2016/05/22 のログ
ハーディ > 「流石にこの季節じゃ、毛織はもう仕舞ったほうがいいな。
これからは椰子の実と果実と、香油や香水などの化粧品を多く確保しておくか。
そろそろ辛い料理、喰いながら歩けるものでも出したほうがいいんだろうかね。鉄串で羊肉でも焼いて。
問題は、天幕をもうひとつ、持ってこなきゃいかんところだが。油が商品にかかってはまずいし」

あるいは、話に聞く北方山岳。
あそこへ行って氷を採取する依頼を、冒険者ギルドに出すのもいいか。氷は保管さえ気をつければ、色々、用途はある。
行き交う人々をながめ、ターバンの男は腕組みをして呟いた。

同じ隊商の者だろうか、少年のような身なりの売り子が、椰子の殻をくりぬいて中にシロップを混ぜ、
ストローを差して道行く買い物客に配って歩いている。

ハーディ > 別段変わった客が通りかかるでもない。
ハーディは振り返って奥に行き、老商人を呼んで、これからの予定を確認しはじめた。

「このあと行く場所は、シェンヤン、冥嶺酒造、ルミナスの森、の順か。
穀類のめどがつき次第、冥嶺酒造には行かなきゃならんから、そこを最優先として。
あとはもう少し足をのばして、1,2か所、行商場所を増やしたいところだな。
そういえば、同業がなかなか見つからないのは、どうするかねえ……」

とはいえ、各地に支店でも持っていない限り、行商人を捕まえるのは大変である。
何しろ、交易路を公開しているものなど、そう多くはない。滞在した都市くらいは追跡できるだろうが、
例えばこのハーディのように、街道から盛大に離れた地域を進んでいった場合、手紙すら届かないこともあるのだ。

「まあ、地道にやるしかねえな。好き勝手に行動するのは、当分先になりそうだ」

ふたたび店頭に戻ってくると、売り子の少年に交代を告げるため、表へ出ていく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 自由市場」からハーディさんが去りました。
ご案内:「ヴァルケス武具店」にイーヴィアさんが現れました。
ご案内:「ヴァルケス武具店」にテイアさんが現れました。
イーヴィア > (平民地区、一般市民の住居が建ち並ぶ区域の真ん中に、其れは在る
周囲の建物から安全な距離を確保した、少々開けた場所に建つ一軒の武具店
全部で三階建ての建物は、屋根の上を見上げれば、高く大きな煙突が聳え立ち
非常に判り易い目印と為っているのは間違いないだろう
そんな場所まで王城から歩いて来るのなら、夜風で涼むには十分だろうか)

―――……大分歩かせちまったかも知れないが…お疲れさん、此処が俺の店だ。
ま、流石に俺が出払ってたから、今日はもう店自体は閉まってるけれどな。

(最低限の明かりだけは、店の二階部分へとちらほら見える
アレが住み込み用の部屋だと、軽く説明しながら店の前まで歩めば
がちゃりと、手にした鍵で錠を解き、扉を開く、か
先に店内を確認し、それから、改めて――連れ添いの女を、店の中へと手招こう)

テイア > 王城を去る前に、男に待ってもらい騎士団長らと少しだけ話した女は、男と共に王都へと繰り出す。
富裕地区を過ぎ去り平民地区へと歩いていけば、人々の生活の音のする中、店舗へと到着する。
そびえ立つ煙突。今は静かだが、店が動いている時は鉄を打つ音や、炎を燃やす煙がその煙突から上がっているのだろう。

「いや、歩くのは慣れているから大丈夫だ。立派なものだな。」

二階部分の明かりの説明などを受けながら、建物を見上げており。
店舗としても、鍛冶場としてもしっかりとした作りに女は感心して。
がちゃり、と鍵が開く音に視線をそちらに戻して、呼ばれるまでは扉の前で待っている。

