2017/06/12 のログ
キニス > 「うん、頼むよ」

どうやら彼女の知っている曲であったようでこちらも安堵する。
柔らかく微笑む彼女に酔って少し赤くなった顔で笑みを返す。
軽く一礼をされればステージへと向かった彼女。その背を視線で追いながら、彼女の歌を聞く姿勢へ。

「…フッ」

彼女の言葉、そして自分の居る場所を示されれば小さく笑みが零れる。
客の拍手に続いて拍手をすれば、伴奏が始まり、次いで彼女の声が響き渡る。
店内を満たす優しい歌声。その歌声を聞きつつ、少し昔の事を思い出す。
幼き頃、かすかに残っている記憶。思い出。
懐かしいと小さく呟けば、その灰色の生気のない瞳から涙を溢す。
彼女の全てを包み込むような柔らかい歌は、確実に一人の心に刺さり、その感情を揺さぶった。

エディス > なるべく緩やかに、穏やかに、ゆっくりと。
それでも客によっては長いこと時間が経ったように思えただろうし、早くに時間が過ぎ去ったように思うだろう。
唄い終えると再びの拍手。また深々と一礼し、店内には再び間奏の音色で満ちる。
先程の席に戻る頃には、彼の涙も引っ込んでくれただろうか。
唄の途中で男の涙に気付いてしまったので、どちらにせよぎょっとした様子で男を窺うだろうが。

「…も、申し訳、ありません。あの……お気に召しませんでした 、か…?」

どうやら男の涙を、そっちの方面に捉えてしまったらしい。
レースのハンカチを手に、叶うなら男の目元を拭おうとそっと手を伸ばし。
断られるならば、せめてもそのハンカチを彼に手渡そうと。

キニス > 彼女の歌を聞きながら、様々なことを思い出す。
感傷に浸っていればあっという間に歌が終わり、惜しみない拍手を彼女へ送る。
涙は何とか収まったが濡れた顔はまだぐちゃぐちゃのままで
ぎょっとした様子の彼女に心配されつつ、自分の顔がどのような状態か自覚する。

「あ、いや…はは、情けない所見せちゃったな」

自分の服の袖で涙を吹こうとした矢先、彼女のハンカチが顔に近づく。
柔らかいハンカチが触れれば、顔についた涙を優しく拭きとってもらう。
その事に抵抗や断ることはせずに素直に拭き取ってもらって。

「いや!素晴らしかった!最高だったよ!
 本当に…本当にありがとう。…お陰で久しぶりに涙を流せた。」

涙を勘違いされていると知り、咄嗟に最高だったと否定する。
彼女のハンカチを握る小さな手を大きな手でぎゅっと握り、感謝の言葉を述べる。
意識はしておらず、ついつい彼女と顔の距離が近くなってしまい。

エディス > 「……い、いいえ…、……そのような、事は……―――」

特に抵抗も固辞もされなかったので、ハンカチに涙を吸わせるように膚に優しく当てる。
遅れて、こんな風に女が男の涙を拭う事は、もしや男としてあまり喜ばしい事ではないのではなかろうか、と
女は別の意味で心配になった。
それでも見て見ぬフリは出来なかったし、己の唄に何か非でもあったらと思うと、とても男を無視する事は出来ない。
だから、最高だと賛辞を贈られ、喜悦よりも安堵の方が勝り。
今の彼の状態を感極まったと言うのだろうか、ハンカチを握る女の手に男の大きな手がぎゅぅと握り込まれ、
久しぶりにと言う言葉に若干の引っ掛かりを覚えたものの、
その距離の近さと、手を握り締められると謂う所作に、一拍置いて女の貌が見る見る内に真っ赤になっていく。
ともすれば、その手の熱さも男に伝えてしまうやもしれず。

「…っ、――――、ぁ…あ、あの……ッ、…―――ぉ、お客、様……」

彼の名前は知らないので、そう呼ぶしかないのだけれど。
果たしてこれほどの近さでありながら、男の耳に届いたかどうか危うい程の小さなちいさな声で、
そう声を掛けるしか今の女には思い浮かばなかった。
それ程の動揺と、羞恥と。

キニス > 「キニスって呼んでくれ。…そちらのお名前をお聞きしても?」

ジッと彼女の顔を真顔で見ながらそう告げる。
顔の距離には未だに気付かず、そして未だに手を握ったまま軽く自己紹介をする。
その後に彼女の名前を聞きながら、ふと疑問が浮上する。

何故彼女はこんなに顔が赤いのだろうか。
先ほど歌っている時や会話していた時はそうでもなかった。
しかも、彼女の手が何処となく熱いような…あっ!

