2016/07/16 のログ
■イグナス > もう、この猛暑は誰ともなく降り注いじゃってるみたいだ。
それはこの巨漢の男にもだし、この大男に近づいてきている、ローブ姿の彼女にも。
――若干、自業自得な風情もあったけれど。
ともあれ、ふらふらと近づいてくる彼女が――
「う、が――……ッ」
暑さで伸びてる男の足をがっつり踏んだのは間違いなかった。
「い、痛エェ…ッ……ッ!?」
なんだいったいなにごとだ、どうしてこうなった、って感じ。
ばっと起き上がって、つま先のとこを抑え込んで、ばたばた、悶絶。
■イルミ > 「……ひゃあぁっ!?」
いきなり……実のところいきなりでもなんでもないけれど、本人としてはいきなり聞こえてきた驚きの声に、そのまま返すような悲鳴を上げて、そのまま後ずさり、
「え、あ、あ……あっ、ごめん、なさい……!」
暑さと驚きで混乱した頭が数秒かけて『今自分が何かやらかした』ことを理解すると、すぐにぺこぺこと頭を下げて謝った。相手は見るからに大柄な……というかむしろ巨大な男で、いかにも自分が苦手な、『恐い』男性だ。
■イグナス > 突然の痛み。それもまた末端の末端な痛みだから、余計につらい。
しかも感覚的には不意打ちである。――お互いどれだけ、気が抜けていたというか、暑さにやられていたのか。
身体を起き上がらせれば、視線を回して痛みを与えてくれた主に視線をぎちり。
こめかみ、ぴくぴくって血管を浮き上がらせて
「おま、お前、なあ…ッ――なにしてくれてン…ッ!」
あわや大惨事。ローブ姿の女の子が大男に襲われる――かと思いきや。そこで言葉が止まる。
視線は彼女のローブ真っ黒なそれに、うわあ、とげんなりして、やる気が一気にダウンした。
「……お、ま。お前。暑くないのか、それ。」
見てるだけで、汗が噴き出る。げそりと言った。
■イルミ > 「…………ッ!」
男性に怒鳴られる。その予感だけで全身が固まり、動けなくなる。しかし、幸いにして恐れていた大きな声が襲いかかってくることはなく、代わりに驚いたような……もしくは、呆れたような問いかけが来た。
「……は、はい……その、商売道具みたいなもんでして、えへへ」
とりあえずは安心して、へたくそな愛想笑いをしながら噴水の水をそのまま水筒に掬う。行儀はよくないが、この際そんなことは言っていられないと一口含んだ。額には暑くてかいた汗と冷や汗とがごっちゃになっている。
■イグナス > そこで改めて気づく。こんなナリをしているが、女だ。
半眼で見遣る。ローブで全身を覆っているために、体型も色気もあったもんじゃあない。
どういうつもりかはわからないが、見ているだけで――ぶわ。汗があふれた。
「商売道具、ねえ。……いや、いい、なんでもいい。とにかくお前、顔だけでもいいから脱げ、それ。」
びしりと命令。痛みの上に汗までよこす気かって具合。
痛みのせいでそれでもちょっとだけイラついてるのか、結構強めの命令口調。反論は許しませんって空気で。
■イルミ > 「へっ?ぬ、脱ぐん、ですか?ええと……」
水を飲み込んだ次の瞬間飛んできた命令に、目を丸くして、追加の冷や汗をかく。せっかくここまで我慢してきたのに……と思う一方、ここで逆らうのはどう考えても得策ではないと言う判断と、ようやくこのセルフ蒸し風呂状態から解放されると言う安堵もあって、
「え、えっと……はい、ぬ、脱ぎます、けど……」
三角帽子を噴水の縁に置き、ローブを脱ぐと、その下から湿った熱気とともに、紫のハーフドレスが姿を現す。ドレスといっても簡素な作りで華美ではないけれど、女性的なラインというには度を越した胸の膨らみだけでも十分視線を集めてしまう。
■イグナス > 「なんだ、文句あるか。…見てるだけで暑いンだよそれ。」
がーって、吠えてるような物言いで命令。彼女が躊躇っている様子も見られるけれど、そんなことは知ったこっちゃない。
