2019/06/29 のログ
シスター・マルレーン > 視線がざくざくと突き刺さって、それがちょびっと痛い。
単なるウェイトレスではあるんだが、こう、胸を強調するような………。
白い素肌の上部が見えるような………。
スカートもなんか割と小さくてピッタリ腰からお尻に張り付くような………。

「ははは、いらっしゃいませー。」

死んだ目になって、何も考えずに給仕をこなすシスター。
シスター、って表記がもはや意味を為さなくなってきた。

さっきから触られそうになるたびに、冒険者稼業で磨いた殺気で相手を圧して危機を脱している。

シスター・マルレーン > 「………………はぁ。」

小さく溜息をつく。ため息の一つでもつかないとやっていられない。
艶やかな、人の眼を引く見た目をしていながら、どうにも気分が重いまま、笑顔だけを浮かべる。
こういった服装で仕事をしなければいけないことは、まあ、無いわけではない。
人に紛れて、とか、本当に困っている人の手伝いで、とか。
そのたびに、後で文句を言われるのは常態なのだ。 それが例え上からの指示であったとしても。

晒しものにされつつ、後で立場的にも吊し上げられるという、前後左右どちらを向いても得をしない仕掛けの中、気を抜くと笑顔が抜けそうになる。

「……はーい、何でしょうか!」

でも呼ばれれば笑顔で注文を聞く。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」にヒューさんが現れました。
ヒュー > ふらりと立ち寄った酒場。
席に着き、店員を呼べば見覚えのある相手が胸を強調し、谷間も露わにしながら、短いスカートに身を包んでいる…。
片側しか開いていない目が相手を見詰め…。

「む…? シスター服とは違った魅力だな。 とりあえずウィスキーと肉を適当に。肉はがっつりしたやつで。
村を救った後には酒場を救いに来たのか?」

と、男はひらりと手を振りながら、足の先から頭の先へと視線を滑らせていく。

シスター・マルレーン > 身を粉にして働いていても、あくまでも彼女はこの町の教会からしたらよそ者である。

当然、人としての優しさは持っていても、愛着を持って接してくれる人はおらず。
牧師の中でもやましい目で見られることもしばしば。
自由を許されぬどころか、最近では身体すら捧げものにされるのだから、同じ立場であるシスターからも冷たい目を向けられることもしばしば。

