2020/08/16 のログ
■ジーゴ > 「あ…ごめん!…なさい、だいじょうぶ?」
自分が急に話しかけたからだろう、
少女の頭の上、ぶつけると痛い部分に本を落としてしまうのを見ると目を丸くして謝った。
「てつだいます」
相手から渡された加害本を両手で受けとって、棚の上に手をのばす。
「このへん?」
本のタイトルは読めないし、本を並べる順番のルールも分からない。
少女が手をのばしていた辺り
なんとなく、この本が入りそうな隙間に手をのばして本を棚に置こうとする。
少女よりは背が高い少年が頭の上に手をのばしてやっと
本棚に本が戻せるだろうか。
■フォティア > 「だ、大丈夫です。だいじょぶ。 わたしが、粗忽なので」
ぶっちゃけ、たまにやるのだ。
すこしばかりぞんざいに本を扱おうとすれば、まるで復讐されるかのように今のように頭に落ちてきたり、積み上げた本をまとめて運ぼうとすれば、一番上の本が雪崩れて足先に落ちてきたり。
ちょっぴり情けなさそうに笑って、受け取られた本が、戻されるべき場所へと伸ばされていく様子を見守る。
「ええ、そこ……」
問いかけに、こくこくと何度か首を縦に揺らして応じると、さすがに自分がギリギリ届かなかっただけあって、少し上背があれば、問題なく戻されていく……ように見えた。
ホッとして胸を撫で下ろし。
「ありがとうございます、助かりました」
照れ臭そうに笑って、ぺこりと深めに頭を下げた。
■ジーゴ > 「よかった」
ちゃんと本をしまうことができたから嬉しくて
はにかむように笑うと見える獣の牙。
笑ってしまってから、気がついたように口角を下げて
牙を隠した。
きょろきょろとたくさんの本が並んだ書架を見渡して
何かを探すような素振り。
でも本のタイトルも読めないし、直ぐに諦めて
「今日はまだ、おしまいじゃない?」
もう陽が落ちた時間。
閉店の時間を気にして問いかけた。
■フォティア > 書架を見渡すようなお客の仕草に、少し考えるような仕草。
そして確認の言葉に柔らかく笑って頷き返した。
「ええ。もう少し、時間に余裕がありますよ? 何か、お探しの本があれば、どうぞ」
本当は嘘。
本来はとっくに店仕舞いの時間だけれど、本の整頓を手伝ってくれた少年に対する、ささやかな心遣い。
じっと見ていたら、気を遣ってしまうかもしれないと自身は一度カウンタへと足を向け。
「サービスのお茶をお入れしますね?」
これはただの無料サービス。
子供たちは好きなだけ本を開いて確かめたり、挿絵を確認し本を選ぶ。
彼もそのタイプかもしれないと、ふと、隣の棚を掌で示し。
「動物や植物とか……狼の、図鑑は、あちらの棚にありますよ?」
確か、以前それを選んで借りてくれたお客様だ。
余計なお世話かもしれないと思いつつ、差し出口。
■ジーゴ > 「ありがとう」
お茶を入れてもらえるなんて、喜びで目が輝いた。
邪険にされることは多くても、ミレー以外と同じように扱ってもらうことは珍しくて、素直に喜んだ。
「オオカミ!」
狼の本がある場所を教えてもらうと、喜んで
獣の耳をピコンと上に上げるけれど
「あ…オレ、今日はオオカミの図鑑じゃなくて」
なんていったらいいんだろう…
借りたい本はあるのに、うまく言えなくて口ごもる
しばらく時間をかけて、言葉を選ぶように
「もじがよめるようになる本ありますか?」
文字が読めないことは彼の生活を不便なものにしているから、
文字の勉強をしたいと思っていて。
でも、文字が読めないからそもそも本は読めないし、
何から始めたらいいのか分からなくて
本のプロである少女に相談しようというのが
今日この店を訪ねた理由だ。
■フォティア > 自身が魔族との混血であるという身の上から、意味なく忌まれることも多い。
ゆえに、種を理由に誰かを排斥したり態度を変える気はさらさらない。
この店を訪れる客は、みな同じサービスを提供するものだ。
カウンターにて、安息作用のあるハーブティを淹れて、砂糖壺とともにトレイに載せつつ……彼の要望を耳にすれば、ぱっと表情を輝かせた。
そして、トレイを小さなテーブルに置くと、いそいそと絵本のコーナーへと。
一冊の本を抱えて、戻ってくると──
「此方はいかがでしょう? 絵に描かれたもののスペルを、一緒に記載されています。つまり、この絵は……りんご。この文字は『りんご』と書かれています、その最初の文字が、これ」
文字を絵本で教えたいという母親は少なくない。
ゆえに、そのとっかかりにちょうどいい本を提供することも、少なくない。
描かれたイラストの名称の、最初の一文字を覚えていけば、自然と文字が覚えられる仕組み。
「じつは……この店でも時折、子供たちに読み聞かせや、文字を教える時間をとったりもしています。もしも、時間が合えば参加してください」