小さく聞こえた彼女の声に顔の距離などに気付き、そそくさと顔と手を離す。
こちらも彼女ほどではないが顔を少し赤らめて、グラスに手を掛けて、酒を一口飲めば気を取り直す。

「ふぅ…いや、すまない。…つい熱が入ってしまってな。許してくれ」

彼女を横目でチラチラと見ながら、そう呟く。
近くで見た彼女は遠くで歌うより遥かに美しく、手に伝わる感触は柔らかく、優しかった。
色男ならばあの流れで唇でも奪っただろうが中途半端に道徳があるせいで初対面の相手へのキスは遠慮してしまう。
相手からしてくれるなら…遠慮する理由はないが。

エディス > 「………、……キニス…さま…?
 ――――っぁ……、わ、私の事は……エディス、と」

目がとぐろを巻きそうな程、動揺を露わにしながら。
それでも辛うじて相手の科白を聞き拾うと、己が名を紡いで知らせる。
どくどくと心臓が早くて、貌どころか全身が熱くて。
そんな女の様子に、落ち着きを取り戻した男が漸く気付いてくれたらしく、
相手の方から貌と手が離れても、忙しなく落ち着きのない鼓動に思わず、胸元にそぅと手を添えた。

「…ぃ……ぃい、え。…此方こそ、あの……さ、差し出がましい真似を、いたし、ました…」

若干声が震え、長い睫毛を軽く伏せて貌を俯かせる。
羞恥心の強い女であるから、己の方から彼にキスを、と謂う事にはならないが。
あの流れで仮に唇を奪われたとて、驚愕の儘受け入れてしまうだろう無防備さを持つ。
湿ったハンカチを握りしめながら、胸元に添えた手を下ろし。

「――――、ぁ……。…それ、では。…あの、キニス様……。
 私のお仕事は、今日は此処まで…ですので。…また、ご縁がございましたら…
 ……私の唄を、また…聞きにいらして……ください 、ませ…」

生憎と、唄う店を決めていない流しではあるが。
縁があれば別の酒場か酒場以外の何処か、出会う事もあるだろう。
握り締められた手の熱さと、ハンカチに吸われた涙の冷たさあたたかさを、今宵一晩、ひっそりと心に沁み込ませながら。
女は男に一礼し、店の奥へとその姿を消した―――――。

キニス > 「エディス、ね。…覚えた」

自分が彼女から離れても緊張している様子の彼女。
何とか発せられた彼女の名前を復唱し、記憶する。
胸元にそっと手を添える動作に落ち着いただろうかと顔を伺う。

「…いや、そんなことはない」

声を震えさせ、顔を俯いている相手。
差し出がましいなんて思ったことはなく、寧ろ自分の事を気遣ってくれたようで嬉しかったと
ハンカチを握る彼女に伝える。
美しい姿に声、そして性根まで優しいものを持つ彼女を目を細めて微笑んで見守る。

「うん、また縁があったら、な。
 今日はお疲れ様。良い歌声をありがとうな。
 …これからも、頑張れ」

一礼した彼女に笑顔でそう告げる。
酒場か、はたまた道端か、街の外か。
彼女とまた会う事を今から楽しみにしながら、その背に手を振った。
最後に彼女に対してエールを送り、酒を飲み終えればこちらも酒場を後にした。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 / 酒場」からエディスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 / 酒場」からキニスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2/酒場」にカインさんが現れました。
カイン > 平民地区に数多ある安酒場の一つ。その中でもマシな門構えをした酒場のカウンターに陣取って、
酒場の喧騒を肴に酒の入ったジョッキを傾ける男の姿があった。
一目で荒事を生業とする人間と判るからか、周囲に指して人は寄り付かず時折声をかけられるのも同業のような輩ばかり。
そんな状況に辟易とした様子に少し酒臭くなった息を吐きながら、カウンターの上にジョッキを置いて店内を見回し。

「やれやれ、どうせなら美人にでも声をかけられたいもんなんだが。マスター何かあてはないかね?」

さらりと身の程知らずと言われてもそう文句も付けられ無さそうな言を吐きながら、
酒の追加を注文する。当たり前といえば当たり前だが店主に一切取り合っては貰えない。
追加の酒が来るまでの間に億劫そうに酒場を見回してみれば、
当然ながらこんな時間に酒浸りになっている飲んだくれは大半が男である。華の一輪もパッとは見当たらない。

