2019/02/21 のログ
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「魔剣とて、振るわれるならば正道な精神を持った者が良いだろうしな。優れた使い手では無く、良い使い手との巡り合いとは難しいものなのかも知れないが」
無敗の剣豪でも、彼女の造る魔剣に選ばれるとは限らない。
剣を握りたての幼子が選ばれる事もあるかもしれない。そんな清廉な世界は、精々眺めているくらいが関の山だろう。
視線を逸らせた少女に、不思議そうな視線を向けながらも、穏やかな口調で言葉を返すだろう。
「………その、なんだ。市井の冒険者が良質な武具を得る事は理に適っている。国政に携わる貴族としては、冒険者の生存率が上がる事は喜ばしい事だ。………だから、まあ、そういうことだ」
じっと此方を見つめる幼女に言葉を詰まらせた後、思いついたと言わんばかりに如何にも貴族らしい理由を並べ立てる。
並べ立てた後、微妙にその言葉尻は窄んでしまうのだが。
「……好きにしろ。だが、私が貴様の思う程良い人間でない事が、あの夜十分にその身体に教えてやった筈だがな」
肩に触れる彼女の銀色に輝く髪から、己の好むチョコレートの様な、カカオの様な甘い匂いが鼻孔を擽る。
その香りを追いかける様に顔を動かせば、自然此方を見上げる少女と目が合ってしまうだろう。
どうにもやり込められている様な気分を払拭する様に、微笑む彼女に僅かに顔を近付けると、囁くような低く小さな声で、揶揄う様に言葉を紡ぐだろう。
■モカ > 「正道……んー、相思相愛っていうほうがしっくりくるかな。だって、そこの剣なんて悪戯好きだもん。スカートめくりとか普通にしちゃうし」
真っ当な心をしているかと言われると、横一線を並べるように瞳を閉ざし、悩ましげに首を傾ける。
そして視線を向けた先の双剣に触れると、通りすがりの町娘のスカートを少しだけ踊らせる様に風を淡く吹かせていく。
可愛らしい悲鳴が小さく溢れるも、裾はしっかりとめくりきらずに脅かす程度。
ほらね? と苦笑いで振り返りながら、飲み込んだ言葉を隠していく。
「……とても、良い事いってると思うけど?」
いかにも下々の民を気遣う、良い領主の様な言葉が溢れてくれば、瞳を幾度か瞬かせて不思議そうに彼を見つめている。
悪い人だといいたげなのに、良い人な事が続くと、なんとも不思議な心地になるのだが、囁かれる言葉に僅かに紫色を震わせていき、小さく身体を跳ね上がらせた。
怯えたというよりは、よりあの夜を思い出させられてしまい、落ち着きなく指先を握り合わせながら、うつむく頬は更に赤い。
「……意地悪。でも、ギュンターは……悪い人でないと嫌なの?」
良い人と言われると否定したがる、ならそうでないと望む理由はなにか。
メリットなどなにもないだろうにと思えば、揶揄の理由を問いかけながら、恥じらいの顔を向けつつ、遠慮なく彼の膝の上へ頭を下ろすように横たわろうとする。
届くなら仰向けに、夜空を背景に彼の顔を捉えようとし、さらりとした銀糸が彼の膝下を撫でるだろう。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「剣と使い手の相思相愛とは、随分とロマンチックな事だ。しかし、実際に精霊と語らう貴様が言うのであれば、そうなのだろう。
……とはいえ、造った魔剣の教育くらいはしておくべきだと思うがな」
悩ましげな様子で言葉を告げる彼女に、ふむ、と理解の色を浮かべながら頷く。魔剣とその使い手の想いが繋がるというのは、昔読んだ英雄譚の様だなと思って居たり。
しかし、町娘の小さな悲鳴と彼女の苦笑いを見れば、幾分呆れた様に笑いながら肩を竦める。この双剣の持ち主となる者が似た様な性格でないことを祈るばかり。
「……む。まあ、そうだな。うむ。市井の者を労わるのは王族として当然……だからな」
彼女の言う通り、気付けば真っ当な貴族としての発言になってしまった。それを否定する訳にもいかないので、偉そうではあるが困った様な表情という不可思議な態度で言葉を濁す。
しかし、頬を赤らめて俯く少女の姿に漸く調子が取り戻せたかと安堵していたが――
「……嫌だというわけではない。しかし、己を善人だと言える訳がない。寧ろ、此の国の貴族としてあるべき、悪辣な人間でしかない。その様な行いも、沢山してきた。ならば、己の善性を否定するしかあるまいよ」
それは少女に答えたというよりは、僅かな自嘲の色を含ませたものかも知れない。既に己の両手は罪のない人々の血で染まり、多くの人を陥れて覇道を進もうとしているのだから。
己の膝に頭を乗せて横たわる少女を受け入れ、まるで猫の様だな等と思いながらその柔らかな銀糸を梳く様に撫でる。
ぼんやりと通りを眺めていた視線は、膝の上で此方を見上げる少女に向けられ、その紫玉の瞳を己の紅玉で見返すだろう。
■モカ > 剣の悪戯と言葉に、苦笑いの様な笑みが見えれば、同じ様な笑みを重ね合わせつつ、頷いていく。
真っ当な言葉でごまかそうとしていた彼の膝に頭を載せていくと、気まぐれな猫の様に彼にじゃれるかの様。
銀糸を撫でられれば、心地よさに目を細めていきながらも、山に住み着く娘にしては、香油を染み込ませた髪の様に触り心地よく指の合間をすり抜けていく。
「……悪いことを悪いって言えるのは、良い人だと思うよ」
本当の悪党なら、そんな事は言わないはずだから。
過去は、その言葉には納得はするも頷かなかったのは、今の彼を見ているからで。
そこまでは言わずとも、薄っすらと微笑みを浮かべながら言葉を返していた。
その夜、また彼の元に転がり込んだのか、それとも静かに過ごしたのかは、今は知ることなく幕を下ろすのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からモカさんが去りました。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 指をすり抜ける少女の髪は、さながら上質な絹の如く。触り心地の良い銀糸を時折指に絡ませ、戯れる様に撫で続けていた。
じゃれつく猫をあやす様な。或いは、膝上の少女を愛でるかの様な。
「…そうだと良いのだがな。だが、決して私は善人にはなれまいよ」
穏やかな笑みと共に言葉を返す。自嘲めいた言葉ではあるが、その口調は優し気な色合いが滲み出ている事だろう。
あくまで善性を否定する己に対して、そんなことはないと訴える少女に答える様な穏やかさで。
結局、そのまま他愛の無い会話を続けた後、何だかんだと彼女の為に宿を用意するのだろう。尤も、色事に及ぶ様な事は無く、静かな夜を過ごしていた――のかも知れない。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場通り」に黒須さんが現れました。
■黒須 > (いつもの騒がしい酒場通り。
どこを見ても顔を赤めて楽しむ様子を見せる客が多々居た。)
「…ふぅ」
(そんな中、大きな背中を入り口から見えるようカウンターに座りながら一人酒を飲み、ため息を漏らす)
■黒須 > (しばらくすればまた酔いが回ってきた。
そろそろやめ所だと思い、そのまま二杯目を飲み干しては勘定を済ませ、店を後にした)
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場通り」から黒須さんが去りました。