2020/12/04 のログ
■ロイス > いきなり人を犯罪者扱いとは、と言われればう、とバツの悪い顔をする。
確かに、幾ら先の爆発で気が動転していたとはいえ、女の子を犯罪者呼ばわりはよくなかった。
「ごめん。確かにその通りだ。証拠もないのに疑われれば、気分は良くないよね。」
と、素直に頭を下げる。
本当に悪かったと思っているらしく、しゅんとした表情になるが。
しかし、転職を勧められると、それはちょっとと首を振って。
「ああいうお硬い所は俺には似合わないよ。
っていうか、変な人もそれなりに酷いと思うよ……?」
と、ちょっとショックを受けたように。
実際、自分では自分のことを常識人と認識している向きもある男である。
少なくとも、台所を爆発させた人に言われるのは相当にショックであった。
そして、その料理の事に話が移ると、にやりと笑う彼女。
どういう意味の笑みだろうと一瞬首をかしげるが――しかし、思いもよらぬことに、彼女はご馳走の提案をしてくれた。
さっき犯罪者呼ばわりしたにも関わらず、そんな事を言ってくれるなんて、と内心驚いて、つい
「え、いいのかい?」
と聞いてしまう。
一瞬、寒気が走った気がするが――しかし、宮廷料理人になりたいとまで言うのだ。
料理に対して、不誠実な事はしないだろうし、これは冬の寒さだろう、と思う。
「丁度、まだ夜は食べてないんだ。勿論、食材や手間賃含めてお金は払うよ。あ、ただ……厨房はどうしよう?」
流石に、今追い出されたばかりの此処のは使えまい。
とすると、何処かの食堂のを借りるか、或いは彼女の家という事になるのだろうか……?
■エルファラ > 「分かれば宜しい。それにしても遣り難い人ね」
見た所三十路の男性だが、自棄に素直に頭を下げられると座りが悪くなってくる。
尤もらしい顔で頷いた物の、こっちが悪い様な気がして小さくため息を吐き出した。
「貴方に似合わなきゃ、全員落伍者よ。
この国の兵士なんて、よっぽどゴロツキみたいじゃない。
毎日どこかしらで市民に因縁つけては犯すわ巻き上げるわ。
――その常識を考えると変人はアナタ。」
自分もこの国の出自ではないが、相手もそうなのだろうか。
自覚はないわ、善人じみた態度は目立つわ、異質と評していい。
だが、好都合だ。こんないいカモになってくれそうな人間はそうそうおるまい。
試食人として絶好の相手を手に入れた。
思いがけない拾い物を得た心境で、逃がさないよう飽くまで温和に穏当な態度で。
「勿論。いいわ、お金は取らないわよ。
作るのはあたしの愉しみだから。
――場所? ああ、家に来たい? 別に構わないわよ。」
可笑しな展開になれば、拳に物を言わせればいい。
冒険者とは言え遅れをとらない程度の自負はあるという料理人というより格闘家気質。
あっさりと頷いて、こっち。と先んじて歩き出す。平民地区の中心部からは離れた自宅へと。
■ロイス > やり辛い人ね、と言われると首を傾げる。
別に、此処で謝ったからといって、損がある訳ではない。勿論、気分を害したからとお金を要求されたりはあるかもしれないが、現に気分を害すような事をしたのだから、せめてご飯代ぐらいなら出すべきだろうと。
「いや、確かにこの国の衛兵のモラルの低さは俺からしても目には余るんだけど……、
でも、衛兵だと遺跡に潜ったり、魔物を追って森を走り回ったりとか、そういうのはできないしさ。後、依頼を通じて色々な人に会って話したり……そういうのが好きなんだ」
だから、規律正しいのが本分の衛兵さんとかにはなれないよと、ちょっと照れくさそうに。
我ながら、年甲斐のない事を言っているとは思うが、しかしそれが好きなのだから仕方ない。
……尚、こういう事を真面目に言うから、余計に変人だと言われる事には気づいていない。
「え、君の家?それはちょっと……いや、でもだからって俺の家は論外だし、ギルドの厨房を爆発させたら余計に不味いし、選択肢は実はないのか……うん、分かった。お邪魔させてもらうね」
ならば、せめてあらぬ噂が立たぬよう、寧ろ堂々と家に上がるのが良いだろうと。
そう思い、彼女の後ろにういていく。
彼女と違い、彼には警戒心はない――しかし、その立ち振舞い自体には隙がない。
警戒心がない状態で尚、即座に反応できるほど、危機に対するアンテナが強いのだ。
■エルファラ > よくそんな調子でやっていられるな、と妙な感心すらしてしまう。
逆に、こういうタイプに限って裏で蛙の解剖に悦びを見出していたりするのだから、世の中侮れないと斜め上の想像を展開させていたから、若干反応が遅れつつ。
「あたしは別にどうでもいいのよね。気に入らなければ張り倒せば済む。
寧ろそっちに慣れちゃうと、貴方みたいな常識人が非常識に映るくらいよ。
それは分かったけど、そういうのが好きっていうなら、街の揉め事にまで首突っ込むのはよして、本職に任せとけばいいんじゃないかしら?」
人の仕事を盗ってはいけない、ともっともらしく言い出すが――、まあ、余り煩くいわれると自分が遣り難いからという、利己的精神故であった。
「別に押し倒しやしないわよ。人をヒグマ扱いしないでいただける?
