2023/06/13 のログ
■トーベ > 足で捕らえた小さな人型が人語を喋る。やはり小さな人間、あるいは妖精の類のようだ。
そしてそんな彼は実際に妖精を名乗る。こんな街中にもいるものなのだなぁ、と心の内で感心しそうになるが。
「……はぁ? くさいって言ったッスか? ボクの足を!?
………むー。ボクだってスキでくさい足やってるんじゃないんスよ? 仕事柄どーしてもそうなっちゃうだけで!
毎日10分くらいお風呂で丁寧に手入れしてるってのに! 失礼な妖精さんッスね!!」
足のニオイを揶揄されれば、少女は歯をむいて喚き散らし、抗弁する。
ついうっかり脚に力を込め、レザンと名乗る妖精の身体を咎めようとしてしまう。
しかしさすがに対話可能な存在を一方的に傷つけるほどの残酷性はなく、すぐにまた躊躇してしまうけれど。
かわりにトーベは日に焼けた手を伸ばし、レザンを片手で掴み直してしまう。
妖精を胸元まで引き寄せると、じろり、とそのツラを睨むように見据えて。
「くさい足で悪かったッスね。とりあえず足で掴むのはやめてあげる。これで満足ッスか。
……まったく。もう少しで潰してたところだったッスよ?
さすがにそれはアンタとしてもヤな死に方だろうし、ボクとしても寝覚めが悪いし。危ないところだったッスね。
こんなイタズラはよくないッスよー、やめたほうがいいスよ? 反省しなさい、反省っ!」
手で掴んでしまえば、改めてその身体の小ささに驚く。しっかりと人の形をしていながら、その四肢も腰も怖いほどに細い。
そして……ぎゅっと手で掴んだ拍子に、薬指がつかの間、彼の下腹部にも触れてしまう。
それにより、手の中にある妖精の性別も判明することとなる。その瞬間はしばし指の動きが止まり、すぐに指先がそこから退けられて。
まあそれはそれとして、彼が危機一髪であったことは確か。
見た目にも子供な雰囲気の妖精に、トーベは叱りつけるようにまくしたてる。
手の中にあるか弱い小動物の蠢く感触に、ほんの少しばかり嗜虐心も煽られつつあるようだ。
■レザン > 「ぐええええ!」
絞め上げられてさっきより悲鳴が大きくなった。
生命に別状略。
掴む指が下腹にあてがわれれば、うひいと声を上げ、手の中で身をこわばらせる。
脚の熱気にあてられて半起ちになっていたが、それがわかるかどうか。
「うわっ、声でかいっ。
危ないからやめろって言われてもな~。
バレるかバレないか見つかるか見つからないか
そのスリルがたまらないんじゃないか」
巨大な顔に口角泡を飛ばして至近でまくしたれられるとさすがに怯むが、減らず口がなくなることはない。
さっきのためらうような手付きに、殺されることはないだろうとたかをくくっているのだ。
「……あーはいはい。反省ね。反省してまーす。
ど、どう? そろそろ解放してくれない?
これじゃまだご不満?」
全然反省してなさそうな半笑い。
離せよとばかりに手足をじたばたさせているが、それでトーベの指が動くことはないだろう。
■トーベ > 「スリルねぇ……まあ分からなくはないッスけど。命を賭けるほどのスリルはボクは御免ッスよ」
先程まで死にかけていただろうに、軽口を叩いてくる妖精。トーベは肩をすくめながら苦笑いを浮かべる。
……もっとも、トーベも普段の振る舞いはかなり無鉄砲な方ではあるが。特にスピードを出して走ってる時とかは。
「命は大事にしないと駄目ッスよ? ま、まぁボクは妖精さんについてあまり詳しくないから、実は死ににくいとかあるのかもしれないけど。
さすがにボクの目の前で死なれるといい気分じゃないから、街中では気をつけて飛ぶんスよ? いいね?」
軽薄な反省の態度に、はぁ、と湿っぽいため息をひとつ吹きかけて。
トーベとてそこまで面倒見のいい方でもなく、単に先程ヒヤッとさせられたことへの当てつけとして咎めていたまでのこと。
手の中であがく妖精さんのモゾモゾはくすぐったくて心地良いが、苦しそうなのも確かだ。
トーベはそっと手を開き、彼を放してあげる。指先には硬さを帯びた小突起の感触が残っているが、努めて意識の外に追いやって。
「レザン……君?かな。男の子ッスよね、多分。ボクはトーベ、『マレゾン宅急便』のトーベ。
荷物を届ける仕事をしてるんスよ。だからこの時期はよく汗をかくんスけどね。まあ冬にも汗は出るけど。
もし急ぎで届けて欲しいモノがあったりしたらボクんトコに頼むといいッスよ。
……んー、でも妖精さんにはあんまり縁のないお仕事かも? どーなんだろ、君、この街に住んでるの?」
ベンチの上で姿勢をただし、乙女らしく脚も閉じ直して。
解放した妖精がすぐに逃げたりイタズラを再開したりしないのであれば、とりあえずは自分の仕事の紹介。
いまだ追加の仕事の呼び出しはかからない。日暮れまでこのベンチでぐーたらしててよさそうだ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーベさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からレザンさんが去りました。