2017/04/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にスヴェンさんが現れました。
スヴェン > 冒険者で賑わう酒場
どのテーブルも海千山千といった具合の風体の冒険者が金勘定をしていたり、自慢話に花を咲かせている
そんな中、傭兵が1人くらい混じっても目立たぬもので風景に溶け込んでいる
来ている衣服やなんか冒険者とそう変わりはしないから余計にである

「…北国産の酒瓶と生卵2個…あと、ジョッキ…」

ひょい、と軽く手を上げてカウンター越しの店主に注文すれば、まずは木製の空のジョッキがどん、と
眼の前に置かれ、続けて棚に飾られていた北国産の無色透明の酒が眼の前に置かれる
店主に礼を告げて、ジョッキに酒瓶から酒を注ぐ。非常に強い酒で、北国に住まう人間は、
冬場はあまりの寒さにこれを飲まずにはいられない…と言った具合の度数の強さである
ちなみに、味もへったくれもないので、北方以外ではあまり人気はない…肉料理などに使うと、
表面をパリッと仕上げられるらしいが、料理人でないので詳しくは判らない

そんな酒の領域を逸脱しつつある薬品じみた酒をジョッキに少し。正直、あまり酒には強い方ではない
続けて、生卵を店主から受け取れば、ジョッキの中に2つとも割り入れる
ポイントはこの時、ジョッキの中身を消して混ぜてはいけないということである
味の酷さが増すばかりであるから…

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエナーシアさんが現れました。
スヴェン > 「…小さいナイフ貸してもらえる…?」

そう言って肉の大皿料理なんかを取り分ける際に使う小さなナイフを貸してもらえば、懐から紙の包みを取り出し開く
中には真っ黒に焼けた得体の知れない生物の焼死体が入っており、これが凄まじく身体に良い……―――
と、言ったのは部下のミレー族の連中で、ミレーの中でもとりわけ少数部族で他のミレーも薬効は聞いたことが無い、という
他種族の信仰や食生活、文化に文句をいうつもりはさらさら無いが、謎の生物の焼死体を薬にするのだから、
彼らは自分たちとは起源を別にする生き物なのではいだろうか…と思わぬこともない

ともかく、その黒焼きを借りたナイフで削ぐようにしてから細かく刻むと先程のジョッキにさらさらと入れる
不思議なことに無味無臭であった黒焼きが酒、生卵などと合流するとひどく生臭くなるのだが、これはどういう事だろう
高名な魔術師、学者がこの酒場の中にいるのであれば、是非尋ねてみたい

「うえっ…まあ…薬だと思って……」

なにか、ジョッキの中で微発泡している混合物に目を向ければぞわり、と鳥肌が立つようであった
ジョッキを手に取り、鼻をつまむと、何も考えず…無我の境地で、一息に混合物を飲み干した

エナーシア > 一人ちびちびと舐めるように、酒精の強い酒を呑む。
仕事上がりの習慣としてすっかり定着してきたこれだが、飲んで騒ぎたい連中からは不評なようだ。
まあ私も味が好きという訳ではない。
これのいいところはキツすぎて飲み過ぎる気も起きないところと、携行していると色々と便利な用途があるところだ。
こんなものでもとりあえず適度に酔える。

「うん?あいつは……」

珍しい事に今日は同じ種類の酒を頼むご同輩を目にした。
しかもジョッキでとは、剛毅な事だ。
いやまて、卵?
……入れた!?
呑むのか、あれを?

「いやいや、大丈夫なのかあれは……」

どう考えても美味い気がしないのだが、その心配を更に上回る代物が。
今度は何かよく分からない物体を入れてるぞ。
……本当に飲んだ。
唖然としながらその一部始終を見ていると、つい近くに寄って話しかけてしまっていた。

「相席していいかな?ところで、その酒……」

美味いのか、と聞くまでもないか。

「……私もこの酒は好きだが、随分変わった飲み方をするな」

スヴェン > この味をなんと言って良いものか
酒と卵と黒焼きが合わさり、例えようのない味わいが口いっぱいに広がり、食道を通って井の中へ落ちていった
この味を言語化出来るのは恐らくきっと宮廷に仕える学者か、詩人といった語彙の豊かなものであろうと思う

