2016/12/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にホロウさんが現れました。
ホロウ > (――またこんな時間になってしまった……。)
護衛もつけず、メイドの一人もつけずに屋敷を抜け出して夜の散歩をしていたのだが、好奇心が赴くままにたまたま踏み込んだ平民地区で情けない事に迷子になっていた。
富裕地区ならば屋敷の形から見知った道や店からで、屋敷に戻るのは容易いのだが商売以外で踏み込まない平民地区は何処をどうみても同じような作りの家や店が並んでいるようにしか見えなくて、思わず自分の目がおかしくなったのかと、人差し指で眉間をぐりぐりと押して解し、少しでも眼の疲れを取ろうと足掻きながら周囲をキョロキョロと不安げな眼差しをあちらこちらに向けている。――…そんな不思議な行動を取る人間に誰も近づいてこないし、大通りを行き交う人々はコチラに失礼な好奇の視線を向けて、心配の声もかけずただただ過ぎ去っていく……。

「こっちにしかない品とか、あるんだよな……でも供をは邪魔にしかならないし……。」
視線を彷徨わせるのを止められない、止まらない。
せめて見知った道やお店さえ見つけられればと淡い期待をもって、為るべくそれっぽい方向へ歩き続ける。
途中夜回りの衛兵や詳しそうな冒険者などを見かけるが、お礼に賄賂を請求されたり、金目の物を巻き上げられたり、とかそれが怖くて声もかけられない。
一層の事、酔っ払いや冒険者がケンカでも売ってくれれば、叩き伏せて道案内でもさせようものなのだが……と、勝つ前提に考えても正直一流の冒険者には敵わないだろう……。

――…顔を覚えられないようにローブのフードを覗き込まないと顔が認識できない特別な認識阻害の魔力を付与したローブ、深く被ったそのフード、あちらこちらに視線を向ける姿はきっと不審者にしか見えないだろう。

だって衛視が先程からコチラに視線を向けたり、そらしたりしているのだから……コワイ。
捕まったらきっと賄賂か店の品物かメイドの一人を寄越せとか言われるのだろうか?
迷子の不安と周囲の奇異の視線とで思考がネガティブにスパイラルしていく……。

ホロウ > 「……ハァ、誰か連れてくれば良かった……。」
結局平民地区をうろうろと歩き回ってみたが、見知った場所に出る事はなく、偶然見つけた冒険者の居そうな酒場入り、高いお小遣いを払って道案内をさせることになる。
無事屋敷についてからは散々メイドや店のものに叱られたのは言う間でもなく……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からホロウさんが去りました。
ご案内:「王都 平民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 王都平民区の片隅、異邦人が商いをする館があった。取り扱う物品は異国由来のものであるが、少なくとも外装というか外面だけはこの国にあり溢れている建築様式で、色彩も取り立てて奇抜さの無いアイボリー。強いて競合店との違いを挙げるなら、休息日とされる曜日であるにも拘らず、普段どおりに営業している事だろう。休みになると客足が増えるかも知れぬ飲食業なら兎も角、只の貿易商人にとっては、官庁も動きを止める日に活動するのは非効率であり、他が休むのならその日に合わせて休むのが常道ではある。なのにこうして暖簾を掲げているのは、偏に実質的な経営者にこの国の休息日という暦に馴染みがない事に端を発している。

「うむ、彼の御仁には、後程、儂自身が挨拶に赴こう。今の時点で鼻薬を嗅がせておくにしくは無い。手土産も必要になるじゃろうが、お主らの調べのとおり骨董好きというのは確からしいのぅ。よい。無難な所で、年代物の白磁を一組手配するように。刻限は五日後じゃぞ。」

二階の一番奥の部屋。居丈高な背凭れと、立派に張り出した肘掛を備える革張りの椅子に腰掛けて、奉公人に指示を与える小さなシルエット。手元には新たな取引先として浮上した官僚についての調書。何でも、図書館での書物の仕入れに大きな権限を持つ人間のようで、異国の書物を高値で卸そうという腹づもりらしい。所謂、稀覯本と呼ばれるものの価値は天井知らずなのが常で、価格の設定など買い手側と売り手側の思惑が一致するか否かのみで定まるものだから、相場らしきものから二割三割吊り上げた所で、文句はつけ難い。便宜供与への心付けを吐き出しても、往々にして儲けが出る。

