2020/02/27 のログ
ネメシス > 「なるほどね。
私はまだそういった経験はないから参考にさせてもらうわ。」

ロヴィの回答には培ってきたであろう経験が伺える。
騎士団の任務中に遭遇した場合、やっかいな相手になりそうである。

「薬も持っていくから、どちらかが怪我したらちゃんと使いましょうか。

謝らないで。 新人が慎重になるのは当たり前じゃない。」

今度は魚にぱつくつきながら、にこにこと笑みを浮かべる。

「変わった依頼ってどんなのかしら?
単独で受けないといけないような内容になるのよね?

パートナーは居ないわね。
新人についてくれるような冒険者って基本的にいないじゃない?」

大げさに肩を竦めて見せる。
あくまで今は新人冒険者なのだ。

ロヴィーサ > 「参考にする? んじゃ全力で逃げる。
 だってほら、自分より上が二人いたらおしまいじゃん?
 まずは逃げる。

 私も逃げられんならさっさと逃げるよ。 自分が仕留めなきゃいけないってなら別だけどさ。」

真面目だなぁ、なんて言いながらにこにこと笑顔を向ける相手ににひ、と笑って。

「あー、うん、まあ。
 ほら、お貴族様のパーティに出席してーとか、そういうの。

 苦手なんだよねああいうとこ。」

うげ、と舌を出しながらうんざりした顔をして。
受けなきゃいけない理由があってさー、なんてぼやかしながら。

「そう?
 さっきみたいにこうやって仕事終わったから誰か一緒に、ってなればいるでしょ、普通に。
 だいじょーぶだいじょーぶ、初対面で私なんかに声かけるんだから、いるでしょたくさん。

 いいひととかもいるんじゃないのー? あれ、もしかして怪我でもさせたら私ぶっ飛ばされる奴? やっばー。」

なんて、うりうりと肘でつつきながらよくしゃべるよくしゃべる。

ネメシス > 「やっぱり逃げるのが最適なのね。
勉強になったわ。」

どちらかと言えば、襲う側の立場で聞いていた。
仮に騎士団の活動中に遭遇したとしてもこちらが深追いしなければ良さそうと判断。
団員で彼女の相手をするのは恐らく相当な損害が出てしまうだろう。

「ロヴィは器量が良い物ね。
呼ばれるのも納得だわ。」

改めてじっくり見る迄もなく、整った顔立ち。
おまけに体まで引き締まっているとなれば貴族衆が手を付けようとするのもよくわかる。
口には出していないが、ティシフォネもまた興味を持っているのだから。

「う~ん、流石に誰彼なしに声を掛けるってわけにはいかないじゃない?
こう見えてロヴィのことを見て大丈夫そうだと判断したから話しかけたのよ。

別にぶっ飛ばすような相手は居ないから安心して。」

突かれると、されるがままで今度はサラダを口にして。
一通り食べ終われば、布で口元を拭う。

「それじゃ、そろそろ明日に備えましょうか。」

ロヴィーサ > 「もちろん。 なーに、任せときなさいな。
 そんなことになったら私が一発かますから。

 もー、何言ってんのよ。
 貴方もホントにいないのーいいひと。 それくらいありそうな見た目してるじゃない。
 何より若そうだし。

 女同士で褒めたってなーんも出ないわよ。」

褒められれば、へへへー、っと分かりやすく照れて、歯を見せて笑う。
まあまあ、褒めてくれたまい、私は褒められて伸びるタイプ、とか適当なことを言い募り。

「はっは、じゃ、その目に報いるくらいにはがんばりますかね。」

ネメシス > 「そうね、是非お願いするわね。」

はたして、彼女の一発とはどれくらいだろうか?
名うての冒険者の強さを知っているだけに、恐ろしさすら感じていた。

「いいひとねえ…まあ、居ない訳でもないんだけど。
でも、相手は女の人よ?」

押し切られてしまい、これ位ならいいかと口にする。

「じゃあ、明日は遺跡で。」

これ以上は深酒になりそうなので、この辺で切り上げる。
明日の朝は遺跡の前で合流となるだろうか。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からネメシスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からロヴィーサさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にテアンさんが現れました。
テアン > 布のベルトで巻いた本を抱えてストリートを歩いて行く。
日は完全に落ちており、周囲は店の明りなどで照らされている…。

