2016/01/18 のログ
ヴィクトール > 傍に立てかけられた魔剣からも、男からも同族のような違うような、妙な魔力の気配が溢れている。
真っ黒な作りをした剣は、それこそ夜闇を切り出したかのような光の反射もない漆黒をしていた。
側によってきた女を見上げ、肉料理がおすすめと聞けば、それと酒とオーダーを伝えていく。

「ん? なんだよ、そりゃ残念だな。 娼館にアンタみたいないい女がいりゃ、ありだけどな」

細く妖艶な体つき、身長も少し小さく感じぐらい。
それでいて顔立ちは淑女らしい雰囲気を感じる整いと、かなりの上玉。
それだけの出来だからだとニヤニヤしながら答える男は真面目なのやらどうやら。

「そりゃ安い女じゃねぇか…そうだな…」

スカートの裾が僅かに上がれば、欲に忠実な男としては視線が自然とそちらへと向かう。
問いかけの言葉には娼婦の相場の値段、それを3倍ぐらいにした値段が浮かぶも、それでも足りないだろうか?
そんなことを考えながらゴルドの詰まった袋を取り出すと、幾分か取り分ける。
そうして残った、かなり重みがある袋をどんとテーブルの上に置けば、彼女を見上げ。

「メシ代とアンタ込みで、これで買えるんだったら即決するぜ? 買える女にケチっても、楽しくねぇし」

普通に食事代と一般的な娼婦の値段を込みにしても、過剰なほどのお釣りが出る量。
それをなんのためらいもなく、彼女へと差し出してみせる。
相変わらずにニヤニヤ笑っているので、少々憎たらしいかもしれないが。

セラ > 「料理の方は、少しお待ちくださいとのことで。
ランクの高い娼館に行けば、相応にいい女や男が揃っているのでは?」

単なる金属の塊ではない、素材からして何かしら違う業物の気配漂う大剣に、男自身も何か妙だと興味を掻き立てる気配持ち。
これだから人の世は面白いと好奇心を疼かせながら、オーダーを店主へと伝え。即座に出てきた酒をテーブルに出しながら、雑談に応じるように軽く言葉を返す。
いい女と言われても、にやにやとしながらでは下半身に忠実な男めと軽く肩をすくめ。

「……ここで本気で金を出してくるのは初めて見たぞ。
随分とまあ、大金をだしてくるのだな。高く評価されるのは悪い気はしないが……」

視線が引き寄せられたのに気づけば、悪戯な笑みを浮かべてぴらぴらと裾を捲って太腿をちらつかせ。
普通は下ネタ交じりの冗談で終わるものなのにと、本気でお金を出してきたことと、その額面にさすがに驚いた様子で瞬きをし。
改めて、男を観察するように上から下へと視線を走らせ。

「そうだな。その剣とお主の情報をそれに加えるのなら、一晩の相手くらいなら考えるが」

まっとうな人間ではないのだろうと、人聞きをはばかるように少しばかり顔を寄せて、声を潜めながら金だけで買われる気は無いがと言葉を返す。

ヴィクトール > テーブルに出された酒を受けとれば、ぐいっと一気に飲みはじめた。
結構なサイズが合ったジョッキを殆ど飲み干し、ゴンとテーブルへとおく。

「でもアンタぐらい、すれてない感じの女っていねぇだろ?」

あまり享楽に身を沈めているようには、見た目からは感じられない。
だからこそ尚の事、手を付けたくなる。
褒め言葉はすんなりと受け流されたのは、少々残念だったか、苦笑いを見せていた。

「そうなのか? 金で買えるんだったらそれに越したことはねぇだろ…そんなに誘うと捲っちまうぞ?」

視線を誘うようにスカートの裾をめくられると、もっと見たくなるもので、楽しげに笑いつつ冗談っぽいことばを返す。
驚きの様子とは裏腹に、男としては言葉通り金で済むならばいい話で、すこしばかりきょとんとした様子でこちらを見やる女を見つめていた。

「相棒と俺ね…まぁいいけど、話すんだったら、隣に座ってくれや」

顔を寄せて囁かれた言葉に、すんなりと承諾するも聞かれないようにと、隣の席に座るよう促す。
人によっては変な反応を示す話でもあるし、女を楽しむ前に面倒は避けたいところで。