体裁が悪いなら無理にとは言わないけれど……」
と、言いながらも結局同行する事に決まった。
すたすたと慣れた足取りで自宅に戻るにつれて細い路地を抜け、街燈も暗い地域に偏っていく。
やがて犇めく様に家屋の立ち並ぶ一角に構えられた、一軒の狭い平屋に辿り着くと。
出入口は門扉もなく直接路地に面しており。立ち止まって、ココ、と鍵を取り出して建付けの悪い扉を開き、暗い室内でランプに灯りを点し、リビング兼ダイニングとその奥にあるキッチン、そして左手に扉の閉まった寝室があるっきりの小さな独居宅に招き入れ。
取り敢えず、食卓であり応接用にも使用している木製のテーブルセットを勧め。
「座って待っていて。すぐに支度するから。
――食べられない物はある?」
髪を革紐を使いうなじで一つに纏めながら、キッチンへ下がっていく途中、振り返って尋ね。
■ロイス > 「衛兵を張り倒せる時点でやっぱり君の方がおかし……いや、なんでもない。
まあ、確かに筋論だとそうなんだけど、どうしても困ってる人がいると身体が動いちゃうんだよね……」
はぁ、とため息をつく。
実際、男もバカではない。自分の仕事とそうでないものの区別はつくつもりである。
ついた上で、やっている事は、つかない上でやるのよりも愚かでないとは言えないだろうが――
「いや、君がどうこうって訳じゃない。ただの、心配のしすぎだ、気にしないでくれ。体調は大丈夫――強いて言うなら、腹ペコってぐらいだ」
と、心配させすぎないように茶目っ気のある事を言いつつついていくと、随分とうらびれた所に出た。
貧民地区よりは遥かに良いが――それでも、相当に治安は悪そうだ。
彼女に従い、テーブルにつく。
なるだけ、周囲を見ない様に努めつつ、
「うーん、アレルギーみたいなものは特にないかな。
好き嫌いもあんまりない。ただ、苦いのはちょっと苦手かな」
好き嫌いまでは問われていない気もするが、しかしわざわざ食べに来て嫌いなものが出てきても気まずい。
なので、ほんの少しだけ我を出して主張してみた。
■エルファラ > 「ッフ、そのくらいは貴方にだって出来るんでしょう? 息巻いてる奴程大した事ないしね。
――だから、そんな事を言っているから変な人と思われるのよ。
他でも言われてるでしょ、その調子じゃ。」
正直者が損をするという好例である。
それが間違いとは思っていないが、だからといっても絶対的に正しいとも言い切れない風潮だ。
「体調の心配じゃなくって、体 裁 。世間体の事ね。
空腹だっていうなら何よりですけど。」
どう考えても健康な様子にそこは全然心配してません、寧ろその点が良いカモと言えた。蛇足的に訂正しては。
席に着いたお客に、待っている間の手持無沙汰を埋める為に、まずは料理用ではあるが飲用にも充分な味の赤ワインをグラスに注いで。瓶ごとその前に置くと好きに飲む様に勧めて。
「了解、苦いの以外、ね。
少々お待ちくださいませ、お客様。」
真面目に耳を傾けて頷いて見せた後に、少々お道化てそう告げるとキッチンへ引っ込んでいき。
それから――到底料理中には聞かれない様な異音が響いてくる。
ガガガ、どか、ゴゴゴ、とか、ドゴゴ、とか、それこそ、ばひゅーん、と小さな爆音すら。
そして、なんとも言えない様な匂いが薄っすら香って来るのだ。
食べ物……の様な。不思議なお香の様な……。不安をあおる匂いが。
■ロイス > 「いや、料理人が兵士殴り飛ばすのと冒険者が殴り飛ばすのは違う気が……。
いや、あんまり言われてないなあ、【仕事中毒】とかはよく言われてるけど」
もともと、冒険者自体が変な人の集まりという側面もあり、そこまで露骨におかしいとは言われてはいない。
ただ、引き取り手のない仕事を引き受けてしまう関係で、仕事のしすぎとは良く言われるが。
「あ、ごめん。聞き間違えてた。俺の体裁はまあ、何とでもなるよ。今更、女の子のお家に入ったぐらいで仕事に差し障りが出る程、柔い信用は築いてないさ」