組織の中にいるって辛いものです。

「………はーい、ウィスキーと肉ですね。大雑把な注文だと、料金どうなっても知りませんよ?
 依頼は依頼ですから、仕事です仕事。」

なんて、ははは、と乾いた笑顔で肩を竦めて、注文を厨房へと伝えておく。
見られるのは慣れました、流石に。

ヒュー > 相手の複雑な身の上など知る由もなく。
ある意味で教会等いった事も無い男。
まさか相手がそんなことになっているとは露とも知らず。

そして、組織という単語からははみ出たところにいるため、話でしか知らない組織の辛さ。

「ふふん。 自分の食い扶持ぐらい稼げているからな。」

と、男は相手の渇いた笑いと後ろ姿を楽し気に眺めている。

シスター・マルレーン > 「それならいいんですけど。 はい、じゃあまずはお酒ですよ、と。」

ことん、と置きながら、ふう、と吐息を一つ。
艶やかな金の髪、健康的な肢体と、視線だけは割と集める女。

「じゃあ、肉が出来たら持ってくるから、ゆっくり食事をどうぞ?」

なんて、ウィンクをぱちり、と一つ相手に投げかけて。
眺められると、とほー、と肩を落とす。

ヒュー > 「ありがとう。 だがまぁ、こんなに魅力的な店員がいるなら直に黒字だな…。
まぁいなくなった後は知らんが…。」


ウィスキーを置かれながら、ひらりと軽く手を振り酒を受け取りつつ、情けなく肩を落とす相手に男はくつくつと小さく笑う。

「なんだったら 一緒に飲み食いするか?」

ウィンクの真似でもしようと硬めを閉じてみたが、
ただ単に両目を閉じるだけ…
相手に伝わるだろうか。

シスター・マルレーン > 「ははは私は後で怒られるんで継続してのお仕事は無理ですねー。」

とほほ、と遠い目をしながら。
こういう格好怒られるんですよ、なんて肩を落としつつ。

「で、ついでにお仕事中にお客と飲み食いしてたら大変怒られるんですけどぉー?」

なんてジト目でいいながら、ころころと笑って。
本気で怒っているわけではないのか。

「はい、お肉ですよ。ワイルドに焼いてあるんでどーぞ。
 隣には私の代わりに伝票置いときますね。」

なんて、にしし、と明るく笑う。

ヒュー > 「なんだか大変だな…。 む。 ここは、気に入った店員を横に置いて飯を飲み食いできる店ではないのか?
そっちの方が店の売り上げも上がるだろうに。」

等と、悪戯っぽく笑いかけ目の前に置かれた焼いて味を付けて胡椒を振ったそれ、ナイフにも似た肉を切り分けながら豪快にハグハグ。

「ん。 隣にいるのが伝票だけというのもなんともつれないものだ…。世の中は無常だな。
ほら、無防備に近づいてみればいい…俺は安全だぞ?」

等と、楽し気に笑いながら酒を流しこみ上機嫌な男信用できないセリフを相手に向けながらからからと楽し気に笑いながら手招きをしてみた。

シスター・マルレーン > 「いやだからそれはそれ。安全かどうかではなく。
 風紀を乱した云々で私後で怒られるの確定なんですってば。
 なんで怒られるのか本当に納得はいってないんですけど!

 その私がですよ、男性の隣で身を寄せ合って食事を共になんてしてみたらどうなると思いますか。
 ええ、大変なことになるんですからね、わかりますよね、わかってくれましたよね。
 あとそういうことは店長にOKをもらわないと私では判断できませんねー。」

困ったなあ、ふふ、困った困った、なんて言いながら皿をてきぱき片付けて。
多分もうこの時点でお叱り2割増しなんだろうなあ、と遠い目になる。

日に7回くらい遠い目になる。

ヒュー > 相手の怒涛の言葉と、遠い目になんだか申し訳なくもなり、苦笑いを浮かべるとひらりと手を振って、申し訳ないと。
「うむむ。 残念だ。
では、他の客と同様に眺めて楽しむとするか…。」

