2023/06/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にユリアナさんが現れました。
ユリアナ >  ギルド併設の酒場。そこでたむろする冒険者達に作法や民度を問うのはお門違いではあるが、
 それでも度を過ぎて給仕の娘に絡み、よからぬ手つきを伸ばすものもいる。

 片隅で給仕の娘の腕を掴んだまま、酌をさせようとする男達に向かって、大柄な影が近づいていく。

「はい丸焼き二人前にエール二つおまち!」

 テーブルに勢いよく鳥の丸焼き二つとエールのジョッキを叩きつけるように置く高身長の女傑。
 にらみを利かせるように冒険者達を見下して、ニィ、と笑うと、

「……うちの従業員に手を出すとは中々勇気があるな。八つ裂きにされたいなら表で相手になるぞ?」

 腕組み仁王立ち。威風堂々。現役時代は重戦士として名をはせたその体も、今は色を帯びる丸みを伴って。
 それでも、鍛えぬいた体は未だ衰えを知らず、中堅はおろか腕利きの熟達さえも圧倒する膂力を誇る。
 ゴーレムキラー、アダマントバスター。

 数ある二つ名の中でも鉄塊が如き重戦斧を奮うその猛威から呼ばれた”暴風”は聞こえがよく。

 それでも、教導を受け持った駆け出し達を全滅の憂き目に合わせた汚点から、
 万が一にでも勝てるのではないか、という者は多くいて

「……はああ」

 結果、ギルドの目の前で沈む羽目になる。
 心なしか、全盛期よりも更に威力を増した剛腕で腹を打ち抜かれて、そのまま持ち上げられて地面に叩きつけられる。

 まるで万が一にでも、がないかのように。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にグライドさんが現れました。
グライド > (酒場の隅で、可笑しそうに笑う
当たって砕けるのは酒場での酔狂だと言えなくも無いが
せめて相手は良く選べ、と言わざるを得ない位には無謀であったろう
そも、酔っぱらい相手では勝負にもなるまい、『アレ』は、そう言う女傑だ。)

「よう姉御、仕置きが終わったら、こっちにもエール頼めるかい?」

(掛ける声、他の娘にも注文は出来るだろうが、敢えて呼ぶのは大柄な影
傭兵として遠征に出て居れば、精々戻って来た時に顔を見れるか如何かの相手
冒険者として、或いは重戦士として、先達となる相手に対する、気安い挨拶も含め、だ。)

「ちょいと会わない内に、拳骨の重さが増したんじゃあ無いか?」

(くつくつと、笑いながら、冗句交じり
其れでもし此方にも拳骨が飛んで来よう物なら其の時は、確り片掌で受け止めるだろう
容易い事ではあるまい、其の拳の重みは人並み以上に分かって居る心算だ
だが――此方も、まぁ、其れなりに――鍛え上げては、いるのだ)。

ユリアナ > 「ん? ふう……、グライド、貴様もここのなじみならにらみの一つも効かせてくれ。
 そうでなくとも貴様も給仕達に人気はあるのだ。自覚はあるかは知らんがな。」

 たとえ相手が得物持ち、素面であろうともここで管をまいている程度では相手にならない。
 冒険者家業をやっていれば寝込みを襲われる、魔物に操を狙われるのは日常茶飯事。
 その中で亡くなった夫相手に貞操を貫けたのは至極簡単な理由。

 寝起きでも男を逆に組み伏せ、オーク相手にも殴りかつ規格から外れた膂力故に。

 酒場にいつく間もない、相応の腕利き、給仕達にも慕われる熟達であれば知りえていることで。

「……先日の失策もあるからな。改めて鍛え直している。負荷をかけ、相応の食事を取れば失った力も戻る。
 一度は深手を負った者が再起する様は幾度も観てきた、その前例と同じことをしただけだよ」

