2017/07/12 のログ
エアルナ > 「ぁ、すみません、」

つい、と正直の上に何かつきそうな反応をしてしまった娘は肩をすくめる。
表通りとはいえ、夜の露店。ちゃんとした店ではないあたりからして、多少は?怪しい素性なのかもしれないが。
営業妨害になるほどお客もいないが…まぁ、それはそれ。そっと口を押えて、鏡を試すのをみやればーー

「…え?」

像、が見えた。のまではよかったが、それは。
どこかの地図だ、思わせぶりなしるしのついた、古い地形。

「もしかして…」

鏡の裏を見れば、三日月の文様。左に太陽、右に星の文様が小さく添えられ、縁を蔦と花が彩る彫刻が施されている。

「これ、3枚で一組の鏡だったんじゃ?」

店主の老人に尋ねてみれば、大きくうなづき。
ほしいかね?と期待した態度。

マティアス > 「こういうのは売り手よりも、買い手の目の確かさこそが全てだよ。ハズレを掴んだ方が悪いのさ」

だから、愉しいのだ。ハズレも掴むのも必然。しかし、当たりを掴んだ時が何よりも楽しい。
この露店の主が苦り切った顔をするのを、眼鏡のレンズの端に捉えつつそう説こう。
怪しさ云々は最早、このご時世では考えていても仕方がない。故に精々楽しめることを選ぼう。

故に――その心意気に、神が応えたのだろうか。

「おや。これはこれは。――驚いたね。珍しいものを見たよ」

摩鏡、だっただろうか。金属鏡に像を刻み、光を反射させることでその像を浮かび上がらせる仕掛けは。
珍しい仕掛けである。彼女の手の中にある品をじぃ、と見つめて少し考える。
懐具合は寂しいというものではない。値切りもこの祭りの夜では、粋ではない。

「主殿。お幾らかな?」

だから、迷いはしない。財布を取り出して支払う構えを見せて。

エアルナ > 「宝くじ、みたいな一面もありますよね、こういう買い物は」

いちおう?店主へのフォローっぽいことも言いつつ。
今回はどうやら当たりくじだったらしい、手の中の銀鏡をしみじみと見つめてみる。

「ええ、珍しい細工物です、これは。細工を抜きにしてもーー彫刻もなかなか見事だと思います。」

大きさも何というか、ちょうど実用的で。片手でつかめる、手のひらサイズだ。

「ついの鏡があるなら、それもお願いします、店主殿」

多少は吹っ掛けられるかもしれないが、これは組になってこそ、情報が生きる細工物だろう。

マティアス > 「まぁ、良くも悪くも……素人にはお勧めし難いね」

何と為しに入った武器屋や古道具店で買ったものが、実は二つもない品であった等は夢のまた夢の話である。
だから、打ち込むならば程々にしておかなければ、あとが怖い。
今回の品とは、どうだろうか。垣間見えた像が何処のものを指すのかどうか、徹底的な裏付けが必要だが。

「じゃぁ、此れは僕から君に贈ろう。僕が持っているよりも良いだろう」

手鏡代わりにするには少し嵩張るかもしれないが、女性の方がその手の品を持つに相応しいだろう。
魔法仕掛けの有無はまた別に鑑定するが、それらを抜きにしても造形としては悪くない。
対の品はどうだろうか。あるのだろうか?

店主に尋ねよう。あるならば、是非にと。

エアルナ > 「ですね。基本知識がないのにあたるのは…ビギナーズラックですから、かえってあとが怖いです」

真顔で頷く。
よくあるのがアレだ、賭け事で素人がたまたま大勝ちしたというやつ。たいていはどころか、ほぼ長続きはしない。

「え、いいんですか?…けど、そうですね、鏡ですし。
ありがたく、いただくことにします」

銀細工の鏡だ、持ち運びできるサイズだし、品もいい。
それにーーうん。たしかに男子が持つよりは、女性が持つほうがいい品物でもある。
そして、だ。多少色気はないが、贈り物、という形に…思わずにっこりと、うれしそうな笑みが浮かぶ。

…これだが、と、店主が出してきたのは。
すこし楕円形で、裏に太陽の文様が中央に刻まれている同じくらいの大きさの銀の鏡と。
鏡よりは一回り小さい、裏に星の文様が中央に刻まれた銀のペンダントだった。
ペンダントは、ふたを開けば鏡になっていて…蓋の内側に何やら古い文字が刻まれている

マティアス > 「うん、そういうことだね。忘れちゃあ駄目だよ?」

過ぎたる力は持つものではないのだ。
身の丈に合った選択を心掛けるのが、特に駆け出しの冒険者が生き延びるための秘訣と言える。
特に奇跡のような運の巡り会わせが二度も来るという、当てもない望みは抱くだけ無駄だ。
分かっているならば大丈夫だろう、と小さく笑って頷いて。

「良いとも。遠慮なく頂いてくれる方が、僕としても嬉しいよ」

それに、やはり祭りの夜である。贈り物に糸目をつけるのは男としても恥ずかしい。
自分のようなものには、武器などのようなどちらかといえばいかつい実用品の方が好みだ。
良かった、と見える表情に釣られて口元を緩め、続いて取り出される品にふぅむと唸る。

これら全部で一そろい、だろうか。
失礼、と。両手に薄手の手袋を取り出して嵌め、慎重な手つきでもう一枚の銀鏡を検める。
先ほどと同じ発光の魔術にて確かめれば、また別の像を結ぶ有様が見て取れる。
しかし、見える像とは別のカタチのようにも思える。ペンダントの裏蓋に見える文字は、それらの扱い方だろうか?

