2016/11/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に砕華さんが現れました。
砕華 > (枯葉が枝から落ち、ひらひらと大地に帰っていく。
冷たい風が、通りを駆け抜けて、厚手の服を着込んでいる婦人が、身を縮こませて、襟元をさらに強く閉ざす。
寒空は、今日は灰色の雲に覆われており、時折雨も落ちてくる。
冷たい水は、余計に気温を下げて、正しく冬の訪れを示していた。

そんな寒空の中でも、砕華の店は暖簾を隠すことはしない。
裏に植えてある薬草も、この時期だからこそ、乾燥の時間が短縮される。
あいにく、今日の天気では、乾燥は期待できないので、簡易的にこさえてもらった小屋の中に、薬草類は全て締まってある。
乾燥した薬草の他に、今日の雨で乾燥を期待できない薬草、そして納品するべき薬。
それらを詰め込んだ、簡易的な貯蔵庫を、ここ最近で急ごしらえしてもらった。
木の板を組み合わせただけの、非常に簡易的なものだが、貯蔵するだけならば十分なもの。
その小屋から出てきた砕華は、手で頭を庇いながら、足早に店の中に戻った。
キモノについた、雨露を払い落としてから、カウンターの奥に再び陣取った。)

「うーん…やっぱり、今月は赤字ね。
どうしよう、思ったよりも赤字が酷いかもしれないね…。」

(砕華は、ため息をつきながら、カウンターに隠してある帳面に目を通した。
薬の売り上げや、店の支払いなどを事細かに記している、羊皮紙。
所どこを、赤い文字で書かれているシェンヤン文字は、店の支払いを示している。
その額は、黒地で示している額よりも多く、店の経営が、今月は赤字に陥っていることを、示していた。)

砕華 > (赤字の原因は、一つしかない。
襲撃による店の半壊、立て直すまでの臨時休業。
その二つの期間の間、一切店を開けられなかったのだから、売り上げなどあるはずもない。
先日、やっと店を開けることが出来たが、それだけでは穴埋めをすることなど、出来るはずもない。
立て替えの費用もある、赤字になって当然だった。

砕華は、羊皮紙をカウンターの中へと仕舞った。
店の売り上げは、商人組合に提出する決まりになっている。
いくら、赤字であまり見たくはないもの、とは言っても粗末には扱えない。
パタン、と引き出しを閉じ、もう一度砕華は、ため息をついた。

木製の建物である、店には隙間風が入り込み、暖房器具でもないと、凍えてしまいそうだった。
それを解決するために、砕華は二階の住居スペースに置いていた、薪ストーブを降ろしていた。
コウコウと、火がたかれているそのストーブは、シェンヤンではよく見られる形のもの。
その上に、ポットのような形をした、鉄製のものを置いている。
その取っ手口からは、もくもくと湯気が立ち上り、水が沸騰しているのが一目でわかる。)

「はぁ……、休日返上して、頑張るしかないのかね…?
別なお仕事は、あんまり探したくないしね」

(薬や薬草の知識は、たしかに砕華は豊富に持っていると、自負している。
しかし、それ以外の知識となると、あまり自信はない。
文学は嗜む程度で、とても家庭教師など務まるような頭は、持ち合わせていない。
かといって、背負っている長刀を生かせるような仕事は、体力面で不可能。
勿論、否定するわけではないけれども、体を売るような仕事は、もってのほかだ。
結局、薬を作って売る以外に、砕華がこの国で稼ぐ手段は、無いに等しかった。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にカリギラさんが現れました。
カリギラ > 「お邪魔しますよ」

寒さも本格化しローブを着るのも変には見えなくなってきた今日
寒さのせいで微かに震える手で紅一朝の扉を開く

「おや、今日は私だけですか。寒さのせいで皆さん外出が億劫なんですかね?」

店内に入れば温かな空気に癒される
いつも大繁盛している訳では無いここも今日はどこか寂しく感じる
人がほかに全くいないのもその要因だがもう一つ
店主の表情は変わらないが何だか雰囲気が暗いと感じてしまうせいだろうか

「どうかしましたか砕華さん?お客様が来ましたよー」

浮かない顔の彼女にそう告げてカウンターへ
態々冷やかしに来たわけではないと言葉で示す

砕華 > (木製の扉は、軋みを上げるように、少し古いものを選んだ。
シェンヤン人である砕華は、店の外見も内装も、シェンヤンのものに出来るだけ近づけている。
寒空の空気、それが扉越しに伝わり、店の中に吹き抜ければ、砕華の表情は一変する。
開いているのかいないのか、分からないような瞳が扉に向き、軽い一礼を返す。
とある客曰く、「まるで人形のよう」と呼称されるような、表情を向けた。)