「酒場はもう少し女性のは入りやすい環境にすべきだと思うんだがねえ」

女性が入りにくい原因そのもののような男がぼやきながら帰ってきたエールを受取一口喉に流し込むのだった。

カイン > 「とはいえ飲兵衛の間に女が挟まっても騒動の種ってのはいつの時代も変わらんは変わらんかねえ。残念だ」

ちらりと外を見れば酒飲みに絡まれる女性とそれを助ける男性という、
それこそよくある顛末が目に入って肩をすくめる。盛り場ではよくある光景だ。
いつの時代でも目にするような三文芝居じみた顛末。とはいえ当人達にとっては笑い事ではなかろうが。

「絡むも絡まれるもあしらうもこの手の場所の醍醐味と言ってしまえばそれまでなんだけどな」

それを楽しめるか否かは難しい所だと笑ってのたまいながら酒を煽る。
世の中面白いことはとても多いが、その大多数にただし当事者でなければと付くものだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2/酒場」にオルナさんが現れました。
オルナ > 月に幾度あるか無いかという非常勤の授業の帰り。性質の悪い後輩……といっても生徒に当たるのだが、
魔法実技の指導の疲れから、普段はそれほど行くことのない酒場を求めて足を延ばす人影。
平民地区にあって、看板はいくつも掲げられているものの。家の方角に近く、門構えがしっかりとして
危険の少なそうに思える店の戸を開ければ、

「……、ん……入れます?」

荒事に慣れた人込みと喧噪が波のように寄せていて、そこでぴたりと足を止めるものの。
また何処か場所を探す気にもなれず。いそいそとカウンターに寄っていけば店主から指される方角。
一際背丈の高い人物の横を指示されて、他に座る場所もなく。
身に纏う黒の羽織をゆるく脱げば、服越しにでも主張するような胸元が見えて、一瞬視線が集中しそうでいて、
けれど当人は、冷静に、エールの並のジョッキを頼むばかり。

「こんばんは、……。隣。失礼します」

先んじて、嫌な絡まれ方をしないようにとそつのない挨拶をかわそうとするまま。

カイン > 暫くの間一人で酒を楽しんでいた所でふいに店の気配が変わる。
何となしに入り口の方に視線を向ければ、こういった場所には不釣り合いとも取れる女性の姿。
無遠慮な男達の視線にお気の毒とばかりに酒を煽っていたものの、
空いていた席がここしかなかったのだろう。マスターに言われてやってきた女性に少し驚いたように視線を向け。

「ああ、こんばんは――どうぞどうぞ、むさ苦しい所で悪いがね」

何せ男しかいないのだからそうとしか表現のしようがない。
目の毒といえるような相手の格好を一瞬眺め見て、軽く喉を鳴らし。

「それでお嬢さんは何でこんな時間にこんな酒場に?
 俺たちはまあ、何ってわけでもなく酒をかっ食らう飲ん兵衛のたぐいだがね」

オルナ > 「ん、……疲れを癒しに。というのは、……半分ですけど」
小さな口にエールを運びながら、ぽつりと事情を話ながら。
何でも無くお酒を愉しむ空間、異性ばかりではあるけれど。そこまで警戒する程、
事件が起こるような気配もなく。

「飲兵衛……、お酒。やっぱり好きなんですか……?」

余計な気、と言われてしまえばそれまでのもの。けれど話を誰かに聞いて貰いたい欲求もあり、
自身から切り出せば――なんて思いつつ。時折、マスターにつまめるものが無いか尋ね
隣り合う相手の容姿を、エールの並の容器ごしに見やっている。
きゅっと両肘が寄せられるように両手で喉を潤せば、服越しの谷間が酔って扇情的でもあり。

カイン > 「残り半分は?」

相手の言葉に興味を覚えたと言った風で問いかけながら、自分の酒を軽く一口煽って問いかける。
エールの独特の風味を感じながら大きく息を吐きだしながらも、
問いかけられた言葉には躊躇いなく頷いてみせ。

「ああ、勿論大好きだとも。酒と女と喧嘩、どれも大凡の男がスキなものだな。
 俺はどちらかと言うと前の2つが好みだが、お嬢さんの好みは何だい?」

エールの色合い半分の相手の顔を見返しながらからかうように笑って問いかける。
その様子は確かにどこにでも居る酔っぱらいという風情なのは間違いない。

オルナ > 問いに一瞬詰まるものの。この時間に、こんな地区で関係者もいないものと思い込み、
日ごろから溜まっていることもあって

「愚痴、……です。そもそも、」

授業中でも受けるような視線やからかい半分。生徒なのに自身よりも魔法に秀でた子のこと。
技量で才能を超えることは出来ないなんてことや、給金の少なさを嘆く。その頃には
エールの空瓶も3つ目に。さほど強くもない酒が体に染みわたれば頬がほんのりと色づくまま。