「――……良し、その鏡もペンダントもまとめて買うよ。別途手引書とかあれば、……ない、か」

エアルナ > 「はい。もし当たったら、即座にそこから引き返すのが肝心ですよね」

幸運というものは、気まぐれなのだ。
狙ったようにいい結果を出すには、それだけの日々の鍛錬と度胸がいる。
運が味方してくれるとすれば、それは…自らの努力が引き寄せたものに他ならないだろう。

「はい、ありがとうです、」

素直に礼を口にしながら、新たに出された品を確かめて…
なるほど、と頷く。
同じように隠された地図らしきもの、ただ、迷路のようにも見える像が浮かぶ鏡。
そして…ペンダントのほうは、なんだろう、短い文章だろうか?

周りの地形、迷宮?、そして宝にいたるヒント…そんな感じの3点セットのようだ。
もちろん、ちゃんと解読しなければ詳しいことは分からないが。

「…ないと思いますよ、手引書はさすがに。」

あれば。こんな露店に並んではいないだろう、凝った細工物の品々だ。

マティアス > 「もっとも、賢明な判断というものは……後になって気づくものばかりだがね」

自分もまた、そうだ。力があると思っていたらそうではなかったことを知った。思い知らされた。
故に今がある。かつて抱いたの思い上がりというものは、改めて思い返すと笑えない類のものである。
賢明な生き方は不自由なく生きるには良いかもしれないが、心置きなく生きるスタイルではないのかもしれない。
時折、そうとも思う。善く生きるだけなら、真っ当に仕官の道等を選ぶ方が稼げるからだ。

「どういたしまして。

 うん、分かっていたとも。――だから、これはプレゼントであると同時に宿題だよ。

 解いてみるといい。この鏡の謎をね。
 真贋も含めて明かしてみせてくれたまえ。きっと、愉しい時間を過ごせると思うよ」

当たり前だ。最初から、答えなんて転がっているものか。
分かっているよと肩の線を揺らし、代価を支払ったのちに包んでもらいながらそう述べよう。
そもそもの品物の仕組みに対する理解、成立した年代の鑑定、示される像の謎、等々。
真贋を見極める過程も含め、十分に愉しい時間を過ごせる筈である。

エアルナ > 「…そう、ですねーーその場でとっさに思いつく手段は、最適でないことのほうが多いです。」

その時に一番いい方法が浮かぶかどうかは。
知識と経験がものをいうのだ、そして平常心を保てるかどうかが。
先日の竜との対戦のなか、あやうく惨事を起こしかけたのを思い出し、しみじみと頷く。

「宿題とは…やりがいがありそうですね、実に。」

謎を解くのは、大好物の一つだ。
魔法使いは、大体において知的好奇心が強いのだが、こういう謎解きは特に面白いものの一つ。
だから楽しそうに、嬉しそうに答えて、店主から渡された包みを大事に抱きしめて笑顔でこたえよう。

「帰ったら、さっそくとりかかりますねっ。
答え合わせの時はーーつきあってください、また。」

楽しい時間の〆は、謎の答えを実地で確かめることになるだろうと。
ほぼ確実な予測をしながら、青年を見上げて笑みを見せる。

マティアス > 「だから――逆に自分の轍を踏むようなのを見てると、善くないことを思ってしまっていけないね。」

全く、と。眼鏡を押し上げながら笑って、肩を竦めよう。
生まれながらに力を誇るものは、何処かで一度躓けばいい。そうすれば分かる。より強くなれる。
逆にそういうものを見ると要らない手を出してしまいそうで、我ながらよろしくない。

「一つ、アドバイスを送っとこう。鏡が映し出すのは必ずしも真実とは限らない」

故に虚像とも呼ぶ、と。
鏡が一枚ではなく、複数枚というのは何か組み合わせて使うということを前提にしている可能性がある。
合わせ鏡にするのか。それとも、像を重ねることを前提としているのか。
そう、浮かび上がる像を模写しておくとも忘れてはいけない。記録、並びに比較材料とするために。
買いあげた品を店主より受け取り、大事に扱ってくれる様子に目尻を下げる。