 エールと、適当な肴をテーブルに運んでくる。
 傭兵としての遠征、腕を見込まれての大役を果たしたことへの労い、それにしてはささやかではあるが。

「……もっとも、あの程度なら鍛え直す前でも充分に制圧できたがね」

 憲兵に連れて行かれるならず者が連れて行かれる様を眺めつつ肩をすくめてみせて。

「そも、貴様はどうなんだ? そろそろ身を固めるにも十分すぎるだろうに。
 遠征で衰えを感じることもないのなら、まだ考えることでもないか」

 傭兵と冒険者の最大の違いはコンディションの管理。冒険者も相応に要求されるが、
 傭兵は契約者との信用度の重要性はけた違いになってくる。

 拳で試す必要もないほどに鍛えられた男には、問いかけがまず先であろうと。

グライド > 「そうかい? そいつは嬉しい知らせって奴だが
姉御の睨みと俺様の睨み、どっちが震えあがるかっていやぁ、なぁ?」

(自分が睨みを利かすまでも無い、と言うのは世辞でも無く本心だ
少なくとも、王都の中で相手を如何こう出来る人間の方が明らかに少ない
王都の外ならまだしも、此処で心配するほどに耄碌しては居ないと言う確信
――そうで無ければ、酒場で荒くれどもをあしらう事はようよう出来まい
今だって、随分と手加減を加えている事は見て取れるのだし

エールを運ばれれば、礼と共に器を持つ
傭兵稼業にも理解がある相手は、数少ない、話がし易い相手でも在り。)

「―――……あー、そういや、色々在ったみたいだな。
……ま、姉御なら勘を取り戻すまでは早いだろうさ。」

(何が在ったのか、簡単には聞いて居るが、其れを深く問いはしない
相手が対処できなかった状況だ、犠牲者が居たとて、他の誰に対処出来たとも知れぬ
無論、其処に責任を感じるのもまた、相手の性格では在ろう
簡単にでは在るが、若者の冥福を祈りつつ。 ぐい、とエールを煽る。

人は簡単に死ぬ、ありとあらゆる理不尽が、何時待ち受けているとも限らない
傭兵として従軍し、生き死にの中に常に居る己は、そう言う物だと理解して居る
だからこそ、かも知れぬ。 身を固める気が在るのか、なぞと問われれば
恐らくは、何時もこんな風に返答するのだ。)

「―――――……こんなのが相手じゃあ、待つ相手が可哀そうってもんさ。
生憎、まだ隠居決め込む予定はないんでな。 ……自由気ままの、色男生活が性に合ってる。
其れとも、其の気が在るって言ったら、今度こそ姉御が狙ってくれるってのか?」

(冗句混じりに、そんな言葉で茶化すのだ。
未亡人でも在る相手に対して、そろそろ気は変わったのか、と
――答えは、判って居る。 少なくとも、今まで通りの相手なら。
今迄にだって、こんな冗句は何度も交して居たが、其の度にあしらわれて来たのだから)。

ユリアナ > 「残念なことに後者だな。男というだけで牽制になるし、女というだけで舐めてかかる者が後を絶たん。
 愚かで向上心もないから経験も重ならん。だから厄介なのだ。」

 本心を受け止めつつも、現実を憂う。
 過不足なく観察した現状を評価するのは冒険者の生き残る秘訣。
 それはたとえ埒外の胆力を持つ者でも変わらない。

 ……正直な話をすれば、文字通り八つ裂きにしてしまいたいが、それでは日常生活が遅れない。

 何より、目の前の”夫ほどではないがそれなりの男”と話すのは悪くはない。

「……まあ、それはそうだな。二度と同じことは起こらないようにするさ。
 しかし、痕跡も残っていないからな。未だに私の証言を虚偽と断ずる者もいる始末なのはいささかやりにくいよ」

 ……当の元凶が今となっては”本当の夫”になった女傑にとって、
 もう二度と同じことは起こりえないことは確信している。
 それを差し置いても、惰弱な男に見下される現状も憂いてはいて。

 何か、動きやすいように信頼を回復できる手段は考えていて。

「グライドは変わらず作法が通っているな。私のみならず死んだ駆け出し達のことを悪しざまに騙る者も少なくないというのに。
 こういう心の在り方においては、どうにも冒険者は傭兵に一歩も二歩も遅れている。」

 冥福を祈る仕草。その作法を取る貴方を見て良く頷く。
 単独で契約を結ぶ傭兵。ギルドに属して介した依頼をこなすだけの冒険者。
 双方生き残っている者の質の差は歴然でもあるのは目の前の男が体現していて。