やや、楽観的な予測でもあるが、しかし事実でもある。
彼女の言う所の『非常識な常識人』をやっている事の利点とも言えるだろう。
散々、仕事で人を助けているので、ちょっとやそっとの疑惑程度では、仕事に影響は出ないのだ。
……まあ、仕事に関わりのない、一般人からの視線はまた別の話になるが。
「あ、お酒だ。悪いね。でも、聞いたことのない銘柄だけど――」
注がれたワインを軽く回して、臭いを嗅いでみる。
やや苦味が強いが、呑めないという程ではない。
軽く傾けて、口の中で転がして――そして、謎の効果音を聞いた。
「!?」
何を調理している、というよりは、何で調理しているのかの方が気になる音。
おまけに、その臭いもただ事ではない。料理に香の臭いが何故するのか。
「(こっちではあまり使われないスパイスとかか……?
音も、何か硬いものを割っていると考えれば……)」
と、一応常識的な推理をしてみるが、実際に起きている音は雄弁に不安を掻き立てる。
エルファラの事を疑う訳ではない。疑う訳ではないが、しかし――
「(一応、覚悟はしておこう)」
せめて、吐き戻したりするのだけは避けよう。
そう覚悟を決めて、彼女が料理を持ってくるのを待つ――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からロイスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエルファラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にロイスさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にジーゴさんが現れました。
■ロイス > 夜のギルド酒場のテーブル席で。
男が一人、まったりと酒を呑んでいた。
ちょっと高めのビールと、ハムをチーズに巻いて焼いたもの。
今日は仕事を終えた後。酒の味は格別で。
「何でこう、ベーコンとチーズは合うんだろうなあ」
等と、さして考えもせず言いながら、男はツマミを消費していく。
のんびり飲み食いしたら、帰るつもりであったが――
■ジーゴ > 仕事終わりのくつろぎタイムを楽しんでいる男に完全な邪魔が入る。
ギルドの受付と酒場の違いはもう分かっているはずなのに、酒場の方に入ってきょろきょろとしている少年がひとり。
「ロイス!」
入口の方から大きな声で名前を呼んで手を振った。
許可を待つことなく、相手が酒を飲んでいるテーブル席に駆け寄って、向かいの席に腰をかけた。
犬であればブンブンと尻尾を振っているであろう。テンションの高い喜びを表した瞳で話しかける。
「な、このまえありがとう。すごいおかねかせげた」
白い犬を探す依頼を教えて貰ったときのことをお礼を言った。
■ロイス > 「お?」
急に、こちらの名前を呼びかけられて、きょろきょろと辺りを見渡す。
最近聞いた声だ――前にギルドの手続きの世話をした少年。
名前は確か――
「やあ、ジーゴ君。暫くぶり」
と言って、向かいの席に座る少年を微笑ましそうに見やる。
何をそんなにテンションが高いのかは解らないが、楽しそうなのは良いことだと。
しかし、お礼を言われれば苦笑いして、
「いやいや。お金を稼げたのは君が頑張ったからだよ。
でも、きちんとお仕事できたみたいで良かった」
若干不安だったが、一度窓口まで連れていけば、後はギルドの人間の責任範囲だ。
だから、あまり口出しはしなかったのだが、どうやら余計なおせっかいをする必要もなかった様だと一安心。
取り敢えず、「何か飲み物でも頼みなさい」とメニューをジーゴの方にやって、
「ジーゴ君は、身分的には奴隷、なんだよね。
今、結構夜遅いけど……ご主人さまは何か言ったりしてないかい?」
書類を書いた際に、奴隷であると教えてもらった事を踏まえつつ聞いてみる。
■ジーゴ > 「オレ、いぬみつけるのてんさいって言われたよ」
