2020/08/28 のログ
■ジーゴ > おいしそうだ。いいにおいがする。
気がついてしまえばもう、頭の中はそれだけになる。
食うに困っていた奴隷だからか、「食欲」には耐えられない。
本人は、肉食獣としての自覚は全くない。
生肉は食べないし、獣としての本能はないつもりだったけれど、いいにおいのする草食獣を前にして
どうしても本能がくすぐられたのかもしれない。
「んッ…」
息継ぎのときに漏れる少し甘い声。
噛みつくようにして吸われる皮膚。
舌のざらつきが肌を何度も刺激して。
手は相手の後頭部、柔らかい白髪と耳を行き来して
柔らかさを堪能する。
何度もキスをして興奮した息を漏らす獣。
相手の赤い目を見て、口にキスをしようとした瞬間に
ふと、我に返る。
「ごめん、無理矢理シようとした」
慌てたように紡がれる言葉。気まずそうにそらす琥珀色の瞳。
すごくおいしそうで、今すぐにでも食べてしまいたくて、
それが食欲ではないことはもうわかってしまった。
それでも、無理強いするのなんて、よくない。
そう思うなけなしの理性は、自分もいつだって、奴隷として、嫌なこととか痛いこととかをなされるがままにして
過ごしてきたから。
人には同じ思いはさせたらいけない、そう思って保たれたなけなしの理性。
こちらの瞳も、欲に揺れている。
相手に少しでも刺激されたらその理性が持つかはわからないけれど。
■はばり > ほんのりとした甘噛み。噛めば噛むほど甘やかな味が舌を触る。
ビクビクと揺れる頭と耳は柔らかく、肉そのものも女性的でしなやかだ。
唇への口づけすら受け入れようと覚悟を決めた己は、しかし相手が止まったことですんでの理性は止まりを見せた。
「……っ、ハァ……ァ」
無意識に息を止めていたらしい。動悸は激しく熱ぼったい吐息が吐き出された。
獣は全力で逃げるのが道理だというのに、怖気付いたように静止してしまっていた。
このまま椅子に組み伏せられて犯される。神仏を前に淫蕩に浸る。
そんな光景を幻視したのもつかの間のこと。
「……いや、気にしないでくだせぇ。何も言えなかったわっちゃも悪い。
ちと突飛ばして逃げりゃ問題なかったが……なんかそういう気にもなれんでよぅ」
はは、と乾いた笑いを零した。
同じ立場、同じ境遇。思い描く光景は似たようなものだろう。
相手とて無理やりされたことがあるのかもしれないし、己に同じようなことをしでかすかもしれない。
今は彼は抑えているけれど。
今度はこちらから近づき、彼の頭を撫でようとする。
「……掃除終えたら幾らでも相手してやりやすよ。
溜まってる……いや腹ァ減ってんでしょ。多少はわっちゃも付き合ってやりやすから。それまでは待っててくだせぇ。『待て』出来やすよね」
■ジーゴ > 「ほっんと、ごめん」
まだ少し荒い息の中、続く言葉も申し訳なさそうに謝るもの。
それでも、ギリギリで保たれた理性。
もちろん、既に現時点でも、突き飛ばされても文句は言えないし、
教会の偉い人に突き出されても仕方が無いところだ。
頭を触られることは勿論受け入れて
今は帽子の下に隠れているけれど、人の髪とは違うモフモフ感と狼耳の気配が相手にも伝わるだろうか。
「『待て』ってオレ、犬じゃねーし、オオカミだし。
な、オオカミ!」
かぶっている帽子を脱いで。文句を言うかのような言葉は軽く笑ったもの。
相手が嫌で無ければ、さっきのまま続けても良かったのかもしれないが、衝動だけで相手をくみ伏してしまわなくてよかったと心底思った。
「な、早くそうじしよ。オレも手伝うから早くおわらせよ」
続きがしたい…小さく付け足された言葉。
ホウキだとか、雑巾だとかとにかく何でも掃除を手伝おうと試みて。
■はばり > 「ようござんす」
相手の荒い息に、相手の瞳に、ぞくぞくとざわついた心地を抱いているのはひた隠しにする。
被捕食者である手前には、どうあってもぬぐえない感覚が身体に染みついてしまっている。
のらりくらりと返していても、今は隠すのに精いっぱい。
頭を撫でたことで、人の頭にはない感覚に眼をうとりと細めた。
「はいはい、犬にせよ狼にせよ、どちらにしてもかいらしいことには変わりありやせんよ。
見たトコ同い年くらいなのに、兄さんは随分とかあいいもんで。
……予定と狂いやしたが、それならちゃきちゃきやりやしょう。
少し時間はかかりやすが、それまでに萎えてないと良いですねぇ」
手元に手繰り寄せた雑巾を彼に放り、共に掃除を行うことを許諾した。床から椅子。磨く拭く掃く様々な清掃活動をこれから行うことになるだろう。
それまでに彼が飢えたままならば、存分に草食動物の身を味合わせたに違いない。飢えが満たされるまで何度も何度も甲斐甲斐しく付き合ったに違いない。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からはばりさんが去りました。
■ジーゴ > 「うっさい」
かわいいって言われると照れて目をそらした。
まだ、昂ぶりをおさめられていない体。
相手の香りと指先に触った白髪と耳の感触。
思い出しただけでも、体がゾクゾクする。
「さっさとやろう」
投げられた雑巾を掴むと、とにかく床、椅子ありとあらゆるところの掃除を始めて。
すばしっこくて労働にも慣れた獣が二人。
きっと面積の割にかなり伸すピートで掃除はこなされていき…
その後で、教会の暗がりでお互いの昂ぶりをおさめるために何度も何度も食欲を満たすような交わりがあったであろう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジーゴさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエイガー・クロードさんが現れました。
■エイガー・クロード > 平民地区に貴族はなかなか立ち入ることはない。
平民からよく思われていないのもそうだが、そもそも地味な後継につまらなくなってしまうのが主だ。
彼もそんな貴族の一人……ではない。
彼は騎士である為、こんな真っ昼間でもこういう場所に訪れることはある。
とは言っても単純な見回り程度であり、そこまで気は張り詰めていない。
……こういった場所で気は張り詰めていないが、むしろ主に自身がいる貴族のいる富裕地区や王城の方が気を張らねばならないとはなんということか。
「まったく、面倒よね……」
そう、憂鬱そうに呟きながら手鏡を見て自身の薄いながらもしてある化粧を確認するのだった。