2016/10/30 のログ
エリス > 「それよりも、こんな時間に……奥様へのプレゼントですか? ―――あ、それでは品物を…。」

なんとなく、そう思った次第を口にしてみただけなのだけれど。どうやら店の品物には用がない様子なので、カウンターの中で応対。誰もがそう思うのだろうけれど、風体に似合わぬ丁寧な物腰に彼の出自が些か気になりながらその手の中の包みに視線を落とし。
解かれた布の隙間からは特徴的な色に光を反射する、見まがいようもないその金属。一度、腰をかがめてじっと覗き込めば納得いったようにふむ、と短い頷き。

「これは……、黄金ですか。随分純度が高いようですね…。」

渡りに船とでも言うべきだろうか、これがあれば幾つか良い土台が作れそうな大きさと質のもの。
正直なところ今は何としても欲しい、が故に幾らの値を示すべきか、と少しばかり口元に指をあてて思案。店に今置いてあるお金とも相談しなければならないのだ。

カイオクス > 「いえ……残念ながら。いつか贈る相手が見つかりましたら、その節はぜひよろしくお願いします。」

店主からの言葉を、柔らかな笑みと冗談でかわしつつ本題へ。その間も青年は包み布を解く手を止めず、程なくして灯火の光を反射して独特の光を放つ金属の塊が店主の前に姿を見せて。

「実は……こちらに来る途中で仕事を請けたのですが……その報酬がこれでして。恥ずかしながら此方に来たばかりで色々と物入りで……この町で1月ほど暮らしていけるぐらいの額になればいいのですが」

どうやら現物支給でこれを受け取ったはいいが、物がものだけにおいそれと換金もできず、困っていたところでこの店の明かりを見つけ、わらに縋る思いで飛び込んできたのだろう。希望の金額もずいぶん抽象的なところから、流れ者なのは明らかで。

エリス > 「あら、それは失礼しました。 でも、そういう事ならまたすぐにお越しいただくのを願っていますね。」

気を悪くしたようではない相手に、此方もやや冗談めかして笑みを浮かべながらに言葉を返した。とはいえ人の多いこの町、番になる者たちも日に何組もいるようなこの町ならばこそ冗談も冗談でなくなるかもしれないな、等と思いつつ。

「なるほど、お困りなんですね。 …でもそういう事なら、今日も遅くまで店を開けていて良かったみたいです。……買い取り額ですが、これ程では如何ですか?」

差し出された品物と相手の事情を聞けば、並の商売人なら足元を見てしまうだろう内容。
しかし元より商売っ気の薄い彼女にはそのつもりはなく、さらりと紙に書いて見せた金額は彼の望むよりやや多めだろう数字。食うには困らず、武器や荷物の調達にもお金が回せる程度の額。
自分の儲けになるのは僅かでいい、というような意思が伝わるだろうか。

「私も、まだこの町に来てから日が浅いので……何かの折にはお力を添えて頂けませんか?」

仕事、といっていた彼の風体と腰の立派な武器を見れば、おおよそ傭兵だろうと見当はつく。買取の金額に彼は満足しただろうかと、彼の表情を窺うように見上げ。

カイオクス > 青年の申し出を受け、しばし思案げな風の店主。具体的な金額を提示されていない以上、その気になればいくらでも値切り、足元を見ることのできる、おおよそ商談とも呼べないやり取り……しかし店主の答えは。

「……私はまだこの街に来たばかりで、それほど事情に詳しいわけではないのですが、それでもその……私の希望より多く見積もっていただいているようで……よろしいのですか?」

この店に来る前、何軒か宿屋、そして酒場を覗き、多少なりとも物価の目安を持っておいた青年。その指標からすれば、店主から提示された金額は青年の希望した額よりずいぶんと多く……。それだけにやや困惑した風で店主の瞳に己のそれを合わせてじっと見つめ、その言葉に耳を傾け……。

「……ご厚意、感謝いたします、この金額で、どうかよろしくお願いします。」

そしてしばしの沈黙の後、青年はカウンター越しの店主に、深々と頭を下げた。

エリス > こちらの提案した金額に、恐縮してしまった様子の相手。気を遣わせてしまうつもりはなかったので自分も困惑したような薄い苦笑を浮かべれば相手と似たような表情になってしまい。

「それでも……そこまで多額、という訳でもありませんし。それに、ちょうど私の欲しかったものをお持ち頂いたので……  あ、本当ですよ? ――――この翡翠を、ブローチにする土台の金属が足りなくて困っていた所だったんです。」