セラ > 「いや、いわゆる高級娼婦とかなら貴族令嬢の雰囲気を漂わせてるのもいるぞ。
まあ、わたしは娼婦じゃないのし、そういうすれた感じを漂わせてても困るのだが」

知性も教養もたっぷりに高貴な佇まいといった風情のもいれば、いかにも清純という感じのもいる。そこらへんは、値段相応なのではないのかと首を傾げてみせる。
一気飲みを見せられて、次の酒の注文を通した方がいいのかと消費の速さにちょっとばかり悩みつつも、清純派とまでは言うつもりはなくても、淫乱に見えても困るとちょっとばかり眉を寄せ。

「いや、全てを金で解決していたらあまりにも風情が無いだろう」

捲ると言われては、いきなり金を出すこの男ならしかねないとスカートの裾をめくるのをやめて、警戒するように手で押さえ。
きょとんとした様子を見せる男に、こいつは本気で今まで金で事を済ましてきたなと呆れた様子で見返し、やれやれとばかりに首を振り。

「ふむ、では聞こう」

あっさりと情報を吐く態度に、思ったより重い秘密でもないのかと思いつつも、さすがに人目を忍ぶ話らしいと促されるままに、隣の席へと腰を下ろす。

ヴィクトール > 「なるほどなぁ……でも、アンタがいるわけじゃねぇだろ?」

その高級娼婦とやらなら要望に叶うかもしれないが…と考えるも、改めて彼女を見やる。
代わりの女でぐっと来るような想像が浮かばず、結局は代わりでは意味が無い。
アンタがいい と、改めて指差し、彼女を欲する。

「あぁ、そういうことか…金以外で抱く女だっていたぜ? 金じゃ買えない時とかな」

金で片付く時ならそれが良しとする、良くも悪くも利己的な答えが返る。
警戒するようにスカートを抑える彼女を見やれば、ニヤニヤしながら、スカートに手を伸ばそうとして引っ込めてと悪戯じみた事をしたりもする。
隣へと腰を下ろせば、さてどこから話そうかと天井を仰ぎ、過去の記憶を蘇らせていく。

「…んじゃ、まず俺の昔話だな。ここから結構離れた山間の村にいて、んで傭兵してたら魔族の女が暇潰しと女の生き血求めて暴れやがってな…そん時、その魔族の女を食い殺したら、そいつの力というか、魔法みたいなもんが使えるようになった」

しれっと自身の暗い過去を白状する。
自分についてと剣についてを求めた以上、自分が人ならざる気配なのを察したのだろうと、彼も気づいたらしい。
さもあらんと言った様子で今度は、大剣に触れていく。

「んで相棒は、こっちに来てから馬鹿強い女剣士とサシで殺しあった後、滝で溺死しかかりながらその魔法で変化させた剣だ。元はただの鉄の大剣だったわけだけどよ」

魔族の力と、その力で作られた大剣。
その招待を包み隠すことなく伝えれば、これでどうだといいたげに彼女を見やる。

セラ > 「それは、まあ……娼婦をやってるわけではないから、な」

改めて指さしてまで、お前がいいと求められていきなり随分と気に入られたものだと、若干気圧されたように引き気味で頷く。
どちらかというと、娼婦や奴隷といった商品として売られる側でなく、それらを売る側であることだしと。

「金じゃ買えない時には、か。どちらにせよ、とりあえず金で解決する姿勢なのだな」

にやにやとしながらスカートに手をのばされると、露骨に警戒した態度を見せて目線が手の動きを追う。
本気なのか、冗談なのか。この男はいまいち読めんと、しっかりとスカートの裾を押さえながら男の台詞を耳にして、結局は金が第一なのかと呆れたように首を振る。

「いや、ちょっと待て。魔族と戦って殺したとかなら、まだ話は分かるが。
喰い殺した、だと?
まっとうな人間の取る殺害方法じゃないだろう、それは」

物凄く端折った説明ではあるが、食い殺したという殺害方法にはさすがに聞きとがめ。
男の正気を疑うように、まじまじと男の顔を見つめ。

「いや、食う事で相手の力を取り込むというのは例が無いとは言わないが。
つまり、後天的な魔族みたいなものか。吸血鬼などは親の血を飲んで転化するなど、珍しないし。その類か。
しかし、普通は食っただけでそうはなりはせぬだろうし、よほど相性があったか元からそういった素質や適性があったか、か」

