2020/06/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/訓練場」に影時さんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/訓練場」にシロナさんが現れました。
■影時 > ―― 一度あったことは、二度ある。
かの城塞都市での戦役が長引いているから、なのだろうか。
収入や実戦経験を狙って、傭兵を兼業する腕利きの冒険者がこぞって戦場に向かって出払う。
我関せずを決め込み、見向きもされない難易度の依頼を漁っていた己に属する冒険者ギルドからお呼びがかかる。
再び、訓練場の監督や講師をせよ、という依頼だ。
高額ではないにしろ、妥当な範囲と判断できる報酬の提示であれば、断る理由はない。
周囲に壁があるせいで、聊か風通しに難がある点さえ我慢すれば――。
「宿に帰る前に、風呂屋でも寄っていきたい処だなァ。この暑さは」
そんな嘆息交じりに嘯く声が、夕刻を過ぎた平民地区の一角に設営された訓練場の喧騒に溶ける。
この辺りではそう見かけない羽織袴姿で、腕組をしながら思い思いの鍛錬に打ち込む冒険者達を眺め遣ろう。
腰が引けている姿もあれば、堂に行った構えを見せる姿もある。
卸したての剣を磨く姿があれば、仕損じて刃毀れさせた剣の研ぎ代に悩む姿もある。
「手前ェで仕損じた剣の研ぎ代は、出んぞ。適度な仕事を受けてから帰るこったな」
ご愁傷様、と。肩を竦めながら告げて、この場を遣うのが初めてと思しい姿には、あそこの模擬武器を使えと案内しよう。
使い古しではあるけれども素振りやら、体捌きを確かめるにいい木剣や棒の類であれば、そこにある。
■シロナ > ―――少女は、厳密に言えば冒険者ではない、登録などしていないのだから。
それでも、冒険者ギルド主催で、戦闘訓練を行うという話を耳にしたのだ、参加自体は自由であり、興味があればそこに行けばいいとの話。
その中の講師が―――母親が雇っている冒険者で、叔母……じゃなかった、ラファルちゃんのお師匠様となれば、行かない理由はない。
屹度すごい技を教えてくれるに違いない、特に筋肉を鍛えるのにすごくいい方法とか!とか!
ラファルちゃんや、そのお師匠さんはいつも忙しいのか、家で修行することも無いし、すごいチャンスじゃね!?と飛び込んだのである。
冒険者の中に交じりながら、きょときょとと周囲を見回す、どれもこれも筋肉で汗臭くて
「―――ふへ。」
ちょっとトリップしてしまいそうだ、理想郷というのか此処は、戦士ギルドもいいけれど、彼らとはまた違った筋肉がいる、うん、いいね!
ちょっと、と言いつつガッツリとトリップし、遠くを見ていた視線は、講師のお言葉によって引き戻された。
は、と意識を戻してみれば、指さしたところ、木の剣や棍棒などがある。
あれらを使おうと思うけれど、軽すぎるし、直ぐ折ってしまいそう、正直、今使っているハルバートだって、気を抜けばぐにゃりと歪んだり折れたりしてしまうのだ。
なので、講師に向かい、挙手をする。
「せんせー。素手格闘とかも教えてくれるのー?」
一番ぶっ壊れないのが、爪や牙や、素手。
今この周囲の冒険者には、武器を持たない人はいないらしく、ぎょっとした表情でこちらを見る。
初心者で素手という選択は、さすがに珍しいのかもしれぬ。
■影時 > 冒険者の個々人の技能はまちまちだ。だが、少なくとも戦えることは活動するにあたって必須事項であろう。
採取のみで生計を立てるスタイルも皆無ではないにしろ、護身ができなければどうしようもない。
行き先の安全を保証することなぞ、神でも仏でもない人間には到底出来ないのだから。
伝授しようにも困る奥義の類は、もともと衆人環視の場所で使う気にはならない。
昨今の出来事を見るに、街中であれば記録者の目が跋扈していていてもおかしくはない。
その点、この身を晒して活動するにあたり、左腰に帯びた太刀の存在は有難い。
剣士としての心得も十二分に持ち合わせていれば、そのように振舞うに何の不自由もない。
