2016/11/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフォークさんが現れました。
フォーク > フォーク・ルースはカフェのテラス席に腰掛けていた。
仕事がない時は恐ろしく暇な男。忙しげに行き来する人々を眺めている。

「みんな……働いとるんだなぁ~」

そんなことを呟きながら、紅茶を一啜り。
小洒落たカップなので取手に指が全部入らない。人差し指だけを突っ込んで紅茶を飲んでいる。

「ま、俺は一攫千金タイプだからな」

勤勉とかコツコツとかまったく性に合わない。
当たればデカい生き方をしているのだが、めったに大当たりはやってこない。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアニマさんが現れました。
アニマ > 見上げる建物は大きくて、見上げているだけで座り込んでしまいそうだ。数時間前の私はこんな大きな建物を見上げているなんて夢にも思わなかった。

「…ふぅ…ここどこ…?」

三日前の自分を褒めてあげたいけれど
やっとの思いでたどり着いたこの場所は記録とは全く違っていて戸惑ってしまった。

「二百年前はもっとのんびりしたとこだと記録されてた…はずですけど…」

何方にせよ自分には何があっても未知に過ぎないのだけれどやはり記録通りであって欲しいと思ってしまう思いをかき消すのは難しい。
思っていた以上に人が多く、殺伐としている。
道の中ほどを所在なさげにふらふら歩いていく少女に怪訝な目を向ける者はいるもののその装いからお使いか何かかと思われ自然と目をそらされていく。
とりあえず誰かにこの場所の名前を聞かなくては。
マグメールだと思って別の場所にたどり着いていたなんてことになれば冗談にすらならない。

フォーク > 暇な時は、一人でも遊べるゲームに限る。
男は懐から、台紙を取り出し純白のテーブルに広げる。台紙は何度も使われ、宝の地図のような古めかしさを醸していた。
台紙は王都全体を示しており、置いていく駒は兵だ。
このゲームは、如何にして王都を陥落させるかの模擬戦なのである。

「固い城だなあ……おい」

王道の棋譜は全て頭に叩き込んである。そこから如何にして奇策を生み出すかで戦術家としての実力がわかる。
男は生み出された奇策をひっくり返す新種の王道策を編み出そうとしていた。

「ぬ?」

駒を動かす手が止まった。
顔を台紙からあげる。忙しげに動く人波に、淡く映る人影が見えた。
少女が歩いていた。どこか常人とは雰囲気が違う。もしかしたら金持ちの子女が独り歩きをしているのかもしれない。

(何にせよ、知り合っておいて損はない)

テーブル席に座ったままの男は、少女に向かって手を上げた。

「やあ、君。久しぶりだねえ。こっちへおいでよ」

以前、顔を合わせていますよ的なノリでナンパをしてみるのである。

アニマ > 「は…はぃ!」

掛けられた声に小動物のように体を震わせたあとそちらに振り向く。
今この人は久しぶりといったのだから…ここに来るまでの間にお世話になった人かもしれない。
なら知らない人の顔をしてはいけないと考え震える体を押さえて笑顔を作る。

「あ、はいー。お久しぶりですー?」

若干語尾が裏返りそうになったけれど、きっと何とかごまかせる程度…だと良いな。
なんて考えながら不自然にならない程度にゆっくりとそちらに向かっていく。

近づいてみると大柄で人の好さそうな笑みを浮かべた人で、雰囲気はそんなに悪い人ではなさそう。
少しだけ安心しながら机の前に置かれた台紙にふと目をやる。
地図の上に駒がたくさん載っていてまるで戦場を指揮するときのようだ。この人はそういう偉い人なのかもしれない。

フォーク > 「んん!?」

相手の返事は予想外のものだった。
まさか「お久しぶり」と返してくるとは。男は少ない脳細胞を懸命にフル回転させる。
一度出会った女。特に少女のような可愛い娘のことを忘れるはずはないのだが……。

(もしかしたらかつての雇われ先の娘さんとかかもしれん)

少女にはどこか世間離れしたオーラがある。こういう場合、大抵は資産家か貴族の娘がお忍びで町を歩いているケースだ。
ならば失礼があったら大変。男はさっと席から立ち上がり、向かい側の椅子を引く。少女を椅子に据わらせるためだ。

