2015/11/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアルマゲストさんが現れました。
アルマゲスト > 何時の間にか、だろう。まるで当然のように彼はそこにいた。
コツ、と酒場の床を硬い靴底が鳴らす音を響かせながら、緩やかに視線を巡らせる。
片手には赤黒い表紙の書、服に染みこんだ微かな煙草の芳香。
その視線が、カウンターに腰を下ろす一人の女性を見れば、「ほう…」と感嘆めいた吐息が溢れる。
そうすれば、あとは迷いの無い足取りでゆっくりとそちらへ近づけば

「―――失礼。隣、よろしいですか?
 よろしければ、一杯奢りましょう。」

そう、淡い色の声音が問いかけるだろう。
慇懃な色合いの、けれども、何処か面白がるような色合いの声音。
淡く錆を含んだ声質の声でそっとそちらへ響かせて。
さながらそれは、ここには彼女と自分以外誰もいないというように。

セラ > 「ん? ああ、席は空いている。
奢ってくれるというのならば、喜んで頂こう」

採算が取れる範囲でならどの程度の質と量を確保できるだろうかと、最近の相場の流れから想定を組んでいたところでかけられた声に、すっと目線を声の主へと流し。
興味深そうにその手にしている書へとしばし視線をとどめてから、頷きとともに相手の言葉に応え。
相手の方へと向き直るように、姿勢を変え足を組む。

「なかなかに面白そうな気配よな。
初めまして……かな?
さて、こういう時は天気や世間の話題を話のネタにするが定番か。それとも、何か面白い話を聞かせてくれるか」

そう、言葉をかけながらもやはり注意が引かれるのか相手の顔よりも書の方へと、ちらちらと視線が流れる。

アルマゲスト > 「空いている」という声に「ありがとうございます」と滑らかな声音を返す。
そうして、緩やかにスツールに腰を預ければ、流される眼差しに応えるように似た色合いの視線が返る。

「面白い気配と仰るのならば、貴女の方では?
 さて、陛下、とお呼びするべきでしょうか。」

そんな言葉を返しながら、二人分の酒を注文する。
自分のものは強い蒸留酒を選んで、そして

「さて…そうですね。戦火に現れた龍の話か。
 あるいは、戦場の行く末…などが最近では流行りのようですね。
 ですが、生憎とその辺りの噂話以上の話は持ちあわせておらず――。
 ああ、そうそう――私、アルマゲストと申します。
 ええ、恐らくこうしてお会いするのは初めてだと思いますよ。」

まるで会話を繋ぐための会話、のような台詞。
何かを面白がるような眼差しは彼女に注いだ侭、名乗る名前。
それと共に何気なく書はカウンターの上に置かれるだろう。
書の名前、彼女がそれを知るか、あるいは彼女の伝説の中に関わっていたかどうか
彼自身も未だ、知るところではない。
ただ、「吸っても?」と黒革のシガレットケースを軽く指し示して。

セラ > 「ま、隠しているわけでもなし。気づくか。
 正式な場でもなし、セラと呼ぶがよい。敬称をつけるかどうかも、好きにするといい」

 席に着き、酒を注文する姿を眺めながらこんな所で畏まられても面倒だと、ひらりと手を一振りして言葉を返し。

「そこらへんの話題が、今は一番熱いようだが現場に出てるか、関係者でないとそんなものか。
 戦場の行く末などは、懸けの対象などにもなってるようだが。
 ふむ、ではやはり初対面か。だが、覚えがないと言えば嘘になるな。
 魔導書の類で聞き覚えがあるが、現物を見た事はないな」

 向けられる眼差しに、カウンターに置かれた所を一瞥してから目を合わせて、本物かと訊ねるように、小さく首を傾げてみせる。
 興味を掻き立てられたか、向けるまなざしには好奇の色が混じり。
 問いかける相手の仕草には、好きに吸うが良いとばかりに軽く頷く。