いかにもな気の立っている様がしかし、彼女の姿に、現れたそれにちょっとだけ変化。
「…………なんでそんなもん着こんでたんだ、お前。」
隠すモノじゃあない。むしろ見ていたいぐらい。
どこか気弱なおどおどとした表情に、ロングの紫髪、大きすぎる胸のふくらみ。ひとつひとつが、なんともいえず嗜虐心を煽る。いじめてしまいたい、って。
■イルミ > 「え、ええと、その……私、その、魔女、やってまして、……変な意味じゃなくて……占いやったり、薬作ったり……だから、ええと、魔女らしい格好、しないと……」
問い詰める、というつもりは向こうにはないかもしれないけれど、こちらとしては尋問されているような心境だ。一応、表向きはそういう理由で普段からローブを着込んでいるのだけど、本当の目的はもっと別で、『男に目をつけられないようにするため』だ。こんなかっこうでもなければ、憎たらしいほど膨らんだ胸は隠しようがない。
今も胸の上に手を置いたり、抱くようにして精一杯隠そうとしているけれど、どうやってもかえっていやらしいような気がして落ち着かない。
■イグナス > 「魔女、へえ。――………。」
言葉を切る。彼女言葉が本当か、嘘か。
それ自体は次第にどうでもよくなって、くる。相変わらずおどおどろ、今度は己の身体を隠すような体。
見てるだけで嗜虐を煽って、いやらしい。男は立ち上がって、彼女を見下ろした。
「なるほど、事情はわかったけど、な。
……だからってそんな格好は暑いし、足元には気ィつけろ。
…………そのローブは着ないほうがいいな、今は。」
掛ける言葉はふつうであるけれど、言葉や視線の奥に滲み始める欲情は、あんまり隠れていない。
男のストレートな、牝を求める欲望が首を擡げていて。
■イルミ > 「は、はいっ、はい……」
親に叱られる子供のように、縮こまりながら何度も頷いて彼に『逆らいません』というポーズを示す。けれど、彼は別に説教がしたいわけではないらしい、というのはなんとなく察しがついていて、
「あ、あの、その……もう、行っても、いいですか?」
早く逃げないといけない。そう思いながらも、男の欲望に敏感なサキュバスは無意識に瞳を潤ませ、上目遣いで見つめ返す。蒸された汗の匂いにも、不自然に甘酸っぱいものが混じり始めて。
■イグナス > 「ん、…よし。」
彼女が縮こまりながらも了解するポーズ。それに満足気。
普段ならこれでいい。これで充分、あとは放っておけばいいハズ、が。
「――待て。……やっぱり行き成り踏まれて、それじゃあサヨナラじゃあ、よくないよな?
……それなりに謝り方もあるし、こっち、来いよ。」
逃げれません。普段ならいくら何でもここまでの言いがかり、チンピラもいいとこな文句は吐かないのだけども。
その上目遣いが、甘酸っぱくかおる何かが、思考を乱していく。
欲望は自身も知らずの間に凶悪に、牡の匂いが少し香り始めるほど。
彼女にまた命令して、…有無を言わさぬ口調で歩き始める。ちゃんと着いてくるかどうか、監視も。
■イルミ > 「え……っ?」
なんだか許してくれる空気になりかけていたのに、彼はいきなり態度を変えた。それを意外と思ったのは、自分が知らず知らず誘惑するような素振りを見せていたことに気づいていないいなかったからで、
「は……はい……」
なんとなくそれを察すると、素直に彼についていくことにした。三角帽子をかぶり直し、ローブは手に持つ。……これからどうなるか、それも察して下半身を疼かせてしまう自分が嫌で仕方なかった。
■イグナス > 彼女が着いてくるのを確認するならば、向かうのは人気のない裏路地へ――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイルミさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にヴァイパーさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にフレデリカさんが現れました。