「あのー。以前お会いした時、私はあなたのことをなんと呼んでましたかね?」

なんとか相手の名前を訊き出そうとする男。

アニマ > 何かに驚いたような様子が少し気にかかりつつも
椅子を引いてくれるなんてとても親切な人。
それに立ち上がるととても身長が大きくてがっしりした人だとわかる。
それに比べると椅子やテーブルが小さく見えてしまってなんだか少し面白かった。
同時にそんないい人の事を忘れてしまっているのが申し訳ないという気持ちが心にさざ波をたて、そちらに意識を取られてしまい、違和感を忘れてしまう。

「えっと…失礼します」

こういう時断るのは確か失礼に当たったはずだ。
ならおとなしく座っておくのが吉…のはず。
内心色々と考えながら笑顔を浮かべる。

「あ、以前お会いした時には名乗ってなかったかもしれませんね。私は…えっと、アニマです」

一瞬ためらう。これが本当に自分の名前かどうかもわからないために。
同時に私はどうやって名前を聞くべきなんだろうと悩み始める。
もしかして以前の私はこの人の名前を聞かなかったのかもしれない。だから記録帳に書いていないんだ。きっとそうだ。

「えっと…その節はお世話になりました。私も確かお名前伺っていませんでしたよね…?」

危ない賭けに背筋に冷や汗が流れる。

フォーク > 「ああ、アニマさん。アニマさんね」

やはり過去の雇い主の娘さんだ、と思った。
傭兵として働く時は、戦場のことしか考えない。たとえ目の前の少女のように見目麗しい娘と出くわしたとしても
それは二の次になってしまう。戦場で手柄を立てるから、フリーランスの傭兵としてやっていけるのだ。

「ちょっと、ウェイターさん!」

男は太い腕を上げて、給仕を呼ぶ。

「あのね、こちらのお嬢さんにね、特上のお紅茶と特上のおケーキをお用意してお差し上げて。」

普段、上品な言葉なんて使い慣れていないのでビックリするほど珍妙な言葉遣いになってしまう。
そして名前を訊かれたら

「これは失礼。私、傭兵のフォーク・ルースともうします。いやあお父様にはお世話になりまして……」

へこへこと頭を下げる。歴戦の強者もスポンサーには弱いのだ。

アニマ > 「あ…えと…その…すみません、私、ここに来る途中で魔物に荷物を奪われてしまって…」

慌てて注文の合間に声を挟むように手帳に書いてあったこういう時用の言い訳を口にするも
とても小さな声になってしまいもしかしたら相手には聞こえなかったかもしれない。
とりあえず親切な人に無駄にお金を払わせたくはない。

前に出会ったとしたらこの国に向かう途中の道中だろうか、どこかの戦場あとかもしれない。どうやって説明しよう?
…そんな事を考えていると”お父様”という言葉が耳に入る。
ああそうか。この人はお父様の知り合いなのか。
なら私の事を知っていてもおかしくない。
けれどこんな私に頭なんて下げなくてもいいのに。
そう思い慌てて下げられる頭を制止する。
すでにパニック気味で若干涙目になっている。

「あ、えっと…そんな、えらいのはお父様で私ではないですから…!
その…えっと…
あ、お父様にはもう何年も会えていなくて…その、今どこにいるかご存知でしょうか…?
あと…ここはマグメールで…あっていますよね?」

かしこまった様子の彼の気をそらそうと必死に話題を探っても思いつくのはそんなもので、それが世間知らずと自分で公告するような事だとは一切思い至らない。

フォーク > 「それは大変。街の中……も、それなりに治安の良くない所は良くないが
 王都の外は魔物の危険がありますからなあ」

と、憤慨してみせる。
最初から彼女に金を払わせるつもりはない。これはあくまで次の仕事につながる投資なのだ。必要経費だ。

「おお、お父様と何年も……」

そうか。初めて逢った時、彼女はまだ幼かったのだと男は考えた。
なら自分が彼女のことを覚えていなくても問題はない。ちょっと安心する男。まだ呆けが始まる年齢ではないと。

「ええ、ここは王都マグメールですとも……あのアニマさん、差し出がましいことをお伺いしますが
 もし行く宛がないのなら、我が家を仮の宿となさったら如何でしょうか?
 いえね、私つい最近ここに家を持ちましてね」

と、貧民地区にあった安宿を改装したマイホームを拠点にしてはどうかと提案をする。

(もし彼女を見捨てたら、彼女が家に戻った時に何を言われるかわからんしなあ)

