2023/01/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にウィンさんが現れました。
■ウィン > 平民地区の大通りに面したそれなりな大きさの商店。
その日はその店が在庫の売り出しを行うという事、人では足りるが商品を多く置くので万引きが心配とのことで他の冒険者と共に警備に雇われる。
街中という事、そして万引き防止という事で雇われた冒険者も見習いや新人が多い、その中に混じってというのは少々嫌ではあったが。
「仕方ないよね…やっちゃったし」
そんな中に混じって依頼に参加するのはある依頼で輸送物を見事に壊したという落ち度から今回の責任者を押し付けられたから。
落ち度のせいで断れずに今に至り、警備と共に時折に他の冒険者の様子を伺う必要もあり。
それが一番手間がかかり。
「君、そこは邪魔になるよ。あなた、お客さんの邪魔しない」
変な場所に立っていたり、何を考えたのかお客に声をかけるのを制したりとしながら店内を見回って。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からウィンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にヴァンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にリアさんが現れました。
■ヴァン > 酒場はまだ日も暮れていないというのに、冒険者や肉体労働者でそれなりに賑わっている。
陽がかげっては商売にならぬと、早めに仕事を切り上げた者達が多いようだ。
客層に学生や貴族が含まれない酒場。
学院から徒歩圏内の酒場。
宿屋を兼ねていない酒場。
もろもろ考えてたどり着いたのが肉料理とビールが名物の酒場だ。
「お嬢さんを連れてくる所ではないが……」
危なくはないが、少女一人では来るには気後れするようなお店。好奇心を満たすには十分だろう。
店員に確認したところ、カウンター席・テーブル席ともに奥まった所が空いているようだ。どちらが良いかを少女に聞く。
手癖の悪い男達が酔ったふりをしてすれ違いざまに身体を触るおそれもある。想定できるトラブルは予防するに限る。
■リア > 入った途端に賑やかさに包まれて、静かにしながらも目を丸くしている娘。
あからさまに物珍しそうにしないようにはしつつ、運ばれていく料理の皿の上や乾杯の声に忙しなく目が動く。
「ひえ……混んでますね、人気のお店なのかしら。
女性もいますよ……? あ、カウンターにしましょうっ」
調理や他の客の様子が覗けそう、という理由でカウンターを選ぶ。
ヴァンから離れないように席まで歩きながら感動してそわそわしている。
「ここがヴァンさん御用達の酒場……」
■ヴァン > 「冬の間は陽が暮れるのが早くなるからね。みんな、寒くなる前に暖かい酒場で一杯飲りたいのさ。
わかった。じゃあ、奥どうぞ」
カウンター席の隣、店の奥にあるキッチンはホールからも一部が覗ける。
フライパンでソーセージを焼いたり、窯にパンを入れたりする音が聞こえてくる。
奥側の席を勧め、スツールに腰掛けた。ふと聞こえた声には軽く唸る。
「御用達という程ではないが、時折来るいい店だ。ビールが好きだからね。料理は適当に頼んでいいかい?
飲み物は……ワインにするか。『黒猫』なんかどうだろう。甘めの白ワインで飲みやすい。水と交互に飲めば悪酔いもしないだろう」
そんな言葉を口にすると、カウンターの奥にいる酒場の主人らしき男が軽く挨拶をしてきた。顔を覚えられてはいるようだ。
図書館での会話を思い出し、カウンター席の正面にいくつか並ぶ樽の一つを指さす。
「御用達というか、一番使う店は学院から少し遠くてね。あと、色々とあって今回は候補から外した」
■リア > 「都会は良いですね、そういう楽しみがあって。
私は実家が田舎の方なので、冬の間はずーっと家に閉じこもりきりでしたもん。
たまに王都まで母について来るくらいで……」
毎日の仕事終わりに、仕事仲間と酒場で飲みかわす、ような暮らしは想像の世界のものだ。
竈が開くたびに見える炎、じゅうじゅう肉を焼く音。
勧められた席に座ってからもキッチンを眺めるのにちょっと身を乗り出して。
「はい、食べられないものは特に――あ。
鳥の姿焼きみたいなものは……先日、うちの子が鳥を捕って来て……今はちょっと……なのでそれ以外でしたら」
思い出すのは愛くるしい飼い猫の「褒めて」と言わんばかりの顔と、足元に散らばる無残な小鳥である。
顔を覆って恐怖の記憶を振り払いながら、黒猫のワインに頷く。
「色々って? 街じゅうの悪が集まるお店なんですか?」
裏の顔役なんですか?と、何となく濁された部分を余りある想像力で補って目を輝かせる。
■ヴァン > 「街は年中動き続けないと死んでしまうからね。
冬は秋にたらふく溜め込んだ物で家に篭る、田舎のやり方の方が人間本来の過ごし方かもしれない」
自身の出自も辺境に近いからか、閉じこもるという言葉に頷いた。
身を乗り出す姿を見て酒場に興味津々なのだと気付いたか、酒場の主人が肩を震わせて静かに笑う。
「そうか。褒められたくてやるらしいから、いろんな物を持ってくるかもしれん」
仔猫が早速狩りを覚えたことに少々驚きつつ、不安を煽るような言葉を続ける。
店主に視線をやるとメニューを指さしながら、ソーセージとザワークラウト、仔牛肉を薄く伸ばして揚げたものを頼んだ。
「……まぁ、言ってもいいか。宿屋兼酒場で、その宿屋部分に住んでいるんだ。
だから常連客は全員俺を知っている。そんな所に君みたいな若い子を連れて行ったら……どんな反応をされるかわかるだろう?