「ちょっと遅くなったかな…。」

ぽつり、とした小さな呟き。
少年はといえば学業を済ませ、買い物をしてからの帰り道である。
夕食も今日は学友と済ませてきた。

家路を急ぐ少年ではあるが、あまり遅くなるようならどこかで部屋をとりなさい、とは言われている。
が、まぁ帰宅するのに越したことはないので多少急いでいる、というわけだ。
回りを歩いて行くのは仕事を終えた商人や傭兵。冒険者と言った人が多い。
漂うのは酒の匂いだろうか。いずれ歳をとれば酒場に通う事もあるかもしれない。

少し気もそぞろになっていれば、誰かとぶつかる事もあるかもしれない。
または、場所に似合わない姿を目に止められるかも…?

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にルエットさんが現れました。
ルエット > 「はふっ………はふっ………早くっ、帰らないと………また、怒られ、ちゃう………っ」

更けきった夜の繁華街を、ローブ姿の少女が駆ける。
テアンと同様に、その手に抱えるのはバンドで束ねられた数冊の本。
多くは魔術理論の解説などの教科書で、コクマー=ラジエル学院付属図書館の蔵書を表す印が貼られているものも。
肩から下げている鞄を見ても、この少女が学生であることは容易に見て取れるだろう。テアンと同じである。
――面識があるかどうかは定かでないが。少なくともルエット自身は交友関係は実に狭いし、人見知りの気もある。

今日も今日とて図書館に長居、しかる後に書店に長居してしまったルエット。
風を孕んではためくローブの下、細い脚を懸命に振って家路を急いでいる。
最近はよく歩きよく走るようにしているが、それでも慣れない運動、続けるとどうしても息が上がり目が眩んでしまう。
――そんな、気もそぞろ同士。まるで吸い込まれるように、ぶつかり合ってしまう。

「――んきゃああああっ!!!」

もろともに倒れ込み、ルエットは思わず抱えていた本の束を取り落とす。バンドが外れ、地面に本が散らばる。
テアンは本や荷物をぶち撒けずに済んだだろうか? それとも?

……ちなみに、先に言っておくと。
ルエットが抱えていた本のうち一冊は、男女の睦み合いが赤裸々に描かれたいわゆる『エロ本』である。
表紙だけみればそうとは分からないが、開けば4ページに1ページは挿絵が描かれているような内容。
当然図書館の蔵書じゃないぞ。

テアン > 多少家路を急いでいるとは言え慣れた道。
ぼけーっと歩いているようなもので…なんだか息を切らして走る声というか足音というかするなぁ、と思っていたのだが…。

「…へ?」

間抜けな声をあげてしまうわけで。
曲がり角から急に飛び出てきたローブ姿の少女を認識しての事。
事故の直前。妙に時間がゆっくりに感じる事があるというが少年はまさにそれだった。

が、回避できるというわけではなくて。

両者が倒れ込むというよりはもつれ合うような転び方。
いてて、と声を上げれば目の前に覆いかぶさるようにして少女がいるわけで…。

「…あの。大丈夫ですか?」

と、下から声をあげる。少年とは言え貴族の家系である。
まずレディを心配するような気遣いは覚えている様子。
先に自分が立ち上がって、少女に手を差し出すだろう。本や荷物は二の次ではあるが…。
なんかちらりと視界の端に見えたような、気はした。

ルエット > 「い…………ったぁーー…………っ!」

2つの体がもつれ合い、運動エネルギーに弄ばれるがままに地面に転げ、天地が回る。
ルエットが上になって少年に覆いかぶさるような姿勢になってようやく止まるが、思考は未だ混乱したままで。
――まず最初に『だれか人にぶつかった』ことを理解し、次いで『その人を組み敷いた状態にある』ことが分かり。

「………………………んひっ!?」

ルエットはお化けでも見たのかと錯覚しそうなほどに甲高く詰まった悲鳴を上げつつ、猫のように飛び退いた。
少年にかぶさる姿勢から、彼の目の前で尻をつく姿勢に。ローブはすっかり土埃まみれだ。
ころんだ拍子に眼鏡もずれ、視界が定まらない。
そんな中でも懸命に前を見据えれば、自分と同じ年の頃と思しき少年がすっくと立ち上がる様子が見える。