「邪魔をする。」

招かれれば店内へと足を踏み入れて、並ぶ武器などを見渡すのだろう。

イーヴィア > (道中、他に何用が在るのならば、其の位は待つ事だろう
女を店内へと招けば、今は薄暗い部屋の中を歩き、ランプを手に取る
燐寸を手にし、油へと火を点ければ、仄かに照らされる店の中
並ぶ様々な武具や、ごく普通の日常で住民が使うだろう日用品や調理道具等も置かれており
『客は選ばない』と言う先の言葉を証明する事と為る、か。)

最初は小さい店舗だったんだけどな、少しずつ増築して、今はこんなさ
少し見てくかい? お眼鏡に適うものが在るかは判らないがね

(扉へと近付けば、再び内鍵を掛ける。
扉から然程離れていない位置に、階上へと続く階段が在り
招こうとしたのは其の最上階、己が部屋
ただ、もし店内に興味が在るのならば、一通り巡って貰っても構わないと
女へと告げては、己は案内役として、ついて歩こうと)

テイア > ほのかに照らし出される店内。
思ったよりも奥行があり、広い。
壁に掛けられた武具に興味を占めるのは武人の性だったか。
まるで美術館でもめぐるように、壁に所狭しと飾られた様々な武器を眺めて。
棚には、そんな武器とは縁遠い日用品から調理道具が並び、そのギャップに面白そうに唇に弧を描き。

「努力の成果か。貴重な財産だな。
 ああ、少し見せてもらってもいいか?手に取れないのが残念だが。」

小さな店から、ここまで増築できるほどに業績と信頼を積み重ねてきたのだろう。感心したように女は言って。
こつ、こつ、とブーツのヒールが硬い音をゆったりと奏でながら、店内をゆっくりと見て回る。
大男が振り回すようなクレイモアや貴族の持ちそうな装飾豊かな剣など多岐に渡る種類を、楽しそうに眺める。

「有難う。様々な武器を眺めるのは楽しいな。」

一通り眺め終えれば、待ってくれた男に礼を言う。
煙突の位置から考えて、鍛冶場は店の奥だろう。
流石に店内からは見えないが、昼間は鉄を打つ音がきっと店にも響いてくるんだろうな、などと想像しており。

イーヴィア > (並べて在る武器に傾向は無い、どんな注文にも対応出来る様にか
クレイモア一つとっても幾つかのサイズが掛けて在る
店内を巡るなら、己は其の間、明かりを手に付いて歩くだろう
疑問や質問が在れば其の場で答え、多少でも構わない、己が仕事を知って貰おうとする事だろう)

まぁ、長いとも言わないが、王都に来て短くも無いからなァ
其れなりには評価されて来てる証だ…て事にでもして貰えると嬉しいね。

(女が一通りの見学を終えたならば、其の辺りで店舗の説明を軽くするだろう
店の奥には裏口が在り、其方からも客を招ける事
武器を試したい時は、店員か己が付き添う事を条件に、振るうスペースも在る事
そして、店の奥に在る鍛冶場は、店員すらも出入り禁止である事
客商売だからこそ、其の辺りの事はきっちりと伝えて置きつつも
けれど、其れ以上は問われない限り、己からは深く話を伸ばさないだろう
何せ、あくまで今回招いた理由は、そんな堅苦しい理由じゃないのだから)

一番上に、俺の部屋が在る。
ま、王宮の上質な部屋とは比べ物には為らないだろうが…酒には事欠かないぜ。

(示す、階段の先。 明かりが在れば上るには苦労しないだろう。
今度は、先に己が階段を上り、女を案内するか
明かりで足元を照らして遣りながら、上った先、廊下を進み、突き当りの扉を開けば其処が、己が私室。
寝台と、広めの丸いテーブルに、椅子が二つほど並び
既にテーブルの上、常備して在るらしきブランデーの瓶が鎮座しているのが
何よりも先に、目に入るやも知れない)。