アルマゲスト > 名乗られる名前に、「成る程」と頷き返して。

「確かに、場所柄を弁えましょうか。
 では、この場ではセラと呼ばせていただきましょうか。
 夜の守護者とお話できて光栄ですよ。」

言葉とは裏腹に見えるだろうか。向ける眼差しは面白がるような色合い。
紫色のそれが、緩やかに蒼く染まって、軽く瞬いて。

「ええ。戦場を回ってみても、噂話以上のものは中々。
 仕方がないので彼の都にでも行ってみようかと思ってる次第です。」

そんな言葉を返しながら、“賭け”という言葉に淡く笑ってみせよう。
響く笑声の色合いをどうとるかは相手次第だけれども。
と、頷かれる仕草にまず、「どうも」と言葉を返せば、そっと一本銜える。
まるで最初から灯っていたように赤く燃える先端。そっと吸えば紫煙を吐き出して。

「興味があれば中を覗いても構いませんよ。
 偽書もたくさんありますからね。ですが、本物です。私はね。」

向ける好奇の瞳を受け止めるように二人の間にある赤黒い表紙の書。
本物、と告げる彼は左右対称の正確無比な笑みをそっと、唇に浮かべて。

セラ > 「……そのように呼ばれるのは久しぶりの気がするな」

 男の言葉に懐かしむように目を細め、視線が虚空を見つめる。
 そんな感情の揺らぎを見せたのもつかの間。すぐに、まなざしは男へと戻り。

「確かに直接現場に赴けば、遠く離れた場所で人に話を聞いているだけよりは情報が手に入るか。
 戦場で落穂拾いもよし、敗残兵を狩るのもよし。当事者として参戦するのもよし。
 ま、わたしは当事者になるよりは野次馬として見物する方がいいが」

 戦乱の場で人が死に、人が消えるのは珍しくない。
 情報集めを兼ねて、人をつまみ喰いしに行くのも悪くないかと赴く事に興味が湧いた様子を見せ。
 賭けという言葉に対して見せた反応に、面白がってるのかと見て取り。戦乱を賭け事にする不謹慎さにか、賭けにする魔王や魔族に対して面白がってるのか。どちらだろうか、とちらりと男の内面を思うも、そこで意識を切り。

「ほう……。それでは、遠慮なく」

 当人の許可があればと、書へと手をのばしパラリと項をめくって中身に目を通し。
 興味深げな表情が、むむっと眉根を寄せて悩まし気になる。

「むぅ……。読めん」

 普通のまっとうな魔導書ならば、もう少し読みやすいのだがこれは意味があるのかもわからぬ難物だとぱたんと表紙を閉じ。

「もう少し、読みやすくした写本はないのか? 劣化版でもかまわぬが」

 名残惜し気に書へと目を向けながら、男へと問いかける。

アルマゲスト > 虚空へと移る彼女の眼差し。
それを追いかけはせずに、ゆっくりと紫煙を吸い込んで吐き出す。
吐息のようなその仕草と共に淡く濃い色合いの煙が流れいって。

「今もそうではないのですか?
 と、失礼。勝手な感想でございました。」

一言、滑らかに言葉が向けられる。
蒼色の眼差しを淡く細めて、そっと少しだけ笑めば

「そうでもございませんが。
 もし、野次馬に行かれる際はよろしければご一緒しましょうか?
 少しはご案内などできるかと思います。」

と、まるで散歩にでも行くような口ぶりで言葉を向ける。
まるで、誘うようなその色合いは賭けのことを聞いた時と同じ。
不透明な色合いの笑声を微かに載せていて。

そして、開かれる書。彼女の手に馴染んで溢れる中身は
色も文字も大きさも行も、文字の間隔や方向さえもばらばらに描かれたもの。
何かの秩序があるようで、無いようなそんな書の中身。
眉根を寄せる美しい顔に、は、と今度は可笑しげに笑ってみせた。

「贋作ならばいくらでもありますよ。
 写本の類は生憎と、このような中身ですので――。」

と、名残惜しげな問いかけには困ったように言葉を返す。
「けれど」と言葉を添えれば

「興味がおありなら
 中の意味を一部でもよければお伝えすることはできますよ。
 方法は、“読む”ではございませんが。」

そんな言葉を添えてみせようか。
そっと顔を逸らせて、紫煙をまたゆっくり吐き出して。

セラ > 「くくっ……。そうだな、今も変わらぬさ。変わったのは人か?
 いや、こちらも昔のままというわけでもないか」

 今は違うのかと言われれば、夜闇に歩く人の脅威でもある。
 今と昔の違いを思い浮かべて、笑いを忍ばせる。恐らくは、関係性こそが一番の違いなのだろう。
 時の流れに押し流されて、人も我も昔のままとはいかなかったそれだけだと懐古と郷愁を表情にちらりと浮かべては消し。
 気にするなと、鷹揚に手を振って、気を紛らわすようにグラスを口元に運ぶ。

