなくとも立ち会えば斬るのは止むを得ないが、如何せん食い扶持がない身はままならない。