と、皿をテキパキ片付ける相手、強調されるお尻や胸についつい視線が奪われてしまう。
目の前の肉よりもある意味で旨そうだなぁなどと考えつつ…。

シスター・マルレーン > 「そうそう、……いや、あんまり眺めるのもその、そういう店ではないですし。」

あ、あはは、と赤くなりながら照れ笑い。
お盆で胸を隠しながらすすすすす、と器用に動く。

「………まー、見られるくらいなら気になりませんけどね。
 もう慣れました!」

ヤケクソのように隠すのをやめて胸を張ってやる。くっそう。

ヒュー > 「む。何とも矛盾しているな…。」

人間の考える事は難しい。
とか考えながらも盆で隠して器用に動いたかと思えば、胸を強調する様に張られれば。

「うむうむ。形も大きさも良くて何とも柔らかそうだな。」

やけくそになる相手を揶揄う様にそんな論評をしながら男は酒を煽り。

「次は後ろ姿か…?」

等と、どうしようもないおねだり。

シスター・マルレーン > 「おこりますよ?」

笑顔で言いきられる。圧だけは相変わらず単なるウェイトレスではない威圧感を出せる。
熟練の冒険者としての威圧感に何かしらのエンチャントを付与されたレベルのそれ。

「……はー………はいはい、見るならお好きにどうぞ。」

諦めたように背中を向けて、テーブルを拭くことにする。
見られていると思うとなんか無性にやりづらい。 ああ、もう二度とこんな仕事はやらないぞ、選択権無いけど。

ヒュー > 「美人店員に怒られる…?
はっはっはっ。 それはそれでいいな。」

威圧感を受けながらも男はさらりと笑い飛ばし。
深いため息をつきながら、相手がテーブルを拭く度に揺れる体。
スカートがちらちら。
見えそうで見えない。

「これは可愛い店員さんにチップを上げなければいけない気になるな。」

シスター・マルレーン > 「いらないですからね。
 店長、もらっとけみたいな顔はしないでくださいね、怒りますよ。」

店長にまで圧を向けるバイト店員。
ごぉぅ、っと風が巻き起こるような圧に、店長はそっぽを向いた。

「それに、チップをあげてどーするつもりなんです?」

ジト目で相手を見つめながら、腕を組む。
少し忙しさが落ち着いたからか、話くらいはお付き合いである。

ヒュー > 「貰えるものはもらった方が良いぞ?」

等と、愛想のかわりに威圧を振りまく相手に笑いながら、手元のウィスキーを煽り。

「どうなるかは、受け取りて次第だからな…。
好きにすればいいと思うぞ? 寄付するなりハグするなり、頬にサービスのキスをするにしろ。」

個人的には公判が子のみだと付け加えながら肉あっという間に半分に。

シスター・マルレーン > 「いいえ? ふふふふふふ、分かっていないようですね。

 お仕事中に金銭を自分に個別で受け取るようなことがあればどうなると思います?
 ええ、私利私欲のために動いたとして審問されて2~3日は反省文を書かされる日々。

 ハグどころかそのまま首へし折りますよ。」

はっはっは、と明るく笑いながら言い切るシスター。もはや言動からもシスター要素が消えてしまった。

「お金に関しては店長に投げといてください。 もしくは教会にご寄付を?」

なんて、疲れた顔でウィンクも一つ、ぱちん、と。

ヒュー > 「そうか。 中々窮屈なのだな。」
言動がシスターというか蛮族になっても男は愉し気に笑っていて。
明るく笑いながら目の光が消えていそうな相手に小さく苦笑い。

「なんだ シスター経由で寄付してくれて構わないんだがな。 良いだろう。 疲れたシスターが元気になってくれるのであれば寄付位は軽いものだな。」

と、呟きながらちびちびと酒を煽りボトルとグラスが空になれば、ちょうど手元の肉も食べ終わり名残惜し気に空になった皿をシスターの方へ。

シスター・マルレーン > 「………ふふふ、淫らな格好でお金を集めるとは、ってもう言われてるんで大丈夫です。
 もー、この恰好も指示だっていうのに。」

親指を立てて笑顔を見せる。目は死んでいた。

「あははは、元気になるかどうかはともかく。
 ありがとうございます。
 ちゃんと仕事をしている証明にはなりますかね。」

なんて、お皿を受け取ってよいしょ、と片付けて。

ヒュー > 「意味が分からんが大変だな…
自分たちでやれと言っておきながら、怒るとか…」

なんと複雑なのか…
男は頭の上でクエスチョンマークだらけ。

「ん。 では約束だ。 ここで渡すとまたおこられるだろうからな… 教会に直接の方が良いか?」

等と小首を傾げながら、目はつい胸元に。
そこから、視線を上げ相手の顔をまっすぐに見つめ。
「シスターは本当に面白いな…。 興味津々だ。」
等と楽しそうに笑いながら伝票の代金より少し多めにテーブルの上に置く男。 お釣りは店へのチップ。

シスター・マルレーン > 「………ええ、意味は分からないんですけど、まあ………。」

とほほ、と愚痴ってしまう系乙女。シスターである必要性は今の恰好から皆無である。

「……いいんですよ、別に気にしなくても。
 また次に来た時に私がいなくても帰らないで下さいね?

 あー、こんなに早く修道服に戻りたいと思ったのは久々ですよ。」

なんて、にしし、と明るく笑ってウィンク一つ。
あっつー、なんて手で胸元を仰いで。見られているのはわかっていても行動は割とガサツなシスターである。

ヒュー > 「自分で教会を作った方が良いんじゃないか?」

等とついつぶやきながら、胸元を手で仰ぐ相手。
男は苦笑いをすると、手を伸ばし相手の頭をワシワシ撫でながら立ち上がる。

「これ以上シスターをみていると、襲ってしまいそうだからな 今日は帰るとしよう。
それと、自分の魅力に気が付かないと、襲われてしまうぞ?
まぁ大体の奴なら逆に教育されそうだがな。」

と、男は愉しそうに笑いながら相手に囁きかけるのであった。

シスター・マルレーン > 「それは今後の目標、ということは内緒ですよ。
 本当に表から消されますからね。」

ぺろ、と舌を出して笑いながら、子供じゃないですってば、と。

「……いやまあ、逆に考えて下さいよ。
 もう何度襲われたのか分かったもんじゃないですから、流石に分かりますよ。
 私なんて田舎の乱暴者なんですけどねぇ。」

ぷぅ、と膨れながらお皿を片付け。
囁かれても顔一つ赤くしない、からからと笑いとばす豪快な彼女である。

ヒュー > 「その時は声をかけるといい。 異教徒討伐とは、戦い慣れているからな。」

等と悪戯っぽく笑い。
内緒と、人差し指を一本立てて、内緒のジェスチャー。
「…それともあれなのか?
襲われて逆に打倒してストレス解消でもしているのか?
まぁ、田舎のらんぼうものでもシスターは魅力的だ。」

と、小さく笑うと相手の膨らんだ頬をぷにぷにと指で突き。

「あまり仕事の邪魔をしたら可哀そうだからな。
この後も気をつけてな。」

男は愉しそうに笑いながら、酒場を後にしていくのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」からヒューさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」からシスター・マルレーンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「~♪」

