2019/03/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 自分の身長と同じくらいの大きな荷物をかかえて歩く。汚さないように包んだ布の端から見えるのは、木製の剣の柄。ふらついてしまうほど大きくはないけれど、見た目よりも重たいせいで、だんだんと腕が疲れてくる。
どこかで休みたいと思った時に見つけた公園に立ち寄り、ベンチに腰を下ろす。腿の上に荷物を置いて、はーっと息をこぼしたら、すこしだけ白くなった。もう春が近いと思っていたのに、急に寒くなった。夜はもっと冷えこむかなと小首をかしげて。
「…どこに置こう」
それから荷物に視線を落とす。訓練用に使われていたらしい木剣は、名高い職人がまだ無名であったころに手掛けたものらしい。大振りなのに扱いやすいと元の所有者が褒めていたとおり、眼鏡を外して観察すると、本当にいい形、バランスで削り出されたものだともわかった。
たしかに、いい品なのは間違いない。けれど店に並べる自分としては置き場所に困る商品でもあった。ただでさえ店内が物で一杯だから、どうしようと眉を寄せる。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にランバルディアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からランバルディアさんが去りました。
■ミンティ > 考え事をしていたら、知った顔が見えた気がして、きょろきょろと見回してみる。昼下がりの公園には人が多くて、目的の人を探すのも難しい。
気のせいだったかもしれない、と思った小首をかしげ、小さくくしゃみ。座っているうちに身体が冷えてしまったかもしれない。外套でしっかり身体を包むと、また荷物を抱えて立ち上がる。
大きな荷物は、とりあえず倉庫に置いておこう。そのうち店内の整頓もしないといけないと考えると気が重くなりそうだったけれど。
そんな考え事をしながら、のろのろと公園をあとにして…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に徒綱さんが現れました。
■徒綱 > 平民街にも、往々にして人の出入りというものはある。
短期で働く冒険者は宿を取って働いたりするが、根を張るとなると自分たちの家が欲しくなるものだ。
そういう冒険者用の手合いに用意された、狭いがそこそこ手ごろな値段で長期閑居を構えるための住居街。
その一角、小さな部屋に尋ねてくる姿がひとつある。
っや、正確に言うと新しい主というべきか。
「……なるほどね」
家の前に立ち、周囲を見回しながらつぶやくのは一人の男。
部屋そのものは確かに狭い印象を受けるが。
さまざまな店に近く、また眠るだけであるならば狭さも気にならなそうだ。
冒険者のためという用途一点張りの部屋の構造に、内心笑みを浮かべてしまう。
男はただ部屋の前で、開けた扉を前にしながらそんなことを思った。
■徒綱 > 玄関前でいろいろと確認する姿は、まるで王都に出てきたばかりの冒険者に近い。
その実、王都に居は構えていないから間違いではない。
自分の本拠地は曰く言い難いところにあるわけだし。
「さて、どうしたものかね」
いいながら、あまり持っていない荷物を手に一人ごちる。
周囲にはいろいろな店もあるし、回ってみるのも一興だろう。とりあえずここに根を下ろすことは確定したので、鍵そのほか必要なものをそろえるのは必須項目ではある。
いくつかリストアップしながら、とりあえず一度扉を閉める。ちゃんと預かった鍵をかけて。
「とりあえず、治安は悪くなさそうなのがありがたい限りか」
ここに根を下ろすとして、そこは安堵するべきところだろう。
周りからは妙な声とか聞こえないわけで。
■徒綱 > 周囲にあるものを確認し、まずは食事か、と己を納得させる。
このあたりには冒険者御用達の食事所とかも多そうだ。
とりあえず今後のことは食事をしながら考えるとして、拠点が増えたぶん稼がなくてはならないだろう。
世の中というものは本当によくできている。
「まあ、これから食事にするとして、どこにいけばいいかは考えるか」
まず、何を食べるか。
そんなどうでもいいことを考えながら、周囲を見やる。
できれば美味しいものでも食べたいところだが、さて。ゆっくりと歩き出しながら、今日の食事に思いをはせて。
