2022/10/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からネメシスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 大通り沿いからすこし離れたところにある公園は、朝早くから結構な賑やかさだった。
家族連れや、子どもたちだけのグループがあちこちに陣取っていて、空いているベンチを探すのも一苦労。
あちこちに小さな屋台が出ているおかげで公園の中を歩きまわる事そのものは苦でもなく、散歩がてら、なにかおいしそうなものが売っているかと眺めて歩く。

「ん……ぅ」

しばらくうろうろし続けて、公園の奥まったところまでやってきてから、ようやく腰を落ち着ける事ができた。
木陰のベンチに身を預けながら、途中で買った氷飴にかぶりつく。寒くなる前に、まだ暖かさが残っているうちにと買ってみたけれど、日陰にいると想像していたより涼しく感じて、思わず身震いが走る。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にヨハンさんが現れました。
ヨハン > 公園を見渡した、装備を身に付けてはいないが冒険者、あるいは旅人らしい青年が近づいてくる。
黒髪をそよ風に少しだけ動かされる程度の短めの髪型。
そして深い海を思わせるような青い瞳を向けて、少し軽薄気味ながらも
おそらくは開いているであろうベンチを見て安堵の笑みを浮かべていた。

「失礼、お嬢さん。隣、もらっていいかな?」

そういう彼の手には、近くの屋台から買っただろう弁当箱があった。
昼食を摂る場所を探して、彼女のようにこの場所を見つけたのだろう。

ミンティ > しゃく、しゃく、と氷飴をすこしずつ齧るうちに、身体が芯から冷えてくる。
夏の盛りのころなら、この冷たさも気持ちがいいものだったかもしれない。けれど、今の季節、木陰の下で食べるには向いていなかったかもしれない。
小さな身震いを走らせながら、日の当たる場所にでも移動しようかと小首をかしげていたところ。
じっと下を向いていたせいで気がつかなかった、人の接近に、びくっと肩を震わせた。

「ぇ。……ぁ、す、……すみ、…ません。…どうぞ……」

いつもなら邪魔にならないように端の方に座るけれど、さすがにここまでくる人もすくないだろうからと、今日は真ん中寄りに腰を下ろしていた。
自分が邪魔になっていた事に気がつくと、ぺこぺこと頭を下げながら、相手に届くかどうかの小声で謝罪をして、できるだけ端の方へと身体を寄せる。

ヨハン > 自身の声に驚いたのか、体を震わせる女性の姿に困った笑みを浮かべて。
僅かに聞こえた声はおそらく、頭を下げていることから謝罪の言葉なのだろう。

「驚かせてしまったようですまないね。じゃあお隣、失礼するよ」

少し頬をポリポリと掻いた後、静かに彼女の隣に腰を落ち着かせる。
紺色と黒の服に身を包んだ、童顔の青年は自身の膝にその弁当箱を置いて開く。
中にはサンドウィッチが詰まっており、袋から水筒を取り出して隣へと置く。

「……お嬢さん、大丈夫ですか?お茶飲みます?」

若干、未だに震える彼女に、怖さからかと思ったがさすがにそれはなさそうだと思って声を掛ける。
水筒のキャップがカップになっているタイプで、そこに若干湯気が立つ紅茶を注いで、それを差し出しながら問う。

ミンティ > 口の中が甘さで解れていなかったら、もしかしたら声すら出せなかったかもしれない。
相手に威圧されたと思っているわけではなく、単純に口下手なだけ、なのだけれど。声が伝わりづらい分、頭を下げる頻度が余計に増して。

「……はい」

初対面の人を相手にすると、どう会話をしていいものかもわからなくて、ぎくしゃくしてしまう。
自然と視線も手元に落ちがちになって、まだ半分も残ってる氷飴をどうしようかと悩み。
そのままじっと同じ姿勢で固まっていたら、ふたたび隣から声がかかった。
きょと、と目を丸くしながらそちらを振り向いてみると、湯気の立つ紅茶が差し出されていて。

