2018/10/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にケートゥさんが現れました。
ケートゥ > 平民地区だけでも複数存在する酒場、仕事上がりや冒険の打ち上げ、報酬分配や酒盛り―――何処にでもある、何の変哲もない光景の中、店の主とやり取りをする小柄な姿ひとつ。
まだ幼さを残す容姿ながら手慣れた様子の簡単な手振りや口振りで短く用件、演奏の場を借りる話を纏めれば、酒場の片隅にぽっかりと空いた空間、空の酒樽を椅子代わりに設けたそちらへと。

「さぁてお立ち会いの皆々様、今宵はよろしければその耳、一時ばかりのお付き合いを…」

明かりに薄く紫の色彩を浮かべる白髪、愛らしさよりも整いを感じさせる容貌は男女の区別に難しく、また軽やかな声音も同様に。
恭しい一礼を送るも、酒精に盛り上がる客の殆どはこちらに視線さえ送らず。しかしそれさえ意に介さず柔らかな笑み浮かべて樽に軽く飛び乗るよう腰を掛け。
両手に何も携えぬまま左手をすぅ、と上げ……空気を手繰るように指曲げればこぼれるように流れるように四指より生まれる魔力の糸は、右腕、肘の内側に繋がり形を成す。
強いて言えば弦楽器、と言えば良いのだろうが歪極まるその構成、竪琴の類に似ているのだろうけれど―――――右手の指を添えて、ひとつ鳴らす。

ケートゥ > ぽろ、ん。
まず軽やかに鳴るは竪琴のそれに似た音。
喧騒の中でも耳に障らぬ、けれど端まで十分に届き伝わる響きに数人が顔を向ける。
薄く瞼を下ろした淡い笑みは明かりに照らされて浮かび、その顔立ちにまた数人。

「お聞き苦しい際にはご遠慮無き叱咤を、耳に心地よければ笑みと拍子を。参りましょうか…ふふ」

楽しげな声も柔らかに、奏で始めるはまず労働者が働きの最中に互いを盛り上げる、また調子をつけるために何時しか歌われ出した庶民の歌、とも言えぬ掛け声に近いもの。
けれど繊細な指運が軽妙な調子を奏で、声も明るく弾ませて唄い出せばまず曲調に乗り始めるのは矢張り、仕事を終えたばかりの労働者だ。
冒険者の中にも家族に労働者が居る手合いもそれなりに多く、そういった一部も耳を傾け初めて。

「―――では次に、冒険を生業とする方々へもひとつ、売り込んでみましょうか」

ややあって奏でる音を窄めながらの笑み混じりが、最初に比してよく通るのは喧騒がその頃より小さくなっている故に。
弦を生み出した左が手首を滑らかに回して指を曲げ―――そこから奏でられる音は、先ほどから大きく異なる強さと弾み、響きを持った。リュートに似たものへと。

ケートゥ > 魔力によって生み出した弦は、構成する力の調整と長さや太さ、質感を変更し指先の精妙な操作を重ねることで幾重にも変化する。
反響も強さもまた魔力……総じて言えば楽師としての演奏技能が、弦のある楽器の再現から他に無い独自の楽器まで即興で仕立て上げる。
先までの軽妙で弾む調子だった楽奏は、冒険者の旅路を、探検を、そして迎える戦いを表現する音の低さや強い響きへと。

「かくて暗き森、昏き洞
 冥き闇の奥底に眠る悪しき某を、邪なる手勢の尖兵を打ち払うは
 携えし輝きの剣 深淵なる叡智の術 知恵と勇気 揺るがぬ絆
 山と積み上げられた財の数々よりも眩き それこそが冒険 ひとが焦がれ夢見るいつか―――――」

語り歌い、盛り上がりに向けて静かに熱を込め勢いを乗せた演奏を重ね、掛け合わせ、声と音との転調や変節全てを歌として………淡い響きの余韻を残し、ぽろ、ん。
楽想の最初と同じく、竪琴めいた鳴弦ひとつを以て締めとした。

「―――さて皆様、ご期待には添えたものでありましょうや?」

ふ、と。明かりに浮かぶその笑みは、演奏を終えて。外見の年頃に似つかわしい愛らしさを乗せ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアムネシアさんが現れました。
アムネシア > 今日酒場へとやって来ていたのは次にこの酒場で踊る際の打ち合わせだった。
バックヤードで簡単な確認を二三行っただけであっさりと終わってしまった。
まあ、適当に踊って客が喜べばそれでいいのだから、店主としてはその程度でいいのだろう。
その後時間が取られたのは予行練習と称して一発突っ込まれたから。

「おや、今日は楽師が来てたのね。」

ようやく解放されて帰途へと着くために店内へと戻ってきた修道服姿の少女が目にしたのは店の片隅で楽器を爪弾く少年の姿。
ウィンブルから覗く黒い前髪をちょっと気にしつつ楽師へと視線を向ける。
そういえば奥まで聞こえていたような気もする、気にする余裕はなかったが。
せっかくなので少し聞いて行こうと手近な椅子を引き寄せ腰を下ろす。
体質的にすでに処女膜も元に戻り身体の熱が引いていても漏らした体液が元に戻るわけではなく、椅子に座った拍子に湿った音がスカートの中からかすかに響いた感触に気持ち悪そうに眉を顰めた。