■徒綱 > そんなふうにして、(当人は否定するが)冒険者もどきの夜はふけて行くのだ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から徒綱さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/広場」にスミデーさんが現れました。
■スミデー > (まだ朝の時間帯、目が覚めて。
目が冴えてしまった為にベッドから起き出して。散策でもしよ
うかと服を着替えて人のまだ少ない道を歩き広場へと出る)
「さて、早起きは3ゴルドの得、というかどうかは分からない
が、偶に早起きしたんだし何かいいことでもあるといいんだ
が。それにしても、この時間から動いてるとは人間は本当に働
くのが好きみたいだな」
(広場に入り、屋台のまだ出ておらず。ただ仕込みをしている
らしい屋台はちらほらと見える為、早くからご苦労様だなと感
心した目で見る)
■スミデー > (一見すれば平和な光景、もっともこの地区の広場で
いきなり凄惨な事件が起きるとも考えにくくはある。
取りあえず、早くから開いていた果物のジュースを売っている
店でさっぱり系のジュースを購入し適当なベンチに腰掛けてち
びりちびりと飲んで)
「割と平和な風景だな……この国、今は王様がいないらしいが
それでも国が回るんだから侮れないな。しかもなんだろうな、
ちょっとした倦怠感というか、力が抑えられてる感というか
があるし……俺みたいな本体は大した力のない奴はともかく力
の強い奴は苦労しそうだ」
(何かの加護だか結界だかでもあるのだろうか、どうにも力が
落ちている感じがして。ジュースを飲みながらぼんやりと広場
で活動している人間達を眺める)
■スミデー > 「さて、あんまりここで管を巻いてても仕方ないか。
一回宿に戻って、改めて出かけるとしようかね……」
(ジュースを飲み終え、ベンチから立ち上がり大きく伸びをして。コップを屋台に戻してから、広場を出て宿屋へと戻って行った)
ご案内:「王都マグメール 平民地区/広場」からスミデーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にレシュノルティアさんが現れました。
■レシュノルティア > 『腸詰セット、もってって!』
「は、はぁい!」
平民地区にある二階建ての酒場。
夜になると人が集まり、皆思い思いの目的で酒を飲む。
純粋に酒を求める者。金を求める者。情報を求める者。女を求める者。
この酒場はそれらを全てを合法としており、客の求めるものを提供する。
そして給仕の者も、高額な対価を得られるためにこの場で働くことを求める。
そんな場所で、今現在給仕服を着て働いているレシュノルティアは。
「お待たせしました、腸詰セットになります」
テーブルにソーセージとパン、スープがついた軽食セットを置く。
その際に、抑えるものがない胸はふるりと揺れ、男の視線をくぎ付けにする。
■レシュノルティア > お金がないわけではない。
ただ、街の様子を知るためにこのような場所で働いているだけだ。
(流石に私みたいなのを買う人もいないでしょうし……)
30にもなる自分を買う人などいないだろうとタカをくくり、情報が一番集まりやすいと踏んだこの酒場で給仕をしていた。
『次Aセット、大食らいセット!早く』
「は、はーい!」
まぁ、その代わりに激務ではあるのだが。
次々にくる料理や酒を運んで運んでの時間が続く。
■レシュノルティア > 『――さん、8番テーブルで指名入ったよ』
『あ……はいっ』
給仕の合間に会話を聞いていれば、女の子が席へと連れられて行くのが見える。
他の席を見渡せば、まばらにその様子も見える。
そして時折、奥の部屋へ連れ込まれる子も。
(やっぱり、お金がないのかしら……)
お金が本当にないのか、あるいは遊ぶためなのか。
いろんな人種、いろんな事情があるために一概には判断が出来ず、給仕の合間にそんな観察をする。
■レシュノルティア > そしてまた一人。
奥の部屋へと連れ込まれて行くのが見える。
ここの喧噪と、部屋の距離もあって奥ではどのようなことが行われていても気づく者はほとんどいない。
そのために時折想定外の事も起きるが、全て金で解決されているらしい。
(それが問題視されないことが、問題な気がしますけど……)
国の現状と、命の安さ。
それらを考えながら、給仕の仕事を続ける。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からレシュノルティアさんが去りました。
ご案内:「平民地区 騎馬部隊詰所」にヴィルヘルムさんが現れました。
■ヴィルヘルム > 「…………。」
