2023/01/06 のログ
リア > 「冒険者時代もあったんですか?
 良いなあ、私も少しくらい足を引っ張っても許されそうな今のうちに積極的に外に出よう…。

 ご実家とは、卒業後ずうっと疎遠で……? 最近になって和解……ですか?
 家を出るほどいざこざがあっても、時が経つと家族って大切になるものですか?」

受け答えのところどころに平民出の友人にうまく話が伝わらない――あるいは距離を感じるあの感触が無かったし、神官職でなくとも神殿関係者なら貴族階級の者も多いだろうと思っていたから、隣にいる人が、少なくとも生まれ育ちは同じ階級に属していた人だと何となく感じてはいた。
それは初対面の時から。声の掛け方や話し方にもそう感じたのを思い出す。

ヴァンの年齢を聞いてはいないけれど、疎遠だったのは十年とかそういう単位の話なのでは、と思う。
ワインを含んでグラスを置き、取り分けたソーセージを切ると湯気とともにじゅわっとあふれる肉汁。

「若い女に掌の上で弄ばれないように、ヴァンさんこそ気を付けるんですねっ。
 私は罪な女なのです」

自分で言って咽るほど笑ってしまう。

「ふう、ワインの目利きができる猫だったのかしら。一本いただいていって毛玉の前に置いてみようかな。

 出世にご興味無いのなら、お仕事はほどほどにして私とまた遊んでくださいねっ」

ヴァン > 「神殿の僧侶というか、神官が冒険者を兼業していることがあるだろう?あんな感じさ。
そうだな。時々帰ったり手紙を送ることはあったが、親父と話したのは……20年ぶりだ。
なんというか、歳をとって相手の立場がわかってきたというか……老い先短い相手だ、大切にしてやらんと、と思ってね。
親と反目してたのは……ちょうど、リアさんくらいの歳の頃かな」

曖昧な言い方だが、だいたいの年齢が伝わるような表現。その年齢にしては若く見えるのはバンダナのせいか。
ソーセージに付け合わせのカレー粉とケチャップをつけて食べる。
酒場での食べ方は貴族も平民も変わらない。ワインで喉を潤しつつ息をついた。

「あぁ、気を付けるよ。歳をとってのめり込み過ぎるとろくなことにならん」

罪な女、という言葉には笑ってみせる。学院を出る時に聞いた泣き上戸にはならなさそうだ。
また遊んで、という言葉には微かに頷いた。

「こういった食事ならばよろこんで。あとは……」

遊び、といってまじまじと少女を見つめた。博打は少し危うそうだ。若者の遊びがどんなものか、男にはよくわからない。
平民地区や貧民地区を案内するだけでも少女は楽しんでくれそうだ。

リア > 「大切に思えるようになったならヴァンさんのためには良かったんでしょうね。
 でもあんまり期待しすぎてぬか喜びしてまた家出――というか神殿を出たりする前に、一緒にいて普通に楽しめて普通に好きになれるお友達も大事にするんですよ。

 私なんてお友達がいなかったら人生真っ暗闇でしたもん。
 血の繋がりに感謝できる日は果たして来るのでしょうか」

ごく真面目な顔で少なくとも二十歳は上と分かった相手にお説教をする。後半はただのぼやきである。

「ふふふ。何でもほどほどが良いのだと思います、若くてもあまりのめりこみたくはないですもん」

初めて訪れる店にすっかり浮かれていたけれど、何やら思い出しそうになってざくざくと無抵抗のソーセージをフォークで突き刺す。
訊かれないのを幸い、楽しいことに意識を向けて温めている遊びの予定を出していく。

「わあい、学院の近くに、月替わりでテーマの替わるアフタヌーンティーを出しているお店があるんですよ!
 毎月とっても楽しみなので今度―― ? 何ですか?」

ソーセージを口に運び、もぐもぐしながら見返して。

ヴァン > 「司書の仕事をやめる気はないよ。これまでの人生でできた繋がりを軽んじることもしない。
はは……若いうちはそんなもんさ。俺は時間が解決したが、さて……」

君はどうなるか。口調や言葉の選び方から察するに、父親だろう。年頃の娘から父親は煙たがられるときくが、そんな所か。
フォークでソーセージを弄っている姿を横目に、言葉を待つ。