興味深い事例だと、ひとり頷き。
剣の魔剣化の事例は、男の事例と比べればまだ普通な話だと耳を傾けながらちらりと大剣に視線を走らせ。
ただの鉄の剣をこうまで変えるほどに力が馴染んでると見るべきか、生死の境にいたせいで馬鹿力を発揮したのか、どちらだろうなと思考を巡らせ。

「興味深い話ではあるな」

普通の女だった引きそうな話でもあるがと、付け加えながらも満足そうに頷く。

ヴィクトール > 「最もだな、てか…あれか、金じゃなくて口説けって話だよな」

気圧された様子に、自身の魔法の力でも重ねて引っ張ってしまおうかと思うも…自分に何かあると気づいた彼女のことだから、それも気づくだろう。
口下手だからなと、言葉を重ねて苦笑いにして内心は隠していく。

「兄貴みたいに口が上手くて女心がわかりゃ別だけどよ? 馬鹿でガサツな男にゃ、その方が早いってわけだ」

露骨に警戒した様子を見やれば、捲らねぇよとカラカラと笑いながら答える。
金が第一になるのも、それ以外の説得の術がすべからく下手くそだからという結果だが、否定はしない。

「あぁ、食い殺した。やっぱ普通じゃねぇだろうな……」

兄に話した時も唖然としていたのを思い出すと、狂った話をしているにもかかわらず、この男は楽しげに笑っていた。
何やら小難しい話が続くも、要は取り込んで奪えるかもしれないが、珍しいというぐらいしか理解には及ばず、目が点になっているのを見れば学は少ないほうだとわかるだろう。

「よく分かんねぇけど…兄貴は親父の血のせいじゃねぇかっていってたな。どうも人間じゃなかったらしいしよ」

人ならざる父の遺伝子で取り込めたのかもしれないと、それらしい答えを返す。
興味深いと頷く様子に、男も満足してもらえたと見れば笑みを見せて。

「間違いねぇな、だから言わねぇんだ。 …で、抱かれてくれるんだろ?」

欲した情報はこれで答えたはず。
今度はこちらの番と、その手を彼女の手へと伸ばす。
振り払われなければ、ガサツと言った割には優しくゆっくりと小さな手を包み込むように握ろうとしていく。

セラ > 「理解しているのなら、そうしろ。
女を見て、最初に金を積むより男より、口説きにかかる男の方がまだ好感が持てる」

手っ取り早く抱くにはそれがいいのかもしれないが、それで良しとする女は結局、男でなく金を見ているのだろうし。
割り切った関係でいいのなら、それもまたありなのだろうが。それは何と言うか、情緒が無くてつまらなくはないかと、男を見つめ。

「獣じゃあるまいし、食い殺すというのは人間の殺害手段としては稀有だろうな。
人外の血が混じっているというのなら、確かに素質はあったのかもしれないが、その伝でいくと兄とやらも同じような素質を持っている可能性はあるな」

何の血であるかという問題はあるが、ただの人間よりはずっと可能性が高かろうと納得した様子でふむりと頷き。
どうにも常人と感性がずれているように見えるのも血筋か、育ちかと男の様子を横目に眺め。
あまり理解してない様子に、武芸者ではあるが学のほうは怪しそうだとあたりをつけ。

「あ……。ん、んむ。まあ……な」

言われてそういう話の流れだったと、我に返り。
情報を吐かせておいてそれは無しとやるのもいかぬだろうと頷きながら、どのように男が出てくるのかとちょろりと窺うように上目遣いになって男の顔を見つめ。
握ってきた手を、おずおずと握り返す。

ヴィクトール > 「口説けか……そうか」

金より言葉を求めた女に、なるほどと納得した様子を見せるものの、何故か表情が険しい。
口説くというのは、今までに…1度だけそれらしくなったらしいことはあるが、意識したことがない。
どう言葉をかけるかと、改めて考え始める。