ピーヒョロロとヘタクソな口笛を奏でながら、悠然と冒険者ギルドに足を踏み入れる金髪の男が一人。
賑やかな様子のロビーを軽く見渡せば、あちこちでパーティらしき数人の集団が話し合っている姿が見える。
そんな活気のある光景に目を細めて小さく笑みを浮かべながら、そのままのんびりと掲示板の方へと
向かってゆく。その掲示板には依頼書や、パーティ募集の要項などが雑多に貼り出されていて。

「──今日もいっぱい来てますなぁ。さて、なんか面白そうなのはあるかにゃ?」

親指と人差指で摘むように自らの顎をさすりながら、掲示板の前に一人突っ立って興味を引くものがないかと眺め回し。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にルルムトさんが現れました。
ルルムト > 掲示板を眺めるエレイの背後から、刺すような視線を感じる。
それに気づき振り向けば、いつぞや共に夜を過ごした少女と目があうだろう。
どうやら彼女は、依頼の報告にギルドに来ていた様だ。

相変わらず無機質なその顔は、何を訴えるでもなくエレイに視線を送り続けている。

エレイ > 「……む?」

いつからか己の背中に、ブレなくまっすぐ向けられている視線に気づいて男はピクリと反応する。
それからおもむろに振り向けば、見知った無表情の白い少女が見えてぱちくりと瞬きし。
そしてへらりと緩い笑みを浮かべ。

「──おうルルちゃん、チーッス! 来ていたのかという顔になる。最近調子はどうだね?」

片手を上げてそう声をかけつつ、のんびりと彼女の方へと歩み寄ってゆき。

ルルムト > 「………普通。」
調子はどうか、と聞かれれば、
味も素っ気も無い答えを小さく返す。

「………………。
 ………………エレイは元気そう。」
そのまま押し黙っていたかと思えば、
見たままの感想を短く端的に述べた。

エレイ > 「そうか仔細無いならなによりです」

素っ気ない返答にも男は特に気にすることもなく笑顔のまま、二の句を継ぐこともなく
押し黙る彼女の頭をわしわしと撫で付けて。

「……ン? そりゃあ俺様はいつでも元気バリバリだからな。で、ルルちゃんは
どうしたわけ? 依頼探し? それとも完了報告かね?」

続いての言葉には瞬きしたあと、ワハハ、と笑ってビシッとサムズアップ。
それから彼女の用向きなども問いかけてみて。

ルルムト > 「…………ん。」
頭を撫でられ目を細める。

「…………仕事……終わった。
 …………報告も……終わり。」

「……………しばらく、暇。」
などと、今の状況を極めて簡潔に説明。

エレイ > 「──ほむそうか、ご苦労さまだぜ。じゃあ……せっかくなので久々に仲良くしちゃう?」

目を細める様子に、こちらも目元を緩めつつさらさらと白い髪を撫で続け。
用事は全て済ませて当分暇、と聞けば少し思案したあと、にへ、と笑みながら
顔を覗き込みつつそんな問いかけを。
彼女の隣に立ち、もう片方の手を腰に回してゆるりと撫で付けつつ。

ルルムト > 「……………いいの?」
小首を傾げながらそう言い、

「………仕事、探してるんじゃ……」
エレイの要件の邪魔にならないか、と気遣うが……

「…………いいなら、したい。
 ………仕事終わりは……身体が疼く……。」
自分の欲求も、素直に打ち明けるのであった。

エレイ > 「問題にい。今すぐ仕事をこなしたいというワケでもないからな。興味引くような
依頼も今の所見当たらんし……」

いいのか、と気遣われれば、笑顔で首を横に振り。
彼女自身の欲求も伝えられると、ニンマリと笑みを更に深め。

「──クフフ、そうかなら協力してあげないといけませんなぁ。
ではカカッと上へ行くとしようず」

そう言って促すと、腰を抱いたまま彼女と共にゆっくりと歩き出す。
『上』とはギルド併設の酒場の2階にある宿のことである。
ロビーにいた冒険者の幾人かからの好奇の視線を受けながら、そのまま彼女と共に場を辞して──

ルルムト > 「………………そうか。
 …………じゃ……しよう。」
そう言うと、エレイの腕に自分の腕を回して、
共に2階の部屋へと向かっていき……

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からルルムトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にベルモットさんが現れました。
ベルモット > 霧の濃い、肌寒い夜だった。月すら朧気に霞むこういった夜は、昔々に親から聞いた話を思い起こさせる。
曰く、時節にそぐわない霧の夜は妖精が子供を浚う。水の属性を持つ彼ら彼女らは霧に紛れて巧みに子供を誘い、自らの領域に連れ去ってしまうのだ、と。