初めての使用者となる一組の冒険者を模擬武器の置き場に案内し、自由に見学しても構わないと告げて離れれば。
「……――ン?」
見ない顔だ。だが、一瞬。腰の太刀が何かの気配を悟ったのか、僅かに震えた気がした。
何か陶然と何処ぞの方角にトリップしていたような有様に、思わず胡乱げな顔をしながら、観察の目を向けた処に。
「必要ってなら、教えちゃァいるな。そっちの手管を遣う方かね?お嬢ちゃん」
響く問いに頷き、応えよう。駆け出しにはお勧めはしていないが、無手格闘の類も請われれば教授する。
まだまだ自信がない者にとって、武器の有無というのは安心感の補強に繋がる。
彼女はどうだろうか? 駆け出しか。それとも、向こう見ずか。或いは心得のある者か。
■シロナ > 「――――?」
ぞくん
背筋が凍る気がした、それは、かの御仁の視線がこちらに来る前の話、理解のできない恐怖が、少女に沸き上がったような気もした。
―――平静に
―――平静に
―――平静に。
落ち着いた。落ち着けた。一体、何だったのだろう、圧倒的な重圧のようなもの、しかもそれは、他の人はだれ一人気が付いてない、つまり、自分だけが理解できたというのかそれとも、自分の身に放たれたのだろうか。
判らないけれど、でも、気になった、彼の腰に佩かれている刀に。ラファルちゃんとおそろいのそれ。ラファルちゃん自体、滅多に抜こうとしない其れと同じ―――刀。
ぷるぷる、と一度身を震わせて、刀から意識を御仁へとむけなおす。
に、といつものように、笑うことに成功する。
「アタイ、武器も使うけれど、こっちもいける口でさ。」
問いかけに対して、少女は半身を開くように足を引く、重心を落として、踏ん張る形へと。そして持ち上げられる腕、半ば抱き着こうとするような形は武術の型。
レスリングという―――奴隷たちの戦いの方法ともいえる、パンクラチオンを昇華したそれ。
プロではない、しかし、全くの心得がないという訳でもなく、それで戦う事もまた、可能と思わせるレベル。
にまぁ、と笑って見せる。
「どーぉ?いける?」
みぎてひだりてわきわきにぎにぎ、じっと、講師の眼を見て、動きを探るように、問いかけた。
■影時 > “それ”は今の使い手に対し、何かを働きかけることは無い。囁くことは無い。
竜の気配を感じると時折、震える。その様に何か意志のようなものが宿っている節があっても、それだけだ。
今のところ、“それ”は武器としての分を弁えている。節度を弁えている。であれば問題はない。
人前に出る際に他者の注意を向けさせる関係上、抜く機会はそれなりに多い。
竜を殺し、龍を屠る――刃。その真髄を抜きにしても、己が全力を受け止められる武の器だ。
「成ァる程。そっちの類か」
レスリング、とかいうのだろうか。この辺りの徒手格闘の型の名を思い返しつつ、顎を摩る。
戦場に赴いた際、中々相手にすることは無い類であるが、知識としては知りえている。
魔物相手に通用するかどうかは、結局個々人次第だ。だが、経験を積みたいということであれば是非もない。
足元を数度、踏み込む。踏みしめる。地面は石畳などではなく、踏み固められた剥き出しの土だ。
欲を言うとなれば、畳かマットが敷かれた場所の方が組手をする場としては良かったが。
「俺流で良けりゃ、イイぞ。生憎と何流とか名乗れるほど誇らしいモンでもなくてなあ」
問題は、ない。羽織の袖の袂から、しゅると取り出す紐を使って邪魔にならないようたすき掛けをする。
そうすることで、組み手の際に邪魔になる袖を押さえつつ、くいと顎をしゃくろう。
赴く先は、訓練場で今のところ使われていない真ん中付近。ぶつかり合うには然程困ることは無いだろう。
いつでもいいぞ、と言い添えながら、注意深く相手の全身を遠く、見据えるように捉えて。
■シロナ > 背筋を滑るような、冷たい感覚、恐怖―――それは一瞬の事とは言わない、今もまだ、チリチリチリチリ、己の危機感をあおるような存在感として存在する。
しかしながら、制御されているのか、最初の一瞬に感じたほどのものでなくなり、今は気にしなくても大丈夫――とは言いたくないが、あの御仁が、おもむろに引き抜いてきたりとか、そういうことはないと感じられる。