「仕方ねぇだろ? 右腕へし折られて、左腕は千切られちまったんだ。後は喉笛噛み付いて、食い殺すしかねぇ」

両手が死んでいたのだと情報を付けくわえると、兄の話へ。
自分と同じ素質…それで想像できる兄が浮かばず、ぶはっと吹き出すように笑ってしまう。

「ははっ、そりゃねぇよ? 兄貴は俺と違ってすげぇ頭いいし、紳士だし真面目だからよ。俺みたいな暴れん坊な力なんて、多分ねぇよ」

普通の生活とやらが今まで全く無かったせいで、常人と違うのは理解していた。
横目にこちらを見やる視線の意図は気づかないが、変なやつだとは思われただろうと、自嘲気味に苦笑いをこぼす。

「…口説けっていったけどよ、俺はロクな言葉を知らねぇからな。それだけは先にいっておくぜ?」

上目遣いに見つめる視線、握り返す掌。
じっと見つめれば、考えつく限りの言葉を語ろうと口を開く。

「さっきも言ったろ? 誰でもいいんじゃねぇって、アンタを見て、あぁこれはいい女だって思ったから、アンタがいいんだ。んで俺は言葉が下手くそだ、アンタを絶対に抱けるのが金で済むなら…幾らでも安いんだよ。アンタが抱けるなら、何でも出す。身の上話だってそうだろ?」

下手くそなりに、どれだけ彼女を欲したかを並べていき、熱く語っていく。
どんな手段だろうが、どんな値段だろうが、それはコストにしては安いのだと。
彼女をそれだけ欲したと、飾り気のない言葉で語った。

セラ > 「ひょっとしなくても……経験無いのか?」

なぜそこで険しい表情になるのかと、疑問を顔に出し。まさか、今までずっと金を積んできたんじゃなかろうなと、おそるおそる確かめるように声を潜め。

「あぁ、うむ。随分とまた苛烈な死闘を繰り広げたみたいだな」

武器を手にする事が物理的にできなければ、確かにそうなるかと理解はしたものの。そうなってまで、諦めずに文字通りに喰いつくとはと感心しつつも、その状況で相手を殺せたと言うのなら随分と接戦だったのか、油断した隙をついたのか。なんにせよ、素の人間の状態からあまり普通では無かったのだなと、戦闘民族的印象を抱き。

「ん? 似たもの兄弟というわけではないのか。武官と文官みたいに、正反対にように聞こえるな」

紳士で真面目で頭がいい。そのように評する姿に、妬んでるような空気もないあたりからして兄弟仲は良さそうだと感じとり。
お互いが、お互いに欠けてるところを補い合うような関係なのだなと理解し。

「なに、言葉を飾ればいいというものではないさ。
ようは、心を動かされるかどうかだからな。随分とまた、熱心に口説いてくれる」

口にする言葉は拙いというか、随分と直接的だがそこにこもる熱意は伝わってくる。
それだけ本気で求められると、女として悪い気はせず。嬉しげに目を細めて、心許した風情で身を寄せる。

ヴィクトール > 「経験がないわけじゃねぇけど…な?」

意図して口説いたことなどがないとは言えず、誤魔化すように苦笑いを浮かべていた。

「あぁ、よく生きてたもんだと、俺もよく思うぜ」

腕はちぎれるわ、腕は折れるわ、ろくな戦いではない。
それを思い出せばこそ苦笑いも深まる。
続く言葉には小さく頷いて見せてた。

「全然違ぇよ、兄貴と俺は腹違いなんだ。んで、兄貴は学者の御袋がいたらしい。俺の御袋は普通の村の女で、その魔族の女が来た時に死んじまった」

だからこそ死にものぐるいで敵討ちをしたのかもしれない。
それらしい話も重ねながらも、この話は一旦終りとなる。
口説く言葉の拙さに、少々不安はあったものの、満足気な言葉に安堵の吐息をこぼすと、身を寄せる彼女の手をこちらの膝の上へ導けば、片手はその肩を抱き寄せる。

「これで口説き言葉になるなら良かったぜ…こうも思った通りにしか言えなくてよ?」

安心したと楽しげに微笑めば、肩の掌を滑らせて脇腹をなぞりながら腰に添えようとしていく。

「俺はヴィクトールだ、アンタは…?」

名を伝え、名を答える。
金色の瞳が、力強く彼女を欲して見つめていた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からセラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヴィクトールさんが去りました。