「あ…ええと、その…、……いえ、あ、ええと…じゃあ、いただきます。
 ……ありがとう…ございます」

知らない人から差し出された飲み物に最初こそ躊躇したものの、温かそうな湯気と、漂ってくる紅茶の香りの誘惑に負けた。
こんな明るい時間だし、親切そうな雰囲気でもあるし、おかしな事にはならないだろうと。氷飴の棒を指に挟みながら、両手でキャップを受け取ろうとする。
その間も、あいかわらず、ぼそぼそとした口調で受け答えして。

ヨハン > なんというか、警戒心はあるのだろうが、よそよそしいというか。
初対面の異性相手なら当然なんだろう。内心に、この国で異性がどういうものかを知らないというのもあるだろうが。
やはり若干、ここまで警戒されているのは少し不思議に思った。
だがまぁ、だからといって邪険にされるというほどでもなさそうだし。
ならば気にしても仕方がないだろう。

「うぅん、どういたしまして。……さて、いただきます」

こちらも弁当箱の中のサンドウィッチを掴んで食べ始める。
隣では、恐る恐るといったふうに紅茶を飲む彼女の姿があるのだろうか。
時たま目線をちらりとそちらへと移して。

「湯気こそ立ってるけど、そんなに熱くないと思う。熱いのが好きだったらゴメンね?」

にこり、と微笑みを向けてそう告げて。
飲んでみれば、まぁ普通の紅茶といったところだろう。
不味くはないし美味しすぎるわけでもない、温かさとしては猫舌の人がフーフーして飲める程度。

「その棒って、あの屋台の飴の奴?もしかして、震えてたのは氷飴を舐めたせい?」

彼女の指に挟んでいる棒を見て、そういえば歩いていて見かけた屋台の中に
彼女が持っている棒とおそらく同じもの。
そしてこの木陰で震えている理由がもし自分じゃないとすれば、寒いものを食べたせいかと考える。

ミンティ > 極端に猫舌だったりはしないけれど、念のため、ふー、ふーと息をふきかけてから、おそるおそる紅茶に口をつける。
冷たさで粘膜が麻痺しているから、最初の一口ではよくわからなかったけれど、二口、三口と飲んでいる間に、身体がすこしずつ温まってきて。
寒さに縮こまっていた分の強張りが抜けていくと、ほっと息をこぼす。
人見知りをする性格のせいで、あいかわらずそわそわとはしていたけれど。

「……ありがとうございます。おかげで…温まりました」

食事をはじめる男性の声に、こくんと頷いて。
舌を火傷したりする心配もなさそうだとわかったから、残る紅茶を飲み干したあと、器代わりの蓋を、自分と相手の間に静かに置いた。
それからあらためて、氷飴の棒を片手で持ち直し。
これを食べたらまた身体が冷えるだろうとはわかっているけれど、食べ物を粗末にもできない。
まだ口の中が温まっているうちにと、小さくかぶりついて。

「っ、…ん……、はい。そうです、屋台…で。
 最近、まだちょっと暖かいから…、いいかな……と、思ったのですが。
 …影に入ってると、想像してたより…冷えて、しまって」

不意に話題を振られると、ぴくりと身震いをしてから動きを止める。
どうしても返答に間を作ってしまいがちになるから、その間、無視をしているわけではないと理解してもらうために、こくこくと首肯を繰り返し。
口下手なりに返答が浮かんでから、小さな声で返答していく。
透明な氷菓子の中には、果物の実が封じられていて。ようやくそこまで食べ進めると、今度は口の中に甘酸っぱさが広がる。
その酸味に肩をすくめたあと、静かに息を吐き出して。