かぽかぽと馬が蹄を鳴らす。
ここは王都マグメール、平民地区の騎馬部隊駐屯所。
そこに、巨大な黒い鎧が馬を引き連れて戻ってきた。
『あっ隊長!』『くたばってなかったんすか隊長!』『葬式の準備中でしたよ!』
「うるせーお前ら!…まぁいい、自主練は出来てるようで何よりだ。
ちょいと野暮用で到着が遅れた、悪かったな。」
ご案内:「平民地区 騎馬部隊詰所」にウルスラグナさんが現れました。
■ウルスラグナ > ……その後ろから、遅れてやってくる軍服の褐色肌に赤髪の、隻眼隻角の女。
馬にやや視線を取られていたようだが、ヴィルヘルムの元へ集まってくる、部下と思しき人達から隠れるように、その背中の後ろ側に身を引いた。
「……、……ヴィル。その、ここは、ヴィルの騎馬隊の、拠点、なのか」
……緊張しているような。けれど同時に、この風景に何かを重ねるように、顰めた顔。
頭痛が苛んでいる、というのは、簡単にうかがえるだろう。
■ヴィルヘルム > 後ろに隠れるように身を隠したその姿に、乾いた土の付いたマントを重ねる。
…当然といえば当然だが、兵士たちの視線が飛ぶ。
『……あれ?誰っすかその人。ドワーフ?あ、恋人?』
『無いだろ隊長あがり症だし』『人見知りだし』『威圧感スゴイし』
『女性に免疫ないし』『口煩いし』『目怖いし』『戦闘中怖いし』
「とっとと訓練に戻らんかバカ共!!」
「……悪いな、バカだが悪い奴らじゃないから。
大丈夫か、ラグナ?…頭痛が酷いのか?」
心配そうに身を屈め、顔を覗く。
青年の顔は無機質な兜に隠れてはいるが、その瞳の奥の紅は不思議とはっきり見える。
■ウルスラグナ > 「……う、うぁ」
浴びせられる言葉の中に、何か線に触れるものでもあったのかもしれない。
振り返った時には、顔を赤くしたり白くしたり青くしたり、せわしない顔色のまま、やがて少し俯き加減に蹲っていた。
「……だい、じょうぶだ。緊張がほどけて、少し、疲れが出てるだけ、だろう……問題、ない」
……背中に背負う、鉄塊のような剣を重そうにしている。
けれども、肌身離そうともしない辺り、それが自分にとって何かかけがえのないものであるという無意識もあるのだろう。
だからそのままに暫く蹲って深呼吸をしてから、ゆっくりとその足で再び立ち上がる。
「……良い、仲間たちなのだろう。それは、わからないことだらけの私にも、わかった。ヴィルは、慕われているな」
■ヴィルヘルム > 「……うーむ。スゴイ顔色だな…本当に大丈夫か?辛かったらすぐ言えよな。」
ごりごりと、クセのように兜の上から頭を掻く。
「……フム。その剣… いや、ああ、何だ。
歩きづめだったし、ベンチにでも座って話をしよう。」
ぴ、と近くのベンチを指差す。
綺麗なものとは言えないが、放置されている…というほどボロボロでもない。
こまめに草刈りや掃除が施されているのが見て取れる。
「…ははっ、ありがとよ。俺の自慢の一つがあいつらだ。
荒くれ上がりの学無し連中だが…その分、人一倍努力してここにいる奴らさ。
だから俺も、『慕い甲斐』のある男にならなくっちゃあな。」
少し鼻息を荒くする。
…部下達を大事にしているのだろう。自分の事のように…否、自分の事以上に嬉しそうに語る。
■ウルスラグナ > 「……あぁ、大丈夫だ。すまない、心配をかけて……」
とりあえず、そういうことならと腰を休めるべく、ベンチへと向かって歩く。
剣を先に地面に突き立てるようにすると、どさっと腰を下ろして息をついた。
やはり、疲労が濃い様子だが。
「……ふふ」
――鼻息荒く語る様子に、ほほえましいものを見たような、ふと柔らかい笑顔を浮かべた。
「……何も分からないものだが、なんとなく、その気持ちがわかるような気がするよ。なぜだろうな。でも、ちょっとだけ訂正をしたほうがいい」
……その鎧の奥の顔を見ているから、位置は分かる。
兜の中の目を真っすぐ見るようにして。
「ヴィルは充分、慕い甲斐のある男だ。私の、わからないばかりの頭が、それでもそうだと、言っている気がする。貴方はきっと、魅力的な男性だろうさ」
胸を張れ。と、自分の胸をたたいた。
■ヴィルヘルム > 「…あぁ、大丈夫じゃないな。
そりゃそうだ、休んだとはいえ餓死寸前渇死寸前だった奴が昨日の今日で蘇生するわけない。
後で俺名義で宿でも取っとくから、そこ使いな。」
とはいえ、こちらも休まず重鎧装備だ。疲労がないわけではない。
疲れてるのはお互い様か…などと思っていた矢先、笑顔が飛んできた。
「…はは、そりゃお前。もしかしたらラグナも指導の立場だったんじゃないか?