「オークの×××とゴブリンの××した後に残った残骸みたいな味だった…」

店主がカウンターの向こうから呆れ顔で此方を見ている
ただ、これは身体にはすこぶる良いのだ…ここの所疲れ気味だった自分には何よりの薬なのだ
このジョッキの中身のせいかは定かではないが、胸のむかつきを覚え始めれば、声を掛けられそちらへ視線が向く

「…構わんよ、ちょうど気を紛らわせたい所だった」

す、と座った椅子を少し引きずり彼女が座りやすいようスペースを作る
続いた質問に、掌で顔を覆いふるふる、と頭を左右に振れば改めて彼女に視線を向け直し

「…別にこの酒が好きなわけではないし、いつもこんな風に飲んでいるわけじゃない
 身体の調子が悪い時はこうして飲むと良いと聞いたんだ」

懐から、すっ、と包を取り出せば彼女の座るカウンターの前へ差し出してやる
良ければ試すか?と冗談交じりに彼女に勧める
苦笑気味の表情を浮かべるが、顔色は…よくはなかった

エナーシア > 全く想像のつかない喩えだが、想像出来ても気分は良くならないのは分かる。
しかし私もあまり色気のある飲み方とはいえないが、この扱いは酒に同情したくなるな。

「……見たところ、壮健そうだが」

身なりや体格からしてあまりカタギには見えない。
まあ概ね同業者だろうな。
特に病んでいるようには見えない。
顔色は、まああんなものを飲めば悪くもなるだろう……。

「それは、遠慮しておくよ……。そこまで調子も悪くないしね」

むしろ見ているだけで気分が悪くなってきたぞ。
差し出された謎の包みを丁重に断る。

「薬草を漬け込む方法なら知っているが、健康の事を考えるのならそっちの方がいいんじゃないかな?」

強い酒精は色々な薬効が溶け出しやすく、それこそ本当に薬として使う事もままある。
それに薬草類ならここまでおぞましい物体にもならず味の方も悪くはない。
薬草学をかじった時に師から教えて貰った事だ。

スヴェン > 「目に見える部分だけが全てではないさ…」

彼女からの視線を感じる
なので此方もマジマジと彼女を観察してみる…と言っても、冒険者の多い酒場、
軽装を身に着けているから、考えるまでもなく彼女は冒険者なのだろうが

「…と言っても、まあなんだな…
 精神や心に効くってんでもないが…むしろ、そちらへのダメージは大きかったように思う…
 疲労回復に良いらしい…かなり眉唾もんだがな…」

密かに彼女も道連れにしてやろう、と企んでいたが丁重に断られてしまえば、
被害者が少なくて良かったのかもしれないと思い直し、口では「そのほうが良い…」とだけ伝えて包みを懐へ

「貰ったもんを無碍に扱うのも悪いしな…物は試しと言うしなあ…
 本当に命に関わる程だったら、もっとちゃんとした、確かな薬効のあるものを使うさ…」

主人にジョッキを返し、代わりに一杯の水を頼む
薬の類はあまり得意ではないが、本当に体調が悪ければ飲むし、さっきのは遊びみたいなものだよ、と
付け足せば肩を竦めて笑ってみせ、店主の差し出した水をぐいっ、と飲み干した
……未だ、口の中には先程の味の余韻が残っており、水を飲み干せば渋い表情が浮かんだ

エナーシア > 「物は試しというか、物好きな事だな……。確かに体調へ何かしらの影響はありそうだが」

そう、良い影響か悪い影響かは置いといて。
しかしこんな物を渡されるとはこの男、実はそいつから嫌われてたりするのだろうか。
流石に初対面の相手にいきなりそんな事を言う程人間関係が下手ではないので黙っているが。
そういえばお互いまだ名前も名乗ってなかったな。
この男でも不便だし、最低限の礼儀というやつだ。

「あー、今更だが私はエナーシア。エナとでも呼んでくれ。見ての通りといっていいか、冒険者稼業さ。君も同業者といったところかな?」

我ながら色気も何もあったもんじゃない自己紹介と思うが、これも性分というやつだ。

スヴェン > 「そう言われると返す言葉も無いけどな…。何、それは大丈夫だろ…なんせまだ生きてる」

あの得体の知れない生物の黒焼きと対して美味いわけでもない酒と生卵2個の混合物を身体に取り入れて尚、
魂はこの身体を離れることはなかった…いや、実際、味が口いっぱいに広がった際に、
身体と魂は乖離しかかっていたかもしれないが…
胸のむかつきは続いていたが、まあ生きているので平気だろうと笑って見せ