こんなことを言ったらまた相手が遠慮してしまいそうな気がして付け加えるように言葉を発すると、カウンターの中の作業台に置いたままだった翡翠を手に取って見せる。

そうして、金額に満足して貰えた旨の返事を聞くとカウンターの中へと戻り…金庫からその分を取り出す。
金額と、店の名前と己の名前を連ねたメモを重ねてカウンターに置き、どうぞ、と付け加えて差し出した。

「ありがとうございました。……茶飲み話でも構いませんから、是非…またお越しください。」

深く頭を下げる彼が体勢を戻したら、体の前に両手を合わせゆるりとお辞儀をして返し。

カイオクス > 「いえ……本当に有難く思います。よかったね……素敵な石と一緒にしてもらえて……。」

その巨躯を折り、深々と頭を下げた青年……しばしその体勢のまま微動だにしなかったが、やがて身体を起こすと、照れくさいような、あるいははにかんだような笑顔を店主に向けつつ、改めて礼を述べ……続いて口にしたのは、しばし懐にいて旅を共にしたであろうこの金属の塊への柔らかな言葉。

「確かに頂戴いたしました……。重ね重ね、お気遣い有難うございます、また何かございましたら、ぜひお邪魔させていただきます。あ……贈る相手が見つかったら、そのときも!」

店主の柔らかな言葉に再び、しかし今度は軽く頭を下げると、カウンターに置かれた貨幣の山を懐から取り出した皮袋に入れ、そして添えられた紙片を押し戴いてから懐に。そうして取引を終えたところで、改めて礼を述べ……青年はやや名残惜しげではあるが、青年は夜の街へと消えていった……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からカイオクスさんが去りました。
エリス > 礼と共に続いた相手のその言葉に、よほど心の優しい人なんだな、と思わされて思わず表情が綻ぶ。

「こちらこそ、ありがとうございます。 ……ええ、楽しみにお待ちしてますね。」

立ち去る背中を見送り、そろそろ店仕舞いには良い頃合いかと少しの間をおいてドアに掛けた看板の向きを変え、店の明かりが落ちる。―――やがて己の家へ……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にハーティリアさんが現れました。
ハーティリア > 平民地区の薄暗い路地裏……適当に散歩していて迷い込んだ、というよりは、そういう道を好んで歩いているらしい、背中に箒を背負った小柄な男が……ぐ、と伸びを一つしながら脚を進める。

「んぅ……はぁ、っ……さて、何か退屈しのぎが、あると良いんだがねぇ。」

占いでもするように、腰のベルトに下げたケースから、何枚か長方形のカードを取り出して弄びつつ、ぶらぶらと夜の町をうろついて。

ハーティリア > 「いやぁ、おじさんが居たところは大分違……や、案外似たようなもんか。」

魔物が居て、英雄が居て……まあ、どこもかしこもそんな変わるわけはねぇか、なんて独りごちながら、パラパラッと手の中で遊んだカードをケースにしまい……トンッ、と道を塞いでいた木箱を身軽に飛び越える。

「んん……何か面白いことに会えるかと思ったが、普通にどっか、人の多いとこで良い男探したほうが良かったか?」

薄暗い道の続く路地に人がそうそう転がっているわけもなく、退屈そうにはぁ、とため息を漏らして。

ハーティリア > 「……おや。」

ふっと、背後に感じた気配……物盗りだろうか、勘違いだろうか……そんな風に首を傾げて脚を止めるも、背中に背負った箒を手に取ると、棒術のようにクルクルと回して……シャキ、と手に構えて振り向き。

「……どーちらさん? 誰か居るならおじさんに構っておくれな?」

どこか柔らかい声で、遊びに誘うように暗がりに声を投げかけて。

ハーティリア > 「……気の所為、か?」

能動的にあれこれと探るのは得意だが、受動的にピンと察知する、というのはさして得意でないのか、反応も気配も感じなくなった背後に眉根を寄せ……ベルトのケースからピッ、とカードを一枚抜くと……

『砂よ砂 舞え 晦ませ 目を覆え』

ピッ!と投げはなったカードが光ると、小規模な砂嵐がゴッ!と路地の一角を包む……誰か居れば砂嵐に煽られて反応があるはずだが、なんて当てずっぽうに魔法を放つ。殺傷力は無いので、誰も居なければ居ないで、居ても砂が目に入るくらいで怪我はしないだろうと。

ハーティリア > 「……何もなし、か……ちぇ。」

つまんねぇな、と独りごちれば、手に持った箒をふわりと浮かべ、それにゆるりと腰掛けると。

「もう少し、治安の悪いとこで遊んで見るかね。」

くぁ、と欠伸を漏らし、不自然に撒き散らされた砂だけを残して、ふわりと……夜の空へ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からハーティリアさんが去りました。