2021/01/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエレイさんが現れました。
エレイ > 夜。
この時間帯でも人通りの絶えない表通りを、悠然と大股で歩く金髪の男が一人。
片手に肉と野菜の串焼きを携え、ぱくりとそれを一口頬張ってはモシャモシャと咀嚼しつつ。

やがて中央広場までたどり着けば、適当に周囲を見渡した後片隅のベンチにどっこいせ、とか
言いながら腰を下ろし、脚を組みつつ背もたれにぐでりと身を預け。

「──ふーぅ……さて、と……今夜の宿どうしょうかねぇ」

中空を眺めながら、眉を下げた表情でぽつりとそんな事を呟く。
普段利用している宿が今夜は満室ということで、男は現在宿無しの状態だった。

エレイ > 実際問題としては、宿など選ばなければどこかしら確保はできる。
──が、そんな当然のことをしても面白くない。
そんな理由で、男は宿を決めかねているのだった。

「ンン……誰か親切な人が一晩の宿を提供してくれたりとか、そーいうのがあると良いのだが……」

そんな都合の良い展開とかないかなあ、なんてのたまいつつ、串焼きを食べ進めてゆき。
やがて食べ終えれば、残った串を口に咥えてプラプラさせ始めながら、改めてゆるりと周囲に視線を巡らせてみて。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にライカさんが現れました。
ライカ > 夜なのに人通りの絶えないここなら、今晩のご飯が確保できるかもしれないと人目を気にしつつ足早に歩く。
親切な人のおかげで以前より飢えることはなくなったものの自分でご飯を見つけなければならないのは変わらない。
以前と違っていざとなれば自分を使って手に入れることを覚えた。でもあまりしたくないと言ったところ。
ぐぅ、となるお腹をさすりながら立ち止まり周りを見渡した。
どこか隙のある屋台でもないか、と。

エレイ > 「──ン……」

ふと男が視界の端に捉えたのは、薄汚れた上着を纏った小柄な人影。
腹を擦りながら周囲の屋台を見渡すその姿に、目的が丸わかりで思わず小さく笑みを漏らしてしまう。
こうした光景は珍しくもないが、まあわざわざ夜更けに騒ぎを起こさせるのもなんだろう。
そんな風に考えつつ、男はおもむろに立ち上がるとそちらへと近寄ってゆき。

「──よう嬢ちゃんコンバンハ。キョロキョロしていたがなにかお探しかね?」

彼女の眼前にぬっと躍り出ると、ゆるい笑みを浮かべながら馴れ馴れしく声を掛けた。

ライカ > 「……っ!」

目の前に現れた男に驚き毛が逆立ち尻尾がパーカーの中で揺れる。声を出さなかっただけ偉いと思う。
じっと見上げると男は笑みを浮かべていて、嫌な感じはしなかった。

「えっと…、その…」

もじもじと今晩の目的を言うかどうか、ごまかすかと悩む。ここで正直に言ってはいけないのはわかっている。
でも自分のお腹は正直に鳴き声を上げた。

エレイ > 言い淀む様子を笑みのまま見つめていたが、彼女自身より正直な腹の虫の音が響くと、
プフ、と小さく吹き出してしまい。

「……まあわかってた。だがこの時間帯でも盗みはリスキーすぐるからやめておくべきだろうな」

上肢を屈めて視線を近づけながら、ポンと軽く肩を叩きつつこそりとそんな忠告をして。

「──ところで俺は今一人で暇なんだが……キミがナンパされてくれるなら
なんでも好きなものをおごってやるが、どうかね?」

それからニ、と歯を見せて笑うと、楽しげな声でそんな提案をして。

ライカ > 吹き出され忠告されるとフードの中の耳がぺたりと寝て。
寝ている耳でもナンパと好きな物、という言葉にぴくぴくと反応し、歯を見せて笑う男に視線を持っていき。

「……ホント?」

こてんと首を傾げた。男に要求されるものはわかっているがこの男がどこまで要求してくるのかを考えながら。

エレイ > 「ホントだとも。──ああナンパといっても余分な心配はしなくていいぞ?
俺様はもっとムチムチボディのコのほうが好みだからなそこへ行くとキミは
ざんねんがはっきり言って栄養が不足している不具合があるので手も出せない」

