2021/08/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/闇市」にフォティアさんが現れました。
■フォティア > 品ぞろえを眺めつつ、本日は貸本屋も看板を下ろしての休日。
買物だけではなく、ちょっとした買い食いや噂の拾い集めも目的だ。
「────…… 珍しい本、とか……どこかの露店に出てないかな… 」
銀の髪に黒いワンピースを身に着けた少女が、小さく唸るような声を漏らすのは、足を向ける方向に悩むのか。
遠くからは喧嘩めいた喧騒。
ピークを終えた屋台から、軽食を割り引く旨の、呼び込みの声。
小さな子供たちが、客の合間を抜けるように蛇行して駆けっこをはじめ、買い物中の母親が怒鳴っている。
そんな微笑ましい光景をしばし眺め。
「 いつもと違う場所に、いってみるべき……かも 。 闇市、とか 」
やがて、一つ頷くと。
浮浪者、顔を隠した買い物客、冒険者、貴族のお忍び──やや薄暗いような客層の通りへと、足を向けた。
少し緊張気味に、やや薄暗いような通りへと、おそるおそる歩き出す。
滅多に足を踏み入れない地域、それでも明るい時間帯なら危険もないだろうと。
冒険気分も、あったのかもしれない。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/闇市」にブルートさんが現れました。
■ブルート > 人通りの多い闇市。
そこから少し外れたら、活気という言葉からは縁遠い雰囲気の店が並ぶ。
薄暗い通りには幾つも、より暗い路地への抜け道が散見された。
(ああ……気持ちよかったぁ……)
ひと仕事を終えて浮足立ったまま、闇の中から薄暗い通りへ身を躍らせた。
人通りがすぐそこにあるような闇市のそばで、そんなことが行われているなんて。
比較的治安の良い場所で、あんなことが起こっているなんて。
そういう影が、女が仕事をする場所。
「――――あっ、」
そしてそういう時に警戒するのは体格の良い相手だ。
自分よりも背の低い少女の存在に気づかないまま路地から通りに抜け出したせいで、
闇市のただなかで、少女にぶつかりに行く形になる――こういう場所にはあまりいないようなタイプの女が、だ。
■フォティア > 雑然とした路上の市場、屋台のような上等なモノよりも地面に布一枚。またはそのままという店も数なくはない。
ゆえに、視点は自然と下を向きがち。
見るからに怪しげな盗品や、ガラクタ。 古びた玩具やアクセサリー。
ただの石ころにしか見えないものは、何処からかの遺構からの発掘品だとか。
目当ての商品でなくとも、ついつい物珍しさに足を止めがち。
「 ………これ、 何かな。 お店に使えるもの、あれば…… 」
なかば中腰で、拡げられた商品を見遣り、思案顔。
きっと、店主にはカモに見えただろうけれど、こちらも店を構える店主、品を見る目は夢見がちより現実的。
なのに、現実の突発事にはすぐには対応できなかった。
「 ──── っ? ……え? 」
視界外からの衝撃。
小柄な躰は、そのままあえなく路上に転がることになった。
中腰という不安定な姿勢も仇になった。
■ブルート > 「あっ…ご、ごめんなさい…!」
ぶつかっておいて、女のほうは体幹を崩さないどころか、持っている杖を地面についてすらいない。
転がした形になった少女を眼鏡の奥の瞳がつぶさに観察した。
(こども…ちょっととんがった耳……あんまりこのあたりに来るタイプの子じゃなさそう…だけど…)
そのまま杖を小脇に。
長い質量はわずかでも地面にふれることはない。
店主の舌打ちを聞きながらしゃがみこみ、片手をさしのべた。
微笑むと少し困ったような形になるのだが相手の警戒心を解きほぐそうと試みる。