「他は…火急の案件は無さそうじゃな。儂はもう暫く此処におるから、何かあったら声をかけるが良い。」

椅子と同様に、これもまた小柄な妖仙にとっては使いにくそうな、どっしりとした執務机の上に書類を放り投げる。尊大な仕草に慣れっこらしい奉公人は、恭しくそれを回収し、一礼と共に執務室から退出する。その姿を見送ると、袖机の引き出しから漆で装飾された印籠を取り出し、中から真ん丸の鼈甲色をした飴玉を拾い上げ、ぽいっと口の中に。

ホウセン > コロリと口の中で飴玉を転がす。午前の内、多少なりとも商売事に頭を使った疲労を甘味で埋め合わせようというのが主目的だけれど、単純に口寂しいという事情もある。一応は、この商館を経営する商人の御曹司という立ち位置で活動をしていることから、遊興の為に出歩いている時ならばいざ知らず、今後とも付き合いが発生するかも知れぬ初見の客人が現れるやも知れぬ職場では、それも特に日中の時間帯には、煙管による喫煙は控えるように心掛けているのだ。舌の中央を窪ませて口内の中央に安置させたかと思えば、右に左に移し変え、歯列と内頬の間に送り込んだりもして。小さな硬貨ぐらいの円周はあるものだから、滑らかな妖仙の頬がプクリと膨れる。造形美を追求した人形の類と方向性を等しくする、十分以上に希少価値を主張できる整った顔立ちだが、こうすると外見年齢相応の愛嬌らしきものが浮上する。

「はてさて、昼餉は如何したものかのぅ。」

太陽は真南の高い位置に居座り、昼食の頃合だと万人に示している。それでも妖仙が外に出向かないのは、この時分の飯屋に入ろうものなら、昼食時の混雑で揉みくちゃにされないという保証が成立しないからである。唾液に溶け出した甘露をコクリと飲み干し、少しばかり覚えた空腹を紛らわせる。背凭れに背中を預けると、小さな革鳴りの音がして、後は屋外から窓越しに伝わる健全な喧騒が、どこか遠くに聞こえる。くぁ…と、小さく欠伸。営業してはいるものの、確かに平日に比べると客足は鈍る。自然、妖仙の手元に舞い込む案件の数も減る。その裏返しというべきか、夜間であったり、現在のような休息日のタイミングで持ち込まれる商談や取引の類は、往々にして切羽詰った冗長性に欠けるものが多く、だからこそ交渉事を愉しめてしまうものが少なくない。とはいえ、相手のあることだから、舞い込む事柄は玉石混合。奉公人には目ぼしいものだけ取り次ぐように命じている。その条件は、客人が得意先である事か、取引先として開拓している人物か、妙齢の女であること。最後の一つは、完全に妖仙の趣味だ。

ご案内:「王都 平民地区」にハルクラム=メイプルさんが現れました。
ハルクラム=メイプル > 平民の武具屋での買い物も終え、真っ昼間だからと特に何をすることもない時間。少し街の片隅に行けば、こんな店もあるのかあと彼女の目に留まるものもある。中を見ると、何か昨日に見たような姿。かの邪仙ではないか。ただ、あちらも昼が為暇をしているようにみえる。