ヨハン > 少しずつ紅茶を飲んで、溜息を吐いた彼女を見て安心して。
少なくとも、少しはこれで警戒は解いてくれたかなと思ってサンドウィッチをかじる。

「構わないよ。困ったときはお互い様、でしょ?」

音を立てずに置かれたカップに、新しく紅茶を注ぐ。
ハンカチを取り出し、しっかりと彼女の口を付けた部分を拭いてから自身も飲む。
彼もまたその紅茶で口の中のサンドウィッチを流し込んで、喉を鳴らした。

「日陰はこの季節だともうかなり涼しいからねぇ。
氷飴との相性はあんまりよくはないけど、まだ温かいと思うのは仕方ないよ」

微笑みを絶やさずに、彼女が言葉の間を作っても、しっかりと言葉を待つ。
変に口を途中で挟まずに、しっかりと言い終わったと判断してから。
ゆっくりと喋るのは別にいい。そういう人だっているし、なんとなく彼女の人となりはわかってきた。

「こうして知り合えたわけだし、キミの名前を教えてくれるかな?
僕はヨハン、この国には最近来たばかりで知り合いが少ないんだ」

ミンティ > 氷の甘さに果物の酸味が加わると、きゅっと身が引き締まるような感覚。
酸っぱすぎて食べられないほどでもなかったから、味に慣れてきたら、また元のペースで食べ始めて。

「……そう、ですね。…いただいた親切は、お返しできたらいいのですが…」

非力な自分が誰かの役に立てるような機会なんて滅多にないから、相手の言葉を肝に銘じるように、ゆっくりと頷き。
返したカップの飲み口をきちんと拭く様子を見て、きょと、と目を丸くしたあと。
それも気づかっての行動だろうと理解すると、今度は無言で頭を下げた。

「本格的に寒くなる前に…と、思ったのですが。
 もう、……秋、ですからね。…次から、つまみ食いは温かいものにします」

秋の味覚を使った焼き菓子なんかも、出回っているころだろう。
こちらからでは結構遠くなるけれど、広場のあたりに集まっている屋台を眺めて。
そんな話をしている間に氷飴も食べ終えて、残った棒を捨てようと、近くのゴミ箱を探して、まわりを見回した。
ちょうどそのころ、遠くの方からお昼の鐘が響いてきて。

「…あ。……はい、ええと、わたしは…ミンティ、といいます。
 その、ここからすこし離れたところで、鑑定のお店を、任されています。
 もし……なにか、必要になる事がありましたら、その時は…よろしくお願い、します」

新規顧客を開拓する機会は貴重だからと、商人の先輩方から散々言い聞かされてきた。
それでも結局つっかえながらではあったけれど、どうにか自己紹介を返し。
腰を上げて、今度は深く一礼をする。

「……あの、そろそろ…受けていた依頼の時間なので…わたしは、これで。
 あ、えと、お茶……ありがとうございました」

もし紅茶を差し出してもらえなかったら、まだ氷飴相手にもたもた苦戦していた事だろう。
幸い、仕事の時間がくるまでに食べ終えられた事にほっとしつつ、その感謝を伝えてから、踵を返す。
お昼の鐘ちょうどの約束ではないから、走る必要もないのだけれど、自分の歩幅の小ささを考えて早足になった。
途中で振り返り、もう一度頭を下げてから、公園の出口へと姿を消して…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からヨハンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にラミラさんが現れました。
ラミラ > 平民地区にある酒場。そのステージ上でリズミカルな靴音が鳴る。
小柄な踊り子はその肢体を揺らし、躍動させ、舞踊を披露する。
今日も今日とて客を寄せ、酒場の稼ぎに貢献する。

とは言え、踊り子自身の稼ぎ、ついでに食事も目的であるからして。
たまにはセクシャルな振り付けも披露し、(主に男の)客からの喝采とおひねりも受け取っているだろう。

(いー感じに茹ってる人もいそうですけどネー)

ステージ上からは席に座る客もよく見える。
小柄な体とは言え豊かな体つき。欲情に濁った視線を向けてくる者も少なくない。
まぁ、店主が睨みを効かせてはいるようだが。踊り子には触れないでください、的な。