「野次馬の案内ができるとは、現地の地理を知っているのか?
 まあ、現地の者を喰うなり洗脳するなりすれば土地勘などはなんとかなると思うが、道連れがいるのは良さそうだ。
 機会があれば、な」

 誘う様子の軽さに、人間同士の戦乱などに深刻な危険を感じるほどでもないのだろうと気にもせず。
 むしろ、人外らしいと納得するものがある。

「真作に劣らぬか、迫る贋作であれば価値もあろうが……
 おぬしの言う贋作は、ただの騙りの偽物であろう? そんな物を手にしても嬉しくはないな」

 つまりは、価値のない贋作しかなく。写本も存在しないという事だろうと落胆の吐息とともに言葉を吐き。

「……ん? 仮にも書物であれば読むのが普通であろうが、読む以外の方法となると感応系などか。
 さすがに、現物を目の前にして中身をちらつかせられると気になるぞ」

 精神が脆弱な人間が魔導書を読んで壊れただの発狂しただのの逸話を思い出して、精神感応系の情報伝達が真っ先に思い浮かぶ。
 現物を目の前にして、全部と言わずとも中身を知る方法を目の前に出されれば気になるが道理と、教えるが良いとばかりに男の方に身を寄せ。 

アルマゲスト > 片手を振る仕草に、目を伏せて小さく頷く。
そっと、グラスの中の琥珀色の液体を淡く唇に運んで中身を一口。
言葉を重ねるでもなく、ただ、彼女を紫色の眼差しが見つめていた。

「ええ。最近の仕事ではあちらの方によく行っておりますので。
 流石に彼の女王の寝所まで、とはいきませんが。
 では、その内、お誘いさせていただきます。」

『機会があれば』という言葉に緩やかに頷いてみせた。
添えられる言葉は、それこそ気安い響きの色合いで。

「ええ。残念ながら。
 私は楽しく拝見させていただきましたが、貴女様のお目に適うものはないかと。
 丹念にこの文字を書き写した者もおりましたが…落書き以上の価値はございませんでしたね。」

そっと、吐息。紫煙を乗せたそれはでも、どこか楽しげに見えるだろう。
そうして、次いだ言葉に、ふ、と笑声を淡く響かせて。

「ご明察。補足させていただくのでしたら、書物とはそもそもそのようなものです。
 書というのは自分を確かめるための道具であると思います。
 読むことで己の中の答えを確認、あるいは発見する。
 ――その結果、正気を失ってしまう方などおられるのは残念なことですが。」

滑らかに、ゆるやかに言葉をかけながら、酒をまた一口、口にする。

「私を読むということはより深く、自己を覗きこむこと――とかつての主の一人が仰っておりました。
 故に、普段は読むことができない、と。
 ですから、中身を手っ取り早く知りたければ―――」

そこで、言葉が途切れる。そっと、唇が微かに言葉を紡ぎ出すように動いた。
そのままゆっくりと、彼は立ち上がる。片手に書を持って

「――ですが、答えはまた次の機会に。」

セラ > 「さすがに、そこまでは求めてはいないさ。
 そんなところまで潜り込む気になってるときは、干渉する気になってるときだろう」

 現状、その予定はないとその内にとの言葉に淡い苦笑とともに頷き。

「美術品的や骨董品的な価値なら、あるいはだが。それはわたしの求めるところでなし。
 しかし、忠実に模写しても意味は無しというのは興味深い」

 当人に読めずとも、文字を複写できているのなら読める者にとっては写本ができているはずなのに、それが成立していないとは別の要素が絡んでいる事になる。
 魔導書とは、やはり奥が深いと興味と感心の呟きを漏らし。