■ヴァイパー > 花屋での仕事ぶりを少しばかり眺めつつ、これは何で切るの? だとか、変わった花だねだとかと、彼女の領域での話を振りつつ、距離を近づけようとしていた。
女を食い物にする悪い奴だと言われるが、悲しむ顔には興奮できないらしい。
口車にのせた彼女を連れてやってきたのは、平民地区にある喫茶店だ。
「どうぞ、好きなの頼んじゃっていいよ?」
それぐらいは奢らせてと茶化すような笑みで告げると、向かいの席へと腰を下ろす。
茶葉の香りが強い場所だというのに、彼女から感じる花の香りが消えることもなく、少しだけ不思議に思うと頭に飾られた白い薔薇が目に止まった。
「造花かなって思ったけど、それ本物の薔薇かな?」
香りの正体はそれだろうかと思うと、白薔薇を指差しながら問いかける。
瞳から移る景色、音、それも全て後程水晶にコピーを取るわけだが…こんな他愛もない話も、これから汚される可憐な少女が、どれだけ白い存在なのかを楽しむ要素になるのだとか。
交わるといった割には、すぐには手を出さず、じっくりと彼女と言葉をかわす。
■フレデリカ > 花屋で様々な質問をされ、戸惑いつつも答えるということを繰り返し。フレデリカは彼の口車に乗せられたまま、近くの喫茶店へと連れられていった。
好きな物を頼むと良い、という目の前の男に、フレデリカは困ったような表情を浮かべて俯いた。
自分は普通の人間とはまるっきり生態が違う。水と太陽光で栄養を摂るフレデリカにとって、人間の食物を口にすれば瞬く間に衰弱してしまうのだ。普段こうした飲食店には入らないのだが、彼に連れられて来てしまった。しかし、彼に自分が人間ではないと知られてはいけない。なるべく隠そうと、フレデリカは控えめに微笑んで首を横に振った。
「いえ、わたしは水だけで大丈夫です。あまり、お腹が空いてないので……」
お腹が空いてないという言葉は本当だ。空腹を感じないからである。
そう言って彼の向かい側の席に腰掛けて、慣れない場所に少しだけ戸惑う素振りを見せた。そして、また問いを投げかけられると、慌てて答える。
「そ、そうですね……。いつも頭に薔薇を差してるんです。好きな花なので……」
本当は頭に咲いているんだけれど。そう心の中でつぶやきながら、自らの頭の花に触れた。白い野ばらの花は変わらず、彼女の頭で綺麗に咲いている。
■ヴァイパー > 何時もの様なペースで連れてきたものの、何時もと違う展開が彼を待ち受けていた。
困ったような表情、嫌がっているのとは別の反応に顔には出さないものの、妙だなと思ってしまう。
「ん? そっか~…」
気にしてない素振りのまま、変わらぬペースで店員を呼び止めるとコーヒーをオーダーして彼女へと向き直る。
別段、妙に高い店に入ったわけではないが、質問の時より戸惑った様子を感じていく。
彼女が何に引っかかっていたのか、それの正体が分からないが何かあるとは感じ始めていた。
「へぇ~…? 『まるでそこに咲いてる』みたいに似合ってるよ」
咲いているというフレーズに言霊を込めたのは、彼女のペースを崩そうとしたからだ。
もちろん、本当にそこから生えているとは思っていなかったのだが…言霊の効力が重なるなら、見抜かれたという印象をあたえるかもしれない。
「いや~…引っ張り回しちゃってごめんね? でも『まだ聞いてないことがたくさんありそう』だから、色々教えてほしいなぁって、可愛い子の秘密って、気になるものだしさ」
秘密があるのを知っていると言わんばかりに、言葉の力を強めて語りかける合間も、変わらぬ人の良さそうな笑みを浮かべていた。
■フレデリカ > そこに咲いているような、という言葉に琥珀色の瞳を見開いた。言霊の効果で見抜かれたかもしれない、と感じたフレデリカは、動揺した様子で視線を彷徨わせていた。もしかしたら、この人はわたしの正体を知っている……?