「その年にもなってよくやる。まあ、私も子を宿さねばその年ぐらいはまだ現役を続けていたか?
 まあそうだな。貴様ぐらいの度量なら一人の相手に定めることもないだろうよ。」

 狙う、その類の言葉に今まで通りの相手、なら、少し不機嫌にもなる。
 操を立てている亡き夫への在り方。それを穢すような物言いは、礼儀を弁えぬと。
 だがそれは表に出さず、相手への今後の対応を変えることもなく、相手なりの気遣いだと鞘に納める。

「……ふっ。何度も言わせるな。私は”夫に身を捧げている”のだ。
 グライド、貴様ではまだまだわりに合わんよ。」

 胸を張って応える。まるで生涯貫き通す意志を固めたかのように。
 それは、娘二人が独り立ちしたからこその、余生を見つめているが故の変化なのか。

「まあ、まかり間違って子を成したなら、その時は流石に腹を括れよ。
 子を養うのも男の意気というものだぞ?」

 悪態に悪態を返すように笑みを向ける。
 そこには、以前はなかった色香がどこか帯びていて。

グライド > 「成程、じゃあ、俺様は姉御の現役を知ってるからこそってか。
……まぁ、若い連中なら余計に知らねぇだろうからな。
しかし、俺様も姉御が居るから気楽に飲めるってのも在るからよう。」

(羽を伸させてくれよ、なんて言いつつも、実際、酔客は面倒であろうとは納得出来る故
多少なりと、少なくとも己が此処に顔を出して居る時位は、見て居て遣ろうと肩を竦めた
もし、我慢の限界が訪れて、この相手が客をミンチにしてしまったら

――其方の方が、余程困ると言う物だ。)

「―――……その場に居ねぇ連中が、どれだけ言ってもな。
冒険者になった以上、例え若造でも覚悟ってのは在るだろうがよ。
……要らねぇとは思うが。 もし必要な事がありゃ、手は貸すぜ。」

(――外野ならば何でも言えるのだ。 無責任な事言うのは容易い。
命は失われても、目の前の相手が生きて戻って来た
今は、何よりも、その部分こそが最も重要であろう
冥福を祈るのは、ひと時だけ。 戦場で、死んだ同胞を送り出す時と何ら変わらぬ作法

冒険者が、死に触れぬ訳では在るまい。
だが、傭兵達の方が確かに、死と言う物への向き合い方が違うのやも知れぬ
戦場は、冒険とは違うのだ。)

「――――…………割に合わねぇ、か。
……よう、挑ませても貰えねぇのは、狡いと思うがなぁ?」

(――ほんの僅か、片眉を跳ね上げた。
これまで、幾度も相手の事を見て来たが故に。 其れまでになかった変化には、鋭敏に気付く。
頑なとは言えぬ。 何処か色香を纏う、柔らかさを帯びた、其の姿に。
誘われるのではなく、ただ、脳裏に過った一つの予感を感じて――双眸を、細めた。

ぐい、と、またエールを煽り。 じっと、目の前の女を見上げた後。
一度真顔で、少しばかり恨みがましくそんな台詞を向けてから――ふ、と、意味深に口端を吊り上げ。)

「―――――…其の時は其の時だ、何せ、姉御って言う良い見本が居るんだからよ。
……しかし…羨ましいもんだ。 なぁ、昔見た顔してやがるぜ、姉御。」

(――かつて、彼女に、まだ愛した男が生きて居た、其の頃と同じ様な。
己が感じ取ったのは、きっと、其の頃の様な気配、だ)。

ユリアナ > 「世代交代は、うん、確かに一回り来ている頃合いか。
 私の世代の子供達にも中堅に足をかけ始めている者もいる。
 まあ、ならず者は等しく、身内であろうと屠るが、相手にする数がこれからも増えていくことになるのか。」

 そろそろ打ち立てた伝説の数々を、時代が経って尾ひれがついている、と思われているのだろうか。
 ……夫の為にも、というより、自分のわずらわしさを解消する為に、
 いくつか仕事をこなすべきかと考えて。