「エナーシア…エナ、か不思議な響きのある名前だな、よろしくエナ
 俺はスヴェン…スヴェン・アルブム、傭兵だ」

彼女が名乗れば自分も名乗って返す
上着の裾で、軽く手をパタパタと拭えば、彼女に握手を求めて手を差し出す
よもや、彼女の生国で握手が宣戦布告の合図であったりはしないだろう…と、思う

エナーシア > 冒険者ではなく傭兵だったか。
だが私の個人的な印象によると、どちらの人間もそう大差はない。
実際兼業していたり仕事がかち合ったりなどそう珍しくもないし、戦闘が中心か否かくらいの差だろう。
私の場合器用貧乏というか、正面衝突のような戦いは特別得意という訳でもないので冒険者となっているだけだ。
何にせよ、このスヴェンと名乗った男と揉め事を起こしたい訳ではない。
ここは友好的に、そうだな一般的な挨拶だと唇同士のキスだな。
うん、手を差し出してスヴェンも友好の意志を示している以上何もおかしい事はない。

「少々職種は違うようだが、傭兵も冒険者も概ね似たようなものだな。まあ、改めてよろしく……、っと」

その手を右手で軽く握り、左手をスヴェンの肩に軽く乗せると身を乗り出して唇を近づけた。

スヴェン > 差し出した手を彼女が取れば此方も軽く握り返す
よくある挨拶で、友好を示すものであったり、仮に腹の中でどう思っていようとも表面上は仲良くやろうという意思表示
……と、自分は思っている。
で、あるから握った彼女の手を離しまたしょうもない話を続けようと思った、或いは彼女の冒険譚を聞くのも良い
うっすらそんなことを考えながら、手を緩めるが彼女は手を離さず…それどころか、肩に手を置き、
此方に身を乗り出し、更には唇を寄せてくる

情熱的な女は嫌いではないが、酒が入っているとなると少し事情が異なる
極稀に、酒に酔うと誰かれ構わず口付けしたがるやつが稀にいる
彼女が何をしようとしているか、察したから咄嗟に握手したのとは逆の手を彼女の頬に伸ばし、ふに、と摘もうとし

「…いやいや、待て待て
 俺は情熱的な女は嫌いではないけれど、どうしてそうなる…
 色気のある話をしてたんでもなしに…」

彼女の顔が、近い
呼気から酒の匂いが漂うわけでもなく、一体全体、彼女はどうしてしまったのか、と苦笑を浮かべる
…その一方で。頬をふに、と摘むことが出来たのであれば、ほっぺやわこいな、コイツ…などと思っていたり

エナーシア > 情熱だの色気だのと何を言っているのだ。
温室育ちのお坊ちゃまならともかく、初対面でキスぐらい普通の事だろうに。
まあ荒くれ稼業の男の場合、女に全く免疫がない奴もたまにはいるが普通に私と話せていたんだしスヴェンはそういうタイプではないだろう。
……女と見られてなかったとしたら、少し傷つくな。別に色っぽく見られたい訳ではないがそこまで女を捨てたつもりもない。
少しムキになって一気にスヴェンの唇を奪う。

「んっ、ふ……」

何故か頬を触られたが、それは少々気安すぎないだろうか?
軽く押し付けた唇を話し、スヴェンの手も頬から離れる。
突然顔を触られるのは驚いたが不快という訳でもないし、こんなところでいざこざは起こしたくないので、表情に出さないよう我慢するが。

「しかし、同じ酒の愛好者が見つかったのかと思ったのに少し残念だな。特別うまいとは言わんが、便利だし慣れればそう悪いものでもないと思うんだが……」

挨拶が済めばまたちょっとした雑談に戻る。

スヴェン > 「いや、まて…飲み過ぎだ、エナ…」

先程、知り合ったばかりの彼女がどれほどの酒を飲んでいたのかは知らない
ただ、この流れでキスはおかしかろう、となんとか彼女を押し止めようと試みるが…
唇に彼女の柔らかな感触を覚えれば、間近で見ると、眼力あるな…とかどうでも良い事を思った
現実逃避とか、思考停止とか、そういう類のものである
人の目の多い酒場の中で、周囲の冒険者にどう移ったろう、とか思わぬではないが、考えるのを止めた