「それは、その書物が何に分類されるのかによって違うとは思うが。
 書物である当人が言うのだから、否定するのも難しいな」

 知識の伝達・保存。物語の伝播。思想の布教。何を目的とした書であるかは色々あるが、当人がそういうからには、少なくともそういう役割を担っているのは確かなのだろう。

「それは、また何とも……。
 確かに手っ取り早そうではあるが」

 おそらくは他人には聞こえていない言葉。その内容に、浮かべたのは笑み。
 わかりやすく、手早くはあるがもはや『読書』ではないなとの苦笑。
 そのまま、立ち上がる姿を見上げ。

「もう行くか。
 なかなか、面白いひと時だったよ。それでは、またの機会によろしくな」

 こちらはもう少しのんびりしてから、立ち去るとしようと見送る姿勢で、別れの挨拶がわりに小さく手を振る。

アルマゲスト > 淡く苦笑を浮かべる顔。
その気品のある表情に柔らかく、笑みを深めて。

「では、いずれ機会がありましたら。」

そう、頷いてしまおう。
約束というほど確かではないけれども。それで良いというように。

「小賢しい言い方をすれば、物語がないのですよ。
 ただ、形を真似ただけでは何が宿る筈もない。」

「私の言えた義理ではありませんが」と興味の言葉に頷き返す。
それと共に、グラスの酒を空にしたときには銜えていた煙草ももうなくて。

「ええ。無論、書く側の心情は様々でしょう。
 私の言葉はどちらかと言えば読み手側、のことでしょうかね。」

告げる滑らかな色合いの言葉は変わらない色。
彼女の浮かべる苦笑めいたそれには、けれどもまた、笑って。

「ええ。こう見えても私、わかりやすい書だと自負しておりますので。」

そんな澄ました言葉を一言。
そして、緩やかに立ち上がればその侭、「お近づきの印に。」
と、一枚の羊皮紙を差し出すだろう。
何か記せば自動的に彼に繋がる紙片とはすぐに知れるだろう。
もっとも、それを彼女が受け取るかどうかはわからないけれど。

「もし、散策の共や、あるいは“読み”たくなったときはいつでも。
 それでは、失礼いたします。楽しい夜でしたよ。ナイトロード陛下。」

まるで機械で測ったような丁寧な仕草の礼。
告げる言葉。それがまろやかに彼女の耳朶に響く頃には
その姿はもうどこにもないだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアルマゲストさんが去りました。
セラ > 「物語か……」

 書にまつわる逸話、概念。それらがもたらす固有性。
 ふむと、頷き。そこらへんの問題なのかと考察するも、検証を重ねねば確信を伴った結論には遠い。
 だが、文字を写しただけでは写本とならぬとは魔導書らしいと納得できる。

「読み手の問題ときたか。
 そして、わかりやすい書……だと?」

 差し出された紙片を手に取りながら愉快そうに笑う。
 わかりやすいというより、危ないという表現がふさわしかろうにと。
 そして、男の姿が消えてしばらくするとグラスを空にした少女の姿もまた店内から消え。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からセラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/黒猫のあくび亭」にヴァイルさんが現れました。
ヴァイル > 「退屈だな」

ホットミルクの注がれたジョッキを指先で弄びながらつぶやく。
今回のティルヒアの件に関して、《無の世界帝国》からの指示はない。
つまりは静観しろ、というお達しだ。
しょせんは人間同士の戦いだから、だろうか。
ひさびさに大きい仕事かと思っていたが、肩透かしを喰らった気分だ。

そこらへんの飲んだくれに装飾品の類でも売って小銭でも懐に入れようとしたが、
あまり売れ行きはよくない。

「老爺の見た目のほうが説得力の出るものかね……」

ご案内:「王都マグメール 平民地区/黒猫のあくび亭」にリーシャさんが現れました。
リーシャ > 人間は3大欲求に勝てないものである。睡眠、食事、そして性。
生物としての最低限の営み――それはどんな時であっても、失せることはない。そして、少女は空腹だった
昼食に食べた肉の塊は美味しかった。だが、少なかったのが玉に瑕だ。
ひもじい。財布の中身は、お小遣いとして主に与えられた金貨が数枚。
これだけ毎日もらえるなら上々なものだが、少女の食欲の前には風前の灯だった。