悪い連中が集まるとか、非合法な事が行われるとか、そういうことはないよ」
そういった店を知らない訳ではないが、男とて好んでは行かない。少女連れなら猶更だ。
すぐにグラスが2つ、デキャンタが一つ供される。グラスにワインを注いで、片方を手に取った。
■リア > 「勉強か読書ばかりだったから、都会の方が楽しいです。
厨房に入るのもだめでした、お菓子を作ってみたかったのに」
後半は厨房に興味津々なのを笑われた言い訳である。
首を引っ込めて、隣からメニューを覗きながら。
「うーん想像のつかない料理がたくさん……狩りは、学校の実習でもやるので、同じことと言えば同じはずなんですけどねえ。
日常に突然飛び込んでくると叫んでしまいますね。
春になったら学校の花壇は例年より綺麗な花が咲くことでしょう……」
小鳥たちは花の栄養となったのだ。
ヴァンの住みかの話には、なあんだ、といささか残念そうに。
「酒場を装った秘密結社の集会場とかじゃないんですね。
ヴァンさんが私をかどわかしてきたようにでも見えてしまいます? 気まずいものですか?
ヴァンさんを普段からご存知の方々なら大丈夫なのでは?」
分かっていない顔でヴァンを見て、もうひとつのグラスを手にして。
「わあい。ええと――何に乾杯でしょう?」
■ヴァン > 「厨房は使用人の戦場だから、仕方ないさ。
雇い主の子供が入ってきて怪我でもされたら大変だし、道具を弄ってほしくもないし……ってところか」
男も料理の経験はない。どこか思い出すような言い方をした。
メニューの中身は王都から西にある国がメインのようだ。肉、芋、そしてビール。
「学院では狩りの実習なんてのもあるのか。普段リアさんはどんなことを学んでいるんだい?
身分混合クラスとか騎士クラスとか、色々あるらしいが……そこらへん疎くてね」
前途多難そうだな、と仔猫の世話について付け加える。
魔術師や騎士のように、専門性の高いクラスに所属しているふうには見えない。
貴族クラスかな、と想像するが、どんなことを学ぶのか想像がつかない。
「うーん、近いかも。少女を酔わせて自分の部屋に連れ込むようにも見えるだろうな。
あー……知っていても、そう茶化す人はいるだろう。それを君が聞いて、俺への評価が下がるのが嫌だ。
そうだな……君と毛玉ちゃんが穏やかに過ごせるように」
言いながら笑いがこぼれる。気ままな仔猫に振り回される少女の姿がありありと頭に浮かんだ。
■リア > 幼少期のうらみが顔を出して、ヴァンさんまでそんなこと、もうこれだから大人は、とぶつぶつ言うものの、大人の言い分も理解できてしまうので本気でへそを曲げているわけではないから、学校の話になると途端に声が弾む。
「教養科目は家でやっていたことと同じことが多いみたいだったので、今の学校では魔術関連の授業と……あとは剣や弓の実戦的な科目もとっているんですけど……座学や練習の時はともかく、いざ外で実習となると、普段から冒険者ギルドで依頼をこなしているような子も多いから、ついていけないことがほとんどで……そうですね、私は身分混合クラスなのでなおさらそう感じるのかも」
貴族階級のクラスなら、ダンスや楽器や礼儀作法、戦闘と言っても戦略指揮がメインの盤上の戦いの方がメインになって、体を動かすのとはまた話が違ってくるのだろう。
部屋に連れ込む、には意外そうに目を丸くして。
「ええ? ヴァンさんはそんなに素行が悪くていらっしゃる?