彼女の唇が離れていけば、抑止に頬を摘んだ手も意味をなさなくなったから、す、と下ろして僅かに癖のある髪を掻く
俺がなにか悪かったのだろうか…と考えつつ、彼女へ視線を向ける…なんともない風であった

「…あれは、酒じゃあないな…どれ、俺が美味い酒を教えてやろう…エナの好みにあうかは判らないけど…」

彼女も何ともない風であったし、自分もそれ程、気にしない事にして平然を繕う
店主に酒を数種類、自分はあまり酒が強い方ではないから1つずつの量は少なめに頼めば、彼女へ酒の講釈が始まる

―――こうして、奇妙な出会いをした夜は更けていくのだった

エナーシア > 「私はいつも通り……、いや、まあいい」

私は断じて飲みすぎてなどいないぞ、と言ってやりたいところだが、酔っぱらいの常套句にしか聞こえないし止めておいた。
寛容な心で聞き流してやることとする。
スヴェンの酒の講釈は聞いている分には中々面白いが、過去に酒絡みで何度か失敗した末に今の習慣に落ち着いたのであまり実践する機会はなさそうだ。
話題が増えたと思えば別に無駄にもならないしな。
ここで断って波風を立てるのもつまらないし、流石に振る舞われた分ぐらいは呑むぞ。
いくら私でもそこまで堅物じゃない。
しかしまあ、いつも通りとはいえ男と呑んでいても結局色気のない方向へ行くのだな私は。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエナーシアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からスヴェンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 空は晴れ晴れと青く、ゆるりとそよぐ風も、季節の変わり目にありがちな春の嵐の気配が嘘のよう。
恐らく、四季を有する地域では、秋と並んで最も過ごし易いとされるであろう春の陽気だ。
商いに手を出しているが故に、彼是と多忙な妖仙だが、ここ数日は帝都の本店に滞在している。
午前中の執務を終え、昼食と息抜きの為に街に繰り出していたのだが。

「解せぬ。」

もう、両手の指では数えられぬぐらいに繰り返した台詞を漏らす。
馴染みの店で腹を満たした後、午後の執務での休憩用にと甘味を買い求めに少し足を伸ばした。
ここまではいい。
理解の及ぶ範疇だ。
だが、何故自分は、甘味処の店先で、店員のおばちゃんにガッチリと保持されて、碌な身動きができぬ状況に陥っているのか。
拘束というほど雁字搦めではないものの、十分に捕獲されたといってよい”膝の上抱っこ”。
往来する人々がたまに投げかけてくる視線が、どれもこれも”微笑ましい”という感情を隠そうとしていない辺りがまた、ひねくれた精神には幾許か屈辱的ではある。

ホウセン > 全く全く全く。
何故にこの身が、至極ありふれた歯牙にもかけぬ”おばちゃん”なる存在に捕獲されているのか。
幾度か自問自答する妖仙の膝の上には白い皿が置かれ、サービスと押し付けられたドーナッツがこんもりとしている。
それは白く細い指で拾われ、口元に運ばれ、現在進行形でもちゃもちゃと妖仙の口内と胃袋とを満たしている。

「おのれ、狡猾な。
 この儂を斯様な奉げ物一つで懐柔できると思うでないぞ。」

ぶつくさ言いつつも、甘味が底をつくまで、今のポディションから何が何でも脱却しようという気概は見当たらない。
――十分に懐柔されているのである。
看板娘ならぬ看板お子様として客受けの良さそうな顔だが、憤懣やるせないと眉間に皺が一本刻まれている。
けれど、味の違う菓子を頬張る度に、一旦霧消して、暫く後に再度刻まれるものだから、深刻さとか窮迫性を見出す方が困難というものだ。