「あ、あう、あうあうあ………あわ…わ………ご、ごめんなさいですっ!!
 わたし、急いでて、つい、前が……あううう……ほんとに、ほんとにわたしの不注意で……わたしのバカでぇ……」

反射的にルエットは大声を上げ謝罪の言葉を吐いた。長い黒髪を振り乱し、何度も首を振る。
手を差し出されてもそんな感じで、立ち上がろうとしない。
ひとしきり謝り尽くしたのち、ふと我に帰ったように、大きな丸眼鏡を正して。

「あっ……本、落としちゃったです。あちこちに散らばって……。どうしよう、借り物もあるのに……」

未だ焦燥と混乱で忙しない挙動のまま、周囲に目をやる。

テアン > 先に立ち上がった自分に対し、慌てた様子で謝る。謝り倒す少女。
お互い急いでいればよくある話だとは思う。
なので、気にしないでください、と笑顔を浮かべる。

「僕の方は大丈夫ですから。」

貴女は大丈夫ですか?と気遣う様子を見せながら、
ぱたぱたと長い黒髪が揺れる少女の腕をとって立ち上がらせるだろう。
良かったら、とポケットから綺麗なハンカチを差し出しておく。

それから少年は辺りに散らばった荷物を拾い上げ始めた。
自分の分は散らばったりはしていない。少量の本をまとめたベルトは外れずに済んだようだ。
良かったと思いつつも、それから少女の荷物を拾い上げ始めていく。

「……っ。」

その中で、さっき視界の端に映ったものを拾ってしまうわけで。
少年は顔を赤くしながら、あえてそれを指摘する事はしなかった。
本を拾い上げ、ぱたぱたと埃を叩いていく。
年ごろの少女が『そういう』本を読んでいるという話、気にならないわけはないのだが…。

ルエット > 「だ、大丈夫でしたですか? それならよかったです……いや、よくないですけど。ほんとにすみません。
 わたしも……うん、大したことはなさそうです」

ぶつかった相手が落ち着き払ってこちらに気遣いを向けてくれるのが幸いして、ルエットもすぐに落ち着いてくる。
それでも、語調から焦りが消えるまでに深呼吸5回を要したけれど。

「………ん、ハンカチ。大丈夫です、この程度の汚れ、気にならないです。帰ったらすぐお風呂ですし。
 ……あ、そんな。本まで拾って頂いて……キミ、もしかして『紳士』さんですか?」

ハンカチを差し出されても、固辞。
終始キョドりっぱなしの自分と、流れるように相手を気遣う行動に移る少年との気質の差を実感してしまう。
固辞した後、こんな反応でよかったのかな……とすぐ自省に入ってしまうコミュ障ムーブ。

しかし。さして間をおかず、ルエットは驚愕の事実に気づく。
――地面に落とした本の中に、さきほど書店で買ったばかりの『エロ本』が混ざっていたことを思い出したのだ。
すぐさまキョロキョロと周囲に目配せし、その本がどこにあるかを探す……が、ちょうどテアンが拾い上げたところ。
他の本と同じように拾い上げ、埃を叩く……しかしその直前にわずか、少年の所作が硬直する瞬間を見逃さなかった。

「…………あっ、あっ、あっ、あっ………あの、その、その本、その本、その本はですね、その、えと……。
 違くて、その、ええと、さっき、そこの本屋で、あの、いや違くてっ………あああああ……っ!」

かあっ、とひとりでにルエットの頬が染まる。脂汗がにじむ。舌がもつれ、整然とした言葉を紡げない。
言い訳もまとまらないままルエットは四つん這いで地面を駆け、テアンに詰め寄る。
そして飛びかかるようにその本を奪い取ろうとする……が。指をもつれさせ、叩き落とす形になってしまう。
地面に再び落ちたエロ本、開かれたページにはルエットと同じくらいの歳の娘が男2人に抱かれているイラスト。

「あっ! ………あ、ああ………あわっ、あわわ………………………あああああ………」

いよいよパニック寸前の様子で凍りついてしまうルエット。
顔を手で覆い、指と指の間からその本とテアンを交互に見つつ、悲鳴とも泣き声ともつかぬ声を上げ続ける。

テアン > 「怪我がなくてよかったです。」

差し出したハンカチはしまい込む。
ローブが汚れちゃったなぁ、とそういう心配もしてしまうわけで。
相手もだんだん落ち着いたきた様子。
急いではいたようだから荷物を渡して…と考えていた。