ククク、と笑って手をひらひらと振りながらデリカシーのない発言をしつつ
身体を要求するつもりはないという旨を伝え。

「まああ言ってみればちょっとした気まぐれであり暇つぶしなのでキミも
何も遠慮することなくたかればいいのだよ。
ちなみに俺は謙虚な旅人で冒険者のエレイと言うんだが呼ぶときは気軽にさん付けで良い」

なんて続けながら、付いてこいというように背を向けて歩き出し。
すぐに立ち止まると、肩越しに振り向きながら聞かれてもないのに自己紹介を繰り出して。

ライカ > 「ムチムチ…?

男が何を言っているのかいまいちわからなかったけれども身体を要求されているわけではないことはわかったので安心し。歩き出した男についていき。

「えっと、エレイさん…。わたしはライカって言うの」

相手の名前を確認しつつ立ち止まったエレイさんに自分の名前を伝え。彼は冒険者だと言う。それならば私が知りたいミレーの隠れ里について知っているかもしれないと思いながらも自分の正体について答えてはいけないことは知っているのでぐっと堪え。

エレイ > 「ライカちゃんだな、よろしくだぜ。……なんか訊きたいことがあるなら遠慮なく言ってみるべきだろうな。
いやココでは言えない系の話なら別だが……」

素直に敬称付きで名を呼ぶ彼女に気を良くして笑みを深め。
なにかを堪える雰囲気をなんとなく察したのか、目を細めたままそんな言葉を付け足し。

「──だがまあその前に腹ごしらえだな。さっきも言ったが何でも好きなもの選んで良いぞ遠慮はいらぬぇ」

歩くうちに食べ物の屋台の多く並ぶエリアまで至り。
周囲からはいろいろな料理の匂いが漂い、空腹の彼女を刺激してきて。

ライカ > 「んー……あれがいい」

彼が遠慮なく言うといいと言うが本当に良いのかどうか。
考えていたが美味しそうな料理の匂いにつられてつい、指をさす。
丸くて湯気が出ていてふかふかしていそうな食べ物――肉まんじゅうを。
文字が読めないのでどんな食べ物かはわからないが目の前にあって美味しそうに見えた。

エレイ > 「ほう良いところに目をつけたなあそこの肉まんじゅうはかなりうまいからな
俺もよく買って食ってる」

彼女が指差す先の屋台に男も視線を向ければドヤ顔しながらウンウンと頷いて。
それから屋台に向かい肉まんを数個購入し、詰めてもらった袋を片手に彼女のところに戻ってきて。

「えーとんじゃあ……広場のほう戻るとしますか」

軽く周囲を見渡すが、いい具合に腰を落ち着けられそうな場所も見当たらず。
そう提案すると、彼女の背中をポンと叩いて促し、中央広場の方へと戻り。
先程座っていたベンチに腰掛ければ、彼女にも座るよう促して。

「──さあ食え食え。中身熱いから気をつけるべきそうすべき」

そして、手にした袋を楽しげに彼女に差し出した。

ライカ > どこか楽しそうに買い物に行く彼を見送り買い物をする様子を眺め。
美味しいと彼が言うのできっとそうなのだろうと思いつつ、戻ってきた彼に促されて中央広場まで行き、彼が先ほどまで座っていたベンチに座り。
差し出された肉まんじゅうを受け取った。

「ありがとう…温かいねぇ…」

手に広がる温かさに表情を緩めるとがぶりとかみついた。

「…っ、あふ…っ……」

中身の熱さを警告されていたにもかかわらず空腹に負けてかみついた中身が熱いことに驚き。

エレイ > 「今は寒いからなこういう温かいものが美味いのは確定的に明らか」

表情を緩める彼女の様子にこちらも目を細めつつ、自分も湯気を立てる
肉まんを一つ手にして。
勢いよくかぶりついたかと思えば、餡の熱さに驚いてしまったのを見てくっくと可笑しそうに笑いを漏らし。