「……おぉ、そんな所があるのか!それは良いな。
長い間、富裕地区のホテルに併設されたレストランにしか行った事がなかったから、楽しみだ。
――あぁ、いや。若い子の、しかも女性がどういう遊びをするのか、わからなくてね。
男だと酒を飲んだり、ダーツやビリヤードをしたり、ギャンブルをしたりとあるんだが」

考えていたことを口にする。あまり悪いことを覚えさせると親から苦情がきそうだな、などとぼんやり考える。
いつの間にか空になったグラスに手酌でデキャンタからワインを注ぎ、届いた揚げ物をナイフとフォークで丁寧に切り分ける。

リア > 「……良いですね、ヴァンさんは。振り返ってみら正しい道のりだった、ということなのかな」

逃げたいばかりの自分とは離れたところにいるように思えて、眩しいものを見たような顔になる。
今はまだ自分がどこに辿り着くのかわからない。考えすぎると暗くなりそうなので頭を振って。

「パティシエさんが動物好きなのか、いつもとっても可愛い動物の形のお菓子が必ずひとつはあるんです。
 今月は雪だるまのチョコレートも可愛かったし……。

 ダーツもビリヤードもやったことないなあ、出来たら格好いいですよね。
 ギャンブルってカジノですか? 仲間内でポーカーとかですか? 大々的にお金を賭けるのはさすがに叱られますけど、次のティータイムの奢りーとかなら受けて立ちましょうとも」

賭けにおける座右の銘は「勝つまでやれば負けない」、である。
単純に負けず嫌いでしつこいだけなのだが、妙に自信ありげに胸を張ってみせる。

かくして日の落ちる前から始まった夕餉はどこまで更けていくのか――。

ヴァン > 「どうかな。今となっても正しいのかはわからない」

ずっとそんなものかもしれない。

「可愛い系か……俺のようなおじさんが行って大丈夫なのだろうか。
あぁ、その程度なら大丈夫かな。じゃあ、何で勝負しようか」

男も上手い訳ではないが、それなりにこなしてはいる。
いつしか夜も更けていく――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にヴェルニールさんが現れました。
ヴェルニール > 盛り場の近くの一角。
酒場やカジノ、連れ込み宿などが雑多に犇めき、冬の冴えわたる夜に明かりを煌々と灯すような区域。
宵闇が落ちて間もない、早めの時間帯では通りも今はまだ人通りが増えてくる頃。
酔客に絡まれるといった事もなく、ふらりと散歩でもするような足取りで通りを歩いてくる。
透け感のある裾が翻り、街灯の明かりで水色や緑色、薄灰青色のグラデーションが浮かび上がり、幾重にもなった影と共に揺れて。

酒場へでも――と足を向けかけ、通りの隅で店開きしている小振りな花屋にふと視線が
留まる。
ワゴンで移動販売する形の、出店や屋台程度の規模のものだが、夜の街ならばそれなりに需要はあるのかも知れない。
鮮やかな花々が水差しで咲き誇るのに目を細めて立ち止まり。
ふと、置かれた鉢のひとつ。
毒々しいピンク色の五弁の花が茎から頭を擡げるように揺れている。

「……まぁ、可愛らしい仔。」

指を近づければ、どこに内包していたのか、ぱくり、と口を開けて指先に吸い付く花。
所謂血吸い花の類なのだろう、小ぶりな牙を突き立てては指先から血を啜っていく。
勝手に店主の許可なく餌をやるのも如何なものだが。
止められないのを良いことに、戯れに花を撫でて。

ヴェルニール > よく見れば、他にも妙な花が混在する店先。
勧められはしたものの、困ったように首を傾けて。

「あたくし、決まった居を構えておりませんから、鉢のものは…」

飼えるかが疑わしい。
と、断りかけてふと。何かを思いついたように肩先から髪を滑らせ、顔を起こして。

「…えぇ。あそこなら置けるかしら。」

思い立って頷き、購入する事にしたらしい。
小脇に抱えて、来た道を戻るように足を向け、富裕地区の方面へと歩き出し――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からヴェルニールさんが去りました。