ま、あんまり触らないで声かけないでもつまらない。
とりあえず食べちゃえる人とかいないかな、と踊りながら視線を巡らせる。
目があって気が向いたら夢幻の世界へ招待してあげよう。
えっちな踊りで心地よい夢を見せてあげるのだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクララさんが現れました。
クララ > 酒場に足を運ぶ理由は、基本的に昼か夜の食事だが、
特に夜の場合は踊りの勉強という側面もあり。
自分以外の踊り子の踊りにはインスピレーションを刺激されるし、
なるほどと感心させられることもしばしば。

今日足を運んだのは、初めて入る店で。
外から中を覗き込んだ時、ステージがあるのを確認して入った。
食事は控えめにして、軽いアルコールを場所代代わりに注文し、
待つこと暫し──始まった踊り。
それは自分の知らないジャンルの、どこか本能に訴えかけてくるものだった。
どこか、情欲を掻き立てるような……

女だという自認はあるが、体には男性の部分をそなえているからだろう。
その踊りを眺めていると、気付かないうちに体温が上昇し、
体の芯がむずむずしてくる。
「そういう目」で見てはいけないと思って頭を振るのだが、
気付けば視線はステージ上で舞う小柄な少女に吸い寄せられていて。

ラミラ > ふん、ふん♪と微かにリズムを取りながら舞踊を披露する。
かつ、かつ、という踵を鳴らす音。しゃん、しゃんと鳴るアンクレットの音。
少し伏目がちの視線を客席に振りまきながら、豊かな身体をくねらせて。

ふと。目に留まる。

長身の女性がこちらを見ていた。席には酒のジョッキが一つ。
頬はわずかに紅潮しているような。視線はどこか潤んでいるような。

(美味しそうですねぇ♪)

しかし踊り子が思ったのはそれだけ。
ターゲットを決めると少しだけアピールを変える。
ゆらりと流れた細い手指が一瞬胸元を隠し、次に現れた際にはふるんと揺れる。
たん、たんとリズミカルにステップを踏めば、ゆら、ゆらとセクシャルに腰を振る。
身体に視線を惹きながら、女性が踊り子と目が合えば、艶やかな流し目を送る。
そうして自らの舞踊へもっと夢中にさせていく。
視線を虜にし、思考を舞踊だけに染め上げて―――。

クララ > あまり突き詰めて考えたことはないが、相手の性別がなんにせよ、
踊りとはその本能をかきたて刺激するものという考え方は知っている。
そういう意味では、まさに少女が今目にしている踊りが、
本能に訴えかける踊りと言えるのかもしれない。

そんな真面目な思考で不純な思考を、追い出そうとするが、
どれほど効果があったかは定かではない。
アルコールで思考を少し鈍らせたほうがいいか、
と考えて木のジョッキの中の果実酒を口に含む。
もともとそんなにアルコールに強いほうではないので、
すぐに酒精が血中をめぐる感覚が肌の下に生じる。

……あまり、良策ではなかったかもしれない。
ステージ上の踊り子のせいで上がった体温が増幅された感しかない。
精神の九割以上女だという自覚はあるが、肉体に関してはよくわからなくなってくる…
視線が、踊りに合わせて跳ねる彼女の胸元に吸い寄せられてしまうのだから。
意識が研ぎ澄まされ、彼女の舞踏と、彼女の周囲しか見えなくなっていき。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からクララさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からラミラさんが去りました。
ご案内:「宿屋 平民地区」にネメシスさんが現れました。
ネメシス > 平民地区内に存在するとある宿屋。
所有している貴族が失脚したことで聖バルバロ騎士団の所有となった場所である。

と言っても表向きは特にこれと言った特徴はない。
聖バルバロ騎士団の存在を表に出せば敬遠する者もいると知っているからだ。
だが、経営権は確かに騎士団の物となっている。

