2016/01/21 のログ
■レイシー > 「…全然驚かないんだ。
ふふ、さらに面白いじゃないですか。」
一切驚く様子も見せず、己との距離を一定に保つその用心深さ。
一応魔族の中でも古株の自分の気配を感じ取るなんて…と想像していたよりもずっと面白い。
目を輝かせて目の前の少年を見つめる。
「あぁ、敵意とかそんなの全く無いよ。
むしろ好意だよ、好意。」
ヒラヒラと手を上に上げて敵意がまるで無いことを伝える。
小馬鹿にするような薄笑いでさえも、もう興味をそそられる要素でしか無いのだ。
「あんな奴等じゃもう物足りなくなったじゃ無いか。
君が面白い事をしでかすからだよ。
邪魔はしないし、何なら手伝いなんかもするからさ…君に着いて行っていいかな?」
首を横に傾げれば、赤い髪がさらさらと揺れる。
強情そうな瞳は折れる気配は一切見えなそうである、それ程までに少年が退屈凌ぎの格好の標的となったからだろうか。
■ヴァイル > 「おれは敵が多い。狙われることには慣れているんだ。
それに、強い存在ほど気配を隠すのは難しいんだよ」
釈迦に説法ならぬ魔王に説法といったところだろうが、
さりげなく自尊心をくすぐる言葉を混ぜながら一応の解説を加えてやる。
先ほどしまいこんだ羊皮紙を広げて見せる。
裏通りに並ぶ娼館の名前が連ねてあった。
「手伝い、ね。勝手にすればいいが……そう面白いとは思えんな。
これが何の目録かわかるか? おれと同じ北方出身の連中の経営している娼館だよ。
おれはこれを完成させなくちゃいけない。地味な仕事だ」
表情こそ変わらないものの、警戒は薄れていた。
このような酔狂が多いことをヴァイルは知っている。
強く奢った魔族に見られる傾向だ。
赤い髪の少女とすれ違い、焦げ茶の三つ編みを尻尾のように揺らしながら、再び裏通りへと戻っていく。
途中で路地へと寄ったのは、彼女が仮に刺客であったならここで始末するつもりであった故だ。
■レイシー > 「ふーん…そうなのか。
今度からもっとちゃんと気をつけて近づく事にする。」
素直に何度か頷くような仕草で、少年の言葉に納得を示す。
特にプライドなど無い女にとっては自尊心を擽られる言葉など何とでも無い、寧ろ興味すら無いのかもしれない。
此方に向けられた羊皮紙には娼館の名前が聞き連ねられており、北方ということは魔族の店なのであろうか。
「北方連中の店を調べるなんて、君は魔族なのに奴らをどうにかするつもりなんだねぇ。
ま、もっとこの国を滅茶苦茶にしてくれるなら私も楽しみ甲斐があるし、大歓迎だ。」
人間に魔族にもさして今は肩入れしていない。悠久とも思える時を退屈することなく過ごすことが望みなのだから。
すれ違うように路地を抜けて行く焦げ茶色の三つ編みの少年の前に瞬時に回り込むことは可能だろうか。
無論殺気は無いが、警戒を先程より緩めた少年の前になら回り込む事も可能であったのかのしれない。
「でもね、もう今日の退屈凌ぎは君がいいなって思っちゃったんだよ。
言われた通り勝手に着いて行くから、仲良くしてよ。」
へらへらと笑いながら握手なんか求めるために掌を差し出してみる。
■ヴァイル > 少女のまとわりつくような足運びにも、移動の邪魔にならないのであれば構うことはしない。
常人であれば気味悪く思える動かない薄笑いは、この少年にとっての無表情であるようにすら見える。
「今すぐどうこうはしないがね。
今のおれには大いなる目的がある。だから機を待つ」
握手を求められれば眉をひそめ、おざなりな様子で手を差し出して握ってやる。
「グリム・グロットの子、ヴァイル・グロットだ」
簡素に名乗り終えると、握手を終えて裏通りを歩く。
寄ってくる、ヴァイルの髪色と同じ鼠を手のうちに納める。
これは彼の身体の一部であり使い魔であった。
目録の名前を少しずつ増やしていく。
「おまえはおれがこの国をめちゃくちゃにしていくのを、高みの見物というわけか。
良い御身分だ」
笑む唇から零れる、皮肉げな声。
周囲を警戒はしているものの、特に邪魔の入ることもなく、
作業は事務的に淡々と進んでいく。
■レイシー > 「大いなる目的…ね。
いいね、少年。
正しくそれは生きている事に意味を持っているということなんだろうね、素晴らしい。」
パチパチと手を叩いて賞賛の言葉を投げ掛ける。
先程の同じようにふざけた態度に、ふざけた口調だが一応これは本心だ。
目的などとうの昔に亡くした己にとってそれは羨ましくもあるが、必要の無いものでもあると考えているようだ。
「グリム・グロット…あぁ、魔王だったかな。
君も随分とすごい生い立ちだね、よろしくヴァイル。
私はレイシー、本名は長いから言わん、面倒だしね。」
迷惑そうだがきちんと握手をしてくれた、更には自己紹介まで。
終始にこにこしていたが、更にご機嫌な様子で此方も名前を告げる。
「かわいいな、それ。
…ふ、まぁね。
だって誰にも手伝ってくれと言われていないからね。
言われれば目的のために動くかもしれないし、はたまた逆にそれを潰すかもしれない。
ま、結局は高みの見物になるんだろうね。」
ケラケラと笑い声を立てながら皮肉を軽く受け流すというよりも、受け入れるの方が正しいかもしれない。
「…なぁなぁ、それより他にはすること無いの?