テイア > 刃を欠けさせてある剣に、時折指を伸ばしてその形をなぞりながら、明かりに照らされ店内を回る。
時折疑問を質問に載せれば、男は答えてくれる。

「建物にしろ、設備にしろ、ここまで揃えようと思ったら一朝一夕ではいかないだろう。資金も必要だし。鍛冶は、そなた一人で行っているのか?」

それができているということは、しっかりとした地盤があるということだ。
これらを見るだけでも、男の仕事が確かなのが伝わってくる。
一通り見て回ったあとに、店舗について説明されるのに時折相槌をいれながら聞く。
表からでは入りにくい客にも、細やかな対応がなされている。
持ち逃げや盗難対策もしっかりしており、様々な部分に気遣いがみてとれる。
女は感心したように、頷き。
鍛冶場は、店員でさえ出入り禁止にしているとのこと。
鍛冶はおお仕事だが、全てひとりで行っているかと質問を交えて。)

「では、改めて邪魔をする。ふふ、それは楽しみだ。」

階段を示されて、男の後ろを女が登る。
足元を照らしてくれるのに、礼を言いながら登っていくと最上階。
男の部屋に着く。

「準備がいいことだ…。」

扉が開かれ、部屋の様子が目に入る。飾り気のない質素だが、どこか落ち着いた空気が流れる部屋。
金に物を言わせて、過度に飾られた部屋よりも女の好みだったか。
椅子や寝台も、男の体重を受け止めるためにしっかりとした作りなのだろう。
部屋に入ってまず目に入ったのが、テーブルに置かれたブランデー。
男が常日頃から飲んでいるものだろう。帰ったらすぐに、それを煽る様を想像して小さく吹き出し。
部屋に入れば、腰に下げた剣をベルトから抜き取り、案内される椅子の近くに立てかけていこうか。

イーヴィア > ―――……鍛冶は俺一人さ。 その代わり、店周りの事は殆ど他の連中に任せてる。
其の分俺は鍛冶に集中出来るって訳さ、幸いな事にな。

(初めは、自分一人で全てをこなさなければ為らなかったけれど
今は幸い、ちゃんと信用出来る仲間が此処に集まっている
だから、一度鍛冶作業が始まると、暫く鍛冶場から出て来なくなるのだと
そんな事を笑いながら教えては、鍛冶場の入り口へと一度、視線を投げた
盗難対策や店内の様々な対応も、決して己一人で築き上げた物じゃない
あちこちに、此処で働いている従業員の知識や経験、アイデアが生かされているのだと
決して上からの目線ではない、対等な敬意を持って、彼らへの感謝を表し)

―――……まぁ、十中八九、後で飲み直すだろうなと思ってね。
部屋を出る前に酒盛りの用意はして置いたのさ。
取り敢えず、其の辺りに座ってくれ、グラスは用意する

(一人酒用のグラスが一つ、逆さにテーブルへと載せられている
其れを客用とするのは流石に失礼だから、ランプの秘を部屋の中、据え付けのランプへと移しつつに
棚から新しいグラスを取り出して、テーブルへと置こう
手持ちのランプは火を消してしまい、壁へと掛けて
再び、テーブルへと近付く)

テイア > 「なるほど、それぞれしっかりと役割が分かれている訳か。」

一人で鍛冶をこなすというのには、やや驚いた様子。
女が剣を任せているドワーフたちは、数人で鍛冶に取り組んでいるのを見ていたからだ。
体力があるんだな、と男の鍛え上げられた体を見やりながら考えて。
従業員が知識や経験を活かし、アイデアを出せるのも店主たる男がこのような性格だからだろうと、彼らに感謝を示す男を微笑ましげに女は眺めていた。

「あんな宴に駆り出されたのは、災難としかいいようがないからな。」

用意がいい、とまた小さく女は笑う。
本来なら平民である彼が、あのようなパーティーに呼ばれるはずがなかったが、貴族の自己顕示欲のせいで巻き込まれたようなもの。
おそらく王宮に武器を卸している関係から、白羽の矢がたったのだろう。
備え付けのランプに火が移れば、手持ちの火で照らすよりも明るく室内を照らし出す。
剣をテーブルに立てかけて、手近な方の椅子へと女は腰掛けていき、新しいグラスを出してくれるのに礼を述べ。