ケートゥ > 奏でる合間に増えた、修道服の少女……見掛けで言えば己よりほんの少しばかり上と思しき姿に目を細め。
その身から漂う精気を見定める能は生来のもの、細かなことこそ知らずとも少女の今大まかを知れば、そちらに愛想よい笑みを幾度と向けながらに、声音と演奏に交えるのは友好的な気分を沸き立たす魔曲……と言っても一般的なもの、精神操作と呼べるものではない、何とはなしに気分を上げる程度だ。
そうして冒険を歌った後、盛り上がった空気を緩やかに落ち着かせる調べへと……旋律にら、ら、と声を重ねて。

「―――――――――拙いながらもこのひと時、慰みや活力への後押しともなれば幸い」

立ち上がっての恭しく整った一礼、何時しか手拍子や合いの手、感嘆の声を交えていた酒場の客は最早聴衆と化していた。
喧騒の代わりに響くのは歓声であり、どうやら好評は得られたようだ…と言うよりも、言い切ってしまうがこの反応は概ね想定通りだ。
その場に居合わせた人々をいつの間にか己の聴衆に変えてしまえてこそ、楽師を名乗れるのだから。
お代はこちら、と手品のように現れた小箱を置いて、硬貨が弾み跳ねる硬い音を聞きながら足を向けるのは修道服の少女へと。

「途中からお越し頂いたご様子ですが、如何でしたでしょうか?少しは心地に良いものとなれば……って、ね?」

最後には調子を崩して子供らしい声音と喋り、笑みを浮かべて傍らに椅子を置き、並ぶように腰掛けた。

アムネシア > 客の盛り上がり様から見てかなりの腕前のようだ。
聞き入ってみれば、なるほど曲調も自在で大したものだ。
時折ちらちらと笑みを向けられる度満足げな微笑みを返す。
そして、フィナーレと共に客達が拍手喝采を叫ぶのと一緒に小さな手で拍手を贈る。

「ん?あ、私?そうね、良かったわ。」

何故か近寄ってきた楽師に声を掛けられると思わず周囲を見回す。
どうやら自分に話しかけているようだと判断すると微笑みを浮かべながらポケットから硬貨を取り出し差し出す。

「まだ若いのに大したものね。
 随分苦労してきたんじゃない?」

孤児院の子供たちよりは年嵩だが、子供は子供。
背筋を伸ばし両手を膝の上に置いた上品な姿勢で楽師を褒め称える。

ケートゥ > 聴衆がこちらに掛ける称賛の声にはこれもまた愛想の良い、子供と言うよりも楽師の顔で会釈や手を上げての返礼。
多少の落ち着きを与える程度の効果は、少しもすればまた喧騒の熱と騒がしさを酒場に呼ぶが当初よりもどこかしら和やかな空気を漂わす。

「ありがとう。取り敢えずこれで食べていける位には、ってところかな?」

聴衆がまたそれぞれの卓に分かれて意識が逸れていく中、差し出される硬貨を恭しく受け取り悪戯げに片目を瞑って見せる。
一人席を引き寄せていた少女の隣に座れば、そこは酒場の喧騒の中で小さく切り取ったような空間だ。

「途中で来る人は他にも居たけれど、貴女は表情が沈んで見えたからね。喜ばせたい楽師としても、一応男としても気になって………修道女さんが、こんなところにどうしたのかな?」

子供の顔立ちに入り交じる、年齢以上の雰囲気と少しの艶を覗かせながらの笑みは不可思議な印象か。少女の状態を半淫魔の目で見た上で、膝の上に置かれたその手へと己の手、繊細に爪弾くしなやかな手を重ねながら顔を覗き込み、黄金が深い黒を覗こうと。

アムネシア > 「その年で手に職をつけているだけでも大したものよ。
 こんな小さな酒場じゃなくもっと大きな場所でもいけるんじゃない?」

店内に騒がしさが戻るに連れ客達の意識が逸れていき二人だけの空間が出来上がる。
見た目の印象としては年の近い姉弟、もしくは恋人と言ったところだろう。

「表情が沈んで?
 んー……まあ、大人には色々あるのよ。」

予想外の言葉に思わずキョトンとした表情を浮かべる。
特に気にしてはいなかったが、言われてみれば気分が沈んでいたかも知れない。
いつものこととは言え、玩具のように扱われ犯され中に出され……しかも早漏だった。
なるほど、気分が沈んでいてもおかしくはない。
そんな思考を巡らせながらも子供らしからぬ包容力を感じさせる優しげな微笑みを浮かべて見せる。

「私?私は仕事の打ち合わせよ。
 今度ここでちょっと仕事するからね。」

少年の黄金を底なしの黒で受け止めながら曖昧に答える。
重ねられた手は拒絶せず、仄かな体温を伝える。