……訂正?」
首をがしゃりと傾げて…吸い込まれるような、紅玉の瞳が視線を合わせる。
「……お、おぅ。…えー、あー、はは、あー、うん。
…て、照れるなおい。はは、はは……」
ぐりぐりと兜の奥で目が泳ぐ。すごい泳ぐ。
マグ・メールからダイラスまで遠泳できそうなくらい泳ぐ。
「……あ、あり、ありがと、よ。おう。
あははは、暑いな。今日は暑い。」
春先なので寒い。
■ウルスラグナ > 「そ、そこまで世話になってしまうと、なんだか申し訳ないな……。……そうすると、何か私も、ヴィルに返さなくてはいけない……何か、出来ることはないだろうか?」
じ、と。返したいという純粋な一心のまなざしが向けられた。心なしか、やや熱っぽくも見える目だ。
「……かも、しれないな。分からない。……人に教えられるほど、私は賢かったのだろうか」
記憶がない以上、自分がどんな立場だったかは、今の状態で自分が成していることの羅列から推測する他もなく、結論から言えば、少し自信は無さそうだ。
「………………あぁ、そう、だな。いや、その、すまない。でも、本心からそう思うことは、嘘じゃない。けど、なんだろうな。言っておいて、少し、自分でも……」
――頬に朱を差しながら、こちらも視線を逸らした。頬に触れ、目を細めながら。
「……そうだな。少し、暑い」
■ヴィルヘルム > 「……そ、そんなに気にしなくても良いんだけどな。
…そんなら…ラグナさえ良ければ、ウチで働かないか?
雑務でも何でも良いからさ。……情けない話だけど、最近入隊希望者が少なくて人手が足りてねえんだ。」
若干熱っぽい瞳を向けられ、少し声が上ずる。
ともかく、こちらからの『できること』はそういったところだ。
事実、最近の戦場は変化している。
広範攻撃魔法や竜騎兵の眼による敵兵の早期発見…
『騎馬で駆け付けて後衛の攻撃態勢まで前線を保つ』という戦術自体、効果は薄れてきているのである。
当然、戦場の華もそちらへ流れて、人気は取られ、新兵も奪われる。
…致し方ないとはいえ、部隊の財布事情はそんな事を気にしてくれるほど優しくはないのだ。
「…大丈夫だってラグナなら。もっと頭が悪そうな喋り方する奴いっぱい居るしな!
…だから、なんだ。その、こう。……頼めるなら。」
手甲を捻り外し、生の手をウルスラグナへ差し出し、握手を求める。
鎧を外して素肌を触れ合わせるのは、騎士としての『許容』と『信頼』の証。
…血豆の跡と、無数の裂傷。無残に、しかし誇り高く残る、努力と勝利の痕跡の見える手である。
■ウルスラグナ > 「いや、気にする。するべきだと、感じている。恩義がある、そして報いたいという心もある。出来ることがあるならば、何でもさせてほしい」
何でもだ。と、重ねて告げて、目を遣った。
……そうして、提案に目を丸くしてから、
「是非働かせてくれ!私などで良ければ、何でも手を貸そう。出来うる限りを私にやらせてくれっ!」
とてもうれしそうに笑いながら、その提案に大きく頷いた。
――そう反応をするのも、きっと堅気ではないのだろう生まれを感じさせたが、今は純粋に、恩人に報いる機会があることを喜んでいるように映るだろう。
「……っ、ははは、それは、ちょっとそういう人へ失礼な気がする。
けれど、……あぁ、喜んで頼まれるよ、ヴィル」
――その素肌の手へ、何も迷うことなく自分の手を差し出し、しっかりと握りしめる。
あの大得物を扱うことができるのだろう、細い見た目からは想像もつかないほど力強く、そして。
貴方のように、幾多戦場を乗り越えてこなければ決して与えられ得ない、硬く乾いた指と掌が、その手を包み込んだ。
……両手で。
■ヴィルヘルム > 「……婦女子があんまり何でも何でもって言うもんじゃないよ、ラグナ。
俺がほんとに『何でも』頼む男だったらどうなってると思ってるんだ。」
…無いわけではない。無いのだ。当然である。
『何でも』と言われれば、何でも頼みたくなる。ましてや今は行軍明け、かなーり溜まっている。
引っ込み思案と人見知り、加えて極度のあがり症。家は不気味な噂のある古い貴族の血筋。
おまけにその体格と、顔を隠すための兜によって流れた武勇と噂。
それによりほぼほぼ女性…というか、人と接することなどなかった。
しかし、年頃の男にそのような欲求がないわけがないのである。
欠乏した勇気と潤沢な良心が、それを幾度となく止めてきただけなのであった。
「……よっしゃーーー!!!ありがとうラグナ、ありがとう!君は最高だ!