文字を読めない子供は少なくない、けれど、文字を読む子供が増えれば、本屋としても顧客を増やす切欠になる、ゆえに。
■ジーゴ > 小さなテーブルの横にある椅子に腰をかけて
ハーブティーに手をのばす。
なんかすごい落ち着く味だ。
「すごい!ありがとう」
本は文字が書かれているもの。
つまり文字が読めないと本は読めないと思っていたから
本当に「文字を覚えるための本」があることに感心して、声を漏らす。
「り…ん……ご」
飲みかけのカップをテーブルに戻して、持ってきてもらった本の頁に目を落とす。
スペルをまじまじと眺めた。
もちろん、リンゴのことは知っているから絵を見ることで
理解することはできるけれど。
文字を見ると一気に分からなくなる。
「りんご…」
繰り返し声に出して読んで。
本の表面。スペルの部分を手でなぞるようにした。
「み…か……ん」
次のページも果物だったようだ。
小難しい顔をしながら、またスペルをなぞった。
むつかしい…
そもそも文字の形が難しいし、数も多い。
いつになったら全部覚えられるだろうかと、少し暗い顔をした。
「んー…」
続く言葉に少し眉に力を入れて考え込んだ。
そしてゆるゆると首を横にふった。
「こどもがいるときは来ない」
子どもはミレーに容赦が無い。
特に平民街に来るような子どもは、ミレーを見たらそっとはしておかないだろう。
「この本かりられますか?」
またしても、貯めてきたお金。
小銭ばかりのそれをポケットから出して、そのまま相手に差し出した。
何日借りられるかはわからないけれど、最近稼いだ金を全て持ってきたから、少なくとも1日は借りられるだろうと期待して。
■フォティア > 「まずは、最初の一文字だけ、覚えるように意識するといいですよ?」
そうしていつしか自然に、文字という形に馴染みやすくなる。
街の看板に、落書きに、その文字を見出すこともあるだろう。
そうして好奇心をくすぐられて、文字をまた覚えていく。
一度にすべて覚える必要はないのだから。
「ええ、じゃあ……何日借りますか?」
差し出された小銭を、きっちりと誤魔化すことなく、彼の希望を聞いて指で取り分ける。
しかしこんな清算方法では、ぼられる可能性も大きいだろう。
小銭一つ一つを「いちまい、にまい」とゆっくりと彼の目の前で数えながら
「次は、計算の本も、よいものを見繕っておきますね?」
少し悪戯っぽく、そう告げた。
一つできることが増えれば、困ることが一つ減る。世の中はそういうものだ。
本日最後のお客様へと優しい文字の本を送り出して。
──本日の貸本屋は業務を終えるのだろう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からフォティアさんが去りました。
■ジーゴ > 「りんごの、り、みかんの、み、いぬの、い」
ページをめくっては、最初の文字だけを繰り返した。
「3日おねがいします」
指で3を示して、依頼した。
相手が特に丁寧に小銭を数えてくれるのを見つめて
幾枚かの小銭が戻ってくるのを見ると満足そうに頷いた。
数字がようやく読める程度の少年は計算ができないのも喫緊の課題だ。
その前に文字が読めないと計算の本は読めない。
少々先は長そうだと内心冷や汗をかく。
ハーブティを飲み終わると、文字を覚えるための絵本を大切そうに抱えて。
「ありがとうございました」
お礼を言うと、来たときと同じように、平民街の石畳を小さな音を立てて駆けていく。
この後、三日間は
「りんご…みかん…いぬ…ねこ…」
寝床でうつぶせになって、ワクワクしながら頁をめくって
一生懸命、文字の練習をする少年がいたとか。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジーゴさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に黒須さんが現れました。
■黒須 > (とある平民地区の夜。
今は誰もいない静かな夜がそこにあった。
ここの通りにある店はどこも昼まで動いている店ばかりのため、夜は誰もいなくなったかのように静かになる。)
「…。」
(そんな中、黒須は1人、屋根の上に居た。
1番高い上の方に腰を下ろしながら街を見下ろし、タバコを蒸かしいた。
暇そうで、寂しそうな姿をしていながらもその顔は平気そうなポーカーフェイスのまま。
誰も来ないだろうと思い、1人を過ごせるだろうと思いながら過ごし続け、煙を吐き、月を隠しながら眺め続ける。)
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から黒須さんが去りました。