「さ、咲いてるなんて、人間じゃ無理ですよ、そんな……」
誤魔化すような言葉だが、これでは自分が人間ではないと遠回しに言っているようなものだろう。けれど動揺したフレデリカには、そのことに気づかぬままだった。
そして、秘密がありそうだと言う彼の言葉に、フレデリカは思わずギュッとスカートの裾を握り締めた。この人、やっぱりわたしの秘密を知ってるのかもしれない。わたしが妖精であるという秘密を……。
フレデリカは黙ったまま、自分の足元に視線を落とした。彼の目が見れない。全てを見通しているかもしれない、彼の目を――
■ヴァイパー > (「…ちょいと揺さぶってみただけなんだが」)
何かを隠しているとは思っていたが、こんな少ないフレーズで崩れていくとは思いもせず、表情こそ変わらぬまま不思議に思っていた。
戸惑い、さまよう視線を笑みのままに追いかけ、うつむくなら、今はそのまま逃がしてしまう。
「……へぇ、じゃあ『君は人間じゃない』っていってるようにきこえちゃうけど?」
自らボロを出すながら、そこから更に踏み込んでいく。
スカートの裾を握りしめる彼女を見つつ、店員が空気に気付かぬまま二人のテーブルに近づいて、コーヒーと水を置いて去っていく。
無音の間、静かにコーヒーカップを口に運び、喉を潤す。
短な静寂は心に浮かんだ感情を増幅させるらしい、コトッとカップを下ろすと、腰を浮かせて身を乗り出し、褐色肌の頬に掌を重ねようとしていく。
「『あいにく、怯える女の子をだけるほど悪党じゃない』んだよね、でも『その秘密は知りたい』な、だって『知らずに傷つけるのは嫌』だからさ」
隠さねばならないのは、身を守るためか、若しくはそれが争いを生む要因となるなど、そんなところだろう。
語りかけ、それからダメかな?なんて苦笑いを浮かべるのも、彼女の味方と演じるため。
再び腰を下ろしながら、掌を引っ込めるとじぃっとその姿を見つめ続けて、視線がその答えを求めていた。
■フレデリカ > やっぱり、自分は隠し事が出来ないんだろう。彼はわたしが人間じゃないということに気がついている。素直すぎるフレデリカは、男の少しの揺さぶりでボロを出してしまうのだった。
それから、注文した水がテーブルに置かれたことも気付かず無言を保つ。いっそのこと正体を明かしてしまおうか。けれど、彼が信頼出来る人かもわからないのに、簡単に伝えてもいいものだろうか。フレデリカは迷う。
だから、彼が彼女の滑らかな褐色の頬に触れ、安心させるような言葉を信じ込んだ。自分は味方だという言霊を正直に受け取り、この人は信頼出来る人かもしれない、という思いを抱かせたのだった。
彼女は、男にだけ聞こえる小さな声で、自分の秘密を明かした。
「……わたし、花の妖精です。人間とは全く違う存在なんです。隠していてごめんなさい……。でも、危ない人に自分が妖精だと知られれば、酷いことをされるからって、おじいちゃんとおばあちゃんに隠すように言われてたんです。わたしも、自分が人間じゃないって知られるのが嫌で、だから……」
■ヴァイパー > 頬に触れると心地よい肌の感触が掌を滑る。
こちらの言葉にやっと紡がれた言葉は小さく、喫茶店に飛び交う雑談の音に掻き消えてしまいそうだった。
耳を澄ますように目を閉ざして、聞き入っていけば顔こそ変わらないが内心は少々困っていた。
(「あぁ…そりゃ、水晶作っても売りづらいわな」)
花の妖精、そして頭に飾った花について問いかけた時に取り乱したのも、それが本物の花だったかもしれないからだ。
彼女の祖母と祖父は、ここを良くしった上での良人だろう。
これが悪党の誘いなら……今頃この娘が廃人になって、使い潰された挙句に二束三文で売り飛ばされてしまう未来が見える。
どうしたものかと考えつつも、このまま悩むと彼女を心配させるだろう。
再び手を伸ばせば、銀糸の癖毛を優しく撫でようとし、届くなら何度も何度もあやすように撫でるだろう。
「それなら仕方ないさ、その可愛さも、そんな種族ということなら納得だしね。 場所変えようか、人がいる場所より、人がいない自然なところとかのほうが落ち着くかな?」
色々話を聞くにしても、こんな場所では誰かに聞かれると気が気でないだろう。
気付かなくてごめんねと改めて苦笑いで謝罪をすれば、ゆっくりと立ち上がり、エスコートを申し出るように掌を差し出す。
彼女と自分の距離感を確かめる、といった意味合いも含めながらも変わらぬ笑みを見せていた。
■フレデリカ > 少し悩んでいる様子の彼に、心配そうに顔色を伺う。やっぱりわたしの正体を知って、気持ち悪いと思っているのだろうか。抱くのは人間の方がいいだろうし……。フレデリカは俯いて、琥珀色の瞳に涙を溜める。今にも溢れてしまいそうだ。