「うう、おなか空いたんだよぅー……ごっはん、ごっはんー……っと?」

久方ぶりに歩く平民地区の酒場通り。その中の一件の前に立ち止まる。
『黒猫のあくび亭』――なんとも黒猫ミレーな自分にふさわしい店な気がする。
屋号を気に入り、店に入る。それなりの賑わい。夕食時だからか、開いている席は疎らだ。
ふと、その中の一つ――少年の隣に歩み寄ると。

「こんばんは、お隣、良いかな?」

声をかける。黒髪がゆらりと、かしげた首につられて揺れた。

ヴァイル > 「どうぞ」

焦げ茶の三つ編みを揺らして振り向く。
にこり、と外向きのほほ笑みを浮かべた。

真紅の瞳が品定めをするように、上から下までちら、と眺める。
冒険者だろうか。贅沢品は売れなさそうだ。

「仕事あがりかい? お疲れ様」

そう労うと、ホットミルクのジョッキを傾ける。
少年のつくテーブルの上にはそれ以外のものはなにもない。

リーシャ > 「ありがと。えへへ」

腰掛けると、店主に注文。財布の中を鑑みると、そこまで高額な物は望めない。
肉野菜煮込みにパンを2つ、そして酒――の中でも安価なエールを一杯。
まずやってくるのは、程よく冷えたカップだ。中身は同じく冷えた琥珀の炭酸。
白い泡を湛えるそれを右手に持つと、少年の仕草に応じるように、カップを傾ける。

「乾杯――っと、お仕事上がりだけど、今日はあんまりって感じだね。魔物が出てこなかった」

魔物退治のはずだったが、肝心の相手が出てこないという肩透かし。
ちゃんと仕事が終わっていれば今頃ホクホクだったのに、と少しばかり残念がりながら、ビールを煽った。
喉越しが良く、ついつい杯を飲み干してしまう。しまったと思っても後の祭りだ。
2杯目を頼むかどうか、少女は少年の前で、難しい顔をしながら悩み始める。

ヴァイル > ジョッキを傾ける。口の端についたミルクのを手の甲で拭う。

「やっぱり冒険者か。
 きみのような可愛らしい子なら、もっと別の働き方もできそうなものだけど」

空になった杯を睨みつけるようにして煩悶している少女に苦笑する。

「……なんだ。奢って欲しいなら、そう言いな」

懐から大きな宝石のついた指輪を取り出して、それを店主へとぞんざいに放り投げた。
すると、少女の目の前に高級なミードがやってくるだろう。
安エールとは比べ物にならない品物だ。

「相席の縁だ」

なんでもなさそうにニィと笑んだ。

リーシャ > 「もっと別の、ねぇ。ふふ、もしかして、ボクが娼婦であることを望んでたの?あるいは花売り?――ちょっと想像が安易すぎたかな?」

苦笑。その目の前で彼はジョッキの中身を空にする。良い飲みっぷりである。
そして目の前、宝石のやり取りがなされると少女は目を丸くした。
次いでやってきたミードにも同じくである。――甘い甘い蜂蜜酒、其れはたまにしか味わえない甘露。
故に、少女はにやりと相好を崩す彼に、同じく微笑んで見せる。

「――良いの?その、お返しとか特にできないよ?あぁ、冒険がしっかり終わった時とかならお返しできるかもだけど」

其れはきっと今の戦いが終わってからになるだろう。護衛依頼などは実入りが良いのだ。
彼が返礼を望むならば、少女は素直に渡すつもり。ともあれまずは、ミードの相伴に預かる。
カップに注がれるとろりとした液体。蜂蜜特有の甘い匂い。口に含めば至上の味わい――天国だった。

ヴァイル > 「気にするな。
 他に金の使いみちもないんだ。なにせ仕事がないからね」

微妙にちぐはぐなことを言ってひらひらと手を振り、
卓の上に手指を組んで、ミードを堪能する様子を愉快げに観察する。

「……なんなら、今すぐ払ってもらっても構わないぞ。
 何しろ、今のおれは腹が減っているんだ、とてもね」

違和感に満ちた台詞。
獣のように歪めた笑いの奥に、尖りすぎた犬歯が覗くのが見えたかもしれない。
少女の手を取ろうと、少年の幽霊のように青白い手が伸ばされる。
焦げ茶の前髪の奥、真紅の瞳が妖しく揺らめいた。