「少なくとも、あの時いた後続達には目を見張る気概はあったよ。
 想定外の緊急事態、そこで今日会ったばかりの”仲間”の身を案じて
 助けを買って出た者や後をついてきた者もいた。

 ……その気概に頼った私の落ち度もあるのだ。
 それこそグライド、貴様のように仕事と私情を分けられる手練れの傭兵に任せていれば、
 自分でなければあるいは、と思わないでもない。

 生きていれば、少なくとも片隅で管をまく手合にはならなかっただろうさ。

 ……不要だ。気持ちだけありがたく受け取っておくよ。
 あの時のことを憂いての弔い、露払いは私がするのが作法というものだ。」

 傭兵にない要素、それは仲間にも身内が出来ること、パーティを組むことが多いこと。
 各々が歴戦故に臨機応変に仲間を変えられる傭兵と違い、連れ添う仲間が出来ることが多い。

 故に、後輩先達の関係も成り立ちやすい。故に、後続の死を悪しざまに笑うことは、
 冒険者の間での無作法であると女傑は語って。

「挑むこともできまいよ。愛した”人間”はもうこの世にいないのだからな。」

 あくまで夫に操を立てている。あくまで”人間”はもういない。
 嘘は吐いていない。

 ただ、変化は確かにあって、女の顔になっていて。
 それを明言はしない。まるで女の魅力は秘密を抱くことにあるとでもいうように。

「家族を得る、というのは存外良い物だぞ。
 ……貴様の仔であれば、家で面倒を見るのもやぶさかではないしな。

 まあ、腹を括るか否かはさておき、子を残すことは考えておいてもいいさ。」

 ……この男の才能、能力は優秀だ。その子供が生まれるなら、目をかけておくのも悪くないだろう。
 それにこの男の浮名も少なくはない、先に出会っていればあるいは、と思うこともあった。

 だが、機会に恵まれなかったし、何より愛して”いた”男は誰よりも果敢に私に交際をもちかけてきた。
 そう言う意味では誰よりも命知らずであったなと思いを馳せる。

 ……その時の感情を含めた表情に、またどこか満たされたような笑みを浮かべるだろうか。

「……また客が増えてきたな。グライド、ゆっくりしていけ。
 ああそれと、今日の飲み食いは私の奢りだ。好きにやってくといい」

 賑わいが増していくのに気づいたように見渡し、そろそろ本気で動くかと言うような振舞いで、
 そう言葉を残して
 

グライド > 「酒場が継続できる程度に抑えてくんねぇと、気楽に来れる所が減っちまうぜ…。」

(いや、そも、其の部分に置いては手を出しに来る連中が完全悪で
目の前の相手は全く以て悪くは無いのだが
また依頼に赴いて、戻って来た時にゃ店ごと無くなってる、と言うのは
正直に言って、結構残念この上ないだろう
気を付けてくれよ、と、微苦笑気味に言いながら。)

「……姉御がよう、責任感が強いのは今に始まった事じゃあねぇが。
俺様見てぇなのと違って、"母親"な分、優しいからよ。
……ま、覚えて置いてくれりゃ良い。 姉御に出来ない事が、俺様に出来る保証も無いからな。」

(あくまで、入用が在れば、で良い。
不必要だと言うならば、この事について、己から手を出す事も在るまい
自らの手で始末をつけると言うのであれば、其れを尊重すべきだ
其れが、冒険者としての矜持であるなら、己に其れを乱す権利はない。)

「………………家族、ね。
……全く無い、とは言わねぇが、まだ想像は出来ねぇよ。
だがま、其の時が来る様な事がありゃあ…、……こっそり隠し子、何て事はしねぇさ。

……くく、其の辺りの縁が、俺様にも在るってんならな。」

(――この年にもなれば、思い返す事は多くなる。
かつての記憶、思い起こす、"あの男"の顔を脳裏に浮かべながら
また、器に残ったエールを最後まで、一気に煽り飲み干して仕舞おう

喧騒が増してきた店内、己とばかり喋って居る訳にも行かなくなったのだろう
少しばかり惜しむ様に、されど、ゆっくりと頷き返せば
最後にエールをもう一杯、奢りとの言葉に笑みを深め、遠慮なく注文して。)