一頭の小さな白い犬を探してくる依頼で両手と両脇に犬を抱えてギルドに戻ってきたのだ。ギルド職員のその言葉は本心か嫌みかはわからないが、少年は褒められたものと解釈していて。
「あ、エールを一杯」
受けとったメニューを上下さかさまのまま開いて、それでもじっくり眺めるふりをしてから、注文を聞きに来た店員に大体どの店でもありそうなビールを頼んで。
「ごしゅじんさま?んー『遅くなるときは前もって言え!』っていうけど、まえもってはわからないからいってない…。だって、その日よる帰れないとかあるじゃん」
奴隷にしては随分自由を渡されていて、しかもそれをやや持て余している状態だ。ご主人様の心配を知ってか知らずか、ふらふらと気ままに過ごしていることが伝わるだろうか。
「な、ロイスは街のそとのしごともしてるの?まちのそとのしごとってどんなのがある?」
奴隷だから基本的には主人の許可なく街の外に出ることは叶わないだろうけれど、興味はあって問いかけた。
■ロイス > 「(あ、しまった)」
メニューを逆さまに読む彼を見て、己の失態を知る。
彼は、字が読めないのだった。
何時も若者に奢るノリでメニューを渡してしまったが、昨日と同じりんごジュースを頼んだほうが良かったかもしれない。
「……まあ、確かに真理ではあるな。でも、遅くなったら一度帰って、その後また街に出れば良いんじゃないかい?」
しかし、それで許されているのだから、奴隷としては大分ゆるい……というか、実質的に子供か、或いはペット扱いなのだろう。
これは、ご主人さまも心配するだろうなあ、と思うが、しかしそのご主人さまの顔も知らない以上、男から何か出来るわけでもない。
ともあれ、街の外の仕事について問われると、ふむ、と少し考え、
「基本は魔物退治や護衛だね。でも、採取依頼と言って、薬草を取ったり宝石を取ったり……そういう戦いが発生しにくい仕事もあるよ」
町中と違い、流石に完全に魔物と出会うリスクを無くすことはできないので、そういう意味ではジーゴ向きではないが。
しかし、ジーゴが冒険者の仕事に興味があるのは嬉しいので、つい誘うような物言いをしてしまった。
■ジーゴ > 字は、簡単な文字くらいは読めるけれど、細かい文字の多いメニューを読むのは苦手だから、こうやってどの店にもある物を頼んで誤魔化すことが多い。
「え-、ごしゅじんさまに『きょうは貧民街でたちんぼです』とか言いにかえるのヤだよ」
恐らくロイスの想像を超えてしまうであろう言葉を返して。
ご主人さまが彼のことをどう思っているのかはわからないけれど、確かに奴隷扱いされていないことは確かだ。ご主人さまが少年を買い取った分のお金を返す、という約束があるからかもしれないれど、外を出歩いたり、稼いだりしていても特に何か咎められることはない。
「あ…そっか、魔物かぁ」
確かに魔物と戦うことはできないし、護衛なんて勿論無理。それでも、薬草を採ったり宝石を取ったりという捜し物であれば、犬探しの天才である自分であればもしかしたらできるかもしれないと、希望に胸を膨らませて、獣の耳がぴょこりと立って、興味深げに話を聞き。
「なんだっけ…?かんぱい?」
ちょうど店員が持ってきた酒を受けとって、口に運ぶ前に前に聞いたことがある言葉を言いながらグラスを相手の方に近づけた。
■ロイス > 「……あー」
唐突に言われた立ちんぼという単語に、男は少し驚いたが、しかし全く無い話でもなかった。
冒険者の副業として、娼婦をやっている者はいる。ならば、男娼とているだろう。
だが、男娼は身体に負荷のかかる仕事だ――ちょっと心配になる。
「(いや、これは余計なおせっかいだけれど)」
強制されている訳ですらないのに、男が首を突っ込むべきではない。
それは重々承知しておくべきだろう。
だが、それ以外の生き方を提示することは悪いことではない。
そう、気を取り直して
「うん。どうしても外はね。でも、脚が早ければ逃げられるし、君ぐらいの年齢なら戦闘訓練を積めば、はぐれた魔物ぐらいなら自衛できると思う。……怪我ぐらいはするだろうけどね」