リーシャ > 「そうなの?――その割に羽振りがいいじゃない。貴族の子弟様ってわけではなさそうだけど」

甘い、美味しい、素敵、幸せ。少女の表情はコロコロ変わる。
とは言え、ミードは飲みやすい割に度数の高い酒。そのうちほんのりと酒気を帯び、どこか夢心地に変わる。
最中、彼の見せる牙と、言葉の意味に首を傾げて。

「んぅ?あぁ、君はそういう――ん、いいよ。乱暴しないのと、死ぬほど吸わない。この2つを守ってくれるならね?」

大声で言うのは彼の身分にも悪かろう。声を潜めて、微笑む。
伸ばされる手には手を乗せた。――少年は知らないことだが、少女はすでに呪いで魔族には逆らえないのだ。
其れならば、素直に身を委ねるのが一番。諦観混じりの潔さを見せながら、誘いに応じる

ヴァイル > 「……なんだ。随分と物分りがいいな。
 さては他の魔族のお手つきか」

鼻を鳴らす。
ならどのみち殺めるのは面倒事になるな、と、口の中で呟く。
実際に噛むとなると、自制の効かず殺してしまうこともあるのだが。

少年の肌は見た目から想像できるように、とても冷たい。
名も知らぬ少女の手を強く引き、口づけしそうなまでに顔を近づける。
そして、人で賑わう店内にかかわらず堂々と肩口に牙を立てて噛みつく。
溢れだした血を、ぴちゃりと舐めとった。舌だけが不気味に熱い。
身を離す。
ほんの一瞬の間に一連の行為が終わった。

「馳走になった」

唇を舌で湿らせ、満足した様子で、泰然と薄く笑う。
どうでもいい話だが、吸血のさいに流れ込むヴァイルの魔力には、催淫の作用がある。
身体が疼くのを覚えるかもしれない。

リーシャ > 「そんなもんだね。ま、死んでも復活はするんだけど、失血死は長い間貧血でくらくらするから嫌なんだ」

嘆息しながら、冷たい肌を受け入れる。火照った体にはむしろ気持ちいい手だ。
突き立つ牙。肌を食い破られる感覚と、痛みが体を跳ねさせた。声を抑えて我慢しながら、一瞬の吸血を耐える。
やがて終われば、傷口は徐々に塞がれていく。代わりに体を満たすのは、獣欲だった。
ずくん、と腹の奥が急激な疼きを帯び、背筋が甘く泡立つ。――あ、やばい。そう思った時には、机に突っ伏すように体が崩れた。

「く、ひぅ……お、なかっ――あ、つく……は、ぐ、ぅん――♪」

媚毒が回る、世界が回る。満足そうな少年の前で、少女は今まさに急激な発情に陥っていた。
同時、ふわり、と甘やかな匂いが放たれる。それは少女が発情した時に放たれる雌のフェロモン。
相手をとりこにしようとする、魔族に植え付けられた呪いの一つだった

ヴァイル > 快楽の毒を打ち込まれて無様に悶える少女の姿を眺め、くつくつと咳き込むような笑いを漏らす。
獲物を逃がさないための淫毒の効き目には個人差があるが、こうまで覿面に効くのを見たのは久しぶりだ。
周囲に漂うフェロモンを、花の香を愛でるような表情で楽しむ。
その類は、正常な肉欲を持たないヴァイルには基本的には効かないのだ。

「は、まるで食虫花だな。
 店に迷惑がかかってしまうなぁ――連れだしてやろう」

席を立つ。
少女の分まで勘定を済ませると、有無を言わせずに首の後、首輪をひっつかんで
強引に店外へと引きずっていこうとする。

「さて、どうしてほしい?
 ……それともここで荒くれどもに輪姦されていくか?」

ヴァイルには効かない少女のフェロモンも、周囲の常人には別だ。
正気を失い、ぎらぎらとした客の視線が、いつのまにか集まっている。

リーシャ > 熱を帯びた吐息、艶を帯びた表情。
空気は湿り気を帯びて甘く華やかに匂い、周囲の男達、女達を問わず発情させる。
目の前の少年には効かないようだが、周囲の様子からは、それが濃密な媚薬なのだと理解できるはずで。