傭兵稼業は風評が大事だ。もし彼女の口から悪評が広まれば、仕事が無くなる可能性もある。

「それほど遠くはないので、むさ苦しい家ですが、どうぞ覗いてやってくださいませな」

ささ、と少女のお手を取って案内しようとするのである。

アニマ > 「あ…えっと…」

この人はお父様のことを知っているということだし
私が忘れてしまうことも知っているのだろうと判断する。
それを知っていて尚の提案だとするととても魅力的な提案。
あと数時間もすればまた再構成が始まるだろう。
できるだけ人に見られないに越したことはない。
ここは言葉に甘えるべきだろうか…

「あ、あのえっと…それはとても嬉しいのですけれど、
お仕事は大丈夫なのですか…?」

机の上の地図に目を向ける。
彼女の中では既に目の前の男は軍師か軍の幹部だと思い込まれてしまっていた。
お父様を知っていてなんだか戦略を練っていて…そんな人の邪魔をしてしまってよいのだろうか。
…けれどそもそも行く宛などない。
衣食住が必要ないとはいえお布団の魔力には抗いがたい魅力がある。
ここは善意に甘えるべきだろうか…と悩ましい。

「あと、その、私はその…ただの子供ですから敬語でなくても大丈夫です…。その…楽になさってください」

なんだかとても喋りにくそうだし、できるだけ気を使わせたくないのでおどおどと気弱な声でそう付け加える。

フォーク > 「仕事? 少々お待ち下さい」

男は懐からスケジュール手帳を取り出す。中身を少女に見せないように頁を開く。
新品と間違わんばかりの白紙が続いた。手帳をまた懐に戻し

「ご安心を。本日は休暇ですので」

まるで普段は忙しい風に装うのであった。男にだって面子というものがある。
男はテーブルの上の台紙と駒を片付け始める。台紙は丁寧に折りたたんでいく。
この紙は、男からありとあらゆる策を生み出す奇跡の一枚なのだ。

「ん……と、それじゃあアニマって呼ばせてもらっていいかい?」

たしかにこのままでは自分も相手もお互い気を遣いすぎてしまうだろう。
この少女は内向的なようだ。ならば自分が引っ張ってあげる方がいい。女を引っ張るのは得意中の得意だ。

「へへ、俺はどうもその……上品ってのが苦手でね、本当はこんな無頼な話し方しかできねえのよ」

少女の速さに合わせながら、街を歩いて行く。やや治安の悪そうな地区をすすめば
宿屋のような大きな家の前で止まる。古い壁には板が打ち付けられており、男本人が自分で改修したことが伺える。

アニマ > よかった…とばかりにほっと息を吐いて胸を撫で下ろす。
本当に運が良かった。きっと彼は忙しいだろうにちょうどその合間だなんて。
手帳は使い込まれたような表紙でお仕事の大変さを忍ばせる。
それなのに泊めて貰えるなんて…
ここ数日何度も酷い目にあったみたいだけれどそんな事ばかりでもないと少しだけ安心する。

「はい、アニマで大丈夫…です」

彼が畳んでいる紙に一瞬目を通し記録しつつ
初めて本心からほっとした笑みをもらす。
ずいぶん貴重そうな紙に見えた。奇麗な紙に丸写ししてあげたら喜んでくれるだろうか?まず第一のお礼はそれにしようと内心決める。
歩き始めた彼は見上げるような巨躯で並んで歩くには頼もしく
あたりの様子が多少荒れていてもその手にくっつくようについていく。
小走りに気が付いて歩調を緩めてもらったことに気が付くとそれがとても嬉しく思えた。

「わぁ…」

決して立派な豪邸とは言えないかもしれないが
その前にたどり着くと少し感心し、嬉しそうな声を上げる。
長い旅の間寝る場所があるというのはとても有り難いことだと手帳にも書かれていた。
それに大事に大事に改修されているのが目に見えて伝わってきてそれが大きな豪邸よりも素敵に見えた。

「あの、こんな素敵な場所に泊めていただけるなんて…
その間なにかお返しできることがあれば…
私の出来ることでしたらなんでもお手伝いしますので…!」

改めて内心を告げる。
記録や再現はこれ以上ないほど得意だ。
簡単な事象改変もお手の物。ちょっとした物なら触れるだけで修理できる。
そういうものが役に立てるかはわからないけれど…
とにかく力になれる事があれば頑張ろうと家を見上げて決心する。