「い、いたかったですよね…あ、あたし、注意不足で……つ、つ、つかまって? おこしてあげる」
顔を横に向け、店主には詫びておく。店先での悶着だ。
あとで、何か買う必要があるかもしれない。
■フォティア > ぺたりと、膝を折りたたむようにして、左右に投げ出し。 路上にアヒル座り。
そのままややきょとんとした表情になってしまう。
何しろぶつかったのは、さほど体格も違わなさそうな──というと、やや下駄を履かせ過ぎだろうか──女性で。
もちろん戦働きをするような身ではないしかもインドア派なのだから、普通よりもウェイト不足かもしれないが、こうも簡単にころころ状態にされるというのは、気恥ずかしい。
「 だ、だいじょぶ、です。 商品見るのに、夢中になってた、ので 」
周囲に対して散漫になっていたことは否めない。
ゆえに、少し赤くなり、さらに小さくなって、差し出された手は素直に借りることにした。
「 ──── … ありがとぅ 。 お急ぎだったん、でしょ? 」
立ち上がると、少し、ふにゃりと緩んだ笑み。
みっともないところを見せたという気まずさもあってか。
お店の品物を傷つけたようなことはなさそうで、胸をなでおろす。
■ブルート > 少女の体躯を、片腕で軽々と引き起こす。
目立った傷もないことを確かめると、ほっと息を吐いた。
「…………う、ううん。 へ、へんなところに迷い込んじゃって。
よ、よ、よく来てるん、だけど……」
―――――目ざといな。
足早だったことに言及されてしまうと、少しだけ反応が遅れてしまった。
しかしそのやり取りで確信したこともある。
貧民地区に比べれば平和という言葉の似合うこの区画ながら、
スリやひったくりの類も少なくない闇の市、注意が薄いということは。
「ここ……あんまり来ないひと、だよね……?
……学生さん……? それとも、迷い込んじゃった、とか……」
店先に彼女をいざないながら、さっき、見ていたという商品に自分も視線をうつした。
指先で商品を確かめながら、どれを見ていたのか視線で問いかける。
■フォティア > 易々と引き起こされて、さらに緑眼は丸くなる。
この王都のことだから、見掛け通りではない住人というのはさして少なくもない。
ゆえに、そういった人の一人だろうと思うのだが──
「 そう、なんですね。
──……ぇ、と…。 だいじょぶ、後ろから、誰か、来てる様子、ないです 」
立ち上がりついでに、ひょこと首を少し伸ばし、彼女の後ろへと視線を向けて、表情を緩める。
変なところに迷い込み、誰かにつけ回されでもしたのだろうという、至極単純な推測。
やはり少し警戒は薄いというか、足りなさそうな物慣れなさをにじませながら、それに自覚はあるのか、少し気恥ずかしそうに頷いた。
「 ……ぁ。 わかります…?
この辺りは初めてです。 話には聞いていたんです、けれど…
── ぁ、面白い掘り出し物があるかもしれないっていう、噂を聞いて。
うちのお店に、よさそうなもの…ないか、って 」
迷い、には首を横に振って否定。 自身から足を踏み入れた。
とはいえ、店に並んでいるのは古本でも何でもなく。 古びた水差しや、オルゴール。
視線の問いかけに、おずおずと指をさしたのは小さな手風琴。
はにかんだ笑みと共に。
「子供たちが、喜ぶかな…って」
■ブルート > 目を幾度か瞬かせた。
彼女はきっと、追いかけ回されたことがあったのかもしれない――そう考えると、
微笑みを深めてありがとう、とお礼を述べておいた。とても良い子だ。
「そ、そう、だね……あんまり、表に並ばないようなものが、あるかなぁ…?」
指差された楽器を覗き込む。弾くことはできないが、それがどういうものかはわかった。
楽団が持っている、空気をどうこうして音を出す鍵盤楽器。
「おみせ……こどもがくるの? お、おもちゃやさん、とか……?