「──だから熱いと言ったでしょう? 誰も取り上げはしないので慌てずに食うことをオススメする」

なんて忠告しながらはむりと肉まんを一口。
モムモムと咀嚼しては、満足そうにウム、と一つ大仰に頷いてみせ。

「……ちなみにライカちゃんは……まああその身なりから色々察することはできるのだが、
寝泊まりはどうしているんですかねぇ?」

食べ進めながら、ふとそんな事を彼女に問いかけてみて。

ライカ > 「はふ…熱い、けど…美味しい……」

はふはふと温かく美味しい肉まんじゅうに夢中になり。
取り上げないと言う彼の言葉にちらっと彼を見て。
寝泊りはどうしているのかという問いかけに、肉まんじゅうを食べ終えてから。

「ひるに温かいところで寝てる。空き地、とかいろんなところで」

まだ肉まんじゅうが入っている袋をじっと見つめ。

エレイ > 夢中で食べ進める様子を微笑ましく眺めつつ、自分ものんびり食べ進める。
もっとも、一口の大きさが違うので、食べ終えるのは彼女とほぼ同時のタイミングとなったが。

「なるほどなという顔になる。そして夜中に食料やらの調達というわけか……ン、どうかしたかね。
まだまだあるのだからドゥンドゥン食えぃ」

袋に視線を注いでいるのに気づくと、不思議そうに眉を持ち上げてからもっと食べるよう促して。

ライカ > どんどん食べても良いという言葉に表情を明るくさせ手を差し出してねだり。

「どうしても、外で寝られなかったり、しんどい時はただで泊まらせてくれるところがあるの」

このくらいで彼の求める回答になれたか、と首を傾げ。
それ以上の答えは持っていないので答えようがないのだけど。

エレイ > 「ほう親切なところもあるものだなと感心顔になる。やはり優しさはやはり
あるところにはあるのだなと大きく希望を持った」

彼女の答えにまた大仰に頷きつつ、手を差し出してのおねだりに小さく笑って
袋ごとポンと手渡して。

「じゃあ食い終わったら今夜はそこの世話になるとしようず。宿泊料はちゃんと払うがな、俺が」

それからぴ、と人差し指を立てると笑顔でそんな事を言い出して。

ライカ > 袋ごと肉まんじゅうを受け取り、袋から取り出しつつ

「宿屋さんにお泊りするの?」

再度手にした温かいそれに微笑み。
宿泊料として自分は支払っていないなぁ、と思いながら。

「私みたいな人がいっぱいいるところだよ?」

エレイ > 「うむ。実は今夜の寝床をまだ決めていなかったからなちょうどいい感」

腕組みしながら頷くと、続く言葉に軽く瞬きして。それからすぐにフ、と小さく笑い。

「問題にい、俺は寝る場所を選ばないからな。俺雑魚寝部屋での寝泊まりとかも普通にするし」

なんてドヤ顔で告げて。

「せっかくだし、ライカちゃんには添い寝ぐらいはしてもらおうかのぅ……むしろ抱き枕的な?」

そして彼女を改めてジロジロと眺めつつ、楽しげに。

エレイ > そして、彼女が食事を終えるのを見届ければ、共にその場を離れて彼女の言う宿へと案内してもらい──
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に黒須さんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から黒須さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミューラさんが現れました。
ミューラ > 「はぁ…いつ来ても騒がしいわね、ここは」

昼でも夜でも賑わっている通りを、ゆっくりと歩く天使。
天啓に関する任務も終わり、後はどうしようかと街を見て回っている

昼間なのに騒がしい酒場なども横目に見て、そういえば酒って飲んだことあったっけ、などと考えつつ

「…ふ、ふん。まあ下等なものなんて私には合わないだろうけどね」

などと独り言を言いつつ、それでも興味はあるのかちらちらと酒場を覗きながら歩いていて

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミューラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 とある聖堂」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――繁華街から離れた平民地区の片隅にあるとある聖堂教会。
 日中は信者が集い、あるいは祈りを捧げあるいは罪を告白するが、夕刻を過ぎ夜の帳が降りた頃合いとなればその姿もなく。
 しじまの礼拝堂。寒風の流れる宵を渡り、そこまで辿り着いて来た者は少ない。見回しても人の気配はなく己の影のみそこにあった。
 厳かな雰囲気の中ゆっくりと進んで行けばその直線上には祭壇が。アホ毛を軽く揺らしながら、祭壇前に立ては感心の眼差しで細かな装飾を眺め壁画を鑑賞し、それから一抱えはありそうな金装飾が施された壷の前に差し掛かれば、

