2019/06/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にソウレンさんが現れました。
ソウレン > 「むぅ…。」

からりと戸を開け、空を見上げる。
まだ本格的な夏季はまだだと思うのだが、と気温を感じながら空を見上げる。
空は快晴とは言い難いが、ちらほらと見える雲が星を隠す程度。

そろそろ冷やも構えておくべきか、と考えながら赤提灯に火を入れた。
少し遅くはなったが、今日も営業を始めるとしよう。
こう気温が上がってきていては、酢の物などいいかもしれないなぁ。
調理場へと入りながらぽつぽつと小さく一人ごちる。

さて、本日の来客は…?

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリスさんが現れました。
リス >  ここに来るのは久しぶりね、と、純和風の入口を見て思う。
 確かに一度商売のために来ただけ、であっただろうか、食事も軽くしていた気がする。
 でも、この場所、雰囲気は忘れがたい記憶となり、久しぶりに少女は足を運ぶことにした。
 どういうふうに入るのが礼儀だっただろうか、少女は提灯と呼ばれる、ロウソク入れを眺めて首をかしげた。
 えーと、たしかー。

「たのもー……だったかしら?」

 本当に、どういう入り方だっただろう。
 入口の扉を押すのだったか引くのだったか。
 えーと……。

 酒場の前でまごまごしている少女が湧いて出たというべきか。

ソウレン > 清水に青く丸い板のようなものを沈め、冷やにする分をお銚子ごと沈めておく。
このまま置いておけば冷えた酒が飲めるだろう。
気温が高くなるこの頃、良い塩梅になるはずだ。
ついでに手拭も数枚、縁にかけるようにして冷水に浸しておく。

「…ん?」

酒の準備を終えれば、店の外に気配を感じる。
提灯の薄い明りで扉の前に影ができている。やけにまごついているようだが、この気配は…。

からり、と引き戸が開く。

「いらっしゃい。入らないのかな?」

扉の外にいる少女に薄い微笑みを投げかける。
暑くなってはきたものの、ソウレンは涼し気なたたずまいのままだ。
少女が頷けば、そのまま店に招き入れるだろう。

リス > 「……あ。」

 からりと開く扉、そこに見えるのは涼しげな店主の顔。
 少女は、少し恥ずかしそうに頬を染める、扉の開け方が分からずにいたからであって。

「すみません、扉の開け方を忘れておりました……」

 和風の建築物には慣れてなくて。
 少女は少し恥ずかしそうにはにかんで伝えながらも、足を運んでいく。

「お久しぶりです、ソウレン様。
 あれからお代わりは?」

 ぺこ、と軽く挨拶をしながら店の中に入り、久しぶりに入る店、そして木の匂いがとても印象に残るその内装を眺めて。
 彼女の仕事場の向かいになろうカウンターに腰を掛けることにした。

ソウレン > 「いや、気にする事はないよ。」

扉の開け方がわからない、というのはよくある事だ。
開けようとして激突しなかっただけ、節度がある方だとソウレンは思う。
恥ずかしがっている様子も笑う事はなく、いつもの調子。
少女を招き入れ、自分は調理場へと入っていく。

「あぁ、特には変わりない。
斜陽の王国の様子も、客の塩梅も世は全て事も無しと言った所かな。」

ぱしゃり。
冷水に浸しておいた手拭をきっちりと絞ると、少女の前に置く。
手や汗を拭くといい、と一声かけて。

「今日は食事に? それとも一杯ひっかけるかな?」

居酒屋ではあるが、酒を呑まない客を断ったりはしない。
料理もきちんと提供する。誰が相手でもソウレンの対応はそこまで変わらない。

リス > 「恥ずかしいです……。」

 東方に関しては、和に関しては、余り博識ではないのだ、一応父親が海運をしているだけあって色々な国への知識はあるがそれは全てではない。
 疎覚えなところも多いのだ、なので、いざ!という時に恥ずかしい思いをする。
 招き入れてもらえて、むしろ助かったな、と思うのだ、招き入れてくれなければもう少し長い時間ウロウロまごまごしていたのだから。