「『紳士』ですか? うーん…どうなんだろ。
自分で紳士です!とはいえませんけど、女性は大切にしないとダメですよね。…って、わぁ!?」

さっきのエロ本、見なかったことにして差しだそうとしたのだが…。
ばっしーぃ、と叩き落されてしまった。
いやいやいや、と少年は戸惑った。

「え? あ、いや…まぁ、その。」

しかも落ちた本はまた挿絵部分が広げられているわけで。
恥ずかしい展開、アゲイン。
別に少年としては咎めるつもりはない。言い訳したい気持ちもわかるのだけど。
と、少し困った顔で再度拾い上げた。

「…あの。見てない事にしますから。」

と、フォローになっていないようなフォローをしながらその表情のままで本を差し出した。
気にならないわけもなく、少年もちょっとドキドキはしている。
まぁ、相手の慌てぶりが凄いので逆に落ち着いてしまったという所はあるのだが…。
ひょっとすれば、少年の『性質』が少女の中の淫魔に美味しそうな精の匂いを届けてしまうかも、しれないが。

ルエット > 「う、うあ……ううううう…………み、見られて、見られた………わたしの…………。
 ………そんな、そんなの、見てないことにするなんて………うう………でもっ、見られて、見られてぇ………っ!」

思考がぐちゃぐちゃに混濁していく。同年代の男子に見られるのは、親に見つかるのの次くらいに恥ずかしい。
そんな秘密の、ありったけの勇気を出して購入したエロ本を、こうも早々に他人に見咎められてしまうなんて。
脳と心臓が一度に爆発してしまいそうな羞恥心を感じ、視界すらも眩みそうになる。

――が。それでも。

「……………ふうぅーっ………すぅ…………はぁ…………すぅ…………はぁ…………はふ……」

テアンが、あくまでも紳士的な態度を貫いてくれたことが幸いしてか。ルエットはじきに落ち着きを取り戻していく。
高鳴る心臓と渦を巻く脳髄を落ち着けるように、何度も何度も深呼吸。
少女の熱い吐息と立ち上る汗の香りが、テアンにも届くかもしれない。

「……ふぅ。……そ、そうですよね。見てない。キミは何も見てないです。わたしも何も見てない。
 見てない。見てない、見てない見てない。……大丈夫。ごめんなさい、わたし、もう大丈夫……です……」

未だ苦々しさの残る笑みを作って、テアンに向ける。それでも先程までのパニック状態と比べれば遥かにマシな状態。
そして、本を差し出すテアンを改めて真正面から見据える。そっと白い指を伸ばし、本を受け取る。
――が。その時。

「―――――――ッ!!?」

再びルエットの顔がぼっと紅潮し、目が丸く見開かれる。
テアンの体に秘された『性質』――淫魔の餌としての適正――が、ルエットの感覚器に届いたのだ。
ルエットの魂に刻まれた『封魔の書』の知識、上級淫魔1匹分の知識が、無意識のうちに彼の本質を理解する。

ルエットは『封魔の書』を開いて以降、淫靡な妄想に耽ることが多くなってしまった。
年頃であれば男子を見ても女子を見ても、常に脳裏にスケベな妄想がチラついてしまうのだ。基本的には困った事態。
今日買ったエロ本もそんな妄想を落ち着けるために買った(つもり)だったのだが……。
しかし、ルエットがテアンを見て驚いた理由はもう少し深くて。

――ルエットが脳裏に思い描いたのは、テアンを後ろから抱え、無慈悲に搾精する己の姿。
まさしく淫魔と言うべき厭らしい笑みを纏い、その腕の中で少年は泣きながらも恍惚を浮かべていて……。
……今まで男性を見た時は『自分が犯される』展開しか夢想しなかった。故に、こんな光景を想起すること自体がびっくりで…。