             ――かた、

「………?」

 小さく聞きとめた物音。訝しげに傾げた首。ゆるりと瞬けば立ち止まり、じ、と壷を凝視。さすればまた、

        かた、かたかた…

微かな揺らめき。左右に小さく振動する壷。

「……やだこの壷生きてる」

ティアフェル > 「――訳ないか」

 バカなこと呟けば、すぐに肩を揺らして、中に何かいるのだろう。と伸ばした首。台座に置かれた壷の中をひょいと覗き込むと――

 フーッ、バリッッ

「きゃ…っ?!」

 紅い閃きが見えたかと思った刹那、突然中からいきり立ったような唸り声とともに額を引っ掻かれた。後ろへ引き、呻いて顔を抑えていればぽーん、と壷から飛び出した黒猫・どこかから忍び込んだそいつはあまつさえ先程まで潜んでいた壷を蹴倒し―――

「ちょっ…!!」

 ぐら、と大きく揺れて床に叩きつけられようとする壷・受け止めようと腕を伸ばすも――
 ガンッ がらがらがら……

「あー…っ」

 結局間に合わず、床にぶち当たって砕け散った壷……施されていた金の装飾がきらきらと虚しく蝋燭の灯りに閃いていた。
 割れた壷の前、呆然とする女。駆け抜けていった黒猫。一連の物音が鳴りやんで、しーんと静寂が再度支配した、そのあとに残されたのは有り触れた無残な光景。

 しばし茫然と立ち尽くしてしまっていたが……やがて、はっと我に返って、さーっと蒼褪める。

 こ、この場に誰か来たら……ま、まずい……。

 猫の姿はいずこへか消えてしまったのだから、ここにあるのは割れた壺と己の姿のみ。――ということは、

「被疑者に、される……!」

ご案内:「王都マグメール 平民地区 とある聖堂」にシルニアさんが現れました。
シルニア > 「い、よーっ、と。」

真っ暗で誰もいない聖堂に現れた白色の魔法陣。その陣からふわりと現れ、着地。

予めこの場に隠していた転移魔法陣の起動。メグメールからの帰宅するには少し遠く、遅かったので魔法を利用したのである。

──なぜ聖堂に転移陣を置いてるかって?なんで、でしょうね?

さて、何度目かになるこの聖堂への往来だが、相変わらず神秘的な装飾に溢れている。せっかく寄ったのだ。それらを見てみようとし──

「あれ、ティアさん、です?
.....あっ。」

見覚えのある顔が見えた。暗がりでもはっきりと見える。
そして、同じく見覚えのあるものの、無惨に姿を変えた壺も。

おもわず、何かを察したかのように声を漏らした。

ティアフェル > 「!?」

 静まり返っていた聖堂内に高い声が小さく響き、そして衣擦れと着地音。不意に聞こえたそれに、反射的にびっくう!と肩を跳ね上がらせ。
 ばっ、ばっ、と音の発生源を探して首どころか身体全体を使って見回して目にも確認した女の子の姿――

 見知った姿に絶句しかけていると、こちらをまた彼女も認めて名前を呼ばれ、あまつさえ、今出現したばかりの人物の眼からはどう考えても犯行現場に映るだろう惨状に、アホ毛を跳ねさせて冷や汗を飛ばし判り易く全力で慌て、

「し、ししし、しーちゃんっ! いや! 違…! ご、誤解よ!
 違うの、わたしじゃ……!」

 割れた壺とその傍に立つ自分。まあ、どう考えても被疑者に見えるだろうが、違うんだ、そうじゃないんだ、冤罪なのだ、とぶんぶん首を振り、若干半泣きで弁明しようとするが、焦燥の為かなり噛んでしまい上手くいかない。