「斜陽というのは頂けませんね、ここから暗黒になってしまいそうで。
 もっと明るい国になって欲しいと思いますけれど。」

 個人の感覚であり、それが反映されるものではない。
 はふ、と軽くため息をこぼしつつ、娘は手を伸ばしてありがとうございます。
 と、手を拭くことにする。
 一応娘も竜であるが故に、この程度の熱は熱くないのだ。

「では、お酒と、お摘み、いただけますか?
 少し、奮発したもの、を。」

 少女はちゃんとお酒も嗜む娘。
 お金も持ってきているから、おすすめで張り切って欲しいです、とお願いを。
 これでも、商売してるからお金持ちである故に、遠慮はなしで。
 豪華なおすすめコースをおねだり。

ソウレン > 「恥ずかしがる事はない。違う文化に触れて、知らないのは当たり前の事だよ。」

誰しもある事だ、とソウレンは微笑む。
自分とて全知という事もない。
幽世の経営とて、慣れない王都で探り探りだと語る。

「奮発したもの、か。……そうだな。承ろう。」

とは言え、幽世は基本的には大衆向けである。
超高額メニュー、というモノを用意しているわけではない。
なので、ソウレンはというと手を尽くす方になる。

炉に火を入れて、網を熱し始める。
その間にまずはと準備を始めていく。
冷やしておいた純米酒。そのお銚子の水気を拭い、お猪口と合わせて。
それに合わせるものとして、まずは、と紅いモノと緑のモノを和えたモノを小鉢で出す。

「ではまずは、冷やとタコと胡瓜の酢物だ。」

リス > 「前に一度来たことあるのに、覚えてないことが、です……。」

 そう、前に一度商売のために来たことが有り、そしてここの扉も開いたことがあるはずなのだ。
 それなのに、それを覚えていないという自分の記憶力が恥ずかしいのだ。
 むしろ優しいフォローがちょっと、心に深くグッさり刺さってしまいそう。

 ぷるぷるぷる、と頭を振って気を取り直す。
 うん、お酒を飲みに来たのにこれではいけない、と気を取り直す。

「はい、お願いいたします。」

 今日は商売人ではなくて、お客様としてきてるのだ。
 だから、彼女が承ってくれたら、あとは……待つのみで。

「タコと、キュウリ……酢の物。」

 酢の物といえばビネガーか。
 異国情緒あふれる色味に、もともと海の男の元で育った娘なので、タコは大丈夫。
 美味しそう、と箸を手に取り。
 ぱくり、ぱくり、と少しずつ。
 それにあわせて、お猪口からお酒を一口。
 滑るように飲めるお酒は、喉元を冷やしてくれて、すごく、心地がいいわと目を細める。

ソウレン > 恥ずかしがる少女。しかし、持ち直すように首を振ると酒を楽しみ始める。
ならばこれ以上特に言う事はないな、とソウレンは微笑むのみ。
片手間に炉の上に貝を並べて焼き始めていく。

酒を呑んだ様子も、どことなく心地よさげである。
見た目は少女ながら酒の楽しみ方をきちんと心得ている。

「酸味はこれからの季節に良いからね。
タコも今が食べ頃で、市場にはいいモノが並んでいる。」

人気はないようだけれど、ねと微笑む。
食べ方さえ心得れば商売のタネになるのかもしれない、とほのめかす様に。

貝を焼いている間、まな板の上に柵取りした魚を取り出す。
それをすっすっと慣れた手つきで刺身に切り取っていくだろう。
白身の魚。皮目の赤に、うっすら霜降りのように脂が乗っている。
大根のケン、大葉。松の木状に飾り切りされた胡瓜と、蝶の形をした人参。
そして、切った刺身を綺麗に盛り付けていく。

「イサキのお刺身だよ。」

今が旬の刺身を一人前。さほど多い量ではない。
酒を楽しむならば、多くの料理を少しずつ、そんな雰囲気で。

リス > 「ふふ、この酸っぱさがとてもいいと思います。
 が……そうですね、ダイラスならともかく、タコはもう少しコチラの奥様方に食べてもらって浸透しないと難しいと思いますわ。
 とはいえ……と、あらいけない。」

