2017/08/31 のログ
リン > 「仰る通りで……。ちょっと気が緩んでいたな」

手を借りて立ち上がる。酒が残っているせいか、少しふらついた。
自身の油断があったこと事実はごまかしようもないので、素直にその忠告に耳を傾ける。
しかしその次明かされた彼の狙いを聞けば、ますます怪訝そうな表情を深くする。

「……ほお。かわいらしい送り狼もいたもんだ!
 しかし君ってばどっちかというと、そうされるほうに見えるが。
 似たような企みの悪漢と鉢合わせになったら、どうするおつもりで?」

長い髪に飾りを付けている自分が言えることではないが、
相手の格好は騎士風であっても華美な少女趣味だ。少々頼りなげに思える。

「……こんなふうに」

ずいと至近まで迫ってみる。別に本気ではない。背丈の差によっては見下ろすこととなるだろう。

ユーリィ > 「まぁ、暑いから喉乾くし、お酒が進んじゃうのも分かる気はするけどね。
 よっと――ん、まっすぐ歩けそうならば何よりだけど、どうかな?」

少年の体をひょいと引き上げ、立たせてしまえば手を放す。
自身の狙いを吐露すると、余計に怪訝な顔をされる。
どうしたものかとは考えつつも、積極的に怪しさを拭う気もなくて。

「あー、やっぱり皆そう思うのかな?ごっつい男の人より話しかけやすいと思うんだけど。
 ……ふふ、そうやって相手が見くびってくれるから、この格好は楽でいいなぁ。
 似たような企みの悪漢なんていくらでもいるから、突っかかってこない限りは何もしないけれど――」

少年の体が迫ってくるなら、戯れに乗るかのようにその体に向き合うように軽く構えて。

「――着地出来る様に加減するけど、バランス崩したらごめんよ?」

そっと少年の体に手を伸ばす。
そのまま何もしなければ、彼の体は瞬く間に宙へと浮いて、投げられるような形で一回転し、着地することになるだろう。
あるいは離れるならばそのまま。投げられて暴れたならば――どうなるかはわからない。