「良いとも。古地図の類、また図書館で漁らないといけないなぁ」

では、と。立ち上がってはローブの裾を払いつつ、己を見上げる姿に応える。
もう少し周囲を見回ろうか。そう提案を一つ、挙げて。

エアルナ > 「失敗は成功の基。とはいえ、失敗を乗り越えることが前提なんですよね、実は」

うん。躓いたとき、転ぶのが痛いとわかるのはいい。
ただ、肝心なのは、その時大けがをしないことだ。
冒険では躓きが命取りになることも珍しくない、のだから…

「少なくとも、左右は反対であるーーか。合わせ鏡、というものもありますよね?」

実際には。真実でさえ、一つと限らないのが現実だけれど。
そのあたりは、これを作ったものの心理を推測しなければ解けない謎かもしれない。
ただ、三つを一組にしたというそこにも…何か謎がありそうで。
アドバイスはありがたく受け取りながら、どう謎を解こうかと、わくわくするのは否めない。

「はい、楽しみにしてますね。
まだ祭りは続いてますし、ほかにも面白いものはあるかもしれませんからーー行きましょうか、もうすこし」

今度は。青年向けの、実用品でなにか。
面白いか、謎を秘めたものか、そんなものがあればいいがと、笑顔で頷いて。

もしあれば、今度は私から贈りますと…楽し気に宣言しながら。
白狼をともに、再び、祭りの街中へと歩き出すのだろう…

マティアス > 「理想的な流れ、ではあるのだけどね。……まぁ、好んで失敗したいとは限らないのが、問題かな」

人間心理の表れであろう。そうならないように、過たないようにしてことを為すのだから。
失敗しない。失敗するわけがない――思い込み、過信による裏付けのない無策。
失敗しない。想定される対応策は施した――万一を想定したにも拘わらず、潰し切れない穴から生じる誤算。
いずれに由来するか。少なくとも過信と無策は何よりも恥ずべきものであるのは相違ない。

「勿論。ま、あとは帰ってのお楽しみにしておくといい」

ただし、向かい合わせの合わせ鏡の場合、互いを映し合って生じる無限像にどのように真実を見出すかが引っかかる。
そこはこれからの鑑定次第でどうともなろう。
ある程度想定される組み合わせと用法は脳裏に浮かべているが、どう落ち着くか、転がるかは後の楽しみとしよう。

「もう暫く続くよ、この騒ぎは。――ははは、気持ちだけでも十分だよ。さぁ、もう少し付き合ってくれると嬉しい」

新たな謎がひょいひょいと転がっていたら苦労はしないが、いずれも星の巡り会わせにもよるものか。
気遣いは無用と述べながらも、新たなる未知との遭遇とは己も望むところである。
連れ添いつつ、夜が明けても続く騒ぎの渦中へと足を進めて――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエアルナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からマティアスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 宝飾店」にミラヴェーラさんが現れました。
ミラヴェーラ > 星が散りばめられた空にはまん丸なお月様。
街中は昼夜構わず賑わっているのに、今日も今日とて我が店は閑古鳥。
販売用のディスプレイの奥で通り過ぎていく人達を眺めて、こうして一日が終わっていくのだろうか。

「……看板とか、出してみればいいのでしょうか。
あ、それとも電飾を使ってもっと煌びやかにしてみるとか…」

自分以外誰もいない店内で、一人寂しく独り言を言ったところで返ってくる言葉は無い。
依頼があった商品を全て納品してしまった今、新たなお客様を獲得するしか無い。
何かいい方法はないものかと、行き交う人を眺めながらぼんやりと――。

ミラヴェーラ > ――ぼんやりと、顧客獲得について考えていたのだが。
思いの外良い案も思い浮かばず、早々に諦めてしまうことにする。
こうしている間にも時間はどんどん経過していき、こうぼんやりとして時間を無駄に過ごすのは如何なものなのかと考え始め、

「こういう時こそ、新作を考えるべきですよね。
この間は簡単なピアスを作ったから……、今度はイヤリングか、ブレスレットもいいですね」

頭の中で色々と宝飾品のデザインを考えてはあーでもない、こーでもないと一人で瞑想中。
右手の人差し指をくるくると回しながらデザインの構想を練り、何か簡単な宝飾品でも作ってみようかと思ったのだが。

「…あ、そろそろ材料も無くなってきていたんでした…」

残り少ない材料で、暇潰しもとい新作の試作品を作るなんてもっての外。
はぁと浅いため息をついて、また人々を眺めるのに徹するしかない。

ミラヴェーラ > 「こうしていても仕方ありません。今日はもう店終いしてしまいましょう」

ディスプレイの奥から歩き出し、一先ず外へ。
シャッターをある程度のところまで下ろしたら再度店内へと身体を滑り込ませて、完全にシャッターを閉め切ってしまう。
そうして店内の灯りを消し、奥へと消えていく店主の姿。
明日はお客様が来ますように、と祈りつつ―――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 宝飾店」からミラヴェーラさんが去りました。