「あら、いらっしゃいませ。最近はめっきり、見かけなくなっていましたね。
どこか、遠くへお出かけでも?」

(前述の、砕華の表情を人形のよう、と称した張本人が、そこにいた。
この時期ならば、もうあのローブに違和感を唱える人間も、そう多くはいないだろう。
外から漏れる明かりだけを、頼りにする店内は、時間帯によっては暗いと感じる。
だが、今日の天気は雨、明かりが漏れない天気だと、なおのこと店内は暗く感じるだろう。
その暗さに反比例して、店の中はほんのりと暖かい。
薪ストーブの薪が、パチっと音を立てて弾けた。)

「言わなくても分かっていますよ、カリギラさん。
頼まれていた鎮静剤ですが、出来上がっていますよ。」

(店が襲撃を受ける前、カリギラから受け取った依頼。
麻痺を促す薬と、精神を安定させる薬。
前者はすぐに渡すことが出来たが、後者はしばらく時間がかかる、と伝えておいた。
しかし、その後に襲撃を受けてしまったため、薬は一度作り直す羽目になった。
開店してしばらく、挨拶回りと、依頼されていた仕事の片づけと、製薬をこなし。
依頼されていた製薬の、全てをこの1週間で全て、片付け終えたところだった。

砕華は、カウンターの引き出しの中より、一つの布袋を取り出す。
その封を開け、ふわりと布袋が広がり、中から出てくるのは閃光のような、長細いものだった。)

カリギラ > 「あーちょっと他所の所にも御贔屓にしてもらったりもありまして…」

苦笑を浮かべ思い出す
掃除屋の意味を拡大解釈した方からの依頼を
忙しく実入りもそこまで良くない仕事が多かったのが追い打となり
あまりいい思い出にならなかった

「えぇ確かに。後追加で発注なんですが」

袋と対価を交換
中身を確認してみれば妙に長細い…何だろうこれは?

「あの、これは一体どう使うんでしょうか?」

焼いて使うのだろうか?塗り薬や粉末状の物
ではないので少し困惑してしまう
砕華の事だから薬は確かなのだろうがその使用法がよく分からない

砕華 > (カリギラの苦笑いに、掃除屋、と言う言葉を思い出した。
それを贔屓にしている者からの依頼なら、あまりよろしくない内容だったのでは、とどうしても勘繰ってしまう。
しかし、その表情を見る限り、あまり美味しい仕事ではなかったようで。
同じ商売人として、そこは道場を禁じえなかった。)

「16歳の女子、と言う話でしたので、違和感がないように。
これを砂地に突き刺し、先端に火をつけて、使用してください。」

(それは、この国でもある意味、なじみが深いかもしれない。
香りを染みこませた枯れ木に火をつけ、それが燃え尽きるまで、香りが続く香呂。
普段、砕華は薬草の栽培ついでに、お茶の葉を自家栽培している。
そのお茶を使い切った後、乾燥させて固めて、線香のように使うのだが、この鎮静剤も似たようなもの。
飲み薬でも構わなかったのだが、多少インテリアとしても使えるので、この形にしたというわけだ。
その旨を説明し、砕華はおもむろに立ち上がる。
湯気を出していた、奇妙な鉄製のポットの取っ手を持ち、傍らにおいていたキュウスの中へ注ぐ。
既に、その中にはお茶の葉が仕込まれていて、湯を注げば葉が開き、お茶が抽出されていく。
ある程度注げば、再び鉄製のポットは、薪ストーブへ鎮座する。)

「其れで、追加の注文というのは?」

(砕華は、カウンターの引き出しの中から、羊皮紙と筆、そして墨を取り出す。
近頃は、店頭販売している風邪薬や傷薬などの売れ行きよりも、こうしたオーダーメイドの方が主な収入源になっている。
ゆえに、一つ一つ依頼をメモするために、羊皮紙と筆、そして隅を用意した。

其処には、顧客の名前と、製薬して欲しい薬の内情、そして期間を簡潔に纏めていた。
列にして、およそ10ほどある。さらにその上には、完遂された依頼が黒塗りされている。
砕華はそれを一瞥し、頭の中で、まず大まかな製薬の期間を考えた。)