 彼女の言葉に少女は笑う、無論タコも少女の店では取り扱いのあるものだ。
 だけれど、こちらには馴染みがまだ薄いであろう、だってうねうねぐねぐねしているのだ。
 食べるのは冒険者とか、一部の味の知っている人になるだろう。
 なので―――、と商売に思考が向いてしまったことを舌を出してごまかそう。

「お上手ですね、すごく、綺麗。」

 出された刺身、その脇に乗っている白いのは大根か。
 脂の乗った美味しそうな魚は色味も良くて新鮮であることが分かる。
 それに、脇にあるキュウリにちょうちょの形の人参は素晴らしいの一言。
 少しだけ醤油につけてパクり、と食べれば、口の中に広がる醤油の香りと脂の甘味に、はあ、と思わず感嘆のため息。
 もう一口、お酒を、口の中がきりっと締まるようで。

 ああもう、同じ酒なのに、こうも変わるものか、と微笑んでしまう

ソウレン > 「はは。何、商売人なのはお互い様だよ。」

道楽でやっているとは言っても儲けゼロというわけにはいかない。
まぁ、確かに見た目は悪い。あんなものを、と怒る人間もいるだろう。
だがその内に広まればよいとは思う。味はいいのだ。

「未熟ではあるが、目でも楽しんで欲しいとは思っているよ。」

飾りを褒められればふっと笑ってそう答える。
酒と食が進んでいるようで何より。
炉の上で焼かれている貝がほんのりと香ばしい匂いを漂わせ始めれば、
その口に醤油をひと垂らし。しゅう、という音と共に焦げた醤油のいい香りが店内に広がる。

「お酒のお代わりはいるかな?」

酒も進んでいるようだ。
冷えたお銚子をもう一本取り出して水気を取りつつ、訊いてみる。

リス > 「せっかくお客さんとしてきてるのに。損な性分。」

 綺麗な女将さんの酌に喜んでお酒を飲みたいだけなのに、とどこかおっさんみたいな事を言って笑ってみせる。
 タコの見た目はすごぶる悪い。
 悪いのだけれども―――

「こういう風に切ってしまえば、美味しい肴でしかないのでしょうねぇ。
 むしろ、こういうふうに切った状態で売る、というのも。」

 やはり、酒が入ってしまうからか、商売にシフトする思考。
 そのあとの言葉に、目を見開いて見上げる。

「え?未熟……?」

 これの、どこが。
 飾りは緻密そのもので、普通にすごいと思うのだけれども。
 これで、未熟といえば成熟はどんなレベルなのだろう、え?え?
 少女は視線をタコと、飾りと、彼女を見比べるのだった。

 でも、それはすぐに霧散する。

 だって、すごく美味しそうな―――醤油の焦げる匂い。
 彼女が焼いている貝がすごく、美味しそうなのだ。

「ええ、お願いしますわ。」

 お酒のお代わり、少女は軽く持ち上げれば、いつの間にかからになった徳利。
 こう見えて、それなりに飲めるのだ。

ソウレン > 「保存性の問題はあるだろうね。
茹でてある分、少しはマシだろうけれど―――。っと、これ以上はやめておこうか。」

空になったお銚子を受け取り、代わりのお銚子を。
差し出すついでにお猪口に一杯だけ酌をする。
あとは手酌でどうぞ、と目の前に残りの酒を置いて。

「こういう商売は生涯研鑽。満足してしまえばお終いだと思っているよ。」

だからこそ、未熟と自己評価をする。
ただ自信と練度は別のモノ。自信が無ければお客に出す事はない、とも。

香ばしい匂いを放つ貝を火から下ろす。
熱々の状態の殻を金箸で抑え、代用品のスプーンを口に差し込んでぐるり。
出てきた身に楊枝を刺し、殻ごと皿に盛りつけて供する。

「どうぞ。サザエのつぼ焼きだよ。熱いから気を付けて。」

そして、次なる料理の為に小鍋に油を張って、炉の上に…。

リス > 「ふふ、それは、店長としてお仕事に来た時に、しっかりお願いしますね?