「……………あのっ。
 …………キミも、こういう本、読んだりするですか?」

これまでの慌ただしいお転婆な声色から、うって変わって。やや縺れ気味ながらもしっとりとした舌と唇で、言葉を紡ぐ。
濃茶の瞳をうっとりと伏せながら、つぶやくような甘い声で、そう問いかける。問いかけてしまう。
自分でも思いも寄らない、破廉恥な質問。しかしそんな愚かな問いを自省する羽目になるのはもう少し遅れてから。

テアン > あうあうと困り果てる少女。
…いや、まぁ、気持ちはわからないでもない。
自分だって同じ状況なら羞恥心で死にたくなりそうだ。
…なので、少年としては少し困ったような表情で、でもそこを無為に弄ったりはしなかった。
顔を赤らめて、汗を滲ませて、落ち着かせる為の少女の様子はどことなく色気を感じたが…。

「そ、そうですそうです。僕は何も見てませんから。

…?…あの、どうかしましたか…?」

言葉を肯定しながら、本を手渡す。
落ち着いたのなら、あとは大丈夫だろう…そんな風に思っていたのだが。
不意に驚いたような表情を浮かべる少女に少し不思議そうに小首をかしげる少年。
…無論、自覚のない少年はなぜそういう反応をしたかなど思いも拠らず。

「……えっ。……あ、いや……それは。」

唐突な質問。
気にしないでって言って折り合いをつけたと思ったけど、逆にこちらを恥ずかしがらせるような質問をされた。
こちらはいやがらせなんてしたつもりは無いのだから、やり返される覚えもない。
なので、割と困った様子で少し少女から目を逸らした。
少年だって年ごろである。お家柄、自分で買って持ち帰って…という風にはしづらいが、同年代の学友だっているのだ。
見たことが無い、と言えばうそになる。
それに、なんだか…。

その囁きのような声色に淫靡な雰囲気を感じ、少女を見ていては変になってしまいそうで、目を逸らしてしまったのだ。

ルエット > 当惑の色を見せる少年、茫洋とした表情で眼鏡越しに彼を見つめるルエット。
うわごとめいて下卑た質問を投げかけながらも、その脳内ではなおも彼に対する妄想が渦を巻いていた。
どれだけ妄想のページを捲っても、彼に関するイマジネーションは逆レイプのシチュエーションばかり――。

「……………あっ!? ………わたし………あ、ああああ………あああっ!?」

そうやって気まずい沈黙に陥ること10秒、無限にも等しい間隙を経た後、ようやくルエットは自分のしでかしたことを自覚する。
――なんて恥ずかしい質問を!?
初めて会った子に、同年代の男子に、自分からぶつかってしまった相手に、紳士として対応してくれた男性に……。
――なんて恥ずかしい質問を!??

「あああ………あっ!? あっ、あう、あ、あう、あう、あぅ…………ぅあああああ……っ!!!」

とどめとばかりに、気まずそうな仕草で視線をそむける少年。
それを受けて、ルエットは再びパニックに陥ってしまった。今度は頭を振り乱す余裕すらない。
指先まで凍りつき、震える瞳だけはテアンから離せない。そして今なおも、淫靡な妄想は留まることを知らず流れ続けている。

――やめて! 止めて! なかったことにして! またこっち向いて!

心が悲鳴を上げるが、言葉にならない。ただひたすら、狂ったようなあうあう声が喉から漏れるのみ。
目尻から涙が伝う。全身からどっと脂汗が吹き出し、湯気まで登り始めている。

テアン > どこか淫靡な雰囲気で、ぼうっと見つめてくる少女に目を合わす事ができない。
当然だが恥ずかしい質問だと思った事に対し、少年も結構恥ずかしかったりしたのだ。
妙な気まずさはおおよそ10秒ほど続いただろうか。

正気に戻ったような慌て方であうあうと少女は繰り返し始めた。
最初にぶつかった時と同じような慌て方。
それに気づいて少年は視線を戻すと、なんだかまた落ち着いてしまった。

「あ、いや、その。ごめんなさい。なんか。」

自分が困らせてしまったのか、と勘違いして思わず謝罪の言葉が漏れる。
あの、という風に手を伸ばして少女を制するように―――。

「―――よ、読んだことありますよ。そんな、本。」

ぽろり、と少年から言葉が漏れる。
あれ?と少年は戸惑った。そんな事を言うつもりはなかったのだが。
それは少女の内面が誘いだしたのか、過去にそう仕込まれていたのか。
不意に訪れる少年の無防備さ。その一瞬だけ、強く香る餌としての匂い。
無意識に餌になるようにという行動。