だから、今は少し気を向ける程度でも大丈夫だろうと感じた。
「うん!だって―――、武器が壊れたときに、何もできません!じゃ話にならないし。
それに、肉弾戦って、ぶつかり合うの、とても、いいよね!」
さわやかに言い切る少女は、ぱぁんと、掌に拳を当てて音を鳴らす。自分の肉体にはそれなりに自信があるし、訓練もしているのだ。
肉弾戦というのは筋肉と筋肉のぶつかりがあり、それがとってもいいよね、とのんびり宣う小娘は、八重歯を見せてにかっと笑う。
足元を踏みしめ確認している彼、まあ、石畳ではないことに感謝をした方がいいだろうお互い、地面ならばまだ柔らかい。
投げる時に加減をすれば、早々大変なことにはならないだろう、彼の技術ならば、少女の肉体強度ならば。
圧倒的な実力差は、不慣れを差し引いても、勝てる気がしないというものだ。
「あは。元々流派なんてないようなもんだよ。
―――いよっしゃぁ!せんせゲット!!」
奴隷が生き延びるために学んだともいわれる奴隷格闘術、それを、体系化し、ルールを決めたような程度のもの。
そもそもとして、技術はあるが、流派なんて程になっているようなものでもなかろう。
それはそれとして、他の冒険者を差し置いて少女は個人レッスン権を一番最初にもぎ取れたのでガッツポーズ。
周囲の冒険者は、あ、と今更ながらに気が付いたようだ。
早い者勝ちだもんねーと少女は意気揚々と前に。
「はぁい!」
顎でしゃくる合図に従うように、少女は腰を低くし、低姿勢からの突撃、相手の腰のあたりに狙いを定める。
一歩、地面を踏みしめて加速し、二歩、加速に加速を重ねて、己の肉体を質量と変えていく。三歩目で全速となり、慣性を乗せて。
勢いよく、ぶつかっていく。体勢を崩してからの投げを基本とする格闘技が故に、そこから流れにより、打撃に行くか、組に行くか、流れを考える。
■影時 > “それ”の感覚は、偶々目についた、感じたものを見たという位なのだろう。
今の使い手も含めて幸いと言えるのは、悪竜や邪竜などと呼ばれる類のものに遇ったことがない点か。
仮にそうであれば、“それ”はきっと一層に怒り、叫ぶように使い手に働きかけるのだろうか。
屠るべき者、打つべきモノではないとなれば、再び瞼を閉じてまどろむように、在る。
「嫌いじゃない、というより、俺にとっちゃあ手管の一つに過ぎねぇという位だ。
他に楽に処せるコトがなけりゃ、そうする。
駆け出しに一から十まで教えるには、身体作り含めて大変だろう?」
言葉としては、間違いではない。
故郷の地における剣術は組打や投技等も含めてひとつの体系を成しているというものが、いくつもあった。
時に応じて拘ることなく、不動心を以て為すべきことを為す。
そこに好悪が挟まる余地はない。一つに拘り過ぎて、戦いを愉しめないというのも本末転倒だ。
その点を考えれば、なるほど。見た目通りに若いか。
己の言葉と向こうの言葉と。相互のスタンスを吟味しつつ、口の端を釣り上げ。
「早速――……来るか!」
訓練場の真ん中に立ちつつ、ぐっと両膝を曲げて思いっきり踏ん張る。
随分と勢いがある。重みがある。其処を重心を低くしつつ、堪えて捌きにかかかろう。
左手で向こうの右肩口を押さえ、右手は腰裏のベルトを掴もうとしながら、摺り足で相手の左足側の内を外側に向かって払ってゆく。
全て叶うとなれば、勢いと重心の変化を利用し、己の躰の外側に向かって投げ遣ることが出来るだろう。
殴り合いの応酬ではなく、組打の鍛錬となれば、成る程。同様にできる人間が居るまい。そう感じつつ。
■シロナ > ―――幸運なのか、不運なのだろうか。種族としては、『魔竜』となる、母親の片割れの先祖に魔が存在し、その遺伝と、もう片割れの母親の竜の血脈に反応した結果の存在。
生まれはそうだとして、邪悪かどうかでいえば―――今はまだ、悪かどうかでいえば―――それも、今はまだ。
今は只幼子の様に見るものを楽しみ、触れるものを悦び、生きている、微睡むそれを、起こすものではなかったのだろう。
「あー。そこはこー。嘘でも同意しとくところじゃないのー?