イーヴィア > 他に気を回してると、中々本業に集中出来ないからなァ
それに、商売に関しちゃ俺よりも優秀なのが一杯居るんだ、俺が出張る必要も無いさ

(鍛冶仲間が居れば共同作業も在りえたのだろう、けれど生憎自分は一人だ
だからこそ、他の事を全て任せる、と言う今の状況に為っている訳だけれども
其れを苦だと思った事は、少なくとも己は無い。
其れは、これが己の生きる術であり、何よりの誇りで在るからだ
女が椅子へと座るなら、己は立ったまま、ブランデーのボトルを手に取り
蓋を開け、女の前に在るグラスへと先に注いでは、続いて自分のグラスへと。
瓶を置き、もう一つの椅子へと腰掛けては――改めて、先刻までの宴のやり直し
グラスを掲げ、小さく笑い。)

ま、貴重な経験だったと思う事にするさ。
それに、不幸中の幸いな事に、大分良い出会いに恵まれたからな。

(本来の目的の方は、最早無かった事にしても良い位だが
少なくとも今宵、目の前の女に出会えた事は、掛け値為しに良かったと思える
改めて――ヴァルケス武具店へようこそ、だなんて囁いては
今度こそ、互いのグラスを、合わせようとした
純粋に――酒を、愉しむ為に)

テイア > 「そうか…。」

信頼し、支え合い、互いに補い合える関係に店主と従業員はあるのだろう。
女は商売人にはなったことはないが、商売人というのも傍から見る以上に難しいものがあるのだろう。
それに、森のドワーフにしてもそうだが、職人気質が強く商売といった方面では下手ともいえる。
目の前の男も、そういう類なのだろう。
鍛冶という仕事に誇りを持つ様は、騎士道に誇りをもつ己に通じるところがあり、笑みを浮かべたまま話を聞く。

「有難う。確かに、貴重といえば貴重だな。
 それは私も同じだよ。」

グラスに酒を注がれるのに礼をいい、どろどろとどす黒い貴族の宴に招かれるのは、確かに貴重だろう。
男のいいざまに笑いながら、そして良い出会いというのには女も同意する。
あのような場所で、このような気持ちのいい人物に出会えたのは女にとっても僥倖といえる出来事だ。
グラスを持つと、女も掲げて
お招きに預かりどうも、なんて冗談めかしてグラスを合わせる。
カチン、とグラスが澄んだ音を奏でて、その余韻を楽しんだあと酒を唇へと運び。

イーヴィア > アンタだって、一人で何もかも、なんて所詮無理だろう?
まぁ、そんじょそこらの奴に比べたら失礼かも知れないけどなァ
アンタの手足と為って動く仲間が居る、だから、アンタはアンタの為すべき事を為せる…そう思うぜ?

(既に、多少酒が入っているせいも在るが、普段から余り気を使わない
目の前の女と己とを完全に同一視は出来ないだろうが、似通う所は在るだろうと
同意を求める様に問い掛けてみながら――グラスを、合わせる
澄んだ音が、静かな室内へと心地よく響くのを愉しみながら
くい、と、一息に飲み乾す事はせず、其れこそ味を愉しむ様に軽く煽り)

まぁ、二度目に招かれたら、今度こそ丁重に断るだろうけどなァ?
―――……ま、お陰でこうやって本当に美味い酒が飲めるんだ、文句は言わんさ。
イイ女を前にして酌み交わす酒は、安かろうと最高だよ

(テーブルへと肩肘付けば、告げる戯言めいた声音
女の顔を覗き込む様に、軽く身を乗り出して見せては
暫し、反応でも伺う様に視線を重ねようか
不躾だと機嫌を損ねる様なら、直ぐに笑い飛ばして謝罪する事だろうけれど、果たして)

テイア > 「そうだな。部下がいて、仲間がいて初めて成り立つものだ。戦などになれば尚更に。
 買いかぶり過ぎだ。私一人の力など、たかが知れている。
 今回の騒動も、いろんな者達の協力があってこそ成し遂げられる。」