「今にして思うと、霧に濡れた幼子が体調不良を起こして亡くなる事を危惧した言い伝えだったのかも」

視界を奪う程の濃霧に包まれた、そう大きくは無い通りを歩き、湿った衣服に眉根を顰めて小さな頃の記憶に独りごちると、言葉と共に吐息が白く宙に散った。
その吐息を視て、ある程度の体力がある大人ならまだしも、幼子はこういった気候の中では一たまりも無いだろう。なんて他人事のようにも思った。

「妖精に攫われてしまうから、家から出ては行けないよ。か」

石畳の道を緩慢と歩きながら、よく言われた言葉を歌うように口にした。
妖精に攫われるまでもなく、家を出て遠い国まで来たあたしは、もう幼子では無いのだから迷信《妖精》を恐れない。
言葉の後に鼻で笑うように息を吐き、携えた杖の石突が硬質な音を石畳と奏でた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシラトリさんが現れました。
シラトリ > 霧の中では、人の姿は茫洋としてはっきりと浮き上がることは無い。
通り過ぎる人々は皆フードをして俯きながら歩いてしまえば、夜の闇にも紛れて。
それこそ、陰に隠れて動きたい人にとっては都合のいい夜だった。

そんな中、通りの中央で一人佇む女は、くっきりと浮き上がるようなコントラスト。
白い肌、銀色の髪。そして場に似つかわしくないメイド服。
ミニチュアの中に一つだけサイズ感の違う人形が放り込まれたかのような違和感を身に纏いながら、フードやコートの類を一切身に纏わぬ女が頬を押さえ。
何かに困ったような顔で………歩いてくる少女と、目線が会う。

「……そこ行くお嬢様。今宵のような天気に申し訳ありません。
 少しばかり、この通りすがりの普通のメイドに手を貸して戴けないでしょうか。」

甘い鈴の鳴るような声をかけながら、その場に膝をついて頭を垂れる。

ベルモット > 「それにしても、こんな天気じゃお店も早仕舞いしているんじゃないかなあ。
迷信よりもそっちの方があたしは怖いし困るんだけど……お腹減ったし」

少なくとも夕方まではこんな霧は出ていなかった。
それが酷い火傷をして困っていると云う人の家に赴き、錬金術で作り上げた軟膏を処方し、何くれとなくこの国のお話を聞き……
等としていたらこんな時間になっていて、外の様子は一変していた。勿論、情報収集は欠かせない事だから失敗だとは思わない。
思わないけどお腹は減る。そしてあたしの予想通り、この濃霧では客を見込めないと判断したのか、平時ならば様々な商店が並ぶ通りの活気は薄い。

「ま、あたしは天才だから?ちゃあんと宿の部屋に食料だって用意してあるけど。
やっぱりこういう肌寒い日は暖かいものを摂りたいものだし、きちんと食べたらサウナを使って汗を流してから眠り──」

好きな蒸し風呂の蒸気と似て異なる濃霧を厭うように頭を振って視線が右へ左へと投げられる。
通りがあまりに静か過ぎるからか、自然と独り言が増える……の、だけれども。
揺れる視線が霧の中にあっては些かに不自然。それでいて自然に振る舞う誰かと合って、言葉と瞳がぴたりと止まる。

「あら、あたし?勿論構わないけれど……どうしたの?」

メイドが居た。
霧の中にあって霧など露程も気にした様子を見せない振舞いを見せる白銀の女性。
妖精が居るとしたらこういう御顔なのかも。そんな事を思いながらあたしは膝をつく女性に鷹揚に応える。
そういえば家に居た口うるさいメイドは元気にしているのだろうか。そんな事も思った。

シラトリ > 「ありがとうございます。シラトリと言う名を頂いておりますので、何とでもお呼び頂ければ。」

微笑みながら深く頭を下げ、膝をついたまま。

「実は、酒場にて問題のある人間に絡まれておりまして。
 どうにもこの霧の中だと、私は目立つらしく、どうにも困っておりました。

 お嬢様の宿に、一夜とは言いません。数刻の間匿って戴けないでしょうか。
 それが叶わぬならば、せめて追っ手に対して違う方向を指さして戴ければ……。」

追われているとは思えないほどに落ち着き払った声。
濡れた石畳に膝をつくのもまるでいつも通りといった振舞い方で。
文字通り濡れた瞳で、見上げてみる。

ベルモット > 霧の夜にメイド姿が困った様子で声をかけてくる。
理由は大方、雇われたばかりで地理に明るく無い内に迂闊に外出し、霧に飲まれて帰れなくなった。とかだと予想した。
勿論あたしもこの都市の地理に明るい訳じゃあないけど、それでも一人よりは二人。何より迷子は心細いと思うのだから無碍にはしない。
天才は困った人を見捨てないものだから。でも、シラトリと名乗るメイドの語る言葉はあたしの予想と随分違っていたの。

