2023/01/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
ドラゴン・ジーン > 王都マグメール、夜の平民地区。往来に行き交う人々の層や種族は分厚い。時々に動物の牽く車が横切って行くのが窺えた。年末から年明けの境目周囲は騒ぎ疲れたのか普段よりも静まっている印象であったが、新年を迎えて三日も経つと気持ちを改めているのか人気は賑やかに増えだしている。

何もこの世界に息衝いている人型の種族ばかりではない。人里に紛れ込んでいる野良犬や野良猫。そして都市部に巣食う蟲や鼠などの小動物達も同じ生き物だ。
中には到底に自然の賜物とは言えないようなものも混在している。即ちは人工的に創られたホムンクルスの怪物もまたその一つ。今日は物騒な竜形態から成りを潜めて、此の街中でも良く見かける猫の姿に擬態化して歩いている。

ドラゴン・ジーン > 仰ぎ見る。体長1mと言えばかなり大きい。というか明らかに普通の猫ではない。でもこの街には魔術師の類も多く在住している。被さっている頭巾に拾い物の魔術系統結社、ギルドの徽章を縫い付けてその関係者の様に装って難を凌いでいた。

立位を取って行き来する通行の歩みの影に紛れ込んで、するするとくねる体を曲げて避け回りながら進む。うわ、という顔で観て来る視線も時々に在るが、あくまでも落ち着き払って堂々としているだけでも、無駄に危害を加えては来ない。此処には様々な素性の者達が住んでいるのだから。

ドラゴン・ジーン > …好奇心旺盛な子供や人懐っこいものは大人でも時々に構って来る事も在る。竜を目指しているものとしては若干プライドを傷つけられる感情も在るが、少々媚びを売ってでも生き永らえるというのは重要だ。

「んんぁ…゛あ゛お゛」

粘液を震わせて紡ぐ鳴き声も最近はちょっと様になって来た。姿形が違うというだけで割りと周囲は好意的に接してくれる者も少なくない。人間達が化粧をしたり装いを変えて御洒落をしているのもきっとそういう関係性の良好性を保つ為にも在るのだろう。
上機嫌そうに見せて尻尾を立てて歩いていると、そこに鈴を結わえつけて来る者も居た。ちりんちりんと闊歩する都度に涼やかな音色が立つようになった。隠密性に欠けるがそこに誰かが居る、ということを示すと安心を誘う場合も在る。

ドラゴン・ジーン > 「う゛う゛」

攻撃をされないという以外でも、この姿をしていると利点が在る。例えば飲み街に差し掛かった頃合いに通行路から外れて沢山在る飲み屋の一つに立ち寄ったとする。勿論交換出来る金銭が在る訳ではないので正面から踏み込んで行く訳ではない。ちょこんと今も煌びやかなランプ光が漏れ出るそこに座り込んでいると、時々に店の中から酔っ払いや店員が顔を覗かせる事もある。

「………う゛や」

運と相手の虫の居所が悪いと蹴り付けられるが。その逆である場合は飯に在り付ける場合も在る。他の客の残した残飯や客が持ってる土産物などだ。ポチだのクロだのタマだの好き放題に呼ばれながらも路上に投じられたものにへと、鼻面を突っ込んでむしゃむしゃと食べる。

ドラゴン・ジーン > きちんと弁え、機をはからねばならない。そうしていれば多少は街も目溢しをしてくれる。目新しい遺伝子に目星をつける為の街中の日課の巡邏をしている最中においては、特筆すべき事は無い、全ては見慣れた風景であり、時間の経過毎に多少の変化はあるがそこにある人間模様も大抵は日々のサイクルを繰り返している。

「………」

擬態しても不気味さを抑え切れない頭部を遮る為に被っている赤い頭巾の中で、目の代わりに生えている三本の青白い燐光を持った触角が蠢いた。事件や。珍しい生き物を探して周辺にへと意識を配る。対して日常の風景に溶け込む事に徹している畜生風情にさして関心を向けるものは居ない。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からドラゴン・ジーンさんが去りました。