カリギラ > 「砂地にですか…成程、そう説明しておきます」

指して先端に火をつけるなんて珍しい
香の様に使うのだろうが、馴染みがないので物珍しい
立ち上がった砕華が茶を用意するのをカウンターにもたれたまま眺め

「これで少しは安心できると良いんですけどね」

少しでも心に安寧を
薬に頼らなければならない時点でかなりおかしいのだがそれは仕方ない事
子供には荷が重すぎる

「追加の注文についてですが…」

そして別件の注文を
しかしこれについてはまず話しておかなければならない
自分の為にも彼女の為にも

「まず。この件に関しては、詮索する事はお勧めしません
商品については…甘い風邪薬をお願いします」

甘い薬なんて注文をする気恥しさを隠しつつそう告げた

砕華 > 「寝る前に、火をつけておくと、とてもよく眠れます。
心を落ち着けるのならば、まずは睡眠をしっかりと。
薬は、それの手助けをすることしか、出来ませんしね…。」

(本当に、心を無理矢理落ち着けるための薬は、確かに存在するし、作れる。
だが、そういう薬は飲めば飲むほど、体を壊していってしまうもの。
依存性に頼り、薬を服用し続ければ、いつか内臓を壊してしまう。
そうなると、今度は医者にかからなければいけなくなり、結局は医療費を負担することになる。

砕華は、あくまでリラックスできる効能を持つ、線香をつくり、後はしっかりと体調を整えることを進めた。
立場を弁えているからこそ、それ以上に踏み込まないように。
カリギラの言葉を叶えられるのは、おそらく砕華ではない。)

「……………。」

(追加注文だが、風邪薬を所望とのことだった。
ただし、普通の風邪薬ではなく、甘い風邪薬を所望、とのことだった。
それはいい、そういう客は確かに、時折やってくる。
子供が飲みやすいように、出来るだけ甘いものを作って欲しい。
その依頼は、既にメモの中にも、書かれているものだった。

しかし、問題は其処ではなかった。
カリギラが詮索しないように、という言葉を使った。
つまり、件の風邪薬を誰に渡すかを、知られたくないという事、なのだろう。
砕華は、片目だけを薄く開きながら、笑みを浮かべていた口元を、真一文字に変えた。)

「承りました。」

(だが、最後にはその仕事を、請け負うことにした。
薬屋が踏み込んでいい案件では、なさそうな気がしたし、何より風邪薬だ。
危険なことに使えるようなものではないだけに、其処まで注意を促す必要も、ないだろうと判断した。)

カリギラ > 「香りで落ち着くという事ですね。大丈夫ですよ、きちんと理解しました」

薬は手助け、まさにその通りだろう
あくまで手助けの為だけに使うのが薬
言われなくともきちんと理解できている

「どうもどうも。それは良かった」

全てを理解し詮索しないと言ってくれたのであろう砕華
彼女の薬の腕だけでなくこの賢さも彼女を贔屓にしている理由の内の一つ
馬鹿な相手に商売なんてできないのだから

「詮索しない様にとは言いましたが、いつか貴女には相談するかもしれませんね
他でもない貴女だからこそ」

それだけ言って前金を置く
彼女にならいずれ本当に頼る事になるかもしれない
そんな事を思いながら店を後にする

砕華 > (むしろ、鎮静剤で一番効能があるのは、香りだと思っている。
飲むよりも、鼻から吸い込むほうが、薬の効能はより一層高くなる。
無意識に、呼吸を繰り返す睡眠中だからこそ、その効果はとてもよく表れる。

とはいえ、砕華自身も、実は寝る前に行っている方法だった。
あまり寝つきがよくないため、安眠できるにはお香に頼っている。
勿論、薬ではなく、自分で栽培したお茶の葉を使っているが。

詮索して欲しくない物は、誰にだってある。
逸れに踏み込んでいいのは、よほどの信頼を勝ち得たときか、親しくなったときだけ、だろう。
カリギラが、どう思っているかは不明だが、少なくとも砕華は、まだ踏み込もうと思える中ではなかった。
カリギラは客であり、砕華はそれを相手にしている商人。
今は、それ以上でもそれ以下でもない、ただのそういう関係だった。)

「……相談ならば。ですが、厄介ごとはご免ですよ?」

(カリギラは、いつも前金として、薬の代金の半分を支払っていく。
普段は、成功報酬という形をとっているのだが、カリギラとはそういう方法をとっていた。
勿論、その場合は砕華も、出来るだけ優先して、薬を作るようにしている。
厄介な薬を作ってくれ、と言うことも時折はあるが、支払いのいい客は、商売人としては嬉しい限りだった。

しかし、頼られる日が本当に来るのだろうか。
砕華は、カリギラの背中を見送りながら、少しだけそれを思う。
そして、メモの最下部に、『カリギラ 甘い風邪薬 期限:出来るだけ早く』と書き込み、カウンターの引き出しに仕舞う。
コウコウと燃える薪ストーブに、新しい薪を放り込みながら、ようやくお茶を一口、啜った。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からカリギラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から砕華さんが去りました。