「ふうん・・・昼間ってほんとにみんなお暇ですの・・・」

店外の側にあった椅子にもたれながら、一人何ともつかない物思いにふけっている。

ホウセン > 二階奥の執務室に篭っている妖仙。密談を行うこともある、店の重鎮の部屋の窓が通りから見える位置にあろう筈もないが、其れは其れ。小さな欠伸を重ね、昼餉への誘惑よりも強靭な午睡への誘惑に駆られて、室内の応接用ソファにゴロリと横になる。何時起きるのかは余人の預かり知らぬ所だろうが、程なくして小さな小さな寝息が漏れる筈で――
ご案内:「王都 平民地区」からホウセンさんが去りました。
ハルクラム=メイプル > 軽く透視の術を使って中を外から覗き見たものの、彼は既に昼の眠気に誘われた様子。どこぞの馬の骨かも知らない自分がこの館に入ってみようなぞ事もできず。外は寒く、腰掛けていた椅子も冷たい。どうせ眠るならもっと暖かい所を探そうと、ハルクラムは場を後にした。
ご案内:「王都 平民地区」からハルクラム=メイプルさんが去りました。
ご案内:「王都平民地区 自前の商館」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > ちょっとした午睡の筈が、思いのほか寝入ってしまったようで、気付いたら冬の太陽は大きく傾いでいた。程なく夜の帳が降りてしまう頃合ともなると、何とも半端な時間であり、外に繰り出す為の気力が湧かなくなってしまうものだ。寝覚めの空腹をやり過ごして、夕餉の時間に近くの食堂で腹を満たし、こうして己の商館へと舞い戻っている。遊興に割ける時間を無為に喰い潰してしまった事に忸怩たる思いが無い訳でもないけれども、それならそれと、溜まっている雑事や、これから生じるであろう彼是を先読みして、手を打つ時間へと切り替えたのだ。一度没頭してしまうと、時間の経過はあやふやで、とうに深夜帯と言っても良い時間。それに巻き込まれる形で、階下には忠実な奉公人が控えているだろう。

「むぅ、少しばかり根を詰め過ぎたたかのぅ。」

執務机の上には、分厚い帳簿やら、手書きの地図やらが散乱し、雑然としている。メモ代わりの羊皮紙には、毛筆と墨で書き殴られたあれやこれやの指示。上等な着物に墨を付けてしまわぬよう留意しつつ小筆を置き、革張りの椅子の上で大きく伸びをする。少しばかり息を詰め、強張った筋を引き伸ばす痛気持ち良い感触に、瑞々しい唇から、喘ぎ声にも似た艶っぽい息遣いが漏れる。

「こんな時間か。彼奴にも居残りの手当てを支給せねばならぬな。」

壁にかけられた機械仕掛けの時計を見やり、奉公人に対する給与の上乗せを頭の中で算盤を弾いて算出する。専ら、不意の客人が来た際の取次ぎの為に控えているだけだから、疲労の蓄積は軽微だろうが、支払うものを支払わねば沽券に関わると。その彼に帰宅が許されるまでもう少し。その間に、誰かが現れるかは、神のみぞ知る所。

ホウセン > ただの妖仙であったのなら、如何に商人、またはそれに類するものに擬態していようとも、こうも律儀に使い走りの人間に意識を割く事は少ないだろう。何しろ、只の人間には抗い難い術やら何やら、言う事を聞かせる手管は有り余っており、心酔させるにしても、恐怖を糧に行動を操作するにしても、容易いのだから。なのに、こうして労を負うのは、この妖仙の性分としか言いようがなく、当人の言う所の”粋”かそうではないかというあやふやな行動規範に基づいているものだ。

「さて、この界隈も聊かきな臭くなってきた…のかのぅ?今や、何処も彼処も政争に明け暮れておるのだから、火種が一つ二つ増えようとも、大した違いは無いのかも知れぬが…」

先刻まで目を通していた資料の内、気になる記述を、記憶から引っ張り出す。表面的な事象だけを捉えるのなら、単なる火事だ。延焼範囲もそれなりにあったことから、惨事には違いなかろうが、大した話でもない。事実、この妖仙がその事件とも事故ともつかぬ事柄に意識を向けたのも、火災で焼失した区画の再建事業に一枚噛めないものかと、土地の権利関係であるとか、焼けた上物は何処の勢力の傘下だったのかだとか、取っ掛かりを調べていたに過ぎない。然し、情報を集めれば集める程、事態には深みと奥行きがあることを示す材料が、これ見よがしにザラザラと転がり出てくるのだ。

「単なる政争というには、魔族の影がチラつき過ぎておる。敵の敵は味方という話であれば納得できん事もありゃせぬが…」

現場での目撃情報の類を集積すると、王国内の対魔族部隊が絡んでいることは確実に見える。この際、どちらが先に拳を振り上げたかなんて事は、外部の人間にとって如何でも良いことだ。だが、魔族が絡むとなるとなれば、聊か事情が異なりもする。妖仙も人ならざるモノであるし、時には人間に危害を加えることもあるのだが、根っこの部分でいけ好かないのだ。或いは同族嫌悪に類する情動なのかもしれないけれども、嫌がらせの一つでも出来たのなら、きっと小気味よいであろう事に疑いは無い。