冒険者はリスクのある生き方である、というのは変わらない。
だから、その辺は彼と、そのご主人さまが決断すべき事として、ありのままを伝える。
君なら出来るが、相応にリスクは有るぞ、と。
ともあれ、彼が頼んだエールが来れば、男もグラスを近づける。
「うん、かんぱい、だ。殊更、冒険者になったら何度でもやるから、覚えておいて損はない」
と、苦笑いしながらそう言って、グラスの縁と縁をぶつけあう。
男は酒は嗜む程度だが、とにかく冒険者と酒は切り離せない。
もし彼が冒険者になるのなら、彼の仲間と嫌というほどやる事になるだろう、と。
■ジーゴ > 学のない奴隷でもできる仕事はそもそも大体が肉体労働か危険のある仕事、あとは売春。どれも奴隷の安全なんて考えられていない点では似たり寄ったり。少年の考えの範囲では今のところ一番向いている仕事が売春だっただけだ。もっとも経験値の差でしかないけれど。
「うんうん。オレ、多分強いからだいじょうぶ!」
耳を立てたまま、楽しそうに話を聞いて頷いた。
確かにミレーだから一般的なニンゲンよりは少し頑丈かもしれないけれど、まだ発育の行き届かない体だ。
ご主人さまは早く背を伸ばして、筋肉を付けろと言うし、体の動かし方の手ほどきもしてくれるから、おそらくもう少し成長すれば、冒険者ギルドで街の外の仕事を受けるくらいは許してくれるだろうか。
「ぼうけんしゃになって金いっぱいかせげたらいいんだけど」
乾杯をした後に、酒を口に運んで、ゴクリといい音で喉を鳴らした。
■ロイス > 「こらこら、あんまり自分の実力を過信しちゃいけないよ」
と苦笑しつつ。
今は、真面目に検討しているというよりは、謂わば勢いで夢を見ているようなものだろう。
身体能力に優れるミレーとはいえ、魔物との戦いではそれ以上のものが要求されるのだ。
とはいえ、夢を潰してもしょうがない。
「でも、犬を探しの仕事ができたって事は、洞察力や機知に富む……あー、つまり色々と気がつくって事だからね。
鍛えれば、良い冒険者になりそうだ」
グラスが空になったので、ワインと、今度はトマトとチーズのカプレーゼを頼む。
別に、チーズ縛りという訳ではないが、何となく今日はチーズが食べたい気分。
「良ければ食べなよ。半分ぐらいならあげるからさ」と言いつつ、
「お、興味ある?まあ、冒険者なんて、「俺は冒険者です」って言えばなれちゃう物だけど……本格的にやるなら、色々相談にのるよ?」
と、嬉しそうに言う男。
武器、防具、道具、知識。
誰でもなれる反面、一度なろうと決めれば色々と入用になるのが冒険者という職だ。
だから、彼が本気でなろうと言うのなら、全力でサポートしようと。
■ジーゴ > 「だってオレ、ミレーだから強いから」
街の中から出たことがない彼は実は魔物と戦ったことがないのは勿論、魔物を見たことさえないのだ。だから、妄想でしかないけれど。確かに、自分の実力を過信していると言われたらその通りだ。でも、自分はミレーだから強いと思っている彼はまた同じように言うばかりで。
「うん。犬さがすのできたから、薬草とかもできるかもしれない」
犬は特に狼のミレーである少年の得意分野だっただけで、薬草の見分けが付くわけではないから、これも努力が必要そうだけれども、やる気だけは確かにありそうに、興味津々に身を乗り出して話を聞いていて。
「いただきます!」
進められると遠慮なく、明らかにトマトは避けてチーズだけつまんだ。
「きょうみはあるんだけど…ちょっとこわい」
街の外にも出たことないような奴隷だから、本当に冒険者への道を歩み始めようとするのには少し躊躇して。
獣の耳が少し不安げにへにゃりと垂れた。
「あ、でもごしゅじんさまが買ってくれたから、ナイフとなんか手と足をまもるやつ持ってるよ」
彼が言いたいのは、手甲、脚甲などの防具のことだ。最低限の護身用としてご主人さまが買いそろえた物。