リン > 「あっ――」

手を伸ばされてそれをぼんやりと眺めていたら――視界がぐるっと反転した。
投げられていたことに気づいたのはその場に尻もちをついてからだった。

「――や、はは。まいった。
 見かけで判断できない連中がここに多いってのはわかってたつもりだったんだけど」

苦々しく笑って再度立ち上がる。やっぱりちょっとふらついている。

「これなら気兼ねなく送り狼されてしまうな。ぼくが男で助かった……のかも。
 ……で、きみは女? 男? 秘密?」

興味深そうな視線は継続している。ただしその色は先程までとは少し違っていた。

ユーリィ > 「っとと、んー、やっぱりまだまだ未熟だね。
 君がちゃんと立ったまま着地できるようにしたはずだったのだけど」

尻餅をつく彼に、改めて手を差し出しながら苦笑する。
もう一度ひょいと立たせて、再び手を放して。

「この見た目だと、最初から本気を出さないでくれるからさ。
 んー、どうやら普通に送ってったほうがよさそうだよね、ふらふらじゃない?」

男相手に送り狼となる気はないが、ここで出会ったのも何かの縁。
彼が無事に家へとたどり着くように、送って行く位はしてもよい。

「そうだね、君が可愛い女の子なら、摘み食いしてたかも。
 僕は一応、男かな。生憎と赤ちゃんを作れる器官は持ち合わせてないし」

生物学上は男だが、精神的にはどっちかわからないというのは秘密だ。
ともあれそろそろいい時刻、興味の視線を感じながらも、特に気にすることはなく。

「さてと、そろそろ良い時間だし、送っていくよ。
 それと、ボクはユーリィ。どこかでまた会ったら、その時は暇つぶしに協力してほしいな、なんて」

よろしく、と言いつつ自己紹介をしておこう。

リン > 「ぼくはまあ素人だからあれだけど、油断のない腕利きでも
 きみの見かけ相手だとためらってしまうだろうしね……」

魔境の人外を相手にするならともかく、ごろつき相手になら十分効果的であろう。
そうリンは考えた。

「ふーん、男かぁ……。ぼくはリン。
 この何の変哲もない美少年音楽家でよければ、暇つぶしでもつまみ食いでも喜んで相手になるよ」

冗談とも本気ともつかず真面目くさって言う。
一人でも歩けないことはないが、彼が泊まっている宿まで送ってくれるというのなら、
その厚意に甘えるだろう。

ユーリィ > 「そういうこと。自然界でいえば擬態ってやつだね。
 一応魔族や魔物への備えもあるけど、それは隠し玉だから秘密ってことで」

とりあえず戦えることを示すと、彼の前に立ち先導するように。

「それじゃ、リン、よろしく。
 あはは、それなら今度は音楽を聞かせてもらうとするよ。
 さて、そろそろ移動しようか♪」

笑顔で告げると、少年を連れて道を行く。
彼を送っていったならば、そこで別れて自分の家へと帰っていくことになるだろう――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からユーリィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からリンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にリンさんが現れました。
リン > 「この店が賑わうなんて珍しいな……。」

普段酒場でピアノ弾きの真似事をして小遣いを稼いでいるリンであったが、
今日はたまたまにして捌ききれないほど繁盛しているため
給仕の手伝いをさせられている。
どうせ大した給料が出るわけでもないし面倒くさいから
逃げたかったがいつもやっかいになっているため断りきれなかった。

「せめてかわいい子とお近づきになれたりしないだろうか……」

バレない程度にサボったりモタモタしてみせたりするが、
なんだかんだ言いつけどおりに仕事をこなしている限りはそんな余裕はなさそうである。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にナイチンゲールさんが現れました。
ナイチンゲール > ふっくらとした唇で咥えた煙草の先から、苦い味の紫煙をくゆらせる。カツカツカツ、と細いヒールを鳴らしながら酒場の前へと歩み寄り、扉を開く。
入った先に飛び込んで来たのは、いつもより多い客の笑い声。カウンターは殆ど埋まっているようで、一見空きがあるように見えない。
女は肩を竦め、周囲を見回し手頃な店員がいないか探す。そこで視界に入るのは、忙しそうに働く藍色の髪の少年。服装を見るに、この酒場の給仕のようだ。丁度良いと彼女は口を開き、良く通る声で少年に声を掛けた。

「おーい、ちょっと聞きたいんだが。ここの席はもう空いてないのか?」

リン > (かったるくなってきたな~。
 どのタイミングでなら気づかれずに抜け出せるかな……)

額の汗を拭ってそんなことを考えたところで、新たな客が入ってくる。

「はーい、いらっしゃ……、いらっしゃい!」

こんな冴えない酒場には似合わない、スタイルのいい美女を目にしてまばたきする。
席が空いていないか、と問われ、店を見渡し――いかにも景気の悪そうな風体の客の男の椅子を蹴る。

「ほらっ、どいたどいた! お客さんいつまで安酒で粘ってんの!
 ……ほーら、空きましたよ、どうぞどうぞ」

気弱そうにぺこぺこと頭を下げる男を追い立てると、
美女ににこりと笑みを向けてその席まで案内しようとする。

ナイチンゲール > 「ああ、ありがとう。……随分と豪快な席の空け方をするんだな」

席を空けてくれた少年に礼を言うが、その雑かつ豪快な客のどかし方にクスクス、と笑い声を漏らす。その微笑みを浮かべたまま、席へと案内され腰を下ろす。長い脚をすぐさま組み、フーッ……と煙草の煙を吐く彼女の唇は、それ程光量のない酒場のランプに照らされても尚艶やかであった。
不思議と灰が落ちぬ煙草を吹かしつつ、女はまた少年に声をかける。

「早速注文してもいいか?ラム酒を一つくれ。ライムを絞るのを忘れずにな」

騒がしい酒場の中、女の声はその喧騒に埋もれず心地よく鼓膜に入ってくるかもしれない。少年の藍色の瞳と己の翡翠の瞳が合わされば、彼女はそっとその瞳を妖しく細めた。