 ありがとうございます。」

 でも、今聴いたこと自体は、覚えておきますから、と少女は軽くウインク。
 最初の一杯を注いでもらって、その隣に置かれる徳利。
 注いでくれることに、ありがとうとお礼を言ってから、お猪口から一口。
 するする飲める、美味しいお酒に、酒精交じる吐息。
 ああ、美味しいわ、と。

「……なるほど……。」

 食事所というのは、とても難しいものなのね、と把握する。
 やはり食事を作るものとかへの展開は難しいわね、という判断。
 商会と同じようにするには人手が足りない、と。

「わぁ……!」

 美味しそうな、貝。
 ほこほことしている貝はどう見ても熱いが、そこは竜。
 厚さとかは大丈夫で、出てきた身を眺める。

「これも、美味しいのよね。」

 見た目はぐろいのだけれども、美味しいのは知っている。
 ぱくんと食べれば醤油の香りとともに。
 美味しくてしばらく動くのが止まるのだ。

 もっとたべたい!とか思えるのだ。

ソウレン > 「あぁ、またその内にね。何、調理法ならいつでも紹介しよう。」

自分の使う調理法は王都では一般的でないものもある。
そもそも調味料からして違う事が多いのだ。
ただ、隠すつもりはない。広まるならばそれでいい、と考えている。

器に小麦粉を溶いていく。
そこに刻んだ小エビと剥いたソラマメを入れる。
塊のように掬い取って、熱した油に投入していく。じゅわぁっ、と小気味良い音が広がる…。

「ふふ。色々と楽しんでくれて、調理のしがいがあるよ。」

王都に住まう人の中には見た目や味で敬遠してしまう事も少なくない。
これだけ色々と分け隔てせずに楽しんでくれる人はそう多くはないのだ。
とんとん、という包丁で軽く切っていく音。
揚げ物をしている間に、箸休めとして茄子の浅漬けを少量少女の前に。
唐辛子を少しピリリと効かせ、酒に合うようにしてある一品。

リス > 「……うちのコックで、再現できるかしら……?」

 一応調味料などに関しては取り寄せてある、というか、トゥルネソル商会であれば、売っている。
 さしすせそは全部用意できるのだ、が……調理法も調味料も異質となれば、コックをここに修行にこさせたほうがいいレベルな気もする。

「今、作っているのは、なにかしら?」

 見たことのない調理法、細かく刻まれたものが入れられているので、首をかしいで問いかける。
 美味しそうだとは思うし、早く食べたいけれど、興味がわいたのだ。

「だって、ここは普段食べ慣れないもの、ばかりですもの。」

 それに、美味しいのだから。
 悪食といえば悪食になるのだろう、好き嫌いはないだけである。
 初めてのものに挑戦しないで商売は成り立たないとも思えるし。
 出されたナスをパク、と食べて。
 お酒とともに……ああ、幸せ。

ソウレン > 「料理人であればそのうちに慣れて作れるようにはなると思うよ。
全く同じ味、となると難しいかもしれないが…。」

好みもあれば舌の差もある。
自分の味を押し付ける気はないが故、近い味は再現できても全く同じ味は難しい。
そんな風に思うと少女に語るだろう。

「…まぁ、暇なら私が少々作りに行く分にはやぶさかではないよ。
毎日となると難しいだろうけれどね。

あぁ、これかい? これはかき揚げという料理だよ。」

玉ねぎなんかも使うのだけど、と油から丸く塊になったかき揚げを引き上げる。
油を切り、皿の上に盛って塩を添えて差し出す。塊一つがどーんと皿に乗っている。
エビの赤と、ソラマメの緑が映える彩。

「塩を付けて召し上がれ。」

小エビはそのままでもよかったが、あえて少し刻んでおいた。
食べ慣れない者が食べれば殻が口の中に刺さったりする。
なので角が立たない程度に。エビのサクサク感、豆のほくほく感が楽しめるだろう。

さて、次は何を作ろうかな、と食材庫を開ける。
奮発して、という事だからなぁ、と考えながら…。