「…………いや、あの。えーとシラトリさん。貴方、その恰好で酒場に?」

酒場に居て目立つから絡まれたと言う。そういった格好を制服にしている店の給仕でもなければ、成程目立つに違いない。
何か粗相があれば従者の不始末は上に響くものであるから、彼女が従者であるのなら、その恰好のまま酒場に出入りしたと言う事に瞳だって瞠ろうもの。

「馬鹿ねえ貴方。そんなの目立つに決まっているじゃないの。どこそこの酒場にどこそこの家の従者が居た。
なんて話にでもなったら事でしょうに。仕事以外で外に出るなら御召し物は変えるべきよ。あ、さては雇われたばかりね。そうでしょう!」

そういう目でみると、落ち着き払った彼女の様子も天然さんとか、ぼんやりしているとか、そういった印象に変わってくる。
あたしは得意げな顔となってシラトリの手を引っ手繰って足早にその場を後にする。目指すは宿屋だ。

「油断をしたら駄目よ。貴方みたいな綺麗な人、男の人はみぃーんな狙っているのだから。でも貴方は運がいいわ?
なんといっても天才錬金術師たるこのあたし、ベルモット・ベルガモットに声をかけたのだから」

とはいえ霧は深くて中々に難儀なもの。
あたしの足取りは理路整然と路に迷うようなもので、時折ウエストバッグから地図を取り出し確認したりもする。

シラトリ > 「ええ、常連ですね。」

その恰好のまま、と訝しさ満点の顔で言われれば、はい、と素直に頷く。
クールな彼女は表情は全く変わらないのだけれど、手を引かれればほんの少し嬉しそうに表情を緩めて、きゅ、っと握り返す。
メイドの手は少し冷たかった。

「そうですね、………とはいえ、割と慣れているつもりだったのですが。
 それにこの恰好ですと、立場がはっきりしているから、逆に変わり者だと思われる程度で安心はされるのです。
 妙なことはしない、と思われるのですね。
 それに、私は24時間メイドでもありますので。」

手を引かれながら冷静に説明をする。ずっとメイドの理由? こんなことがあったあんなことがあった、と、楽しく主人に語り聞かせることも目的である。
だからついつい酒場にいた男たちの侍らせていた女性を口説いただけだ。
うん、ついつい。仕方ない。

「ベルモット様。……ああ、確かに本当に運が良い。
 こんなに優しい方と出会えたのですから。 酒場で絡まれてみるものですね。」

なんて、真顔で冗談を言いつつ、お互いが知っている道を出し合いながら、宿に向かって。

ベルモット > 「いや常連って……うーん不思議な雇用形態だわ……って話している場合じゃないわね」

地図を確認し、いざ歩き出そうとした所で地図が逆様な事に気付いて立ち止まり、今度こそと確認をして歩き出す。
そういった合間に傍らのシラトリからも、ああでもないこうでもないと道中模索の言葉が流れていく。
幸いにして彼女に絡んでいたらしい酔客の怒声などが後追いしてくる事も無く、あたし達は無事に宿へと辿り着く事が出来た。
『黒猫の尻尾亭』と云う名前の通りに黒猫の絵看板が掲げられた宿屋は、小規模ながらに霧の中でも判り易い。

「……ベルモットでいいわ。あたしは貴方の家の者じゃないし。そういう風に呼ばれるの、背中が痒くなっちゃう」

宿の扉を開けながら、それとなく様付けを断り、受付で転寝をしていたチョビヒゲの店主さんに二言三言と声をかけてから階段を上がる。
そう広くはないし、豪華でも無いけれど整ったと言える調度の廊下を歩いて取っている部屋の鍵を開けましょう。

「はい、どうぞ。と言っても何も無い部屋だけど……ってあたしが言うのもなんだか変ね。
この宿、そう大きくはないけど綺麗だし、宿代もそう高くは無いから助かってるの。貴方も覚えておくといいわ?」