男の言葉に、その通りだと頷き。遠慮のない言葉は気持ちよく。
同じ志を持ち、誇りを持ち戦った命たちを想う。
だからこそ、その意志を汲み取り、引き継いでいかなければならないと。
酒の色、匂い、視覚と嗅覚でまずは楽しんだあと、舐めるように味覚でその味を楽しむ。

「それをおすすめする。色々と濃すぎて胸焼けを起こしてしまうからな。
 ふふ、煽てても何も出ないぞ?」

足を組んで、唇から離したグラスをくるくると回して、琥珀色の液体が照らされ、その色を微かに変えていくのを見ながら頷き。
軽く乗り出してきた、紫の瞳を二つの異なった彩の視線が見つめ返す。
少し首を傾げれば、さらりと耳付近の長い銀糸が流れて。
機嫌を損ねることなく、笑みを浮かべて返す。
いい女と言われて、悪い気はしない。

イーヴィア > その、色んな協力を惜しまない奴らを集められるってのが、アンタみたいな人の凄い所さ
うちの従業員の頭数どころの騒ぎじゃないからなァ?

(戦士として、否、寧ろ其の勇名は兵を率いる者として轟いていると己は感じる
今の女の立場は無関係だ、其の過去、騎士団長にまで上り詰めたと言う事実が
彼女の格を知らしめているのだから。
こんな態度では在るけれど、歴史に名を刻んだ相手への敬意は在るのだ
そして、其の勇名に違わぬ内面に触れる事が出来たのなら、余計に。)

―――……クク、煽てた訳じゃないさ、本心だよ。
でも、戦の英雄を自宅に連れ込んだ挙句に口説いたら、最悪手打ちにされちまうかな?

(――改めて、見据える其の瞳。 左右の色合いが異なるのだと、今更ながらに気付きながら
気分を損ねる様子も無く、笑みを返されれば、ふ、と口元を僅かに緩めて。
するり、ふと、片掌を女へと伸ばしては、流れる其の銀の髪糸へ、触れようとするか
適うならば、其の髪糸を、森の民特有の長い耳へと掛けて遣り
――其の儘、其の目元へと指腹を触れさせ、柔く撫ぜ様とする、か)

テイア > 「昔取った杵柄、というかな。今でも、それなりに人を使う立場にいるからな。ただ、そうやって人を動かせば、その志を継ぐという対価が生じる。
 今の私に、それを背負いきれるかどうか分からないがな。
 あとは、変わり者も何人かいたな…運はまあまあいいらしい。」

従業員と比較されるのに、可笑しそうに笑う。
全てが自分の人望で集まったなどという程、女は傲慢ではなかったし自分に対する評価は厳しかった。
協力してくれる者達の志と、少しの幸運。それに恵まれただけだと。
先王の時代、騎士団長の立場を追われた女は諦めてしまった。
昔にはもう、戻れないのだと。
今回のことが許せないという気持ちがまだ残っていたから、女は行動に移したものの一度諦めた心は、そう簡単には戻っては来ない。
そんな自分が、今後も彼らの意思を継いでいけるのかどうかは正直分からなかった。
そんな事を零しながら、対価として女の体を求めた男たちの事を思い出して苦笑する。

「なら、ありがたく受け取っておくべきかな。
 口説く気なのか?…そなたももの好きだな。」

大きな手が伸ばされる。鍛冶をするその手は、きっと皮が暑く無骨なのだろう。
銀糸に触れれば、シルクのようにさらりと絡まらずに流れ、
耳にかけられれば輪郭が顕となる。
それが左耳であったなら、戦の古傷で右側よりも短いことに気づくだろう。
目元を撫でられるのに、そっと瞳を細めて、されるがままに任せる。
さて、どのように口説かれるのか。
騎士としての誇りを讃えられ、敬意を示されるのは受け入れやすいが、甘い睦言などは女の苦手な領域。
その領域は勘弁してほしいなどと少し考える。