「して、女将。
 儂は何時までこうしておればよいのかのぅ?」

視線は目の前の通りに向けたまま。
せめて、それが最後の矜持とでもいうように。

ホウセン > 撫でられる、撫でられる、撫で繰り回される。
艶のある黒い真っ直ぐな髪が、”おばちゃん”の少し手荒れしている手で乱され、撫で付けられを繰り返す。
己の頭越しに、客との商談が交わされる。
これでは抱き枕か、人形遊びの人形ではないか。
斯様な行為に耽溺するには三十年か四十年か遅かろうし、呆けて物事が分からなくなるにしてもたっぷり二十年ぐらいの余裕はある筈だ。
…等と、指摘するのは命知らずの蛮行に類しよう。
牝に対して年齢に触れる発言をするということが、如何な阿鼻叫喚を呼び寄せるか枚挙に暇が無い故に。

「…多少の事は目を瞑るが、日暮れまでには帰すが良い。
 儂とて事情がある。」

主に仕事が。
こうしている間にも、現在進行形で妖仙の執務室には裁量を求める案件が、刻一刻と時間の経過に比例して積み上がっている筈なのである。
”事情”等と持って回った言い方をしたせいで、ぱしーんっと背中を叩かれる。
叩かれた上に、笑い転げられる。
笑い転げられながら、ぺしぺしと背中を叩かれる。
お子様が背伸びしようとしているように受け取られてしまったらしく、それが痛くツボに嵌ってしまったようだ。

「えぇい、加減を弁えぬかっ。
 儂の体は、お主らと違うて、色々繊細なのじゃっ。」

外見年齢相応の背丈は言うに及ばず、骨格全般が華奢。
理に適った抗議だ、というか抗議だった筈だ。
だが、詫びとしてお土産に一品追加するとの言葉に沈黙してしまうのは何故か。

ホウセン > 後に控えている雑事と、通行人の目に晒されているというに点を除けば、昼下がりの少し早いおやつタイムという風情。
息抜きには丁度良いし、加害者たる”おばちゃん”には言わないが、甘味は相応に舌を愉しませる出来栄えだ。
麗らかな春を愉しむというのであれば、選択肢の一つ足りえただろう。
反駁と、美味への歓喜とを、緩い諦観の皮で包んだ饅頭が如き心情で、何とは無しに通りへと目をやる。
様子をうかがうのは、数多ある通行人の霊的構成。
人ならざる目は、人が知覚しえぬ物までも拾い上げてしまうのが常。
大部分は、何ら特筆する所のない平々凡々を絵に描いたような一般人だけれども、稀に混じる心身の安定を乱してしまった者が居るのも否めない。
そして、彼らに共通する点を挙げるとすれば、王国の騎士であったり、傭兵だったりと、戦場へ赴くような風体をしているということ。

「これ女将。
 昨今、ここいらで流行病が蔓延っておるというような話は聞いておらんかのぅ?」

失調の原因は、事細かに調べてみないと分かりそうにないけれど、複数の人間が一様の症状を抱える理由となると、疫病の類が思い浮かぶ。
少なくとも街中を出歩けるぐらいだから、重いものではあるまい。
その一方で、長期に亘って看過出来る類の物でもない。
捕獲者である”おばちゃん”は、回答の前に思案を巡らせている様子で、沈黙が先立つ。
齎されたのは、王国東方で何故か”戦の関係者”が感染し易いという病の”噂”。
だとすれば、先刻から目にしている彼らは、療養の為に王都に戻ってきたということなのだろう。
恣意的なものさえ感じてしまう、何とも都合の良い病である。
これが前線を離れたいが故の自作自演なら兎も角、敵対勢力からの謀略の類だとしたら。

帝国辺境由来の薬学も修めている妖仙のことだ。
何かしらの知見を求められ、王城に引っ張り出される事もあるかもしれない。
ドーナツを口に運ぶ手が止まる。
これも一つの商機かと、湧き上がる笑みで口の端が釣りあがってしまったが故に。

ホウセン > 小さな体に見合っている背丈とは裏腹に、胃袋は底なし具合を発揮する。
その食べっぷりが心地良いからと、”おばちゃん”は機嫌を良くして更なる餌付けに執心する訳である。
この一か月分の甘味を数時間で摂取してしまうであろう一幕は、妖仙の指定した日暮れまで続くようで――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からホウセンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/カフェテラス」にディン・タウロスさんが現れました。
ディン・タウロス > (日当たりも良く通り抜ける風も気持ち良い、そんなカフェテラスで珈琲を片手にパンケーキを食べる。待ち合わせをしているわけでも誰かと合っている訳でもなく、一人で小さなテーブル席に腰掛けて。周りは女性やカップルが多い為、心なしか居心地が悪い気がしなくもない)