シルニア > 「お、お、落ち着くですよっ!?」

焦燥する彼女につられて、私まで何故か慌ててしまう。
どう見ても彼女が壺を割ったかのような構図だが、決めつけてはいけない、と分かっている。
たまたま割れている壺を見つけた第一発見者なだけなのかも。

とりあえず、私もこの光景を見てしまったのだから関与せざるを得ない。とことこと彼女の側へ歩むことに。

「ティアさん、落ち着くです。私、いまさっき遠くから来たものですから、壺が割れる音も何も聞いてないです。
だから、ティアさんが見たことをちゃんと教えて欲しいのですよ。
そーすれば、きっと私もお手伝い出来るのです。」

せのびして、ぽん、ぽん、と彼女の頭を叩く。酷く慌てている様子だし、それに私自身も少しの焦燥感を感じていて、それを落ち着けるための行為でもあった。

ティアフェル > 「わたしじゃないっ、わたしはやってないっ……ここの特に信じていない神に誓って違う…っ」

 まあまあなパニック状態で首を千切れんばかりに振って必死に主張する内容が……結構怪しいことに自覚がない。
 やってる痴漢容疑者の云い訳みたいになってしまっているが。
 年下の女の子に再度落ち着くように促され、そして責めるでもなく説明を求められて。
 その上あやすように頭の上で弾む小さな手。
 いくらなんでもこのままでは無様すぎる、とようやく自覚して。
 一度胸に手を当てると、すーはーとゆっくり深呼吸して。落ち着け、クールになれわたし、と己を宥め。

「猫…、黒……壺……生き……じゃ、なくて……。
 ――さっき、わたしがここに来た時、壺が動いてたものだから、なんだろうと思って近づいて中を覗いたら、そこに入ってた黒猫が飛び出してきて……それで、こんな惨状に……」

 そしてこれが証拠の引っかき傷です、と猫の爪でばりっとやられて三本赤い線の入って浅く裂けている額を前髪を右手で上げて見せて、壺損壊被疑者の弁明。

シルニア > ぽんぽん、叩いていた甲斐あって?彼女は落ち着きを取り戻したらしい。

話を聞くべく、背伸びをやめて彼女の瞳をじーっと見詰める。

──何があったのかな?前も図書館で派手に転んでたですし──

「──って、ただの事故じゃにゃいですか。ティアさんは何も悪くないのです。
...なのに、あそこまで慌てるです?ふつー。あ、疑ってるわけじゃー無いのです、その怪我の感じですとここで猫さんが暴れたのは間違いないのですし。
慌てすぎって言いたいのですよう。」

彼女を見つめる私の翠猫目は彼女の話を聞けば聞くほどに瞼がおとされて、呆れたようなジト目に。

「...でも、困ったですね。ここの管理さんに類する人って、夜はいないでしょうし...。」

顎を手に当てて考える。これをこのまま放置するのはさすがに後味が悪い。とはいっても、聖堂の関係者に連絡する手段もないし。

「それより、痛くないです?その傷。
えぇと、粗悪な物ですがお薬が確か...」

ふと、彼女の額の傷のことを思い出せば、ローブの内側のポケットをごそごそと漁りつつ。

ティアフェル >  さすがにこの歳でちっちゃな女の子に子供のように宥められてたら、シンプルに恥ずい。
 覗き込んでくる澄んだ目がまるで、嘘を見抜いて串刺しにしそうな勢いで、なんだか落ち着かなくなりかけるが。

「いや、だってさ! しーちゃんの眼がさ!『あー。やっちゃったのねー』って感じだったじゃん、まず!
 そしてさ、わたしだって第三者としてこの現場に居合わせたら『あー。やっちゃったかー』って思うよ?!
 誰が見てもそんな、割って云い訳してる人みたいじゃん、状況証拠的にあるのはこの、捏造可能な引っかき傷のみよ!
 自分の分の悪さは重々承知なのよーっ」

 云われるとまたプチ錯乱した。頭を抱えて悲鳴のようにのたまいて。そして彼女の呆れたような半眼が超刺さる。
 この子おっとりした感じで結構アレなんだな…と発見したくない一面を見つけて若干絶望しつつ。