はー良かった良かった。これであのバカ共の士気も上がるってもんだ…。
最近戦場が少なくて萎えてる奴も多くてなぁ…」
がっちりとその手を握り締め、その感触に直感する。
…この手は、間違いなく戦士の手だ。それも、力任せに得物を振るうだけの手ではない。
合理、戦術、技工。それらを組み合わせ、その上で剛を振るう者の手。
…ぞわりと、背中に震えが走った。
恐怖でも嫌悪でもない…まだ見ぬ強者をそこに感じ、肉と骨と魂が歓喜に叫び喚いた。
■ウルスラグナ > 「……、……もしそうだったら、あの時助けられた時点できっと、私は貴方から何も与えられずに浚われていただろう。でも、そうじゃなかったなら、貴方はきっと、邪に何でも、なんて頼まない。……そう信じてるから、そう言ってるんだ」
などと、ふわっと笑って告げるのだ。
最初の邂逅から話すまでで、手放しに貴方のことを信頼している、そんな様で。
「……それに、ヴィルなら……、…………ん、んん。いや、何でも、ない」
――何か言いかけた。が、あまりに小声なのと、その後の大きな咳払いが言葉の凡そを吹き飛ばした。
そうして、がっちりと握り締められながら大喜びをされ、目を白黒とさせる顔があった。
「……そ、そう、なのか。……うん、でも、そうか。私がいれば、何か良いことがあるのなら、喜んで居よう。ヴィル」
あまり言葉の意味など多くを理解はしないのだろうが、ただ純粋に嬉しそうでいた。
……それゆえに、震えた背中が見えたのだろう。不思議そうに首を傾げて、両手で包み込んだ手をとんとんと撫でて、尋ねた。
「……ヴィル、どうかしたか?………、……ん、ふぁ」
――小さく欠伸を零す。疲労がそのまま眠気へと変わってきたような様子だ。
■ヴィルヘルム > 「………………。そ、そうか。」
信頼が物凄く突き刺さる。…目の前の女は、あまりに魅力的だ。
下心がないわけではない故に、逆に苦しい。
「……?
ああ、もちろんだ!これから宜しくな、ラグナ。…って、これ何回目だろうな。わはは!」
聞こえなかった言葉はともかく、改めての快諾を受けて嬉しそうに笑う。
これほど嬉しいことはない。…何よりも、仲間が増えたことが喜ばしい。
能力など二の次…というと語弊はあるが、ヴィルヘルムはそういった親しい繋がりをこそ尊ぶ男である。
「……あ、ああ。いや、なんでもない。
ん、眠いか?それなら、先に宿に送っていくが。
……あ、でも不味いな。よく考えたらこの時期は…」
そう、時期が悪い。
この時期は街道の雪も減り、馬車が通りやすくなる。
そして春は、貧しい冬から脱するため、人々がこぞって生活品を買い始める季節。食事。雑貨。衣服。諸々。
必然、交通量が大きく増える。乗合馬車も埋まりやすくなる。
商人が宿を取る。商人の護衛兵も宿を取る。
金払いの良い商人は、宿に優遇される。
……商売に来た商人と、帰りそびれた旅人が、宿を溢れさせやすいのである。
さて、どうしたものか。
■ウルスラグナ > 「ふふっ、まったくだ。何度目かも分からない宜しくは、ちょっとばかり笑ってしまうぞ」
くす、と思わず吹き出して、花のように笑い、そうして真っ直ぐに向けた紅色の隻眼は、それでも疲れからか、ちょっとだけとろんとしていた。
「……う、ん。何かまずい、のか。だが、宿以外となると、野宿……いや、少し、自信も、ないし」
悩む。悩みながら、思考は徐々に眠気に蝕まれ、心にもないことを、ぽろりと告げさせてしまうのだ。例えば。
「……なら、ここの部屋を借りるのは、ダメだろうか。もしくは、ヴィルの家に泊めてもらうとか」
――家に泊めてくれ、なんて言葉なんて、きっと思いも考えもせずに飛び出した言葉。
言った後で、はっとして。かあっと赤くなりながら俯いた。
「い、いや、ぅ、ぁ、その、ちが、違くないが……ちがくて……」
■ヴィルヘルム > 「ははは、語彙がないんだよ俺は。飯にも美味いしか言わないからな。」
少し気恥ずかしそうに兜を掻いて、眠そうにとろける紅眼を見つめた。
「あー、この時期はな。宿がすぐ埋まっちまう。
野宿なんてさせるわけにいかねえよ、この辺はあくどい連中も多いし…」
うーん、と俯き考え込んで…ウルスラグナの出した提案に、明るい顔を上げる。
「おお、それ良いな。いいじゃん俺の いえ゜ッ」
変な声が出た。
うっかり勢いでいいじゃんなどと口走ってしまったが不味い。とても不味い。
しかし詰所は現状、掃除もされていない物置部屋と野郎共の相部屋のみ。
…必然、選択肢などなかった。吐いた唾は飲めない。
「……お、おぉ!何だ、ラグナさえ良ければ、俺は、構わない、けど!!