「…場違い、だったりするか…?でも、小腹が空いて甘い物が食べたくなったから気にしたら負けだと思うんだけどな。ちゃんと注文してるんだから、文句を言われる筋合いもないし」

(パンケーキを半分食べて、それからケーキを頼む。チョコとチーズ、レモンのタルトを頼み、コーヒーのお替りも頼んでパンケーキの残りを食べ勧める)

ディン・タウロス > (パンケーキを食べ終えるタイミングでちょうどよくケーキが運ばれてきて。コーヒーを飲み終えお代わりを受け取り、チョコの方から食べていく)

「丁度いいタイミングだな…客をちゃんと観察していいタイミングっていうのを見計らってるんだろうな。ん、美味しいな」

(ケーキを一口食べて、美味しいと呟きながらチョコケーキをぺろりと平らげ、チーズケーキを食べる前に珈琲で口の中の味をリセットする)

ディン・タウロス > (ケーキとタルトを食べ終え、甘くなった口の中を珈琲で流し、ふぅ、と一息。大通りを通る人の波を見ながらぼんやりとして)

「ごちそうさま、と…後で何か辛いモノでも食べに行くか…」

(甘味の後は辛い系の者が食べたくなる、椅子から立ち上がり支払いを済ませて。どこかの屋台で串焼きでも買っていこうかと思いながら、店を出ていく)

ご案内:「王都マグメール 平民地区/カフェテラス」からディン・タウロスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にリンさんが現れました。
リン > 「まったくさ~~~お前なんなんだよ~~~マジで~~~」

テーブル席に一人座った藍色の髪の少年が、
傍らに置かれた青いバイオリンのケースを靴でゴツゴツと蹴っている。
頬がほんのりと朱に染まっているところを見ると軽く酔っているようだ。

「お前さえいなければ今頃ぼくなんてなー。
 え? わかってんの?」

こうして小突いているのは呪いの楽器であり実際大した目には合わされたのだが、
傍目にはよくない酔い方をしているようにしか見えないし、
実際のところそれは大きく間違っていない。
多少恵まれた容姿も台無しだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にトール・サンダーフェロウさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からトール・サンダーフェロウさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にトール・サンダーフェロウさんが現れました。
トール・サンダーフェロウ > 「では、これで注文の品は全部だね?うむ、またよろしく頼むよ。」

平民街にある酒場兼宿屋。そこのカウンターの前にちんまりと立っているのは金髪のふわふわの紙に白いボンネット帽を載せた十ほどの少女。
場違いな白いドレスに身を包んだ少女は堂々とした所作で店主といくらか言葉を交わし、そして、包みを置いて少女らしい満面の笑顔を残し背中を向ける。
届けたのは悪酔いを和らげる薬や簡単な常備薬のセット。
さて、店に戻ろうかとテーブルの間を縫うように歩いているとふと楽器のケースへと話しかけている少年の姿が目に留まる。

「相棒をそのように足蹴にするものではないよ、少年。」

その傍ら、足を止めるとテーブルの上へと身を乗り出すように少年を見上げ、じっと蒼い瞳で見つめた。

リン > 酒場には似つかわしくない、清涼な格好の子供が酒場に入ってくるのを視界の隅で捉える。
とはいえ奇人がときおり現れる(自分だって人のことは言えない)のは
そう特別驚くようなことでもなく、よくある風景としてしか見ていなかった。
そいつが自分のテーブルに寄ってくるまでは。

「なんだよきみ。
 こいつ? 《アクリス》は相棒なんていいもんじゃないよ。
 言うなれば、振っても振ってもついてくるタチの悪い重い女みたいなもんかな……」

鬱陶しげにため息を吐いて答える。
まっすぐに見つめてくる相手に若干怯みながらも、靴をケースからどけることはない。
彼が《アクリス》と呼んだ楽器がいわくつきのそれであることは、
なにかしらの知識か直感があればある程度は察せるかもしれない。