「あ、……ごめんなさい。好み……でしたよね?」

一方的にまくし立ててしまって、すっかり相手の問いかけに応えられずにいて。
しまった、このままではあまりにも……。ということすら、表情に浮かぶまま。

「……これもまた、あれなんですけど。……お金。です。魔術の研究に必要で……なんて」

ありきたりの答え。つい口を滑らせながら酔っ払い同士の会話。翌日には忘れているだろう程度の認識。

カイン > 「愚痴か、成る程。確かにそれは酒の効能の最たるものだな!正しい使い方だ」

違いないと喉を鳴らして笑い飛ばしながらも、バカにした風はない。
何せ男も含めてこの酒場はそういう人間の吹き溜まりなのだから当然ではあるのだが。

「いや、吐き出せる時に吐き出しておくのがいいさ。しかし人を育てるというのは大変そうだな。
 何せ俺はこの通りの無頼者でな。自分のことに手一杯で全く手が回らない」

自分の目指す所見えない有様で人に何かを言うなどというのもおこがましいと肩を竦めて告げた所で、
聞こえてきた言葉にスゥッと目が細まって。相手の様子を窺うように横顔を眺め。

「そうだな、例えばどれくらい必要何だい?当座の必要な額って意味で、だが」

オルナ > 「使い方……溺れそう、だけど。ん……」
酔いが回りきると丁寧語が自然と失せるように。言葉をぽつりと紡いでいきながら、

「当面、……。えっと、……」

耳を寄せるように仕草で伝えながら、周囲にも聞こえないような小さい声。吐息が耳朶に触れて
ぞわりと感覚を煽るようでいて。そこで伝えられるのは、場所を選ばずにおけば家が建てられるような額。
耳元から離すと薄く笑みながら、酒に浸るようにまた容器に口をつけて、

「なので、……副業も。本業に……もっと良い依頼があれば、なんて」

冒険者ギルドの話題にそれとなく触れながら。自身が魔法を扱えること、知り合いの伝手から登録したものの。
失せ物の捜索や、愛玩動物の餌やり、散歩……掃除なんて。額にならない仕事ばかりで、
危険なことを避けているのだから。当然なのだけれど。口がゆるみっぱなしでエールばかりが進んでしまう。

カイン > 「溺れるのも悪くない、常に溺れ続けるのは問題がね。
 今まで見てきた限り人間、何かやることがあある場合はそれなりに踏ん張るものだ」

自分の場合はまた別だが、と人ならざる身に思うのだがそれは秘めておく。
と、不意に動いた相手が耳元でささやきかけられた言葉。其の何処か艶やかな仕草に、
どこまでが無防備であるのかふと興味が湧く。言われた額は即座に用意できるようなものではないものの――

「そうだな、少し時間を於けば用意できる額ではある。
 その代わりに仕事を受けてみるきはないか?何危険なことはないさ」

そう言い放てば、そっと相手の肩を抱いて己の方へと寄せながら顔を覗き込もうとする。
どこか悪戯めいた視線が相手を正面から見据え。

「一晩、俺の相手をしてくれるだけでいい」

セクハラのようなセリフを正面から言い放った。最も、其の様子から
酔った相手の反応を楽しむ為とまるわかりの言ではあるのだが。

オルナ > 「そういうものですか……んぃ」
深く長い吐息漏らしながら、ぐぐって椅子に背中預けて背を反らせば重たげにたわむ胸元。
服越しにでもはっきりと分かる揺れが目の前の相手にははっきりと見えてしまって。

「え、……仕事? ですか、……そ。」

真正面から見据えられて、全然想定なんてしていない台詞。考えるより先に口元が開き、

「そんなこと、……ちょっと。考えます……あ。ああ……か、代わりにですね」

代替案なんてことを必死に酔った頭でぐるぐる考え。けれど、いつものようにいなしたり
冷静に、強烈に拒否するような態度の相手でもなく。正直なところ困ってしまっていて、
咄嗟に閃くのは目当ての魔術に関する事柄。頭の中に浮かぶ地名でいて、

「九頭竜山脈の、……鉱石。とか。その……最終的に、そう!……魔術鉱石をですね」

しどろもどろになりながら。最終的に何故か冒険者ギルドに、出来れば誘ってみたいようなことを
口走っていて。傍から見ても慣れてない対応。初対面の相手に緊張の糸がまた張りつめるまま。
相手の機嫌を損ねていないか、誘いに乗ってくれるかどうかまでなんて頭回らずに。
切り抜けることだけ考えてしまう。さほど嫌ではないのはどうしてだろう、なんて何処かで考えている思考も。