「あーね。できればわたしはこのまま逃げたい気持ちで一杯だけど……そしたら後に残ったしーちゃんだって余計な疑いかけれないとも限らないから、まあ、絶対できないけど……。
 ほんと、どうしたものかな……」

 こうして出入り自由の場に配置しているということは泥棒に狙われるほどではないのかも知れないが、なかなかの大きさの壺だし金の装飾も施されていたのだから、そう安くもなさそうな気がする。
 金銭的価値はさておいて、現場を放置して逃走なんかしたら本格的に被疑者のようなのでそもそもできない話だ。

 はー。と深く嘆息を零したところで、ひっかき傷を気遣ってもらい、あ、とひりひり痛む存在も今はあまり気になっていなかったが、薬を探り始めたので、右手の平を差し向けて、ちょい待ちと制するようなリアクションをとり。

「大丈夫なの、わたし、魔法使えるようになったから、自分で……」

 と、浅い傷なのでスタッフの要もなく、掌を額に軽く翳して短詠唱を口ずさむと生まれた淡い光で傷を癒した。

シルニア > 「むぅ、確かに言われてみれば、私も逆の立場なら慌てちゃいそうなのです。
...ごめんなさいです、ティアさんを責めるようなこと言っちゃって。」

ぺこり、と頭を下げ。しゅん、と帽子の猫耳も垂れさせて、凹んだ様子。

「書き置きを残すとか、くらいですかね。出来るとしたら...でも犯人は猫です。と書くのも変ですよねぇ。」

猫って書くと私が犯人みたいですし...なんて、言葉の続きは飲み込んでおく。

うんうん唸っていると、彼女の魔法を使える、との言葉にはっと彼女の顔を見て。

「わーっ!ホントなのですっ!すごいのですっ、ティアさん、おめでとーなのです!これでヒーラー復帰です?」

なんて捲し立てて、彼女の力の復帰を祝い。
でも、あることに気がついた。

「その傷、状況証拠じゃなかったのです...?」

ティアフェル > 「え? 責めてたっけ?
 いやいや、こんな紛らわしい現場にいたわたしもアレだし、全然そんな謝んなくっても……」

 責められてたとまでは感じてなくって、ふるふると首を振り。あれだ、全部猫が悪いんだよ。あと運も悪い。と結論して微苦笑気味に頬を掻いては。
 へこまないでー。とぽんぽん軽くその背中を叩いて。

「そーね。まあ、わたしが一連の事態を書き残してくしかないわね。
 実際やってないんだからありのまま書くしかないわ」

 この時間もう休んでいるはずの修道士なり修道女なりを起こして説明するには、悪い気もする。
 それに、面と向かって説明となると後ろめたくもないのに無駄に慌ててしまいそうだ。ふう、と嘆息気味に肩を竦めて。

「えへへ、ありがとうー! お蔭さまで復帰です! しーちゃんにもお世話になりましたー」

 うぇーい、と傷を癒しては、ハイタッチしてきゃっきゃと弾んだ声を立てようとしていたが、

「――はっ…! きれいさっぱり状況証拠が消え失せてしまいました……!
 ………いよいよ直で弁明する手はなくなったな。……うん、匿名で書置きしとく」

 消え去ってしまった傷に的確な突っ込み受けて、あー。うっかり…とつるつるになった額を抑えて決定。
 ウェストバッグから紙片と筆記用の木炭を取り出してさらさらと書きつけると署名はしないで壺の配置されていた飾り台に置いておく。

「これでよし」

シルニア > 「ですっ。
あとはまー、ここの方にハメられないようにと良心をお祈りするしかないですね...。もしトラブルになったら、私も手伝うですから呼んでくださいです。」

心配そうに壺の破片を見渡す。けれど、私達にはどうすることも出来ないし、寧ろ何かをしようとすると私達に容疑が掛けられかねない。

たぶん、これが最善ですよねっ。

「して...ティアさんは夜になんでこんなところに?」

こてん、と首を傾げて尋ねてみる。聖堂はお昼に人がよく集まるけれど、夜は現状のようにしんと静まり返っている。
そんな中、なぜ彼女は来たのだろう。

ティアフェル > 「ありがとぉ~、万一因縁吹っ掛けられたらヘルプに呼ばせていただくよー」

 神に仕えるものが難癖つけてくるとは思いたくはないが、それがこの国のノーマルでもある。
 拙いことになった時に証言してくれれば心強い。ぎゅ、と手を伸ばしてその手を包むように握ろうとしながら。