トール・サンダーフェロウ > 「なるほど。女性であるのならなおさら足蹴にするべきではないね。そんなでは他の女性も逃げてしまうよ?」

少年がアクリスと呼んだ楽器ケース、それをじっと見下ろし、それがただの楽器ではないことを感じ取ると嘆息気味に語りつつ、そっと身体を寄せる。

「それとも女性を足蹴にしたい趣味でもあるのかね?少年。」

耳元、可憐な唇を寄せると吐息を吹きかけるようからかうような口調で囁く。
見た目は十ほど、しかし、幼女には持ち得ない艶っぽさを含んだ仕草。
耳元で赤いイヤリングが艶かしく揺れた。

リン > 「なんだよ、もっともらしいことを言って……
 ほっといてくれ」

ムッとしたような表情。
否が応でも今後も長く過ごさなければいけない相手を邪険に扱っても
確かにいいことはないというのは理解できるが故に、反発を覚える。

「……ずいぶんつっかかってくるじゃない。
 きみこそ足蹴にされたいの?」

肉薄されてガタと音を鳴らして椅子ごと後ずさるが、それでも相手から離れられては居ない。
幼いと言うべき容貌の相手から、なぜだか視線を外すことができない。
硬直して、握った手に汗が滲んだ。

トール・サンダーフェロウ > 「はっはっは、そんなに怯えずとも良い。儂はトール・サンダーフェロウと言う。しがない魔法具店の店主だよ。」

椅子ごと逃げ出した少年の顔を楽しげに眺め、口元を右手で隠してころころと笑う。
後ずさったことにより少年の足元から楽器ケースが離れるとそっとそれを取り上げ、テーブルの上に置いてそっと埃を払う。

「儂のような愛らしい幼女は足蹴になどせずに愛でるものだよ、少年。まあ、それはさておき、随分この子に不満があるようだが、もし良ければ儂が買い取ってもよいぞ。もしくは預けてくれれば調教し直して差し上げよう。」

もちろん、お代は頂くがね、と逃げた相手へとさらに歩み寄り、小さな顔を寄せて不敵な笑みを見せる。

リン > 「別に怯えてなんか。
 調教って、やらしい言い回しするよね。
 もうちょっと見た目に合わせた言葉遣いできないの?」

経験上こういう喋り方をする子供というのはだいたいろくなのがいないので
何者かわからない以上警戒せざるを得ない。
有り体に言えばビビっている。
なおも積極的に近づいてくる相手を、控えめに掌で遠ざけようとする。

「ぼくの“大事な女性”を腕前の分からない相手に預けられはしないなぁ……
 っていうかあんまりその、近寄らないで。
 こいつの《呪い》が……」

と言っている傍から、トールと名乗った少女が拾い上げたケースが淡く輝き、
それと同時に椅子に座る少年の背丈が指一本程度だけ縮んでしまった。

「あー、ほら、もう」

どうも一度、そういう相手と意識してしまうといけないらしい。

トール・サンダーフェロウ > 「はは、すまないね。言葉遣いには気を使っているつもりなのだが、やはり難しい。」

言葉遣いを注意されると子供のように片目を閉じてぺろっと赤い舌を出してみせる。

「なるほど、確かに君の言うとおりだ。大事な女性を得体の知れない相手には預けられないだろうね。」

うむうむ、さもありなんと頷くと互いの間に置かれた掌を気にする様子もなく身体を寄せ、その薄い胸元が掌へと触れる。

「なるほど、なかなかに面白い。身長を奪う楽器か。そう言えば以前そのような楽器の記述を読んだことがある。中々に興味深い。」

ほうほうと蒼い瞳を好奇心に輝かせ少年の姿を頭の天辺から足の先までまじまじと眺め、縮んだ頭へとそっと右手を伸ばす。

「それにしても君、気付いているかね?売り払うという選択肢を無意識に排除していることに。大事なのだろう?実は。」

にっこりと、まるで姉が弟へと向けるような優しい微笑みを少年へと向ける。

リン > 「わっバカッ」

手が相手の胸に触れる感触に顔の赤みを強めてしまう。
こんな小さい相手に興奮してしまっているという事実を客観的に見てしまえば
余計に羞恥が高まり、呪いの呼び水となる。