窓のある室内は宿の全体からすれば大き目の、平均するなら普通の広さの部屋で、ごく普通の木製のベッドであるとか、
キャビネットであるとか、壁に備え付けられた鏡などが用意されている。
ベッド傍に置かれた茶色の大きな旅行鞄は勿論あたしの私物。中身は衣服や日持ちする薬品の類であるとか他様々。

「お腹が減っているなら、まあパンと干した果物くらいはあるし適当に時間でも潰してて。
お風呂は此処、蒸し風呂だから受付に居た店主さんに浴室の鍵を借りれば使えるわよ」

ああ疲れた。そんな事をぼやき交じりに後ろのシラトリに説明し、鏡の前でリボンを解いて湿気を含んでねじれた髪に渋い顔をした。

シラトリ > 「ですが………では、私のことはシラトリとお呼びください。
 先ほど述べたように、24時間こうしているので、どうにも呼び捨ては慣れぬのです。」

表情を変えぬ彼女らしからぬ、わずかばかり困ったような顔。
上手いこと座りが悪いかのように、ううん、と唸る。なんでもクールにこなす彼女には珍しいこと。

「ありがとうございます。 ……いいですね、窓の鍵もしっかりしていますし。」

最初に調べるのが窓の鍵であるのが真っ当ではない人間の証かもしれないが、それはともかく。

「ご安心ください、しばらくお待ちいただければ、夕食の一つでもこしらえて見せましょう。
 この数刻の間は、主人と思って敬意を払わせて頂きます。
 ベルモット様は、先に汗の一つでも流されては如何でしょう?」

と、微笑を浮かべてどうぞ、と案内をする。

ベルモット > リボンを解いたらケープを脱ぎ、鞄から手拭を取り出して髪の毛を拭うあたしの顔は渋い。
具体的にはもうちょっと癖の無い毛にならないものか。とかそういった乙女な事情だった。

「あら、そう?それなら……まあ仕方ない──って最初に調べるのがそこ?不思議な人ね」

あたしが鏡の前に立っている間に、シラトリが窓辺に移動し施錠確認をしている事に吹き出しそうになる。
だって1階なら兎も角、2階の部屋なのに気にするだなんて変わっているんだもの。

「…………んー……ううん、大丈夫よ。そう世話を焼かないでいいってば。お風呂も宿に着いてしまえば何時でも使えるものだし。
ね、それより貴方の話を聞かせてくださる?その様子じゃあ雇われたばかりの新米と云う訳でもなさそうだし、結構この街の暮らしは長いように見えるし。
あたしはまだ此処に来て日が浅いから、やっぱり情報って大事だと思うのよね!例えばほら、貴族の間で人気の香水だとか、こういった薬品が需要あるだとか──」

ただ、彼女が私を部屋から出そうとする事には、少しだけ違和感を感じた。
壁にかけた家宝の杖を一瞥し、けれども直ぐに視線をシラトリに戻してあたしは会話を促そうと思ったから、そうする。
ベッドの上に乱雑に座って、鞄の中から手ずから作り出した薬品の小瓶等を見せたりもするから、
ベッド上はちょっとしたお店開きの様相を見せる。

シラトリ > 「ふふ、良かった。 世間を知らぬのであれば心配になるところでした。
 私が悪い人であれば、大変ですよ? ここにいるのは二人だけなのですから。

 言ったではないですか、“この恰好ですと、立場がはっきりしているから、逆に変わり者だと思われる程度で安心はされる”と。
 どうして追われているのか、不審に思わなかったのです?

 ……とはいえ、ご安心ください。 私はその実、悪人ではありますが、主人に手を出すほどの極悪人ではありません。」

そっと頭を下げて、その上で微笑みを向け。 ついでにウィンクを一つぱちりと相手に向け。
悪人であることをつまびらかに語っていく。

「ええ、もちろん構いませんよ。 私はこう見えて情報に通じております。
 香水ということであれば、貴族は割とストレートな効果を期待されますね。
 女性に好かれたいということであれば、嗅いだ女性がすこしふわふわして判断がつかなくなるような。

 そういった香水をよくお求めになられますわ?」

話す情報の内容も悪人らしいものだった。

ベルモット > 「……え?」

ベッド上に座り込むあたしの背筋に、夜霧の冷たさとはまた別の冷たさが走り抜けた。
確かにあたしはシラトリの事を"変わり者だから騒動に巻き込まれる天然なメイドさん"だと思っていたのだから。
でも彼女はそうじゃあなくて、そういった形を装った何かで、今はあたしを妖精のような顔で見下ろしている。
そうして青い瞳同士が少しの間、言葉も無く重なり合った。視線を外したら攫われてしまうんじゃないか。
先程まで馬鹿にしていた迷信が想起され──