「ん、ぅ……そうしたのは、君じゃないか――ぁ、ぅんっ♪」

首根っこを掴まれた。そのまま引き出されるさまはまさに猫のよう。
店の中の視線が動く。大抵が男達で、それは欲望にギラついている。
少年の言葉に、少女は首を傾げた後で、微笑みながら。

「――君が見たいなら、それでも良いよ?さっきのミードのお礼に、ボクの痴態もたしとくけど」

むしろ、どうする?と言いたげに彼の言葉を待つ。少女はマゾヒストだ。理不尽に極められてしまうほうが、気持ちいいと知っている。

ヴァイル > 「……さて、何のことやら?

 フン、淫売め。やめておくよ。
 おれがこの店に二度と入れなくなってしまう」

冗談だか本気だか判別つかないことを言って、
客の視線を尻目に、少女をおもてへと引きずり出す。
店外まで追ってくる様子はなかった。

そのまま、黒猫のあくび亭の近くの、人気のない路地へと向かい、
そこに乱暴にリーシャの身体を放り出す。
下腹部に、ヒールの高いブーツのつま先を軽く乗せ、胸と下腹部を焦らすように往復させる。
冷酷に見下ろす。

「ほら、ねだってみなよ」

ぐり、と、つま先に体重をかけはじめる。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/黒猫のあくび亭」にリーシャさんが現れました。
リーシャ > 「ひどい、なぁ。――ま、いいけど……ん、それなら外へ、だね」

ともに行く路地裏は、寂れて人の気配などない。
客達が追ってくる気配もなく、ただ二人がいるだけである。
投げ出される体は、そのまま夜気に冷やされた石畳にぶつかる。
冷たい。だが其れが今は気持ちいい。刹那、秘所を軽く潰すような感覚に、腰が揺れた。
見下されるその視線が心地よい。命令のような言葉には、胸をときめかせて。

「ん、くっ……淫乱、雌猫のリーシャ、です……発情しきって火照った体に、浅ましい欲望を、ぶつけて、欲しい、です。その、変態エッチ、でも、受け入れますので、お慈悲を、くださいませ?」

上目遣いの懇願。スカート状の布地の中、秘所はぐしょぐしょに濡れていて、靴の表面を湿らせていた。

ヴァイル > 「上出来だ」

見上げる少女にくるりと背を向けて跳躍すると、
未発達な胸を押しつぶすことなどお構いなしに、後ろ向きにどすんと腰を下ろす。

「まったく、靴が汚れたぞ……」

靴のつま先で、下腹部を覆う邪魔な衣類を器用にまくり上げる。
少女の胸に座ったまま、すっかり出来上がった秘部目掛けて、足を振り下ろす。
針のように尖ったヒールが、秘裂へと、ずしり、突き刺さった。

「おまえのような卑しい雌猫にはこれで十分だ。
 ありがたく受け入れるがいい。――そぅら、啼け!」

からからと上機嫌に笑い、
みし、みし、と淫肉が傷つかんばかりの強引さで、
冷たいヒールを深く、ずん、ずん、と奥へ突き入れる――

リーシャ > 「ぃぎっ、ん、んぁ、ぅっ♪――あ、ぐぅっ♪」

針のような先端が秘肉を抉る。内壁は蜜まみれで濃密な雌の匂いを放っている。
捲られた服の下、下腹部には淫紋がピンク色に艶めかしく輝き、胎動していた。
一度刺さる、蜜が噴き出る。二度刺さる、わずか血が滲み、直ぐに傷が塞がれていく。
何度も奥を突き刺されながら、腰を浮かせて悶え喘ぐ。
その手は無意識のうちに自身の一番の弱点である尻穴に近づき、やがて穴をかき回し始める。

「んくっ、ぅんっ♪い、たいの、きもちいっ―ーひ、ぁんっ♪」

胸が苦しい、だけど気持ちがいい。甘い甘い、刺激。痺れの中に法悦を見出し、少女は鳴き続ける。