ルエット > 「………う、ううううう………わたしのほうが、ごめんなんですけど………うああああ……」

極限のパニックが続く中、相手が困り果てた様子で謝罪の言葉を返してきても、つい張り合うような言い方をしてしまって。
そんな自分のセリフにまた内心悶絶するという、あからさまな負のループに陥りつつあるこのディスコミュニケーション。
コミュニケーションが苦手であるという自覚はあるのだが、そんな自分をここまで悔いた日はない。

――だが、しかし。

「………………!!」

読んだことある、という少年の述懐。その一言に、ルエットの顔がぱっと晴れた。
嗚咽もピタリと止まり、引きつった自嘲の笑みから、素直に喜びを表現する満面の笑みへとフェードしていく。
薄い唇の合間、白い歯が常夜灯に照らされてキラリと光る。

「……そ、そうですよねっ!! 読みますよね!! みんな読んでますよね!! し、知ってましたっ!!
 よかったです、わたし、安心しましたっ!!」

それでも、その歯の間から紡がれる声は未だ震えが残っているが。ともかく後ろめたさはもう残って居ない様子。
あるいは突き抜けて吹っ切れてしまったか。乙女心は複雑。

ルエットは、テアンが差し出している件の書物をそっと受け取り、大事そうに胸に抱える。
そして、散らばった残りの本も手早くまとめ、バンドで縛るのも億劫なのでそのまま小脇に抱え……。
……ふと、その中から一冊を取り出し、また差し出す。エロ本である。
半ば押し付けるようにそれをテアンの手に握らせてくる。白く暖かく、汗でじっとり湿った手のひらが触れる。

「あのっ……。キミに迷惑掛けちゃったし、これ、あげる。その……えっと、まだ、使ってないし、大丈夫……。
 今日はその……ごめんね、色々と。今度また、落ち着いたときに、その………。
 ………じゃ、じゃあっ! 親が待ってるし、わたし、帰るねっ!」

買ったばかりのエロ本を押し付けると、ルエットはそのまま、会った時と同じように通りを駆け出してしまった。

なんでエロ本を押し付けたのか。
ひとつは、単純にお詫びの品として。『読む』って言ってた以上、きっと無駄な贈り物にはならないから。
もうひとつは、なぜかこの少年と出会ってから、えっちな妄想が止まらないから。
もはや先程のエロ本は自分にとって用を成さない。明日同じ書店に行って、今度は女性上位の本を探さなくちゃ……。
――そんな思考が先走ったから。

当然、『初めて会った人にエロ本を渡す』なんて破廉恥行為を重ねたことを自覚してまた悶絶する羽目になるのだが、それはそう遠からぬ話である。

テアン > わたしのほうが、という相手にいやいやと返す。
なんかお決まりのパターンになりそうで、やっぱりちょっと困った顔をした。
けれど、自分も読んだことあるよ、と言った瞬間であった。
相手の表情がぱっと明るくなったのだ。
あれー…?なんかそれで嬉しくなっちゃうんですか…?と内心は複雑だ。

「あ、いや、まぁ…。そ、そうですね。多分それが普通…ですよ?」

ともあれあのままあうあうされるよりはいい、と肯定しておく。
コミュニケーションって難しいな、と強く感じるやりとりであった。
…それが正しいかどうかは定かではないが…。

そして、押し付けられるエロ本。

いやなんで?と思わず受け取っておきながら、一瞬?を浮かべた少年であったが。
しかし、ふと触れた少女の掌に少し女性を感じてどきりとしてしまうだろう。

「あ、う、うん。気を付けて帰ってね…?」

ぱたぱたと駆け出す少女を見送り、少しの間立ち尽くす少年。
相手の内心の事など知る由もない事だが…しかしそれどころでもなく。
手に持った書籍に視線を落とし、どうしようこれ、と思案する。

少年も家路へとつきながら、置く場所とか、困るなぁ…と一人暮らしではない事を悔やんでいく。
ただ、読んだら読んだで、歳若い少年が我慢できるという事もなく、無駄にはならないだろう。

不思議な人に出会ったな、という感想を強く抱いた日であった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からルエットさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からテアンさんが去りました。