それとも、お料理……お菓子やさん、だったり……?」
店主と話をして、その手風琴の音が出るか。
実演をしてもらった。機能には問題ないようだ。
であれば貨幣を"多めに"渡す。商品代金と――口止め料。
「…………ん。 じゃあ、さっき、ぶつかっちゃった分。
もってあげる。ちいさめだけど……ちょっと、重たいからね」
これでお詫び――と、包装もリボンもなく、手風琴を受け取って、抱えた。
■フォティア > 「 珍しいものも、あるけれど… 値段、安かったり… 相場がぐちゃぐちゃで、面白くて 」
ついつい、目が吸い寄せられて、露店に視線が吸い込まれがちな理由を口にする。
古びた楽器、笛やハーモニカと違って、口をふさがない、それがいい。
「 ──…… えと。 貸本屋、営んでます。
子供たちに、読み聞かせをしたり。
…簡単な、文字を教えたり。
ただ、集中力、切れちゃう子供、少なくないので 」
子供たちが、体力にあかせて騒がぬように。
少しでも読み聞かせが退屈にならないように。
気を引く道具の一つになるかという、単純な思考。
練習すれば、童話を臨場感たっぷりに音楽付きで語れるかもしれない。
本を読むのに飽いた子供たちに、童曲を弾いてあげられるかも。
そんなたわいもない気持ちからだったので。
ゆえに。
「 えっ!? あ……あの。 おわびって 。
ぶつかっただけです。 けが。 してないです。 ぜんぜんへいきです」
思わず早口に、まくしたてた。
■ブルート > 「かしほんや……はぁぁ、すごい。
あたし、あんまり、ほ、本は読まないし……あんまり、こっちの字も、まだ読みづらいから……
ちっちゃいのに先生さんみたいだね、えっと……」
なまえを聞いていないことに気づいて、少し言葉に詰まった。
手風琴を抱えたまま、まくしたてられても。
「ふふ……そういうおはなしをきいたら。
あ、あたし、これ、あなたに使ってほしくなっちゃった、からね。
ふるいものには……たぶん、まえに使ってたひとの思い出が、たくさん詰まってて。
これから、あなたが、新しい思い出を、ここに詰めてくの……音、でないけど」
蛇腹を膨らませたりするが、心得がないので音がでない。
すこし困ったふうに笑うものの――
こちらも、譲るつもりもなかった。なぜなら、口止め料を払っているから。
「それに……こういうところでは、ね……お詫びはお金、なの。
だから……きをつけて、ね? こわい貴族や、そういうひとに、因縁をつけられないようにね…
………あ、そうだ。 あなたに、ぴったりのところが、あるよ、こっち」
そういうと――闇市の奥のほうに足を向け、肩越しに振り向いて、いざなった。
色んな店が、それこそ、無秩序に並ぶ不思議な場所の、奥へ。
■フォティア > 「先生というより、主な御客は、そのお母さんたち、です。
うちのお店が、井戸端会議場…で。
文字、読める子が増えると、また本、借りてもらえるでしょ?
将来、色々お勉強必要になるかも。
貸本、安いから。 思い出してもらえるように…
………先行投資 」
最後は、ちょっぴり悪戯に、付け加えた。
まだ少し、おろおろと惑いながら、慌てながら、それでも言葉を詰まらせる様子に思い至り
「 … フォティア、と、いいます 」
と、小さく細い声で応えた。
「 ──── そんな、カッコいいものに、なるかどうか。」
子供たち、乱暴、ですし…でも。
そう、できたら、いいですね。
… たくさん、練習しないと… 」
──もしも、音律の調整がいるようなら、ご近所の古道具屋か、楽器店で見てもらうのもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、この界隈の常識に少し考えこみ、ぎこちなく頷いた。
前を誘うように歩く女性を、無意識に追いかけるようにして、少し足を速め。
「 ──……き、気をつけます。 因縁は、怖いですし。
……お店? え。 ほんと、ですか? 」
ぱ、と明るくなる表情。
やはり、合うお店といわれれば気になってしまうのは、買い物に来た娘としては当然のこと。
この地域に詳しいらしい人の案内に素直に、小刻みな歩調でついていく。
■ブルート > 目を丸くして、彼女の講釈に耳を傾ける。
じぶんでは、そう考えられもしないことだ。
商売をすること、その工夫、それを理解している地頭の良さ。
はぁぁ、と少し間の抜けた吐息を零しながら…
とにかく利発で、商人の側面もある…それでも優しい少女なのはわかった。
「おおきいお店に、なりそう……
……フォティア。よ、よ、よろしく……あたしは、ブルート。
ちがう国からきたばっかりの……たびびと、です。
じゃあ……これも、えっとぉ――そう、だね……
先行投資、かな……?」
はにかむように笑った。
とっても素敵な女の子と知り合いになれたような気がした。
「………こっち」
少し間を置いてから、柔らかく微笑んで。
時折店先を冷やかしながら、奥へ奥へ……
この女は "ぴったりなお店" とは、一言も言っていない。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/闇市」からブルートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/闇市」からフォティアさんが去りました。