「………ああ、もう。ちょっと驚かさないで頂戴。心臓に悪いったら無いわ。
貴方、真顔で冗談を言うのは止めた方がいいわよ。まるで本当の事のように聞こえたわ?舞台役者にでもなればいいのに」

──けれどもシラトリの稚気を感じさせる笑顔と仕草に忘れ去られて、あたしは大きく息を吐く。
なんて迫真の演技なのだろう。メイドをしているよりも役者にでもなる方がよっぽど向いているに違いない。
だから破顔しながらそう薦め、彼女の語る需要の話には一転渋い顔になる。

「う"ーん……もしかして、そういうものしか需要が無いの?」

先日知り合ったシェンヤン人の女性も『精力剤が人気』と言っていた。相手をとっかえひっかえ親戚作りに励んでいるとも。
疑っていた訳じゃあないけど、こうして二人目からも似たような事を言われると、流石にちょっと困ってしまってシラトリに真新しい手拭を渡しながら質問が追加されもする。

シラトリ > 「元役者でしたから。」

しら、っと本当なのか嘘なのか分からない本当のことを言いながら、掌を見せる。
手の内には何もない、と伝えるように。

「そうでもありません。
 ですが、真っ当ないい香りを好むのは年端もゆかぬ少女ばかり。
 そうなると、なかなかこの地区から売りに行くのは面倒で、そして見返りもまた少ないもの。
 彼女らに物を売るのならば、回収はそれこそ10年後になりましょう。

 ですから、あえてここまで買いに来ないと無いものを売らねばならないのです。
 それが、そういった類のものが多いだけですね。」

相手が少し悩む素振りを見せれば、そうですね、と自分のあごを撫で。

「であれば、一つアドバイスを致しましょう。

 あちらに住まわれている方は、また別種の重いものを心に抱えていらっしゃる方が多いもの。
 安らかに眠ることができる………気持ちや気分ではなく、純粋に眠りに落ちることができるものがあれば、きっとここまで買い求める人も出るでしょう。」

と、理路整然と語りかける。
それを女性に嗅がせてそこから何をするかって? そんなものは知ったことじゃない。

その手拭いを受け取りながら、ありがとうございます、とその手の甲を指で撫でて。

「キスはお嫌いです?」

なんてしらっと聞こう。ここです、ここ、と手の甲に触れたまま。

ベルモット > 「まあ!本当に?でもそれならどうして今はメイドを……と、御免なさい。詮索はし過ぎるものじゃないわ」

あたしが言葉を重ねるのと、シラトリが掌を見せてくるのは同時。
彼女にそういった意図が無かろうと、制止されたようにも思え、あたしはそこで事情に踏み入るのも不味かろうと言葉を濁した。
幸いに彼女の続く言葉はきちんと理屈の通ったものだったから、示された手を誤魔化すように両手で握って、少し大袈裟な態度で話題を押し流すわ。

「なぁるほど!貴方って冴えているのね。栄誉の道も一歩からと言うけれど流石に10年は掛かり過ぎだし、
権謀術数に悩まされて不眠の貴族を狙い撃ちする。という案は素敵だわ!何より人の為にもなるし、
そういった方向性で名前を売りたいあたしの路線とも一致するもの!」

尤も同じことを考える錬金術師が居ない筈も無く、余程の効き目が無ければならないのだけど。
そこは自分を天才と信じるあたしであるからして、きっと上手く行くに違いないと、瞳を栄誉の二文字でギラつかせて笑んでみせる。

「ふっふっふ、そうなれば明日から睡眠薬の材料探しね。強固な魔導錬成陣の作成もしないといけないし……ん?」

今使っている陣は布に記されたものだ。
あたしの流派はより強固な物に、より精緻に刻まれた陣こそがより良い品物に繋がる。
疑似的な器として機能する陣に魔力を流して発動するのだから、その力に耐えられるだけの器が必要と云う訳。
シラトリの手を握ったまま、ややもすれば不気味に笑うあたしだけれど、彼女が突然妙な事を言うと水の流れない水車のように動きは止まった。

「……親愛の情を示す。ってやつ?まあ、別に平気だけれど……それは貴方の御主人の教え?」

気が付けばあたしの方が手を握られていて、何時の間にと思うのだけれどそれは一先ず棚上げし、
少しだけ怪訝そうに首を傾げてみせた。