2020/11/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にフォティアさんが現れました。
フォティア > 本来の賑わいの時間からは少し遅いのだろう、仕舞い支度をしている店も見受けられる市場にて。
手持ちの籠にいくつかの食材を覗かせつつも、気になる露店についつい惹かれがちなのだろう少女が、ゆっくりと周囲の店構えを眺めながら、そぞろ歩く。
気になっているのは、食材だけでなく、調味料や、ちょっとした衣料品。そして、見つければ速足で近づいてしまう古本。

「………んー…こうしてじっくり歩くと、市場の露店も色々と変わってるのかも」

久々に、街をゆっくりと見て歩いているような気がする。
買物には遅い時間とはいえ、その分混雑は少なく、ひとつひとつの店をじっくりと吟味できるのは楽しい。
俯くとどうしても落ちてくる銀の髪を、指で耳の後ろへと掻き上げながら、自然と口唇が笑みの形に緩むのを感じる。

「……好きな果物は買ったし。新しいお茶もOK。……となると、何か新しい面白い本でも……」

明日は少女にとっての休日。つまり貸本屋の定休日。ゆえに、のんびりと家で読書でも満喫しようと、新本、古本問わず視線が周囲の店を眺めやる。
ふわ、と鼻腔を擽る美味しそうな露店料理の香りに、そわっと落ち着かなくなるのも年頃の少女ゆえのご愛敬。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアイゼンさんが現れました。
アイゼン > 市場を揺蕩う少女の視線が遊ぶ市場に、店から雪崩れたような格好の露天店がひとつ。
本の瓦礫の横に立つのは黒い帽子の男がひとり。乱雑に積み上がる本の山を片手で示し、狂言師のような口ぶり
およそ本の売り方とは思えない身振りと声を市場にあげてる

「ここに並ぶは霞草の如き小さき書物、―――手に収めれば百合葉の豪奢、―――開いてみれば薔薇の物語、
  ―――いずれも物語の花園へと誘う百華たち。知識は財宝、学びは栄達、本に寄りて本を携えんや!」

貴族でも貧すれば何でもする。
住まいの傍に住まう年老いた露天商が、今朝は腰の重さを訴えていたところに買って出た、
即席の店員ではある。あげる声と、揺れる羽根帽子。見世物小屋か競売司会かのようなそれ。
雪崩れた本は初めからなのか、商売中の事故なのか、はたまたそういう売り方なのか。
次第に熱を持ちはじめた売り口上は、人の人生にまで言い及び始める。

フォティア > まだまだ若い胃袋に誘惑的な、美味しそうな揚げ物に心惹かれつつも、耳は呼び込みの声音を拾い上げていた。
何やら大仰な謳い文句に、首を小さく傾げ、一片の好奇心を道連れに歩み寄る。
と、その瞬間に瞳が輝くのは、本の虫の習性とでもいうもの。
山となった本の群れに誘蛾灯の羽虫の如くにふらふらと。そして、乱雑な積み上げ方に書籍を扱うものとしての厳しめの審美が過ったかもしてない。
乱雑。いくない。仮にも、売り物。

とと。と小さな歩幅で、近づき。じぃ、と聊か無遠慮に注ぐ視線。
興味津々。そして同時に訝し気な警戒満々。
書籍の分類、レパートリィ、傷み具合。古さ。つぶさに観察中。

「──……どのような、本を扱っておいでなのでしょうか?」

アイゼン > 空に喉を震わせていたところ、下から小さいが鋭い圧力を感じ、真上を向いてた帽子の鍔先が下がる。
見れば、その声の元は陳列というには不規則すぎる本たちを眺めている。
ひとつひとつの本を、瞬きひとつで映しとっていくかのような、迷いなく流れる瞳。
お客様だ。

「王城の大理石みたいなレディ。素晴らしい宝石のワンポイントでいらっしゃる」
羽根帽子を片手で下ろし、胸元に控えさせながらの一礼。
その挨拶は少女の肌と対照的な黒の衣装について、お伽噺にでてくるような白と黒の市松模様を描く大理石と。
そして宝石とは、鮮やかに色輝く一対の瞳の見事なこと、と。

「ここに並ぶ―――いや並んでいたんだが。本の多くは詩集と民話なのです。
  詩集などは流行り廃りが早くてね、ふた昔に時勢に忘れられた詩たちさ。でも力強さのある詩が多い」
まるで流れる川によって取り残された三角州。人はそこに近づかなくとも、川底の豊富な養分を堆積した宝の山であると言い添えた。

フォティア > 「それって、四面四角という意味でしょうか。 それとも胸部が絶壁であるとか」

本当に本に携わる者かと思われかねない解釈を口にしつつも、視線は本から外れてはいない。
普段は心掛けている愛想が完全に欠け落ちているのは、何しろ目の前に本が山積みなのだ。乱雑であっても、少女にとってはある種の、いや、趣味実益に加え飯の種そのもの。真面目にもなろうというもので──。
一歩足を前に進めて、軽く腰をかがめ。「手にとっても?」と、書籍に触れる許可を取ろうとする。

「確かに詩篇集においては、編者の癖が出ますからどうしても偏りが出やすく、好き嫌いが分かれ、それから外れたものは一般にもおりてこないものが多いですが──他編によって、日の目を見ることも少なくなく、様々な書籍に散逸されることで消失を防がれていますね。
その中に、わたしの未読の詩篇があるか確認したいのですが……いえ、それよりも」

目が完全に商売人である。またはマッド系研究者の匂いがするかもしれない。
半ば睨み据えるような目つきになっている自覚はあるまい。

「古地図などはありませんでしょうか。民話は、どこの地方のものでしょう? これらの書籍はどちらに蔵書されていたものでしょう」

アイゼン > 戦場で繰り出される槍を思わせる、少女の突き上げ。その声に含まれる固さだけは、たしかに大理石―――
次いで繰り出される少女の尖りに対して、降参の諸手を上げながら相対する。縦に往復する帽子の鍔で、商品の確認の伺いに応じた。下方から飛び出す言葉は、斬りあがる刃のごとく。
やがて、見えない刀でもって袈裟斬りにされたようなうめき声に近い声色を零し始める

「いや、そのお言葉だけで充分に発想豊にございますれば―――胸の城壁はいずれ物語、年かさを経て育つものと伺っておりますれば…」

腰が砕ける寸前。しかし少女の求める声が方向性をもって言い重ねられたような気がして、またしても矢面に足を据える。本の出処。――この少女は本と世界を繋げている。

「これは失礼いたしました。とても造詣深いレディ。残念ながら”血統書”が付けられたものはございませぬ。売り流れてきたものがほとんどとなりましょう。民話は原始的精霊崇拝のを持つ地方のものが多くございます。空や太陽と詠うもので、詩集と相似するものなれば、買取手の趣向が多分に影響した結果でございましょう」