 そして、事態を一応片づけると、さて、とりまここからズラかるか……と容疑者のようなことを巡らせながら、ここにこれ以上いても面倒なことになりそうなので、行こか?と彼女の背を軽く押して促しつつ、ここにいた理由を尋ねられると。

「ああ、一応新年だし……全然信心深くはないんだけどちょっと軽ーくお祈りでもと思って……。
 昼間は人が多いし仕事があるから、今時分に。
 しーちゃん、こそ……なんかえらく急に出て来たね?」

シルニア > 彼女に背中を軽く押されれば、私はされるがままに歩き出す。特にここに用事がある訳でもない故に、歩きながら話すことに。

「なるほどー、ティアさん、さっそくお仕事なのですねー。
ひーらーさんは忙しいですもんね?」

「あぁ、私はここに転移陣の一つを置かせて頂いてるのです。あ、許可は取ってあるですよ?
さっきまではお仕事でメグメールにいたのですが、遅くなっちゃったので飛んできたのです。」

なのでこう見えて結構へとへとなのですよ、と、わざとらしくぐでー、と腕を垂らして。

ティアフェル >  割れた壺の破片から背を向けて、どうかこのまま終わってくれますように、と本来の祈りとは違うものを捧げながら扉を開けて聖堂を後にする。
 ぱたんと扉が閉じられて再び礼拝堂には静寂が横たわり。逆に、教会の敷地を出た二人は歩きながら話を続けて。
 当てはないが、取り敢えず中心地の方へぶらぶら歩を進め。

「この時期は案外稼ぎ時だしね。今までの分も取り返さなきゃ。
 ――どーりですごい急に出てきたと思った。絶妙にめちゃめちゃ焦るタイミングだったよー。
 お疲れお疲れ。じゃ、お腹減ってない? なんか食べよっか? せっかくだからついでにちょっと遊んでかない??」

 そんな風に気軽く誘いながら、以前逢った時は服装のことなど気にしていたのを思い出し。余裕があるなら少しその辺も見てってもいいかも知れないと小首を傾げて。
 疲れていて早く休みたいようなら、適当なところでさよならかなと考えつつ。

シルニア > ぱたん、と聖堂の扉が閉まっても、私達に声が掛けられたりすることはなく、ほっと胸をなでおろした。

──って、なんで私まで慌ててるのですっ!

「転移先の様子が分からないのが玉に瑕なのですよ...なので基本夜は誰もいないあそこを使わせてもらってるのです」

「あっ、いく、いくですっ!ティアさんとでーとなのです!」

ぴょんぴょん、と小さく跳ねて興奮を体現してしまいつつ。
どうじに、きゅる、とお腹が鳴った。それもかなり、大きい音で。
みるみる顔に熱くなるのが分かる。おもわず彼女からは顔を逸らしてしまって。

ティアフェル >  教会の敷地を出ると隣からの安堵の気配に、つられてハラハラしてたらしい様子に思わず小さく噴いた。
 わたしのせいで――厳密には猫のせいだけど――すまないねえと無言で彼女の帽子の上に手をぽむ、と置き。

「ああ。それはあるあるだね。確かに夜は人もこないしうってつけなのかな? でも、自分の家とかじゃ駄目なの?」

 定宿や定住先がないパターンかも知れないが思わず素朴な疑問をなげかけたが。小さくてかわいい女の子がこうさぎみたいにぴょんぴょん跳ねて、でーととか云ってる上にお腹を鳴らして顔を赤くして。
 ちょっと待て、なんだこのコンボ反則だろ。と内心で完全にノックアウト食らい。くら、と一瞬眩暈を覚えて目の上に庇を作り。

「………KAWAII!!」

 もうそれしかない。わしづかみにされたもので、不意にはっきり宣言しながら、ぎゅ、とハグの構え。
 唐突な行動でしかないが、自分の中では繋がっているし何なら理に適っているとすら思いこんでいる。