泣きそうになるフレデリカの頭を、優しく撫でる手の感触。顔を上げてみると、彼は安心させるような優しい微笑みで、彼女の頭をまるで幼子を慰めるように撫ぜていた。
彼の優しい言葉に、フレデリカはパチパチと瞳を瞬かせた後、ポロポロと涙を零し始めた。彼の手がとても優しくて、心にじんわりと染み込んでいくみたいだ。
泣きじゃくりながら、場所を変えようという彼の言葉に頷く。そして差し出された手に己の手を重ねて、立ち上がる。
「あ、ありがとうございます……!わたしっ……!わたしっ……!」
子供のように泣きながら、彼の手をしっかりと握り締めていた。彼に心を開いた証だった。
■ヴァイパー > こちらの様子を伺う視線に、まさか気色悪いと追われたという懸念があったとは、思いもしなかった。
寧ろ、可愛らしさと純真無垢な内面、そしてこの花の香と全てが説明がついて…一層手を出したくなるぐらいなのだから。
髪を撫で、掌にあの心地良い感触が強く感じると、溢れるように泣き出す姿は、容姿端麗な見た目も相成って、客の目を惹きつけてしまう。
「怖がらせてごめんね? じゃあ行こうか」
もう一度その頭を反対の手で優しく撫でていき、叶うならそのまま掌を惹き寄せて抱きしめてしまおうとする。
痛ましい涙に、あやすように背中も撫でようともするだろう。
喫茶店を抜ければ、歩幅を合わせるようにゆっくりと歩いて向かったのは、平民地区と富裕地区の合間にある寂れた庭園だ。
手入れもされて入るが、富裕層に住むものたちは敢えてここには来ないし、平民地区の人間もここよりもっと大きな庭園にデートに出かけてしまう。
人気もなく、開けた空が見えるここは森の中を切り取ってきたかのように静かだ。
「着いたよ、人は殆ど来ないから…安心して。 そうそう…まだ名前教えてなかったね、俺はヴァイパー、君は?」
遊歩道から繋がる芝生には、小さな花畑が幾つもある。
彼女の花屋ほどではないが、甘く心地よい香りが満ち溢れているだろう。
■フレデリカ > 頭を撫でる優しい手つきに、フレデリカは泣きながらも目を細める。この人は優しい人だ、と素直に感じた。手から伝わる温度が心地いい、と泣くのを忘れて微笑んだ。
それから腕を引き寄せられ抱き締められて、あやすように背中を撫でられれば、もうすっかり落ち着いてしまった。あたたかい彼の体温を感じながら、フレデリカは頬を赤らめる。やはり男の人に抱きしめられるのは慣れていない。
それから、ゆっくりとした足取りで訪れた庭園に、少女はすっかりと見惚れてしまった。人の気配もない静かな庭園。ざわざわと木の葉が擦れ合う音が心地良い。まるで静かな森のようだ、とフレデリカは思った。自然が好きな彼女は、一目見てこの庭園が気に入ってしまった。
そして、芝生に広がる花畑に、感嘆の声が上がる。街には花畑が少ないので、滅多に花を愛でることが出来なかったからだ。花屋にある花は全部売り物だから触れられなかった。フレデリカは目を輝かせて、可愛らしい花々に見とれた。
それから、彼に名前を問われ、警戒心が一切なくなった彼女は素直に名前を名乗る。
「フレデリカ……フレデリカっていいます。よろしくね、ヴァイパーさん」
にっこり笑って握手しようと手を差し出す。
■ヴァイパー > 頭を撫でれば子供のように微笑んで、涙が消えていく。
抱きしめてあやせば、あっという間に悲しい顔が消えてしまう。
どこまでも真っ白な心から滲む反応が、言葉で惑わす男からすると、罪悪感すら覚えるほど清い。
恥じらいの赤に、淡い欲望すら感じさせらながら庭園へと釣れ出すと、そのじわりとした痛みは更に強まる。
「この辺でも庭園を探すと色々あるけど…静かなのはここぐらいだね。たまに通りかかる事があるけど、人なんて殆ど見ないよ」
コスモスやオシロイバナ、ゼラニウム等と、夏に蕾を開く花がそれぞれ纏められており、色とりどりの小さな花畑がいくつも点在している。
やはりここに連れて来て正解だったかと思いながら、はしゃぐ様子を静かに見つめていた。
「フレデリカね、よろしく」
名を繰り返しつつ、愛らしい微笑みにこちらも何時もと違う素の微笑みが出てしまう。
これはもう、騙して食べるというよりは、自分が食べたいから食べるというべきだろう。
あの恥じらい見たさにその手を惹き寄せると、今度は少しだけ力強く抱きしめようとするだろう。
「元々の目的だけど…どうせだから、ここでしちゃおうか?」
卑猥な姿を映像に収める対価、元々はそれのために外に出たのだから。
こんなところで抱きたいと強請ったのは、恥じらいの顔と、花のよく似合う彼女をここで食べたいと思うからだ。
少し意地悪げな微笑みを浮かべつつ、どうかなと囁いて彼女の言葉を求める。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にフレデリカさんが現れました。