「……姉御も、元気で何よりだ。
また来るぜ、それと、次の遠征までは、またギルドに顔を出すかも知れん。
もし仕事が被ったら、其の時は宜しく頼むぜ。」

(――冒険者としての仕事をしない訳では無い
今も、傭兵稼業の合間に、そう言う事で稼ぐ事も在る
もし、女が再び、ギルドへ足を運ぶ事になるのなら、其の時は
また、同じ仕事で組む事、或いは関わる事も在るやも知れぬ

片掌を掲げ、接客に戻る姿を見送り、眺めれば
今度こそ、久方ぶりの酒と料理を堪能するだろう
また、何か喧騒が起きれば其の時は、左記のとおり、睨みを利かせる位は手伝うやも知れないが

其れは、またこの後、何が起こるか次第だろう――)

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からユリアナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からグライドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクリスティーヌさんが現れました。
クリスティーヌ >  酒場併設のギルドは夜も続く。だけど、私たち受付は早めに帰ることができる。

「お疲れ様~」

 ラフな格好、Tシャツにデニムのパンツに着かえてこれから帰宅。この二三日王都もいきなり記録的な暑さになってギルド帰りももう薄着になっている。水遊場も人気というけど、ちょっとわたしは苦手で行く気がしない。

 バッグを肩にかけたまま、片手を頬に、片手は腕組みしたまま、ウィンドウを見ると。結構な値の張るバッグと靴。冒険者として出かけることがなくなった今は、装備にお金をかけることもないから、前よりもお金に余裕がある。……、だけど~

 かわいいバッグを持ちたい。だれかプレゼントしてくれないかな。たしか、昨日討伐系クエストをもっていった戦士の人ってわたしのこと見る目がちょっと怪しかったけど、あのタイプならプレゼントしてくれそうな気もするなぁ。

 そんな気持ちのまま通りを進んでカフェに入る。夜に炭水化物はやめておこうと思っていたんだけど、冷製パスタに角切りのトマトがのっているメニューを見るとトマトの酸味と甘さ、サクッ!とした食感が口の中に広がってしまうとそのまま注文してしまった。

 ダイエットは明日からすることにしてパスタの味に満足したわたしは、店を出るとあたりは暗くなっていた。ギルドの職員寮までは少し歩かなきゃいけないけど、先週発見した近道を通ろうと決めたわたしはちょっと気分がハイ!あまり通っていない道を通るのって新鮮でうれしい。そのままバッグの肩掛けひもを掴んで小さくクルクルとまわしながら薄暗い路地に入っていった。

クリスティーヌ >  路地裏はお店の裏口とつながっているせいか、ところどころ小さな明りのついた窓があって、そこから漏れた明かりをたどるように薄暗い道を進んでいく。途中に、だれが置いたのかわからないガラクタに転びそうになりながら進む。細い道を塞ぐようにお店の裏扉が開いて中から男の人が出てきた。なんだか目つきが悪い。その男が私をじっと見た。

 ギルドに来る人達よりも優男だけど、私を見て目を細めていくのがなんだか怖くなって、道を塞いでいる扉の取っ手を掴んで隙間を作ったわたしはその隙間を抜けて走り出した。

 目元は涙ぐんできてしまってる。怖くなるとすぐ涙がでちゃう。、思い切り腕を振ってるけれど、なんだか胸の重みでバランスが取れない。いつものことだけど、走るのが嫌いなのに、今はそんなこと言ってられない。左右にこけそうになりながら、だけど細い路地のせいで、こけそうになるたびに胸が激しく弾んでしまうけれど、両手を壁につけてなんとか前に進んでいく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にケストレルさんが現れました。
ケストレル > そんな彼女が進む先に、人影が一つ

「はぁ~……今日これで外回り押し付けられたの何回目だよ……ったく」

騎士団の諸先輩方に平民地区の警邏をいつものように押し付けられたケストレルだ
断ったところで私刑が追加されるだけなので、大人しく聞き入れてこうして路地裏でサボ……近辺の監視を行っている
ここら一体は酒場も多く、血気盛んな連中が喧嘩を始める事も珍しくはない、だから一応、格好としては成立してる……と本人は思っているが