その体作りがとっても気持ちいいと思うんだよね、少しずつついてくる力こぶとか、割れてくる腹筋とか……」
邪悪かもしれない筋肉信奉家である。筋肉があれば何とかできるとか、脳みそも筋肉で出来そうな子だ。
ラファルとは別の意味での屈託のないお子様である。
見た目は叔母よりも年を取っていても、年齢も経験も、叔母よりも少ない、彼の考えるとおりに若いのだ。
だからこそ、フェイントのフェの字もないような、直線速度の加速激突。
「だって、せんせのような達人を読もうなんて100年早いとか言われそうだし。
それならぶつかって、何処を伸ばして何処を削るか聞いた方が早いし!」
全力のタックルは、並の人間であればそれこそ受け止めることなどできはしない、竜の激突だ。
が、彼は母に力をもらい、姉の師である、実に、並の人間とは言い難い人外人。遠慮なんてしてたら、ひどい目に会うはずだ。
勢いを、つぶすというものではないのだろう、あれ?と思ったときにはくるんと視界が反転する。
外側に力をずらされたような感覚と共に、くるんと反転して背中から落ちていく。
―――びたぁん!
とすごい音がして、地面にたたきつけられる少女。
「かふぁっ!」
肺腑から息を吐き出し、そのままネックスプリングで起き上がる。
地面にたたきつけられたとして、竜の体力はスタミナは、まだまだこんなもんじゃない。
「すっげぇ!」
東洋の技というものなのだろう、見たことのない動きに、目を輝かせながら。
それでも、もう一度、少女は構える。さっきよりも投げられた直後故に接近してるから、そのまま正面から体ごとぶつかって、行くことにした。
■影時 > だが、そんな霊刀とも妖刀ともつかぬモノの出番は今回はない。
刃の出番となれば、訓練場に設置されている模擬武器を使えばそれで事足りる。
「俺は俺の好きなモノに正直でありたくてな。
……生憎、お嬢ちゃんと愛でてェ奴が違うと思うんだよなァ。
好きなもんの云々の是非をどうこういうのは、野暮の極みだが」
好きなのはいいが、それを思うままに遣れない位に食い詰めてる者が冒険者になることもある時世だ。
翻って考えれば、喰うに困らないかつ、幅広く食事が出来て、さらに鍛錬の時間を得ることが出来る家の出だと。
先程の刀が微睡むかの如く、震えた具合を鑑みれば予感があるが、道楽ができる身であると察する。
若さに任せて好きにできるのは、ある意味では羨ましいものだ。
一挙一動に粗削りな若さがある。虚を突くことを考えず、向こう見ずに。
「ははは、そうでもないぞ。存外な。
勢い任せに組み打ってくるなら、俺としては捌くには困らンな」
叩き伏せる、屈服させるというのは今回はなしだ。それでは訓練にならない。
同じ体格の人間の動きと考えるには、力があり過ぎる動きに対処できたのは、ある種の慣れがあるからこそ。
つまりは向こうの血族の弟子に教えているから、であろう。
速度に対して此方はパワーという違いはあっても、速度の向上に応じて威力は上がる。
「真っ正面からというのは、つくづく向こう見ずだ……な!」
相互の体格の差を鑑みる。一回り小さい背丈の少女がぶつかってくる図は、傍目から羨ましいと言えるのだろうか。
腰や膝を曲げれば目線の高さを合わせることが出来るにしろ、捌き方には注意が必要だ。
一瞬息を吸い、体内で氣を張り詰めさせながら、両足を踏みしめてタックルを受ける。両手を向こうの肩に添えつつ、受け止める。
勢いの強さに靴底を擦らし、地面に轍を作りながら堪え、返しの挙動を起こす。
両足を踏ん張りつつ、右手を一旦離す。
コンパクトな振りで向こうの顎下を手の甲でこつん、と叩き上げ、続けざまに軽く握った左拳を向こうの腹と胸の境目に埋めてゆく。
一つの挙動で注意を逸らし、続く一手で相互の勢いを響かせるように攻撃を叩き込む。その感覚を身を以て教えるために。