それとも、親しき仲だからそんな風に言うのかしら……ふふ、聞いてみたいですね。
酒場の上に住むなんて夢のように楽しそう……毎晩ドラマが生まれるのでは……?」
その日一日はコロシヤと呼ばれていた、毛玉という仮称がそろそろ本名になってしまいそうな仔猫に乾杯する。
「ありがとうございます。ヴァンさんも来年もその先も、日々穏やかでありますように!」
■ヴァン > 「学院というのはいろいろなものを学べるんだな……戦士に魔術師、冒険者のようなことまで。
理論と実践、どちらも疎かにはできない。リアさんは……冒険者になる訳ではないだろう?
俺は中等教育を受けた後は家を出てしまったから、今の知識はほぼ実地で学んだことばかりだ。だから、理論の部分が苦手だ」
目を丸くされると思わず苦笑した。少女は男を買い被りすぎているようだ。
「素行がいいおじさんなら、年下の女の子からの飲みのお誘いは窘めるなり、一対一にはしないようにするもんさ。
見た目は無害に見えたのに、中身はオオカミだったなんて、よくある話。
ないない。毎日飲んで眠るだけさ。下手すると『階段上るだけなんだから酒につきあえ』なんて言われたりもする」
乾杯を済ませると、ソーセージとザワークラウトがやってきた。揚げ物は時間がかかるらしい。
ちびちびとワインを口に含みつつ、小皿にソーセージを運ぶ。
「リアさんは王都にきて長い……訳ではないのかな。実家と、王都に邸宅がある感じ?あれ、でも寮暮らしか」
■リア > 「卒業後は冒険者になる人が多いそうですよ。私もなれるものならなりたいです。
剣士でも魔術師でも何でも良いですけれど、自分の腕一本でどこでもやっていけたら自由だろうなあって。
あら、ヴァンさんは……家出少年だった……?
ヴァンさんもお家が窮屈だったんですか?」
形だけ口をつけて一度グラスを置くと、いただきます、と先にザワークラウトをつまむ。
酸っぱくてきゅっとなりながら喉をとんとんと押さえて。
「最初から何となく嫌だなあって思った人には後々ほんとうにがっかりさせられるけど、最初からこの人は何となく好きだなあと思った人には裏切られたことないんです。
狼は羊の皮をかぶっても匂いがするのかもしれないですね」
にこにこしながら黒猫ワインを一口。ふうっと息をついて。
「うーん猫の歩みのような軽やかな甘さ……私、王都へは来てまだ半年も経たないですよ! 田舎の本宅に長くいて、ここにも一応別宅というか父の仕事場を兼ねた家があって……たまにそちらへも顔を出してはいます。でも、居るのはほとんど寮ですね、親の目が届かないというのはとても素晴らしいことなのです。
ふふー。でも意外です、神殿図書館の司書さんの住まいが酒場の二階って。
神殿関係とは言え司書さんだと、節制とか禁欲とかそんなにうるさくないんですか?
プライベートにはあまり口を出されないのかしら」
■ヴァン > 男の口ぶりは、貴族というものをよく知っている風だった。
「冒険者かぁ……昔ちょっとやってたが、いい仲間や先輩と出会えるか否かが大事な気がする。
あぁ、俺は三男でね。親父が長男の補佐を強制したから家を出たんだ。それで神殿に入って今に至っている。
先月故郷に帰る機会があって、和解できたのは良かったと思っている。色々と思う所はあれど、家族だからな……」
穏やかに笑う。甘口のワインと酸味の強いザワークラウトは、それぞれの強みをよりひきたてているようだ。
「それは……いいことだ。危険を避ける能力は高いにこしたことはない。
あとは……邪な気持ちにさせないことだな。さっき腕を組まれた時、年甲斐もなくどきりとしたからね」
冗談めかして伝えるが、忠告の雰囲気も滲む。その気のない距離感の近さは不幸を呼ぶだろう。
「確か、商人がいいワインを買い付ける時に黒猫が樽に乗って「これは持って行くな」と威嚇したとか。
やはりそうか。王都に長くいれば、あのお店のあたりは夜歩くにはだいぶ勇気がいると知っているからね。
節制・禁欲ってのは聞かないな……。図書館は神殿の組織の中でも本流から外れているからかもしれない。
大学の人達は比較的そういった、プライベートでも真面目な感じかな。
とはいえ、神殿も他の組織と同様、清濁併せ吞む人が出世してる。……俺には関係がないが」
にっと自嘲気味に笑う。司書という仕事は好みだが、神殿に対してはあまり良い印象を持っていないようだ。