「今頃先輩たち、どっかで飲んでるんだろうな……はぁ、ホント良いご身分だ……こと?」

ぶつぶつと不平と愚痴を垂れていたところで足音が聞こえ、視線と通りから裏路地へと向ければ、

「おいおいおい、何事だよ」

必死の形相で駆けて来る貴女の姿を見つけた

クリスティーヌ >  裏通りを抜けると、息せき切ってふらふらしながら街灯に寄りかかりながらふらつく身体を倒れないようになんとか立ち止まっている。

 ちょっと走っただけだけど首筋まで汗だくになってシャツが張り付いてしまっている。足元はおぼつかないでフラフラ。人通りのある所なので大丈夫という気のゆるみからか明るい場所なのに、人にぶつかってしまう。

 「ごめんなさい」

 固いなにかにぶつかったというか跳ね返ってお尻から石畳の道に転んでしまう。涙目のままかすむ視界のなか見上げると男の人、冒険者とはすこし雰囲気が違う。警備の人かな。すこし安心して起き上がるとさっきから息苦しく弾んでいる胸を片手で押さえながら警備の男の胸のあたりに手を伸ばす。

 「ぁっ…あの……、あやしい男に追いかけられて」

 頭がまとまらないけれどなんとか言葉にできた。まだ息が弾んでいて胸が上下しながら

 「あっ、あの…ごめんなさい、ぶつかって、お仕事中ですよね」

 「助けてください!」

ケストレル > 「おっとと、大丈夫? ……え、あやしい男に?」

鬼気迫る声に只事じゃないと判断し、改めて女性が駆けて来た裏通りへと目を向ける
彼女の言う「あやしい男」の姿は残念ながら確認出来なかった
騎士の姿を見て隠れたか、そもそも彼女の勘違いだったのかは今となっては判別が出来ないが……

「ええと、それは怖い思いをされたっすね
 俺が居るからにはもう安心っすよ、流石に騎士に喧嘩売って来る輩はこの辺でもあんまり居ないんで!」

貧民地区とかもう少し治安の悪いエリアなら騎士相手でも食って掛かる血の気の多い輩は少なくはないが
幸いにしてここは平民地区、騎士や衛兵の詰め所も近い事もあってか、不利な喧嘩を売る輩は少ないのだろう

「ひとまず深呼吸して、もう少し落ち着いてください
 今確認しましたけどもう追って来てないみたいっすから」

それはそれとして、この人どっかで見た様な、と女性の姿をそれとなく観察しながら内心で首を傾げるケストレル

クリスティーヌ >  「そう…そうなんですね……」

 男の言葉に安心していくわたし。

 改めて、彼を見ると騎士姿にりりしく鍛えられた肉体。これはいつも冒険者を見ているから体つきからその人のレベルというのは大体わかる。鍛錬しているひとの戦士の体つきに安心感が胸の内から湧いてきて、やっと自分がいままで慌てていたのに気が付いた。いわれるままに深呼吸していくと、汗で張り付いていて下着がちょっと浮いているシャツを内側からおっぱいの肉で持ち上げては緩める、持ち上げては緩める。三回ほど深呼吸すると余裕ができてきた。ちょっと、咳ばらいをして、ちょっとだけ彼から離れていく。

 「コホン、あっ…あの助けてくれてありがとうございます。」

もう一度見上げる。この人、背が高いな。見上げることでなんだか安心感と親しみのようなものを感じていく。助けてもらったということで、この人に頼れるような男らしい人なんだって、そう思うと頬がちょっと赤らんできてしまう。



 

 

ケストレル > 「いっ、いやいや……俺は別に何も……」

ただ居ただけ、感謝されるいわれなど無い
それどころか汗で張り付くシャツとか、そのせいで浮き出てるボディラインとかを間近で見せられて、此方が礼を言いたいくらいと思いながら首を振る
傍から見れば謙遜してるようにも見えなくも無いが、実情が実情だ

「それより、ええと……人違いだったらすいません。
 ギルドの……ティナさんっすよね?」

先程から抱いていた既視感を探れば、何度か利用した事のある冒険者ギルドの窓口の受付嬢の姿が思い至り
制服姿しか知らなかったので、私服姿はなんだか新鮮だなと頬を緩めたのだった