流石にこのままは少し退屈だよ。」
飽きは早い方だ。
淡々と進んでゆく作業を眺めていたものの、最初こそかわいいと笑っていたねずみにも見飽きた。
くいっと少年の服の裾を引いてみれば。
■ヴァイル > 「そりゃどうも。
二言目には退屈だのなんだの言い出す老いぼれにはなりたくないもんでね」
レイシーと名乗る少女の、おどけたような態度には皮肉で返す。
「まったく、だから退屈な仕事になると言ったろう。
やれやれ、お嬢様は注文が多い」
肩を竦める。
単調な作業のさなか、ふと、眉を動かす。
ほんの微かに歩調が変わる。そしてまた歩き出す。
分身の鼠の一匹が追随するレイシーによじ登り、耳元で口を利いた。
『後ろから尾けてきている。今度は本物だ。数は二つ。ラミアか……サキュバスの変化かな。
このままついてくれば、仲間だと思われるぜ、おまえさん』
特に教えてやる義理もなかったが、教えずに後で機嫌を損ねるのも面倒だ。
とは言っても向こうでもすでに気づいているかもしれないが。
気休めでも変装ぐらいするべきだったか、と思う。
おそらくは次の角を曲がったあたり、人気の少なくなったところで襲い掛かってくる腹だろう。
探られていることに気づいた娼館の関係者か、あるいは別口か。そこまではわからない。
尾行を悟ったことを悟られないよう、歩みは止めないし、振り返りもしない。
■レイシー > 「ははっ、そうか。
確かに私のようにはなるべきじゃ無い。」
クスクス笑いながらおどけた様子を見せる女は皮肉を受け流してゆく。
肩を駆け上がるネズミから聞こえた情報にこちらもゆっくりと集中して気配を探ってみれば。
「まぁ、もう一緒にいる時点で私も目をつけられているはずだけどね。」
■ヴァイル > 嘆息する。どうにも呑気な女だ、とヴァイルは思う。
敵視する魔族に、自分が含まれていないとでも思っているのだろうか。
それを承知の上でのこの態度なら、存外大物かも知れぬ。
「いらぬ心配だったか」
仮に彼女が襲われたところで、勝手に始末してくれるだろう。
それほど弱っちい魔族とも思えない。
ごく自然な歩調を崩さないままに進み続ける。
この裏通り周辺には自分の仕掛けた罠が張り巡らされている。向かうのはそのうちの一つだ。
「しかし、少しは退屈も紛れるでしょうよ、お嬢様」
わざとらしく口角を釣り上げてみせる。向こうに見えたかは知らないが。
何しろ次の演目では鮮血が見れるのだ。
何を隠そう、退屈していたのは――こっちだってそうだ。
人の密度が少なくなる。
ヴァイルと、それを追うものたちが、細い路地へと――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/裏通り」からヴァイルさんが去りました。
■レイシー > とにかく恐怖に震えるというよりは楽しくて仕方ないといった表情である。
少年の後ろについていきながらまるでスキップを始めようとするほどである。
「ふふ。
うん、君と居ると本当に退屈しないなぁ。」
にやりと口角を上げる、基本的に危険の少ない女でも狩りにも魔族である。
冷徹な瞳を浮かべ、少年と共に夜の細い路地へと消えていくーー。
ご案内:「」からレイシーさんが去りました。