「そ、そんなんじゃない。
 下手に扱われて呪いが悪化するハメになるのがいやなんだよ」

今までどんな方法を用いてもこれを手放すことは出来なかった。
それは知らぬ間にこの魔器に対して好意を植え付けられているのかもしれないと想像すると、恐ろしくなる。

「や、やめて……」

頭に手を乗せられると、恥ずかしさはさらに煽られて、
相手よりも頭一つは大きかったはずのリンの背丈は、見る見るうちに彼女を追い越して小さくなっていく。
乗った手の感覚は大きく重くなっていき、椅子に座った足は床につかなくなる。
ことによってはもっともっと小さくなってしまうかもしれない。

トール・サンダーフェロウ > 「おや、これは……。」

目の前でみるみる縮んでいく少年を見て、予想以上の深刻さに目を見開く。
そっと手を少年の頭から離すと手近な椅子を引き寄せ、その上へと腰掛ける。
大人用の椅子は少女には大きく、両足がぷらぷらと揺れる。

「これはすまないね。ここまで酷いとは思っていなかった。どうしたら元に戻るのかね?」

申し訳なさそうに眉根を下げ、テーブルの上の楽器ケースを撫でる。
真っ白なゴシックドレスに身を包んだ少女はまるで人形のように両手を膝の上へと置くとじっと少年の顔を覗き込む。

リン > 「ぼくがこの楽器を鬱陶しがる理由、わかってくれた……?」

すっかり身長差は逆転していた。同じように揺れる脚は、リンのほうが細いほどだ。
人形のような容姿の少女とそれより小さな少年が並んで座っている様子は奇異だ。
周囲の客の好奇の視線を感じれば、すがるように自らトールへと擦り寄ってしまう。
儚げな少年が情けなさに唇を噛むその様子は、保護欲あるいは嗜虐心を唆るかもしれない。

どうすれば戻るか、と言われて、少しの間思案。
そして言いづらそうに口を開く。

「恥ずかしさとか、興奮が原因だから……
 ……その、一発抜けば……かな」

自分の言葉に耐えかねたように項垂れてしまう。

トール・サンダーフェロウ > 「まあ、わからんでもない。儂としては興味のほうが強いがね。一体どこまで縮むのかとか、距離はどこまで離れることが出来るのかとかね。」

項垂れ身を寄せる少年の姿を眺めながら口元へと笑みを浮かべ、とんと椅子から下りると少年の横へと並び立つ。

「では、責任を取って儂が抜いてやろう。部屋を取ろうと思うが、この宿でいいかね?」

自分の不注意で呪いを進行させてしまったのだ、責任は取らねばなるまい。
それにお近づきになれば色々と研究させて貰えるやも知れぬと打算も籠めて、エスコートするよう右手を差し出す。

リン > 「見たい? どこまで縮むか……」

知的好奇心を示す相手に、その実験に使われるのではないかと危惧を抱く。
どこまで小さくなれてしまうのか、自分自身でも厳密には把握できていなかった。

「うん、じゃあ、それで……
 なんかきみ、楽しんでない? 気の所為?」

目の前の相手がどういうつもりなのかは分からないが、とにかくすがるしか無いのが確かだ。
相手を見上げ、小さな手を差し出し返して、よちよちと小さい歩幅で歩き出す。
無事に部屋が取れれば、可もなく不可もない簡素な部屋が二人を待っているだろう。

トール・サンダーフェロウ > 「はは、知的好奇心を抑えきれないのは事実だが、君が嫌がるようなことはしないよ。………多分。」

少年の危惧ににっこりと笑顔を浮かべ、少年の手を引いて店主の元へ。部屋が空いていることを確認すると代金を支払い、奥へと消えていく。

「おや、君は楽しくないのかね?こんな可愛い美少女に気持ちよくして貰えると言うのに。」

質素な部屋の中、ボンネット帽を外して壁に掛けると金色の髪が灯りで輝いて見える。
自分よりも縮んだ少年へと向き直り、胸元のボタンを外しながら愛らしく小首を傾げて見せる。

「で、どのように抜いて欲しいのかね?手でも口でもそれなりに自信はあるよ。もちろん――。」

にっこりと悪戯っ子のような笑顔を浮かべると日向にベッドへと歩み寄って行き――。

「足でもね。」

ベッドへとスカートの裾を畳んで腰掛けると靴を脱ぎ、素足を少年へと向けて見せる。