おお、良いよ!空き部屋、あるし!!」
顔が沸騰するのを感じる。全身が心臓になったように頭に音が響く。
■ウルスラグナ > 「なんだ、私と飯の評価の基準は一緒なのか?……らしいものだ、まったく」
そういうわけではないだろうことは分かっている。だからそのまま、からかうままに告げて笑っていた。
「……っ!!」
――いいな。いいじゃん。今何と。そういったか。
いや、失言をしたのは自分だ。だから今更引っ込められもしない。
それに現状、それが一番いい案だ。
何も分からないがきっとそうなのだ。そう、なのだと。
「……私は、か、かっ……かま、わない。あぁ、ヴィルの、部屋を、借りることにする……うん、する、よ」
――ええい、もうどうにでもなれ。匙を投げながら、顔を上げてきっぱりと告げた。……きっぱりと告げた?
「……と、ともかく、すまない。少し、本当に……眠い。色々話したいが、すまない、明日にさせて、ほしい……」
――パニくった思考さえも、そういう間にもすぐに眠気に包まれていく。
とろんとした目を手で擦ると、剣を持ち上げて、背中に掛けた。
「……行こう?ヴィル」
■ヴィルヘルム > 「お、お、おう。そそそそうだな俺の部屋を使えばいいよ。
えっ」
今何かすごい事を聞いた気がする。誰が誰の部屋を借りると?
「………あ、ああ。…わかった。行こうか、うん!
大丈夫か、ラグナ?歩けるか?」
………ああ、もうどうしようもない。吐いた唾は飲めない、飲めないのだ。
…何より、こんな顔で、こんな声で縋られて…見栄を張らない男など、この世に居るだろうか。
実際、歩くにも若干支障が出る程度に興奮してしまっているのが、今は何とも情けない。
■ウルスラグナ > 「……うん、大丈夫、だ。でも、少し怖い。……つくまで、手を、借りるぞ」
……最初に見つけた状態からすれば、数日寝込んでしまうような状態を、今尚少しの食事と大量の水だけで動けているだけでも、驚異的な身体だ。
それゆえに、何時ほつれていくかも分からないような今の状態でいる自覚はあるようで。
縋るのは声言葉だけでなく。
……歩き出す前に、傍らのヴィルヘルムの手を、ぎゅっと握ろうとする。
見栄を張っているなんていうものを今は見通せるはずもなく、ただその手に縋るようにしながら、きっとそのまま案内をされて、ヴィルヘルムの家まで向かうのだろう。
家につくなり、休める場所へと崩れ落ちるように倒れこんで、そのまま眠りへと着いたそうだ。着替えもせず、剣も降ろしもしなかった分、
色々と手を焼くことになるのは、蛇足だ。
■ヴィルヘルム > 「……ああ、気を付けろよ?雪解けで滑ったりしたら危ないからな。」
脳が漂白されていく。
…硬く、荒れていても、女の手は女の手。柔らかさもある。
それに、よりによって今気付いてしまった。
…だが、それはそれ。これはこれ。
その手を優しくエスコートし、少し離れた家へと向かう。
それなりに大きく、それなりに豪華な家。実家の土地に建てた家だが。
その後は、いろいろとあった。いろいろとあったのだ。
今までの戦場の何よりも疲れた、というのは…後の本人の談。
ご案内:「平民地区 騎馬部隊詰所」からウルスラグナさんが去りました。
ご案内:「平民地区 騎馬部隊詰所」からヴィルヘルムさんが去りました。