宿屋の従業員たちが使う部屋で退屈そうにネメシスが茶を飲んでいる。
現在のこの宿屋はいわゆる泥棒宿に近い状態。
めぼしい客が姿を現したら秘密裏にネメシスの元へ連絡が行くようになっているのだ。

ネメシス > 基本的にこれと言ったお客が来ない時は普通の宿として対応する。
だが、特殊な力を持った相手や見目麗しい宿泊客が訪れた時は
飲み物に眠り薬、媚薬などを用いてネメシスに献上する。

といった具合だが今日はこれといった訪問客はまだ現れない。

ネメシスはお茶を飲み干すと、部屋の中で欠伸をしていた。

ご案内:「宿屋 平民地区」にソラムさんが現れました。
ソラム > 「今日の宿は…ここにしようかな……」

 黒色のコンバットスーツとコンバットブーツ一式の上から群青色のロングコートを羽織った小柄な少女が、宿屋の前で足を止める。

 宿屋に入る前に少女はロングコートに付属してあったフードを被り、宿屋の中へと入るために扉を開く。

「え〜っと……。受付…受付は…」

 宿屋に入った少女は中を見回し、チェックインを済ませるために受付を探そうと、宿内を見回す。
 見回した際にフードからちょくちょく白銀の前髪がちろちろと出ていたが、少女は気づくことなく、見つけた受付へと足を進める。

ネメシス > 『はいはい、ここに書いて下さいね。』

カウンターから身を乗り出した従業員。
元から宿に居た人間で、人当たりの良さが顔に滲み出ている。
来客が記帳をしますと先に宿泊代金を請求する。
金額は相場より少し安い程度。
近隣の宿に泊まるよりはいいと思わせる値段。

記帳と支払いを済ませると、鍵が手渡されるだろう。

ソラム > 「…へぇ……意外と相場より安め……」

 来客用の紙へ記帳を済ませた少女は、請求された代金を聞くと意外そうな反応を示す。

「あ、ありがとうございます…」

 支払いを済ませた少女は、カウンターで担当してくれた従業員から鍵を受け取ると、その鍵に対応したお部屋と向かうためにあるき始める――――。

 お部屋に向かう前に従業員へお辞儀してから部屋へと向かう癖が抜けない少女である。

ネメシス > 今日は宿泊客が少ない日だった。
なので今しがたチェックインを済ませた客の情報も報告に上がる。

とはいえ当のネメシス本人はなかなかの気まぐれである。
どうやら今回は薬を盛る指示などは出されなかった。

ちなみに来客に用意された部屋は質素な一人用。
木製の机、ベッド、そしてソファに狭いながら浴室。
広さも一人で使うには十分といった広さ。
ただ、家具も部屋全体も至る所で古さを感じさせる。

そして、この宿は夕食の際は一階の食堂兼酒場で食事をとることもできるし、
部屋に持ち込んで食べることもできる。

ネメシスはと言うと、食堂兼酒場の一席に移り食事を始めることに。
他にも来客が姿を現し、なかなかににぎやかになっていく。

ソラム > 「服…変えて良かったかなぁ……」

 2階から1階へと繋がっている階段を降りながら、少女は一人呟く。
 チェックインの際に身に着けていた冒険者用装備一式から、散策するために持ち込んでいた白色と金色のトップスに純白のゴシックへと変えてきたのだ。

 もちろん理由はない。単純に酒場だし、脅威はないと踏んだ少女の判断だった。……リラックスしたかったという点もあるが、その点は置いておこう。

「……っと、席はあそこでいいかな…」

 白銀の髪を晒したまま1階へとやってきた少女は、血のように赤い瞳でぐるりと見回すと、開いている席に目星をつけてから食事を受け取り、その席へと足を進める。

「よいしょ……と」

 その席は、ネメシスが座っている席から程よく近い場所であるが、いわゆる偶然が重なり合った結果である。
 机の上に食事を置くと、懐から黒いファイルを取り出し、自身の近くへと置き、食事を堪能し始める。